ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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12_新たな仲間

クロコダインを退けた後、ネイルの村へと戻った3人と1匹は村の広場に集まって震えていた村人たちにことの次第を説明した。

村のすぐそばで上がったクロコダインの咆哮を聞き、逃げ出す大量の動物達を見たのだ。怯えてしまうのも無理はない。

ひととおり説明が終わり、脅威は去った旨を伝え終わるとすっかり夜遅くになってしまった。

マァムの提案で家に泊めてくれるというのでありがたく申し出を受けて今は客間でポップと2人、就寝前に今日の出来事を話しているドラである。

 

「今日は疲れたねぇ〜」

「ピィ〜」

「…」

「あれ? どうしたのポップ?」

「悪かった…」

「え、何が?」

「お前を置いて逃げたこと…」

「ああ、気にしなくていいよ。ていうかあれは逃げて当然だよ。ポップが無事でよか「俺は!」

「…俺はアバン先生から頼まれたんだ。お前の事…力になってやれって…なのに思わず逃げ出しちまった…俺、自分が情けなくてよ…」

「…」

「悪かったよ、ドラ。もう俺さ、逃げ出さないように頑張るからさ」

「…ねえ、ポップ」

「ん?」

「別にさ、逃げてもいいよ? 危ないと思ったら逃げてよ、死んでからじゃ遅いんだからさ」

「お前、俺の話聞いてたか?」

 

少し怒った口調になるポップ。

ポップからしたら「お前が臆病者なのは変わらないよ」とバカにされてる気分なんだろう。

でも私が本当に言いたいことはここから先なのでちょっと最後まで聞いてほしい。

 

「あのさ、これだけは覚えててほしいんだけど。

私、ポップが逃げてもポップのこと、嫌いにならないよ?」

「…は?」

 

思いもかけない事を言われて理解が追いつかないという顔をするポップ。

 

「そりゃあさ、逃げないで立ち向かうのは大事だと思うよ。

でも逃げ出したくなる気持ち、すっごくわかるよ。私だって逃げられるなら逃げちゃいたいもん、痛いのも死ぬのも嫌いだし。

命をかけて戦う人が偉いっていうのは、うん、まあ、わかる。

でも逃げる人が悪いっていうのもなんか違う気がする…逃げた人にだってちゃんと逃げた理由があるはずだし…

だからさ、これから先、ポップがもし『もう無理!これ以上戦えない!』って思って逃げ出しちゃったらさ、ここに一人、絶対ポップの事、嫌いにならない人間がいるっていうことだけは覚えててほしいんだ」

「…はあ」

「ちょっと、何その気の抜けた返事」

「いや、言ってる意味がいまいちわからなくて…」

「今はわかんなくていいよ。そのうちわかってくれたら」

「…わかった」

「なら良し! あ、明日さ、マァムに先生の事伝えて力貸してほしいってお願いしなきゃね」

「あ、あんな乱暴な女の力必要ないだろ!?」

「え〜、旅の仲間は多い方が楽しいじゃん〜」

「あんなでっかい胸くらいしか取り柄の無い暴力女なんかに仲間に入ってほしくないね!!」

「おっきいお胸、良いじゃない? 私もああなりたい!」

「はあ? ぱふぱふ館も知らないようなガキが生意気な事言うじゃねぇか。

いいか? そういう事はもうちょっと大人になってから…」

「ぱふぱふ館知ってるよ、私何回も売り飛ばされそうになったし!」

「その話詳しく」

 

直前まで先輩風吹かせて子ども扱いをしてきたポップがスンッと真顔になってあれこれ聞き出してきた。

なぜぱふぱふ館を知っているのか、盗賊に絡まれたりした事やニセ勇者の一件などをかいつまんで話したら私がやってきた事がいかに危険な事か深夜までお説教された。

解せぬ。

 

翌日、あらためてマァムとマァムの母、レイラに挨拶しアバンの事を伝えるドラ達。

 

「まあ、アバン様の…」

「はい、末弟子のドラです」「兄弟子のポップです」「ピピィッ」

「マァムの母のレイラです」

「母さんと死んだ父さんはアバン先生と一緒に魔王と戦ったのよ」

「そうなんですか!?」

「あれはもう15年くらい前でしょうか…主人は戦士として、私は僧侶としてアバン様にお力添えをしましたわ。

魔王を倒し世界が平和になった後に一度この村を訪ねて来られて、その時にマァムを教えていただいたんです。もう4〜5年前になりますかしら…」

「そっか…もうそんなになるのね…」

「ところで…アバン様はお元気ですか?」

 

