ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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114_王

「むっ!? 貴様らは…」

 

ドラ達の目の前に降り立ったハドラーと親衛騎団…

 

「ハドラー! 到着が遅かったけど良いタイミングだったから許す!

さあ、マキシマムをやっつけてちょうだい!!」

 

ドラが上から目線で命令した…が、当然と言えば当然。ハドラーは無反応だ。

マキシマムには心底興味が無いらしい。

振り返りドラを見つめて、呆れた表情で口を開いた。

 

「…貴様、何をこんなところで油を売っている。

こんな小物程度、俺が出るまでもないだろう。

とっととこいつを倒して俺と戦え、勇者ドラ。

でなくば俺が大魔王バーンを倒しに行けぬ」

 

ハドラーにとって興味があるのはアバンの後継たる勇者ドラとの真っ向勝負。

そして大魔王バーンを己の手で葬る事。

それ以外の戦闘は徒労でしかない。

親衛騎団もそんなハドラーに倣ってマキシマムを無視した。

 

「勇者ドラ、ハドラー様のお手を煩わせないでください」

「騎士の名において戦闘の邪魔立てだけはしないと誓おう」

「待っててやるから早いとこカタ付けろよ!」

「…ブローム!」

 

ハドラーの意見に賛同して口々にドラにハッパをかける親衛騎団。

むかっ腹を立てたドラがガラ悪く叫んだ。

 

「っざけんな!! 誰のおかげで延命出来てると思ってるわけ!?

アンタ達の到着が遅れたせいで酷いセクハラ受けたんだけど!!?

私これから全力でバーンを倒しに行かなきゃいけないんだから雑魚はアンタ達が片付けるのが当然でしょう!??

いいからこいつら早く捻り潰しなさいよ!

地上に叩きつけてロンにのし付けて贈って武器の素材にしてやるぅッ!!!」

 

「落ち着け、ディーナ…」

 

「お父さん離して!!」

 

父親の前では極力甘えたな振る舞いをしているせいか、般若の形相で怒り狂う娘にさしものバランもたじろいだ。

バランを引かせる勢いのドラの恫喝を受けても、ハドラー達はまったく意に介していない。

黙って成り行きを見ていたマキシマムがニヤリと口角を上げた。

 

「クックックッ…ガ~ッハッハッハッハッハッ!!

 

やはり我輩の頭脳は冴えておる!

影や死神に手柄を取られず済んだばかりか、バーン様へ捧げる首が増えるとは…

貴様ら全員の首と勇者の小娘をバーン様へ捧げれば、我輩の地位は絶対のものとなる!!

 

愚かなり元魔軍司令…いいや、勇者に二度も敗れた史上最弱の元魔王ハドラーよ!!

 

無様に逃げ延びておれば少しは長生きできたものを…死に損ないがわざわざ舞い戻って来るとは!

鴨がネギを背負って来るとはまさにこのこと。

より正しく言い表すとすれば『間抜けな落武者が自分の首を引っ提げてのこのこと戻ってきた』と言ったところか…!

 

ガ~ッハッハッハッハッハッ…!!!」

 

「あ…」

 

バカだ。

バカがいる。

親衛騎団にとって最大級の地雷…いや、地雷原をタップダンスで踏み抜いていった。

 

案の定、親衛騎団の纏う空気が一瞬で豹変した。

視線だけで殺せそうなほど鋭い殺気を放ちながら親衛騎団はマキシマムを睨みつける。

当のハドラーは自分に対する侮辱にも興味がないのか平然とした様子だ。

 

それがますます火に油を注いだらしい。

主君が自ら動かないのであれば、汚名を雪ぐのは家臣の勤めだ。

案の定、拳を打ち鳴らしながらヒムが口上をあげた。

 

「テメェ!! 誰だか知らねえがハドラー様を侮辱してタダで済むと思ってんのか、あぁッ!?」

 

「すごい、ヤンキーっぽい」

 

