ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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106_魂を辿って

「んあ?」

「あ、やっと起きたわねドラ」

「んぅ…? お姉ちゃん…? あれ、ここどこ…」

 

マァムの恋バナならぬ愛バナに夢中になっていたら何かを口に突っ込まれて気がついたら不思議な空間にいた。

お姉ちゃんこと前世の魂が気を失っていたドラを膝枕で介抱してくれている。

 

(ひざまくら気持ちいい………膝枕!??)

 

「えっ!? 何で!?? お姉ちゃんが何で私を膝枕してるの!?

ここどこ!?

きゃああああっ!!! 聖母竜(マザードラゴン)ッ!!!?」

「ちょっと、落ち着いてちょうだいなドラ」

 

(ドラゴン)の騎士の魂を迎えに来た聖母竜(マザードラゴン)を返り討ちにしてやろうと極大消滅呪文(メドローア)を発動させようとした戦闘脳のドラを「こらこら、よしなさい」とお姉ちゃんが優しく宥める。

原作でダイ君が聖母竜(マザードラゴン)と対話した不思議な空間ではドラだけでなくお姉ちゃんの魂も実体化して妙齢の女性の姿で顕現していた。

ボブカットに揃えられた髪にシャープな印象の眼鏡、体はすらりとしているが出るとこは出ている。

『ダイの大冒険』にはいなかった知的なキャリアウーマンといった風貌の美女だ。

促されて一旦落ち着いたドラはお姉ちゃんの影に隠れてガルルルル…と聖母竜(マザードラゴン)を威嚇する。

 

「やだやだ! 私絶対行かない!!

まだやらなきゃいけないことあるから早く帰って!!」

 

 しかし、あなたの肉体は魂が破壊され生命活動を終えようとしています…

 

聖母竜(マザードラゴン)の言葉は脳に直接響いてきた。

 

「大丈夫だもん、今すぐ魂戻してくれればまだいけるもん。

3秒ルール知らないの?」

「ドラ…さすがにそれは厳しいんじゃないかしら…?

今その事で私と聖母竜(マザードラゴン)で交渉していたところなのよ」

「交渉?」

 

お姉ちゃんがこくりと頷く。

 

「ザボエラが飲ませた丸薬…暗黒闘気の結晶って言っていたわ。

それのせいで魂と肉体が離れてしまったみたいなの。

聖母竜(マザードラゴン)のおかげで魂の完全な破壊は何とか免れたけど、このままじゃ肉体に戻れないしその間に生命活動が終わってしまうわ。

 

…だからね、全てのダメージを私の魂に移してドラの魂だけを肉体に戻せないか相談していたのよ。

私は(ドラゴン)の騎士ではないけれど異世界の記憶を持った魂ではある。

この世界の理からは外れた存在よ。多少なりとも力の足しにはなるでしょう。

 

私の魂と引き換えにドラを生き返らせて、今回はお引き取り願えないかしら?

ついでに贅沢を言わせてもらえば聖母竜(マザードラゴン)、あなたのエネルギーを丸ごとドラに与えていただけると嬉しいのだけれど」

 

「なっ…!?」

 

 …確かにあなたの魂と引き換えに(ドラゴン)の騎士の魂を肉体に戻す事は可能です。

 しかしエネルギーは与えられません。

 地上には他にも(ドラゴン)の騎士がいる…

 その者達の魂を迎えに行く者がいなくなってしまう。

 

「今ここでドラの魂を戻さなければ、どのみち大魔王バーンによってあなたも含めて天界も無事では済まないでしょう。

ここは何とか私の意見を飲んで頂けないかしら?」

 

言い募る女の言葉に聖母竜(マザードラゴン)は静かに首を振って答える。

ドラが気を失っている間にこの押し問答が何度となく繰り返されていた。

この空間では時間は経過しないが、だからと言っていつまでも平行線を辿るわけにも行かない。

 