この質問にドラとポップは顔を見合わせて少し困った表情をした。

しかし意を決したドラが「実は…」とデルムリン島であった事を説明し始めた。

 

「そんな、そんな事が…!」

「大魔王バーン…魔王よりはるかに強い存在が…」

「はい。アバン先生へと復讐に来たハドラーは撃退したんですけれど、先生は自身の修行のために旅立っていきました。

私たちはアバン先生から大魔王バーン率いる魔王軍の進軍阻止を託されて旅をしてるんです」

「先生からこの村に姉弟子がいるって聞いて来たんだ」

「お願いです、私たちの仲間になってもらえませんか? マァムの力を貸してほしいんです」

「…」

「マァム…」

「…少し、考えさせてくれないかしら?」

「なんだよ、何を悩む必要が…」

「ポップ! …はい、勿論です。とても危険な旅になると思います。無理にとは言いません」

 

伝えるべき事をすべて言い終えるとポップとドラは部屋を出た。部屋に残ったレイラとマァム。

 

「マァム…」

「母さん、私…私は…」

「…」

 

 

一方その頃、獣王クロコダインが拠点としている洞穴では…

 

「ぐああぁ〜…ッ!! くそっ…

不覚 あのような小娘に敗北を喫するなど…

このオレが…恐怖し敗走したなどと…!!

認めぬ…認めぬぞ…ッ!

このオレが…っ、あんな小娘に恐怖しているだとおぉぉぉ〜!?」

 

獣王クロコダインはドラに敗れた屈辱と恐怖心で恐慌状態に陥っていた。

洞穴内の階段や石造りの玉座はクロコダインのやり場の無い怒りを受けて全て粉々に砕けている。

 

…荒れとるな、クロコダイン…

 

「何者だッ!?」

「キヒヒヒヒッ、まあ無理もないわな。

あんな小娘に負けたとあっては魔王軍の恥さらしよ…ヒヒヒ」

「妖魔司教ザボエラ…」

「久しぶりじゃな獣王殿」

「貴様、オレの敗走をどうやって知った…!?」

「戦場の見張り役『悪魔の目玉』はわが妖魔師団の一員…

このワシに知らぬことなどないわ。お前さんの危機を知り助力しようとかけつけたんじゃよぉ〜」

「貴様がオレの手助けを…!?」

「これを使うと良い」

 

そう言ってザボエラが取り出したのは表面に十字に似た紋章が意匠された黒い筒であった。

 

「これは…?」

「この中にはあの小娘を育てた鬼面道士が封印されておる。あの小娘にとっては親も同然…

こいつを人質にしてあの小娘を生け捕りにすれば良い。どうじゃ、良い案であろう?」

「なんだとぉっ!! 貴様…このオレにそんな卑怯な手を使えというのか…!?

ふざけるな! 貴様ごとき卑怯者の手など借りずともオレは正々堂々とやつと戦い勝ってみせるわ!!」

「それはちと難しいんじゃないかのぉ〜?

…獣王殿と小娘の戦いを見ておったがの、あの『刷り込み(インプリント)』とかいう技、洗脳の一種のようじゃの。行動を制限する技の類のようじゃが「退()け」と命令はされておったが「戦うな」とも「人質を取るな」とも言われてはおらん。正攻法で小娘に向かっていってもまず勝てんと思うがの…

あの小娘を仕留められず生け捕りにも出来ないとなれば…獣王殿はハドラー様から下された勅命を果たせず任務は失敗、魔王軍での居場所が無くなるのぅ~」

「くっ…」

「悪いことは言わんよ…これを使え。おぬしとて今の地位、失いたくはあるまい!? ええっ!?」

「…」

 

ドラにとって大きな誤算が生じていた。

クロコダインに「退()け」と命令したのでこれで獣王軍はもうロモス王国に進軍しないと安心していたのである。

ザボエラが『刷り込み(インプリント)』の性質を即座に見抜いた事、クロコダインに入れ知恵をした事…

原作において裏でこそこそと動き回り卑怯者の印象が強かった妖魔司教ザボエラ。

しかし曲がりなりにも彼もまた魔王軍軍団長…観察力や奸計に優れており、制限された技(インプリント)を使用し爆弾を抱えたハドラーを回避して行動したいドラにとって最も厄介な敵となるのであった。

 

 

