ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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あとがきに落書き1点あり


117_決別(イラストあり)

「がふっ…!!」

 

ザムザの体が圧迫され、みしみしという嫌な音とともに肺の中の空気が外に押し出される。

超魔ゾンビに鷲掴みにされ握りしめられたザムザの体は、並の人間や魔族であればとっくに鯖折りになっていたであろう。

そうならなかったのはひとえにザムザが自身の体を超魔生物の実験体として改造していたからに他ならない。

逆に言えば通常死んでいてもおかしくない攻撃を、ザボエラは自分の息子に何の躊躇いもなく与えているのだ。

 

「やめろぉッ!! 自分の子を殺す気か!??」

 

クロコダインが必死の形相で叫ぶ。

この場でザボエラとザムザの関係を知るのはクロコダインのみだったが、その一言で周囲の空気が凍りついた。

突然姿を現した魔族が、まさか敵の幹部(ザボエラ)の息子だとは誰も思っていなかったのだ。

しかも、再会した我が子を躊躇なく殺そうとするなど…

情に厚いバダックや息子を溺愛しているバウスン、純粋なチウが目の前の光景を見て信じられないという表情をした。

 

「…んん?」

「が…ッ!! ヒュッ…ゲホゲホッ…!!」

 

その視線に気がついたザボエラがザムザを地面に叩きつけた。

背中をしたたかに打ち付けたザムザが内臓の痛みを必死に堪えて息を吸い込む。

涙目でひゅうひゅうと呼吸を繰り返して、ザムザは超魔ゾンビの中から顔を覗かせたザボエラを見つめた。

 

ザボエラを見るその瞳には一片の憎しみも含まれていなかった。

それを感じ取ったクロコダインの胸が締め付けられる。

 

「はぁっ、はぁっ…!

父上…もうおやめください。

方法など他にいくらでもありましょうに…!

命じていただければ、父上に代わり私が人間に手を下しても構いません。

しかし…超魔ゾンビ(それ)は…

味方を殺し、その死骸を兵器として扱うなど…!

 

正気の沙汰とは思えません!! がはぁッ…!!」

 

「ザムザ!」

 

「う、うぅ…」

 

ザムザの体が宙を舞う。

超魔ゾンビに蹴られたザムザの体はもはや満身創痍だ。

 

「ち、父上…」

 

口から血を吐いて懇願するザムザ。

ザボエラはそれを見て耳をほじり出し、抜いた指に息を吹きかけた。

わざと煽っているのではなく心底どうでもよさげな態度だ。

 

「何を言うかと思えば…ワシに代わり、じゃと?

 

この…ゴミクズめがぁッ!!!」

 

「父上…ッ」

 

「そもそもお前が失態を犯したせいでワシがこんな重労働を強いられておるんじゃろうが!?

その上、ワシの研究成果であるこの『超魔ゾンビ』を愚弄するとは…!?

貴様、何様のつもりじゃあッ!!!

どうやら捕まっとる間に勇者どもに影響されて頭がおかしくなったようじゃの。

 

よいか、科学者に道徳や倫理など無用の長物。

重要なのは優れているか、いないか、この二つだけじゃ!

貴様のように科学に道徳を持ち込むような無粋の輩はもはやワシの息子などではないッ!!

二度と生意気な口が聞けぬよう、この場で制裁してくれるわぁッ!!!」

 

「ヒッ…!!」

 

「やめろぉッ!!!」

 

「ぬぅ…!?」

 

倒れ伏しているザムザと超魔ゾンビの間に割って入ったノヴァが闘気の剣(オーラブレード)で振り下ろされた拳を防いだ。

オリハルコンをも切断するオーラブレードでさえ超魔ゾンビには通用しない。

剣だけでなく全身に闘気を纏わせて何とか持ち堪えているが、早くも限界を迎えていた。

 

「ぐうぅッ!」

「な…!? なぜ貴様が俺を…!?」

「ノヴァ…!!」

「チィッ!」

 

今にも押し潰されそうな我が子に取り乱すバウスン。

それを見たロン・ベルクが舌打ちをして超魔ゾンビの腕を下から槍で突き上げた。

まったくダメージは入っていないが、それでもほんの少し出来た隙に風のようにするりと入り込んだビーストくんがノヴァとザムザの二人をその場から退がらせる。

まるでお手玉のようにポンポンと投げられた二人の体をクロコダインが受け止めた。

 

