ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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お久しぶりです、更新に間が空いてしまって申し訳ありません。
寒さに当てられて体調を崩していました。デルムリン島に移住したい…( ; ; )
まだまだ寒さが続くようなので皆様も体調にお気をつけくださいませ。

あとがきに落書き2点あります。


120_黄泉返り(イラストあり)

「マザードラゴンッ!!!」

 

「くっ…」

 

瞬間移動で何とか直撃は免れたが、銀色に輝くドラゴンは異空間を縦横無尽に駆け巡りながら真空の刃を振り撒いていく。

ただの真空波ならばキルバーンにとっては微風も同然。大鎌の一振りで対処できる。

 

「厄介な…! 竜闘気(ドラゴニックオーラ)か…!」

 

ちぎれかかった腕を即座に修復してキルバーンが忌々しそうに呟いた。

ドラが放ったマザードラゴンはどうも魔力だけで形成されているのではなく、圧縮された闘気と合わさって形作られているらしい。

魔力による真空波と闘気による衝撃波、魔法攻撃でありながら同時に物理攻撃でもある、まさに必殺技と呼ぶにふさわしい一撃だ。

 

大鎌を高速回転させてマザードラゴンを何とか防ぎきったキルバーンは大魔王バーンのみが成し遂げた究極の火炎呪文であるカイザーフェニックスを思い出した。

ドラの放つマザードラゴンも、大魔王バーンが放つカイザーフェニックスも、見た目の優美さとくらってみて初めてわかる陰湿さがそっくりだ。

 

「小娘、本当にバランの娘か!?

そのひねくれ具合、むしろバーン様にそっくりだよ」

 

「ひきゃあああぁッ!! 今すっごい鳥肌立った!!

アレに似てるとか冗談じゃないわよ極大爆裂呪文(イオナズン)ッ!!!」

 

「ぐぁッ…!!」

 

暴風の次は爆風がキルバーンを襲う。

凄まじい衝撃波が異空間を駆け巡り仕掛けておいた(トラップ)もファントムレイザーもほとんどが吹き飛ばされていった。

 

(近接戦闘にさえ持ち込めれば…!)

 

魔力は強大だが体力は紙同然のドラは物理拘束に弱い。

爆風と異空間に漂う霧の間に潜んでじっと反撃のチャンスを窺っていたキルバーンは新月の夜を模した薄暗い空間の中、うろうろと彷徨う人影に音も無く大鎌を振り下ろした。

しかし…

 

キィンッ!!

 

「な…!?」

 

硬質な音とともに大鎌が弾かれる。

そこにいたのはドラではなく審判であるはずのジャッジだった。

死神の大鎌によく似た鎌を両手に持って、三つの目を細めてまるで笑っているようにカタカタと肩を揺らしている。

 

「馬鹿な…! 確かにこの気配はドラのもの…変身呪文(モシャス)か!?」

 

そう、ドラは変身呪文(モシャス)によって見た目も性能もジャッジそのままに変身したのだ。

 

「何をするかと思えば…

その場しのぎにしかならないと分からないかい?

軽率短慮、戦略の欠片もない。

だから子供は嫌いなんだ!」

 

キルバーンは大鎌を捨て、どこからともなく(サーベル)を手にして狙いを定める。

 

(なるほど、ジャッジに変身すれば僕の攻撃を少しは凌げるだろう。

古代の技術によって作られたジャッジは特殊な素材で出来ている。

当然防御力も、生身のそれとは比較にならない)

 

だがしかし、所詮は古代の遺物(こっとうひん)だ。

経年劣化でかつての強度も今は無きに等しい。魔界でも指折りの実力者であるキルバーンならば容易く破壊出来る。

さらに加えて、ジャッジの姿ではドラの最大の武器である「魔法」は使えない。

変身呪文(モシャス)を解いて元の姿に戻ろうとしても無駄。変化が解ける瞬間に生じる隙を逃すほど、死神は甘くない。

 

どう考えても、ジャッジに変身した時点でドラの敗北確定なのだ。

 

「もらったぁッ!!」

 

キルバーンの剣は目にも止まらぬ速さでジャッジの喉元を貫こうとしたが、キルバーンが持っている物よりもひと回り小さいジャッジの鎌がそれを阻んだ。

しっかりと握られた鎌の柄に阻まれた剣はそれでもなおその威力を落とさなかった。

が、若干軌道がズレた剣はジャッジの耳と思しき部位と肩の装甲を粉々に砕く。

 

変身呪文(モシャス)は姿を変じる呪文、術者自身の体力を上げるような効果はない。

致命傷ではないが、ドラを行動不能とするには十分な一撃だ。

フ…とキルバーンを遠隔操作しているピロロの口角が片側だけ冷たく吊り上がる。

 

その時だった。

 

ビーッ ビーッ

 

『行動不能! 行動不能!

ジャッジに対する反則攻撃を確認!

キルバーンを反則負けとみなす!』

 

「!? な…ッ!?」

 

果ての見えない異空間にけたたましい警告音とジャッジの声が響き渡る。

三つの目が赤く点滅し、動きを止めて警告音を鳴り響かせている姿は不気味の一言だ。

初めて見るジャッジの姿にピロロの背筋が凍りつく。

 

ビーッ ビーッ

 

「今度は何だ!?」

 

『ドラの戦闘不能を確認!

勝者、キルバーン!

