え〜ん、え〜ん。
お仕事が忙しすぎて小説書く時間が全然作れないよ〜。
もうお仕事辞めたいよ〜。
え〜ん。゚(゚´Д`゚)゚。
宣告された勇者ドラの公開処刑当日。アバンの使徒達は昂って眠れない体に無理やり休息を取らせて、日の出とともに目を覚ました。
大魔王に対抗しうる、圧倒的な力を持った
喉の奥がひりつくような緊張に満ちた日に顔を出した太陽は、いつもと何の変わりもなくさわさわと揺れる木々を眩しく照らし出していった。
起き上がり朝の清々しい空気を吸い込めば、ふと窓とは逆の方向から眩しい光がチカチカと目に差し込できた。
目を細め見た先には昨夜渡されたばかりのロン・ベルク特性の武具があった。窓から入る朝日を反射し、戦いを前に今や遅しとキラキラとその身を輝かせている。
真新しい武具は通常体に馴染むまで大なり小なり違和感があるはずだが、装着すると吸い付くように自然に体に馴染む。まるで長年愛用してきたかのような使い心地だ。
単純な攻撃力だけでないところがさすが名工作といった所以なのだろう。
大魔王バーンが処刑場として示した『ロロイの谷』にはフローラ率いるカール王国騎士団、クロコダインやノヴァ、バダック達が先に向かっている。
身支度を整えて砦の門前に集まったポップ、マァム、ヒュンケル、レオナの四人は勇ましい表情で各々の顔を見合わせた。
「…みんな! わかっていると思うけれど、念のために言っとくわ!
ドラちゃんを助けるチャンスはこれが最後、同時に大魔王バーンを倒すチャンスもこれで最後よ…!!
〝もし失敗してもまた次トライすればいい〟なんて考え方してたら確実に負けるわよ!!
失敗は絶対に許されないと思わなければ…!!
これが私達のラストバトル…!! いいわね!!」
「ああ」
「ええ!!」
「わ~かってるって! …絶対にドラを助け出すぞ!!!」
「よし、行きましょう!!」
頼もしい返事にレオナが一つ頷いて号令をかける。
ポップの
「…返事は帰ってから聞くから、ちゃんと考えておいてくれよな」
「え…えぇ…」
手を繋いだマァムに向けたポップの言葉にレオナがバッと顔を向けた。
「え?! ちょっとポップ君何今の!?
もしかして二人とも昨夜何かあったの!??」
「ちょっ…姫さん手ぇ離さないでくれ!!」
「レオナ、その話はまた後で…」
「姫…今はそれどころでは…」
文字通り一刻を争う事態だというのに先程の凛々しさはどこへやら。
ポップの呪文詠唱を邪魔するレオナをヒュンケルが諌めた時だった。
「待ってみんな!! 俺達も一緒に行くよ!!!」
「ピィ~~~~ッ!!」
声変わりもしていない少年の焦り声と聞き慣れた鳴き声があたりに響き四人は驚愕に目を見開いた。
「ディーノ君!?」
「!…ぶはっ…ゴメ!! お前無事だったか!!」
「ゴメちゃん…!!」
泣きながら顔面に突っ込んできたゴメちゃんを引き剥がしながらポップが安堵に顔を綻ばせた。マァムもゴメちゃんの無事な姿に「良かった…!」と涙ぐむ。
「…バラン達も一緒か」
ディーノの後方に控えているバランと竜騎衆の姿を見たヒュンケルが続けて「今までどこへ行っていた」と呟いた。
実はレオナ達が破邪の洞窟へと向かった直後、バラン達は砦から姿を消していたのだ。
元より人間とは相容れない彼らだ。砦から少し離れた場所にて野営でもしているのかと思っていた。
しかしドラの処刑宣告が齎された後、砦周辺を探してみたがどこにも姿が見当たらなかった。連絡する手段も持ち合わせていないため何があったのか確認も出来ず、どこへ行ったのかとヒュンケルは懸念していたのだが…
「ごめんなさい、実はバーンパレスからもの凄い
俺と父さんで慌ててバーンパレスに向かったんだ!
バーンパレスのバリアは破れなかったんだけど、下の海からなんだか不思議な気配と音がするから行ってみたら…」
ディーノ達が気配の元を辿りそこで見つけたのは…
溺れまいと必死にドラムを叩いて波飛沫を跳ね返す、元の姿に戻ったドラムーンのゴロア。そして彼の体を咥えて必死にピィピィと大声をあげて助けを求めるゴメちゃんの姿だった。
ディーノに助けられた二人(二匹?)は身振り手振り、必死に状況を説明した。
ドラがバーンパレスにいる事、助け出すためにはアバンの使徒の協力が不可欠という事をなんとか解読し砦まで引き返してきたというのが事の経緯だ。
「ディーナは俺と父さんを助けてくれた。今度は俺がディーナを助ける!
足手まといにはならない…約束するよ!
だからお願い! 俺と父さん達も一緒に連れて行って!!」
「ディーノ君…!
もちろんよ…とっても心強いわ!!