救出されたノヴァを見てバウスンが胸を撫で下ろす。

傷だらけになったザムザに慌ててチウが駆け寄り、尻尾をフルフルと震わせながら薬草を手渡した。

チウを一瞥したザムザは、手渡された薬草を見つめた後それを素直に口に放り込んだ。

薬草と、改造した肉体の再生能力で回復したザムザは隣にいるノヴァに向かって疑問を投げる。

 

「貴様…なぜ俺を助けた?」

「…お前を助けたのは、僕が勇者だからだ」

「質問の答えになっておらんぞ。

俺は貴様ら人間の味方になった覚えはない。

それ以前にお前たち人間を散々痛めつけた魔族で、憎むべき相手であろうが。

お前が俺を助ける道理がどこにある」

 

ノヴァは重ねられた質問に、真っ直ぐにザムザの目を見て答える。

ザムザの諦観に染まった瞳とは対照的に、ノヴァの瞳には信念という名の星が輝いていた。

 

「…目の前で傷付いている人がいたら救う、それだけだ。

それが人でも魔族でも怪物(モンスター)でも関係ない。

勇者アバンや、勇者ドラは救うものを種族なんかで分けたりしない。絶対に。

僕だって彼らと同じ、勇者だ…!

お前を助けたのは僕が『勇者』の名に恥じない人間でいたかったからだ!

これで質問の答えになったか!?」

 

納得したのかしていないのか、一言「ふん」と言ってザムザは立ち上がってスタスタと歩き出した。

 

「回答としては及第点と言ったところだな」

「な…!?」

 

結構良いことを言ったのに上から目線で返され憤慨するノヴァ。

武器も持たずに超魔ゾンビに向かっていくザムザをノヴァは止めようとしたが、クロコダインとロン・ベルクにそれを制される。

訝しげに二人を見ると、黙って見ていろと目が言っていた。

一体何が始まるのか…ノヴァはいつでも助けに入れるよう剣を固く握りしめながら、背筋をピンと伸ばして歩くザムザを見た。

 

「父上」

「はぁ〜…もうよい、お前の相手などしているほどワシは暇ではない。

とっととこの魔法陣を壊してバーンパレスに戻…」

「父上! あなたは間違っている!!」

「あぁ!?」

「俺の研究成果は、命を冒涜するために築き上げたのではない!!

俺は…俺はただ、あなたにたった一言「よくやった」と…

さすが我が息子よと褒めてもらいたかっただけだ…!

 

超魔生物の研究は…ハドラー様とご自分、引いては魔族をより高みに導くためのものだと…そう思っていたのに。

 

なぜです、父上…

なぜ味方を、自分以外の命を道具のように扱うのですか…?

父上がそうまでして得なければいけないものは一体何なのです…!?」

 

「得たいものぉ? そんなもの決まっておろうが。

 

『圧倒的な力』じゃ!

 

一方的に他者をいたぶれる力! それに相応しい地位と権力!

 

それ以外になかろう!!」

 

ザボエラがキッパリと言い切った。

弱肉強食を理りとする魔界に生まれた魔族として、至極一般的な感性だ。

むしろザボエラはザムザが何に対して憤っているのかが理解できない。

 

弱者は強者に尽くす、見返りに強者は弱者を手駒として手元に置く。

自分がバーンにおもねったおかげでザムザは生存を脅かされることなく、平和な地上でのうのうと生きてこられたではないか。

感謝こそされど恨みがましく反抗される理由がわからない。ザボエラは一体どこで我が子の教育を間違えたのかと首を傾げた。

 

そんなザボエラを見つめるザムザの心から、父親に対する僅かな希望が消え失せていく。

 

(最初からわかっていたことだ…父上の心には他者に対する『情』など欠片も存在しない)

 

それでも微かな期待を捨てきれなかったのはただ自分が認めたくなかったからだ。

父親に必要とされていると信じたかった。

そうではないと現実を突きつけられたザムザは深く絶望したが、どろりと重くのしかかるそれを明るい声が吹き飛ばす。

 

『ありがとう』『いてくれて良かった』

 

何十年も繰り返されたザボエラの罵声をかき消すように、朗らかなドラの声が心の内から聞こえてきた。

 

「そうだ、俺はもう不要な存在ではない…

不要なのは父上、あなたのほうだ!!