ネイルの村に滞在したドラ達一行は村に破邪呪文(マホカトール)を施したり、バブルスライムに噛まれて毒に侵された人の治療をしたり、アバン先生の思い出話に花を咲かせたり、レイラからアバンの勇者時代の話を聞かせてもらったりと何日間か楽しく過ごしていた。

しかしロモス王国に何度も獣王軍が進軍していた話を聞き、出立する事にした。

アバンが「ロモス王にドラの勇者教育を任された」と言っていたし、ロモス王に会ってアバンから託された使命を話せば旅の助力をお願い出来るんじゃないかとポップと相談したのだ。

出立する日になり、村の広場でお別れの挨拶をするドラ達…

 

「気をつけてな…」

「お母さんを治してくれてありがとう、お姉ちゃん!」

「頑張れよ!」

 

「じゃあね、マァム…いろいろありがとう!」

「ごめんね…本当はついていってあげたいんだけど…」

「気にしないで、本当に危険な旅だから…」

「ドラ…」

「さよならマァム、またいつか必ず来るから!!」

「へへっ、そん時ゃ俺もな!」

「ピピィッ!」

「ポップ…ゴメちゃん…」

 

「偉い子たちじゃ…あんなに小さいのに魔王軍と戦おうとは…」

「本当に無事でいてほしいですな…」

「マァムお姉ちゃん…?」

 

同じアバンの教えを受けた2人が魔王軍へと立ち向かう旅へ出るのを涙を流しながら見送るマァム。

別れの寂しさからではない、旅に同行出来ない悔しさから流した涙だった。

一緒に行きたいと言った言葉は嘘ではない。

しかし今マァムが旅に出てしまったらこの村はどうなる?

マァム以外にモンスターと戦える戦力は母のレイラと魔法が使える長老くらいの小さな村だ。

まだしばらくは徴兵されていった男たちも帰っては来ないだろう。

日々の力仕事だけでも限られた労働力の中でなんとかやっているのだ。

今自分が村を離れてしまっては…けれど、あんな小さな女の子が獣王クロコダインに立ち向かっていったのに…

見ている事しか出来ない自分が歯がゆく、悔しさに後から後から涙が溢れ出て来る。

 

そんなマァムを見かねたのだろう。

母レイラがそっと声をかける。

 

「マァム、行っておあげなさい…

ドラちゃん達の手助けをしてあげたいのでしょう?

私たちのことは構わずお行きなさい」

「で、でも…」

「私もね…15年前傷つきながらも戦い続けていたアバン様や父さんを見かねてこの村を飛び出していってしまったのよ。私の娘だもの、しょうがないわよね」

「母さん…!」

「マァムお姉ちゃん! 行ってきなよ!」

「そうだよ、行ってきなよ!」「今までお世話になったお返しだ。村は俺たちで守るから」

「マァムや、この村の事なら大丈夫じゃ、わしがなんとかふんばってみるわい!」

「長老さま…」

「いやあ、わしもあのドラちゃんのがんばりを見とったらまだまだやらにゃあという気になってきたわい!」

 

わっはっは…!

 

「みんな…ありがとう、ありがとう…!!」

 

マァムを思い皆一様に笑顔で送り出す村人達…

マァムの『慈愛』の心はこの温かい笑顔によって日々育まれてきた。

大切な人を思い、心を尽くす。そして尽くされたほうもまた誰かを思い心を尽くすのだ。

正しい愛情の循環によって育まれたマァムは、世界の危機に立ち向かう弟妹弟子(きょうだいでし)のために、仲間となり持っている愛情と力を尽くす決意をしたのである。

 

 

「ドラーッ!! ポップーッ!!」

「「マァム!!?」」

「私も…私も行くわ…!!」

 

勢いよく走ってきたマァムに抱きつくドラ。

 

「マァム〜!」

「あはっ! ドラってば甘えん坊ね!」

「へっ、こんな女の力、旅の間に借りる機会なんて無ぇと思うけどな!」

「なんですって!? …そういえばあなた、あの時この子置いて逃げたわよね!?

こんな奴にドラの事任せられないわよ! 私が守ってあげるんだから!」

「はあ!? 俺はアバン先生から直々にドラの面倒見るように言われてんだよ!」

「なによ!」

「なんだよ!?」

「「ふんっ」」

 

喧嘩をし始める2人の間でドラは…

賑やかな旅になるな〜。これからこの2人には旅の間、原作で見た恋愛事情のあれやこれやで盛大に青春していってほしいな〜。

と、ニコニコしながら思うのであった。




ドラ「前世ではヒュンケル×マァム、ポップ×メルル推しだったよ!」
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