これもう私いらないな、と判断したドラが観戦を決め込む。

アルビナスが興奮するヒムを止めに入った。

 

「おやめなさい、ヒム」

「でもよぉ、アルビナス…」

「ハドラー様は何も命じていません。勝手な戦闘は慎みなさい」

「チッ!!」

 

渋々引き下がったヒムを見て満足そうにアルビナスが微笑む。

 

「落ち着いてご覧なさい。

兵士(ポーン)が七体、他に駒はありません。

これがどういう意味かわかりますか?」

「…?」

騎士(ナイト)僧正(ビショップ)もいたはずなのにどこにも見当たらないのであればすでに勇者一行に倒されたのでしょう。

オリハルコン生命体が十体以上いて人間風情にやられるなど…フッ。

どう考えても彼らは我々が相手をするレベルではありません。

弱者を甚振るなど誇り高きハドラー親衛騎団の名折れ…負け犬の遠吠えなど放っておきなさい」

 

ホホホ…と、アルビナスが嘲笑した。

騎士(ナイト)僧正(ビショップ)は機動力と攻撃力において地上の生物などにまず遅れを取らない。

城兵(ルック)の防御力はオリハルコンの硬度も相まって、傷を一つでも付けられたらとてつもない恥だ。

その三体がすでに倒されたというのはマキシマムにとっても屈辱だったのだろう。

 

ピクピクッ

 

痛いところを突かれたマキシマムの眉が引き攣り口元が歪む。

 

「ハドラー、止めないの?」

「…止める? 何故俺が。

アルビナスの言うことはもっともだろう。

事実を言っただけではないか。

どこに止める要素がある?」

「あ、ここにも脳筋(バカ)がいたわ」

 

シグマは無言のまま口喧嘩には参加していない。

しかし騎士道精神の高さゆえに、主君を侮辱されて一等頭に来ているのは明白だった。

鼻息も荒く、足先を馬の蹄のように地面に叩きつけて今にも駆け出さんばかりだ。

ブロックは元から動かざること山の如しだが、いつもなら「ブローム」と喋るのにそれすらなく全く微動だにしていないのが逆に恐ろしい。

 

「良いだろう…勇者どもを倒すなど我輩にとっては造作もないこと…!!

使い捨ての駒が(キング)である我輩に楯突いたらどうなるか…

思い知らせてくれるわぁッ!!!

 

兵士(ポーン)ども、かかれぇッ!!」

 

ドラ達を取り囲んでいた兵士(ポーン)達がマキシマムの命令で一斉に親衛騎団へと飛びかかっていく。

と、それまで微動だにしなかったブロックが一歩前に出て両腕を胸の前で組む。

七体の兵士(ポーン)の同時攻撃を巨大な盾と剛腕で難なく防いでしまった。

無論、その程度で止まる兵士(ポーン)ではないので鈍重なブロックを無視して盾の内側に守られている親衛騎団を襲おうと、また四方八方から回り込んでいく。

 

マキシマムは鈍間な城兵(ルック)が組んでいた両腕を解き振り返る間に、すでに親衛騎団が二体倒されているのを見て笑いを堪えきれないでいた。

城兵(ルック)の影に隠れているが倒された親衛騎団の手足が覗いている。

 

(それもそのはず…

我輩の兵士(ポーン)どもの今の素早さは女王(クイーン)にも劣らぬ。

本体を見つけ出せなければいくら攻撃を仕掛けても無意味!

 

兵士(ポーン)騎士(ナイト)女王(クイーン)の順に倒し防御力に優れた城兵(ルック)を集中的に攻撃する。

さすれば残るは死に損ないのハドラーと勇者の小娘を含む雑魚だけ。

これぞ無駄なき戦法、チェスの極意!!

 

定石を制すものが勝利を制すのだ!!!)