 

俺だけではない…ザボエラッ!! 貴様の存在自体がこの世界にとって不要だッ!!!」

 

「きっ、貴様〜〜〜ッ!!?」

 

ザムザの体が見る見る大きく膨れ上がり、百種類の生物の特徴を持つ怪物へと変化していく。

激昂したザボエラがザムザに襲い掛かる。が、超魔生物に変身したザムザは超魔ゾンビの攻撃を難なく受け止めた。

怪物同士の激しいせめぎ合いに人間の兵士は手も足も出ず、慌てふためいて魔法陣の中に避難する。

 

超魔生物を上回るパワーを持った超魔ゾンビの攻撃はザムザの体のそこかしこを容赦なく抉った。

呻き声をあげながら、ザムザは体を再生するがザボエラはけたたましい笑い声をあげてザムザの角を、腕を、翼を、次々とへし折っていく。

 

角をへし折られても、掴まれた肉を抉り取られても、ザムザは再生を繰り返し続ける。

同時に腹にある巨大な口から猛毒のブレスを吐き続けた。

 

「ギィ〜ッヒッヒッヒッ!!

無駄じゃよ無駄〜ッ!! ゾンビに猛毒など、効くわけがなかろうが!

そんな事もわからんとは頭が悪いというのは本当に嘆かわしいのぉッ!!

やはり超魔生物なんぞよりワシが開発した超魔ゾンビのほうが何倍も優れておるわい!」

 

「…ザボエラ、生物にあってゾンビに無いものはなんだと思う」

「ふん、負け惜しみか? あるわけ無かろうそんなもの。

ワシが作り上げたゾンビに欠点なんぞ存在せぬわ」

 

ニヤリ、とザムザが片方の口角を吊り上げる。

 

「本当に哀れだな、お前は…

痛みに鈍感というのは確かに強いが、大きな欠点でもある。

生物は痛みを感じるからこそ、敏感に危機を察知してその身を危険から遠ざけるというのに…

自分の体をよく見てみろ」

「!!?」

 

ザムザの体を痛めつけるのに夢中になっていたザボエラが体内から超魔ゾンビの体を確認する。

突き刺さっていた剣や槍は腐食してボロボロと崩れ落ち表面を覆っていた死骸の鎧も溶け皮下にある骨が剥き出しになっていた。

ザムザの猛毒のブレスは強力な酸性を伴う。

間近でそれを浴び続けた超魔ゾンビの体は今や崩れ落ちる寸前だった。

 

「それがどうしたぁッ!!

この程度のダメージ、材料を補充すればいくらでも修復可能じゃわいッ!

いくぞ…超魔合成ッ…」

「誰か! 炎を!!」

「おうッ!! 焼けつく息(ヒートブレス)!!!」

「ギヒャアァァァッ!??」

 

超魔ゾンビが元々持っていた猛毒とザムザの吐いた酸が溶け合い発生したガスに引火して巨大な火柱が立った。

炎は谷底に溜まっていた猛毒のガスにも引火して、超魔ゾンビを中心に大爆発が巻き起こる。

大破邪呪文(ミナカトール)の魔法円の中に避難している者たちはフローラを中心に身を寄せ合い、防御光幕呪文(フバーハ)を幾重にもかけて身を守った。

 

爆発がおさまり、もうもうと舞い上がった煙が晴れる頃には谷に残っていた数多の怪物(モンスター)の死骸は綺麗さっぱり燃え尽きていた。

超魔ゾンビの体からブスブスと煙があがる。体内の毒素に火が着いたのか、修復出来ていないボロボロの体のあちこちから毒煙が噴出していた。

 

「おッ…おのれぇぇ…!!」

 

「なっ…あれでもまだ倒れないのか!?」

 

そう、ボロボロの体になってもなお、超魔ゾンビは倒れてはいなかったし体内にいるザボエラは無傷だった。

剥き出しの骨に肉片が垂れ下がり、体中から煙をあげて迫ってくる怪物は正しく地獄から来た化け物の姿であった。

あまりの恐怖に歴戦の戦士達も皆、顔面蒼白になる。

 