みんなも、いいわよね?」
絶対に妹を助ける、という決意を宿した力強い瞳。ディーノの熱い想いを感じ取ったレオナが頷いて振り向くとアバンの使徒は皆首を縦に降り快諾した。
「ええ、力を合わせてドラを助け出しましょう!」
「ああ、問題ない」
「
「うん…!! ありがとうみんな…」
斯くしてドラ救出のため、アバンの使徒達とともに、ディーノ、バラン、竜騎衆…ゴメちゃんとゴロアも加わった一行は宣告された処刑場・ロロイの谷へと向かったのであった。
ミストバーンの配下である彷徨う鎧達が勇者ドラの処刑場を着々と形作っていく。
周囲のゴツゴツとして不規則極まりない造形の岩肌とはまったく違う、一辺の歪みも無い真四角の台座。その中央には大きな十字の磔台。
台座の四隅には流麗な曲線の大鳥を頂点に据えたポールが埋め込まれ、荒涼とした谷の一角は真上に浮かぶバーンパレスの様相も合わさりまるで『戯曲・絶望』という名のために用意された舞台と言っても過言ではないほどに…死の気配が色濃く漂う光景が広がっていた。
ザボエラを先頭に、彷徨う鎧達に囲まれ煤けた桃色のドレスを着た少女…ドラが台座の中央へと引き立てられていく。
手には魔封じの手錠。その手錠に繋がれた鎖に引っ張られながら歩くドラは俯いてしくしくと泣いていた。
「…うっ、…うぅっ…ひっく」
「キィ~~~ッヒッヒッヒッ…! なんじゃ、牢ではあれだけ威勢が良かったというのに。
小娘、さては今更怖気付きおったな!?
命乞いをするのならまだ遅くはないぞぉ!?
キィ~~~ッヒッヒッヒッ!!!」
ついに自分の窮地を理解したか…と、下卑た笑い声をあげるザボエラにドラはぐずぐずと鼻を鳴らしながら言葉を返した。
「ひっ…ひどい…! 今から処刑されるのに…
そっ、それなら主役は私なのに…ひっく、
ドレスもボロボロのままだし…ぐずっ…
お風呂にも入れさせてくれない…お化粧もさせてくれない…っ
あと処刑されるなら可愛くてもっと綺麗な処刑台にしてほしかったのに…!!
私ちゃんと…
〝豪華な処刑台にしてね。服装はなんていうかこう…儚くて囚われのお姫様って感じの衣装が良いな♡〟
って希望したのに…!!」
理想は生贄に捧げられるお姫様が乗せられるような花と宝石で飾り付けられた大きな神輿だ。
そこに美しくも儚い衣装を身に纏ったドラが座る。
きっと仲間達は助けに来てくれると確信しているが、欲を言えばバランかディーノかラーハルトに助けてもらえると大変嬉しい。
処刑台に立たされる機会など…それも全世界に発信、きっと記録にも残されるであろう大舞台などこれを逃せば今後の人生で二度とは巡ってこないだろう。
無慈悲な鐘が処刑執行の時刻を告げる。細い腕に巻かれた鎖、振り下ろされる刃、はらはらと涙が頬を伝う、涙を拭う事も出来ず悲劇的な運命を迎えるかと思われた刹那…
振り下ろされる凶刃ごと処刑人を斬り裂き、細腕に巻かれた鎖を断ち切ったバランが「無事であったか…!」と恐怖に震えるドラに優しく微笑みかけるのだ。
とまあ、バーンパレスに囚われている間にぽわぽわと夢物語を思い描いていたのだが…
顔を上げて見渡した風景は夢物語とは程遠い。殺風景で予算などまったくかけられていない事が丸わかりの台座と磔台のみ。
夢に掠りもしない現実を叩きつけられたドラは天を見上げて泣き喚いた。
「うっ、うわあぁぁ~~~ん!!!」
振り返ったザボエラの額に、ビキビキと血管が浮かび上がる。
「黙れ小娘が!!!
なんっじゃその無意味な希望は!??
どうせすぐ処刑されるというのに服装に拘る意味など無かろう!!!」
ヒステリックにがなりたてるザボエラにドラも負けじと言い返した。
「ひどいッ!! 私が牢屋に閉じ込められてる間に絶対絶対ぜ〜〜〜〜ったい!!!
見逃しちゃいけないあれやこれやな恋模様があったはずなの!!
それを見逃した代わりに可愛い衣装着させてって言ってるだけでしょ!?
こんな格好じゃ気分アガらないじゃない!!!
私はこの世界の宝なの!!
可愛くない格好で処刑される姿なんて絶っ対人に見せられんないのッ!!!!」
ジリジリと岩肌を焼く太陽。
砂を巻き上げて吹く乾いた風。
キャンキャンと言い争う声がその乾いた風に乗って、広い谷に反響する…
ドラを救出するためにロロイの谷に決死の覚悟で潜入し、息を殺して身を潜めている者達は思った。
(((((いったい何の心配をしているんだ…!?)))))
人類の希望を取り戻さんと決死の覚悟でいる者達の困惑を置き去りにして、太陽は空高く昇っていった。