 

勝利を確信したマキシマムの脳内でファンファーレが鳴り響く。

大魔王バーンの御前で「真の側近、余と並ぶほどの智将、まさしく(キング)よ」と称賛されて堂々と胸を張る。

その会場の片隅ではミストバーンとキルバーンがハンカチを咥えて嫉妬と羨望の目で(キング)を睨んでいる。

 

(ああ、なんと良い気分か)

 

褒美には領地を賜るつもりだ。

自分が本来持って生まれた役割は側近ではなく(キング)なのだ。

自分よりも上の者など誰もいない場所で跪く家臣の頭を玉座に座って眺める…それこそが真の栄光というもの。

 

ガシャァンッ!とけたたましい金属音が響いてトリップしていたマキシマムは現実に戻ってきた。

ハッと視線を横にやれば胸のど真ん中に風穴を開けられて事切れている兵士(ポーン)の体が無造作に転がっている。

 

「ふん! 大口を叩いておきながら、口ほどにもな…い…!?」

 

「まったくだ。七体全部倒すのに1分もかからなかったぜ」

 

ヒムが兵士(ポーン)の体をマキシマムの目の前に蹴り飛ばした。

 

(自分とまったく同じ形のものを雑に扱うのに抵抗ないのかな?

ないんだろうなぁ…)

 

人の形はしていても感性が違いすぎる。

原作のヒムはもう少し血の通った人間らしい感性を持っていたように思うが、あれは一度死んで蘇ったが故かもしれない。

ヒムの性格が好きだったドラは目の前の硬質な雰囲気のヒムに少しばかり肩を落とした。

 

ブロックの影に隠れていた、ドラ達の位置からは丸見えだったアルビナスとシグマがそれぞれ兵士(ポーン)の残骸を踏み潰してマキシマムの前に姿を現した。

「な…なぁ…!?」とマキシマムが慄く。

 

「ほ、本体が全てやられただと…!?

何故だッ!??

アンパッサンの発動中は本体の姿は見えなくなるはず…!

貴様ら…一体どんな卑怯な手を使ったというのだッ!!」

 

「はんっ!」とヒムが唾を吐き捨てた。

 

「姿が見えないんだったら本体もまとめてかかってくればいいものを…!

その本体を物陰に隠れるよう指示した奴が俺達を卑怯者呼ばわりとは、笑わせるぜ。

近接戦闘が得意な兵士(ポーン)が気配すら満足に隠せてなかったってことは、今まで格下としか()ってこなかっただろ? テメェ…」

「ふぅ…自分が卑怯な手段ばかり用いているからと我々まで同類と見なすなど…

ますます許せませんね。

度重なる侮辱、もはや謝罪すら不要です。

命をもって償っていただきましょう」

 

「くっ、貴様…! 女王(クイーン)の分際で(キング)に楯突くとは…!!」

 

「わたくしの(キング)足り得るお方はハドラー様のみ!!」

「右に同じく!」

「ったりめぇだオラァッ!!!」

「ブローム!」

 

「おお~」

「ピィ~」

 

悲鳴をあげる間もなく爆発四散したマキシマムを眺めながら、ドラがパチパチと拍手してゴメちゃんも感嘆の声をあげる。

それ以外のメンバーは皆、親衛騎団の恐るべき戦力を食い入るように見つめていた。

 

ヒムの正拳突き

高速で繰り出されるシグマの(ランス)

ブロックの大盾による圧縮(プレス)二連撃

トドメに完全体アルビナスによるハイキック…

 

オーバーキルも良いところである。

その攻撃のどれもに『オリハルコン製』という枕詞が付くのだ。

ドラ以外全員、親衛騎団と戦った時にどうやれば勝てるか無意識に脳内でシミュレーションしているのだろう、じっとりと嫌な汗をかいている。

レオナなどは血の気が引いて顔色が真っ青だ。

 

用は済んだとばかりにハドラーがドラの前に立ち塞がる。

仁王立ちになり右手から出した覇者の剣をドラに突きつけて雄叫びをあげた。

 

「さあ!! 勇者ドラよ、俺と戦えッ!!!」

 

「いや、しないから」

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