「フッ…実の子を殺そうとするクズだが、そのしつこさだけは本物だな」

 

「ロン・ベルク…貴様、その剣は…!?」

 

いつの間にか魔法円の外に突き刺さっている二本の剣を前に、ロン・ベルクが超魔ゾンビの前に立ちはだかる。

それを引き抜いたロン・ベルクは左右の手に無骨な剣を携えて見た事も無い構え方をとった。

二本の剣に闘気がほと走り、刀身が獰猛なまでの殺気に満たされていく。

無機物であるはずの剣がまるで制御不能な怪物に見える。その時になって初めて、ザボエラの頭に「撤退」の二文字がよぎった。

 

「あ…ありえん!! たかが剣二本でこの超魔ゾンビを倒すなど…

いかにロン・ベルクといえど出来るはずがない!!

ハッタリ…そう、きっとハッタリに決まっておるッ!!

どうじゃ!? 図星じゃろうッ!!!?」

 

「どこまでも腐りきった奴だ…その澱んだ目には自分以外、いいや、己でさえ何も映していないんだろうよ。

並大抵の攻撃ではお前の魂ごと、地獄に叩き落とせん!

餞別代わりに俺の最強奥義をお見舞いしてやる…ありがたく思え!! いくぞッ…

 

星皇十字剣ッ!!!!」

 

「ウガアアアァァアアァッ!!!!」

 

大地を蹴って斬りかかったロン・ベルクの剣は空中で交差し、超魔ゾンビを四つの肉塊に断裂した。

ロン・ベルクが着地すると同時にズシャリと崩れ落ちた超魔ゾンビの体から飛散した血液が、乾いた地面を青く染め上げる。

やがて超魔ゾンビの残骸を青い炎が包んだ。体内に残っていた火が空気に触れて燃え広がったらしい。

 

敵ではあるが、ザボエラに殺されて死骸を利用された怪物(モンスター)達を憐れに思っていた幾人かの兵士はその光景を食い入るように見つめた。

何の手向も出来ないが、全てを残さず焼き払う炎は弔いとしては十分だろう。

ノヴァを始め、大勢の戦士達がロン・ベルクを囲んで肩を叩き笑い合った。

 

バーンパレスへの道は死守した。

フローラは大きく安堵の息を吐いて、勝鬨の中心にいるロン・ベルクとノヴァを見て微笑む。

 

(あとは体制を整え次第応援を送り、その後は勇者達が大魔王バーンを倒すことをひたすら祈るのみ…)

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…!」

 

歓声が徐々に遠のいていく。

全身を焼かれてなお、なんとか動く両腕だけでザボエラは文字通り這う這うの体で逃げていた。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…ゲホッ!! クソッ、なぜじゃ、なぜこのワシが…!?」

 

敗北した原因が己にあるとは考えず、この状況になってもなお責任を他者になすりつけてザボエラは怨嗟の声をあげる。

 

「元はと言えばドラの…いいや、それよりもあのバカ息子のせいじゃ!

あやつが下手を打たなければワシは今頃…!!」

 

ブツブツと恨み言を吐きながら、どこへ逃げるか、失態をどうやって誤魔化すかを必死に考える。

そんなザボエラの前に立ち塞がり、影を落とす人物が一人…

 

「父上…」

 

「きッ、貴様…ッ! 育ててやった恩も忘れ…」

 

超魔生物の姿を解いて目の前に現れたザムザに呪詛を吐こうとしたザボエラだったが、咄嗟にその口を噤んだ。

 

(いや、待てよ…

此奴を利用すればまだ望みはある!

ワシの役に立つよう徹底的に躾けてきたんじゃからな!!

改心して弱りきった父親を此奴は見捨てられんじゃろうて…)

 

「おお…ザムザよ! ワシが悪かった!!

いつだってお前はワシを支えようと必死に働いてくれていたというのに…

お前が敵に捕らえられたと知ってからぐっすりと眠れたためしなぞ無かった。

嘘ではない、我が子の無事を願わぬ親がこの世におるものか!!