地上にはバラン、ディーノ、竜騎衆にロン・ベルクもいる。

原作では戦いの中散ったバランが、大魔王バーンを討つためにその力を魂ごと聖母竜(マザードラゴン)へ…そして聖母竜(マザードラゴン)は自身の持つエネルギーを全てダイ君へと継承した。

しかし原作から乖離した今ならば聖母竜(マザードラゴン)の力をドラに分け与えずとも戦力的には問題ないはずだ。

せめてドラの魂を肉体に戻してくれるだけでもいい。

必死に頼み込むお姉ちゃんをドラは大きな目に涙を溜めて、わなわなと震えて今にも泣き出しそうな顔で見つめた。

 

一方、ドラが倒れ聖母竜(マザードラゴン)が降臨した地上では…

 

 

「ドラちゃん! 嫌ぁッ…!! 目を覚まして…お願いよ!!」

「ドラ! おい、しっかりしろッ!! ドラ!!」

「ドラ…!」

「ディーナァッ!!!」

「ディーナ様…!!」

 

周囲をぐるりと囲む者達の呼び掛けにピクリとも反応せず、ドラの体が聖母竜(マザードラゴン)から放たれる光に包まれる。

ふわりと浮かぶドラの体をバランが抱きしめて地上に引き止めた。

バランが聖母竜(マザードラゴン)を睨みつけ、娘を神々の園へ渡すまいと抵抗する。

睨みつけられた聖母竜(マザードラゴン)はただ静かにバランを見つめていた。

 

「ドラさん…! ああっ…魂が離れていってしまう…?!」

「メルル…」

 

人垣を掻き分けてバランに抱かれているドラの手をメルルが握りしめた。

青醒めた表情のまま、意を結したようにメルルがある試みをしてみるとポップに告げる。

 

「ポップさん…私、ドラさんの魂を繋ぎ止めて話が出来ないか試してみます…!」

「魂と話す…? そんな事可能なのか…!?」

「わかりません…。でも、このまま手をこまねいているわけにはいきません…!!

テランで何度か竜水晶様の御力をお借りした事があります。

(ドラゴン)の騎士の魂の波長も…私なら探れるはずです…!!」

「メルル…

頼んだ、メルル!! ドラの魂を連れ戻してくれ…ッ!!」

「はい…!」

 

メルルは精神を集中して瞼を閉じたままのドラの手を強く握りしめた。

ドラの魂はすでに神の御許へと旅立ちかけている。

 

(…魂を連れ戻せなければ、私のほうが逆にドラさんの魂と一緒に黄泉の国へと引き込まれてしまう。

それでも…!

こんな時くらいしか、世界の…いいえ…

 

ポップさんのお役に立てない、私…!!)

 

メルルが目を閉じてドラの魂の行方を探る。

周囲の喧騒がどんどん消えて足元からずぶずぶと深い沼に沈んでいくような錯覚に襲われる…

肉体から抜け出たメルルの魂は一本のか細い絹糸のようなドラの魂の痕跡を辿って、聖母竜(マザードラゴン)が作り出した神々の国へと繋がる空間へと躍り出た。

 

地上でも上空でもない。

温かくも寒くもない、荘厳な光に溢れた空間には神々しい佇まいの聖母竜(マザードラゴン)

一人の妙齢の女性。

そしてメルルが連れ戻さなければならない勇者ドラの姿が…

 

「ドラさん…!」

 

「いいぃやあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!!

お姉ちゃん逝っちゃ嫌あああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!!!

お姉ちゃん連れて逝くなら聖母竜(マザードラゴン)も神様も殺すううぅぅぅ…ッ!!!

それで魂治して地上帰るううぅぅーーーーーっ!!!!

うわあああぁぁん…」

 

「えぇ…」

 

上を見上げて号泣する勇者ドラと、必死に宥めるお姉ちゃんと、あまりの言いように無言のまま引いている気配の聖母竜(マザードラゴン)の姿がそこにはあった。

 

 

 




申し訳ありません少し間が開きました。
【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】にんげんっていいぞ【インフィニティ ストラッシュ発売記念】
皆さんはもう動画をご覧になりましたか?

ダイ大公式、どういうことなの…
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