ルールに則り敗者ドラの首を刎ねる!』

 

ドラが化けたジャッジではない、勝負を見守っていたオリジナルのジャッジが敗者の名を告げたのだ。

オリジナルのジャッジが偽ジャッジの首に鎌を沿わせる。

偽ジャッジ…ドラはなおも変身呪文(モシャス)を解かず、そのままあり得ない呪文を唱え始めた。

 

「メ・ガ…」

 

「こ、こいつ…! まさか相打ち覚悟か!??」

 

オリジナルのジャッジにも当然自爆機能はあるが、それはキルバーンが手を加えて好きに操作出来るようにしていた。

しかし偽ジャッジの主導権はキルバーンに無い。

ジャッジが唯一使用可能な呪文、自己犠牲呪文(メガンテ)をドラは自由に使えるのだ。

 

安全な場所で成り行きを見ていたピロロは血相を変えてキルバーンを操作した。

今まさにドラの首を刎ねようとしているジャッジを停止させ、即座に異空間からキルバーンを離脱させる。

 

「ン…」

「…ッ!!? 本気で自爆する気か…クソッ、その手を離せ!!!」 

 

いつの間にかキルバーンの足を掴んでいたジャッジの手…

その手を叩き斬ろうとキルバーンが剣を振るう。しかし振った剣はその手を斬り落とす事なく虚しく空を切った。

 

元々胴体と繋がっていない、手首だけが宙を浮いているジャッジの手だ。

ぐるんと回り込みあっさり持ち手の位置を変えてキルバーンの一太刀を回避する。

偽ジャッジの表情は伺えない。だというのに、ドラが邪悪な高笑いを上げている様がまざまざと浮かんできた。

 

 

現実世界にいるピロロの目の前に現れた、異空間へと繋がる穴からキルバーンが顔を出す。

その手を引っ張りながら、ピロロは頭を必死に回転させた。

 

(かくなる上は人形(キルバーン)の上半身が現実の空間に出た瞬間に空間を閉じる他ない…!

かなりの痛手だが黒の核晶(コア)が爆発するよりマシだ!!

ああチクショウ…ッ!! これはバーン暗殺の切り札だってのに…!)

 

キルバーンの上半身がずるりと現実の空間に這い出てきた。

 

「小娘…ッ!! 死神を相手取って自分の命を天秤にかけようだなんてふざけた真似を!!

最大氷結呪文(ヒャダイン)ッ!!」

 

異空間の向こう、キルバーンの足にしがみついているドラにピロロは渾身の最大氷結呪文(ヒャダイン)をお見舞いする。

瞬間、ピロロはキルバーンの下半身を切り捨て異空間へと繋がる穴を塞ぎにかかった。

現実の空間では閉じていく空間に断ち切られたキルバーンの上体がゆっくりと落下していく…

 

地面に落下したキルバーンの上半身を抱えたピロロは、額に埋められている黒の核晶(コア)に異常がない事を確認してようやっと胸を撫で下ろしドッと汗を垂れ流した。

ヒッヒッ…、と引き攣った喉を酸素が通るたびに情けない音が漏れ出てくる。

 

ピロロが呼吸とかき乱された思考を整える間を整える間も無く、ほんの僅かに残された異空間の割れ目から物凄い爆音と業火が噴き出してきた。

防御膜を展開して自身とキルバーンを保護し、ピロロは大きな一つ目の中に流れ落ちそうな汗を袖で拭う。

 

(小娘め、自己犠牲呪文(メガンテ)を唱えて死んだか)

 

殺風景な石造りの空間いっぱいに広がった炎は、一向に鎮火する様子を見せなかった。

おそらくキルバーンの体内に流れていた魔界のマグマが燃料になってしまったのだろう。

四方八方を炎に囲まれる…まるで作り上げた(トラップ)の中でも最大の自信作、◇の9(ダイヤナイン)を想起させる光景にピロロはギリギリと唇を噛み締めた。

 

「クソッ、クソッ…!

ドラが自分の命をああも簡単に手放すなんて大誤算だ…!!」

 

ドラはキルバーンが黒の核晶(コア)を持っていると知っていた。

おそらくその威力も。

軽く大陸を吹き飛ばせるほどの兵器だ。異空間で爆発してもバーンを巻き添えに出来ると踏んだか。

 

…それか自分の死を知ったバランが必ずバーンを討つという目論見があったか…

何にせよ、だ。

 

(ドラゴン)の騎士の血を手に入れ損ねた…ヴェルザー様に何て申し開きしたものか。

いや、それよりも先にバーンだ…ああ、チクショウッ!!」

 

とかく、こうなったからには雲隠れするしかないだろう。

一旦『キルバーン』は死んだ事にして、隙を突いてバーンと残されたアバンの使徒、それにバランを死守した黒の核晶(コア)で亡き者にするか…

 

「こうなったからにはせめてバーンだけでも暗殺しなければ…

死神の名折…れ…!?」

 

突然その身の自由を奪われたピロロがギョロギョロと大きな一つ目を泳がせる。

ガッチリと締められた首と胴、状況を飲み込めないピロロの耳にくすくすという笑い声とともに囁き声が落とされた。

 

「ダメじゃない、死神なら、ちゃんと黄泉の国まで死者を送り届けなきゃ。

じゃないとほら、こうして黄泉返ってくる…!」

 

燃え盛る劫火の中、左半身を夥しい流血で真っ赤に染め上げたドラが、まるで羽虫のようにバタバタと踠くピロロを見下ろして嘯いた。

 

 

 




マトっぺとドラっちは時間があればよくお喋りして遊ぶ仲です。
だいたいポップとマァムとメルルとか、ヒュンケルとエイミさんを尾行して影から見守ってます。

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