 

先程お前に辛く当たったのはバーン様の監視の目を欺くための嘘じゃ!

あの時ワシがどれほど心を痛めたか、想像も出来ぬであろう…うっ、うぅっ…!

 

ザムザよ…これだけの失態を犯してしまっては、ワシはもうバーン様にお仕えすること叶わぬ。

お前だけが頼りなのじゃ…魔王軍再起についてはワシが進言してやろう。

これからはお前が魔軍司令補佐としてミストバーンの側近になるのじゃ!

ワシは隠居して陰ながら見守ることにするわい…

 

ほれ、何をボサっと突っ立っておるザムザよ。

早うワシと共にバーンパレスへ向かおうではないか。

お前のような優秀な息子を持てて、ワシは幸せ者じゃ…!」

 

「父上…」

 

ザムザが屈んでザボエラにそっと手を差し出した。

 

「おお…我が最愛の息子よ!」

 

藁にも縋る思いのザボエラは差し出されたザムザの手に飛びついた。

ザムザの皮膚にザボエラの爪先が食い込む。

隠し持っていた多量の神経毒がザムザの体に流れ込んでいく…

一滴でも体内に入り込めば意識を奪い、意のままに操ることが出来る悪魔のような薬だ。

思惑通りに事が運んだザボエラはニヤリとした笑みを浮かべる。

その顔のまま、意識を失っているであろうザムザを仰ぎ見た。

 

「父上…あなたという人は…」

「なぁッ!? なぜじゃッ!??

貴様、なぜ意識を失っておらん!!」

「お忘れですか、父上…あなたに命じられてその毒を開発したのはこの俺です。

必ずこの毒を使うだろうと思い、あらかじめ解毒薬を服用しておりました」

「キッ…キイィィィーーーーッ!!!!」

 

本当に万策が尽きたザボエラは奇声を上げて暴れ回った。

ザムザはそんなザボエラを心底悲しそうに見つめながら、超魔生物へと姿を変える。

ハッとして正気を取り戻したザボエラは最後の力を振り絞り地面を掻きむしって逃げようとした。

 

「いっ、嫌じゃ!! ワシはこんなところで終わらんぞ…!

ワシはま…ギャァッ…!!」

「………」

 

苦しまないよう、一息に…ザムザは左手の大きなハサミでザボエラにトドメを刺した。

 

「………」

 

体内にあった数百種類もの毒が、宿主を失った事で互いにぶつかり混ざり合ってザボエラの体を溶かしていく。

超魔ゾンビ同様、跡形もなく消えていく父親の亡骸をザムザは無言で見下ろした。

 

「…大丈夫か」

 

声に驚いて振り返ると軍団長時代に見知ったクロコダインがザムザを心配そうに見つめていた。

クロコダインの傍には彼同様、こちらを憐憫の目で見つめる老兵もいる。

憐れんだ視線が気に食わず、ザムザは「同情はいらん」と吐き捨ててスタスタと歩き出した。

 

それを強がりと取ったのか、クロコダインもバダックも自分の手で父親を討ったザムザに何と声をかけていいのかわからない様子だ。

ザムザはピタリと足を止め振り返らないまま口を開いた。

 

「性根の腐りきった人だった。

敵味方関係なく使い捨ての道具としか見ていない、最低のクズだった。

 

父の犯した罪は膨大だ…加担した俺にも責任がある。

人間の味方はしないがドラの力にはなろう…それが命を粗末に扱った、父と俺の償いだ。

 

…ザボエラは…父は最後の最後まで、欲しいものを求め続け決して諦めたりはしなかった。

その一点だけは息子として誇りに思う」

 

「そうか…うむ!」

「っかあ〜〜〜! なんちゅう良い子じゃ!!

あんな腐りきった根性の妖怪ジジイのもとに、こんな良い息子が生まれるとは!

きっと今頃地獄で地団駄を踏みながら後悔しておるじゃろうよ!!」

 

クロコダインとバダックが皆がいる方角に向かって歩き出したザムザの後に続く。

谷に戻った二人は突然現れたザムザが敵ではないと皆を説得したり、恐怖で尻尾の先まで固まるチウを宥めたりと、忙しく動き回ったのだった。




前々回の落書き他
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