ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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122_知らなかった? ○○からは逃げられない…!

「なんだ!? 今の爆発は!?」

「大魔王と勇者の戦いが始まったみたいだよん…ワシらが行くまで持ち堪えててくれるといいが…」

「い、急いでみんなのところへ向かいましょう!!

パピィ! ドナドナ! バタコ! 全速力だ~~~っ!」

 

「クワァっ!」「キィ!」「ビビーッ!」

 

獣王遊撃隊がクロコダイン、ビーストくん、チウを足にぶら下げて必死に翼を羽ばたかせた。

爆発音に怯える隊員達に向かってチウが「頑張れ! 誇り高き獣王遊撃隊の名が泣くぞ!」と喝を入れる。

そうして乗り込んだバーンパレス、遠目に見える天魔の塔はドーム型の天井が吹き飛び激しい炎に包まれていた。

 

まるで天に火を捧ぐ巨大な燭台だ。

現実感が湧かない光景に一瞬見惚れてしまいそうになったが、そんな場合ではない。

我に返ったクロコダインがブロキーナとチウを肩に担いだ。

 

「二人とも、しっかり俺に掴まっていろ!」

「わわっ」

「了解、しっかりつかまってるよ〜ん」

 

大きな耳に爆発音が届くたび、全身にふるふると震えが走る。

振り落とされないようにしがみつきながらチウは片手でこっそりと自慢の尻尾を握り締めた。

ロモス武術大会の屈辱をバネに修行し直し心も体も鍛え直した…強い敵を前に怯えていたかつての自分とは違うのだ!

気合を入れ直した尻尾は手を離しても、少しも震えず真っ直ぐ立っている。

 

その様子を見たクロコダインとブロキーナは、これまたチウに気付かれないように口元に笑みを浮かべた。

 

 

爆裂呪文(イオ)!!」

「なんの! こっちだって中級爆裂呪文(イオラ)!!」

閃熱呪文(ベギラマ)!!」

極大閃熱呪文(ベギラゴン)ッ!!」

 

バーンが呪文を唱えるといくつもの光球が出現しドラへと向かっていく。

ドラも負けじと対抗して呪文を唱えると、出現した無数の光球はバーンが生み出した光球目掛けて空中を飛び交った。

ぶつかり合った光球から爆風と閃熱が巻き起こり、天魔の塔を容赦無く削ぎ落としていく。

 

「カイザーフェニックスッ!!」

 

カイザーフェニックスが爆発と閃熱を吸収し、纏う炎を膨らませながら突進してくる。

 

呪文返し(マホカンタ)!!」

 

「何ッ!?」

 

自身の呪文をそっくりそのまま跳ね返されたバーンは為すすべもなく膨れ上がった火の鳥に飲み込まれ、仰向けにどうと倒れ込んだ。

当然、バーンがその程度で死ぬはずがないとドラは確信している。

間髪入れずに、燻って横たわる大魔王めがけ竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にして必殺技を叩き込んだ。

 

「アバンストラッシュッ!!」

 

「…最大回復呪文(ベホマ)!」

 

「ぐっ…!?」

 

一瞬で復活したバーンが光魔の杖でアバンストラッシュごとドラを受け止める。

魔力を攻撃力に変換出来る光魔の杖…しかも攻撃力に上限はなし、魔力を注げば注いだだけぐんぐんパワーアップしていく。

 

悲しいかな、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にしてもバーンとドラの攻撃力の差は歴然。さながら子供と大人、チウとクロコダインだ。

魔力を注ぎ込み攻撃力を上げた杖でバーンはドラを乱暴に薙ぎ払った。

 

「きゃああっ!!」

 

「フッ、呪文返し(マホカンタ)まで使えるとは…

習得出来る魔法使いはごく稀…加えて余のカイザーフェニックスを跳ね返すほどの呪文返し(マホカンタ)を行使したのはそなたが初めてだぞ、ドラ」

 

バーンが光魔の杖にさらに魔力を注ぎながら言う。

 

「何それ、褒めてるつもり?」

 

余裕綽々といった表情のドラだが、内心焦りまくっていた。

 

(まずいまずいまずい…! 魔法勝負なら互角の自信あるけど物理攻撃で来られたら負ける気しかしない…!!)

(姐さん洒落になってませんぜ!! なんで仲間と合流せずに単独でバーンに特攻仕掛けちまったんですか!?)

(だってえぇぇ! ピロロの能力でバーンのいる場所まで直行できるってわかっちゃったんだもん!!

油断してるとこ襲えばワンチャンいけるかなって…)

(ただでさえ自己犠牲呪文(メガンテ)唱えたダメージ引きずってる時にやる事じゃねぇですって!!)

(違うもん。あれは自己犠牲呪文(メガンテ)じゃなくて自己犠牲呪文(メガンテ)っぽく見せかけた極大爆裂呪文(イオナズン)だもん。

…キルバーンの血液に引火してほぼ自己犠牲呪文(メガンテ)になっちゃったけど)

(魂を通じて聖母(マザー)の姐さまと大姐さんの絶叫が聞こえましたぜ…)

 

「てへっ☆」と、笑って誤魔化すドラにリュミベルが小さく溜息を吐いた。

ドラとリュミベルが念話で言い合っている間もバーンは静かに攻撃力を高めている。

呪文合戦に持ち込んでバーンの魔力を削るつもりでいたが、底が見えないとはこの事か…

 

(魔力切れに持ち込むには相当粘らないと…

………無理! その前に私の体力尽きちゃう!!)

 

「こうなったら…一旦退却!! 飛翔呪文(トベルーラ)ッ!!!」

「合点でさぁッ!!!」

 

「……知らなかったのか…?

大魔王からは逃げられない…!!!」

 

「ふぎゃんッ!!!」

 

結界に頭を強かに打ち付けたドラがひょろひょろと落下する。

 

「ふおぉぉぉ…わ、忘れてたぁ…結界あるんだったぁ〜!」

「しっかりしてくだせぇ姐さんッ!! 来てる! バーンすぐそこまで来てますって!!」

 

焦っていたとはいえ自業自得なダメージを負ったドラが床にへたり込みすんすんと泣きべそをかく。

 

「どうした? もう降参かね?」

 

涙を拭って顔を上げると、バーンが振りかぶるようなポーズで光魔の杖を構えていた。

 

「はああ!? 泣いてる女の子に向かって攻撃するとかサイッテーーーッ!

美少女が泣いてたら普通慰めるでしょ!? このクソジジイッ!!

 

…ぐう、出来ればこの手は使いたくなかったんだけど…!」

 

「カラミティウォール!!」

 

「あ゛ーーーッ!??」

 

かいた泣きべそを引っ込める間も無く、顔のあちらこちらから水分を垂らしてドラは床に転がっていたピロロに向かい一直線に走り抜けた。

迫り来る衝撃波に吹き飛ばされそうになっているピロロを掻っ攫い、走りながら叫ぶ。

 

「ちょっと! いつまでも呑気に気絶してんじゃないわよ!!」

「うががっ…!?」

 

ダメージを受けてボロボロのピロロを無理やり叩き起こし、ドラはピロロの帽子の中に隠していた『ある物』を取り出した。

津波のように差し迫ってくるカラミティウォールを前に、バーンがいる方向目掛けてそれを勢いよく放り投げる。

その時、意識を取り戻したのか手に持っていたピロロがドラから逃れようと手足をバタバタと必死に動かし始めた。

はくはくと口だけを動かして、青かった肌が紫色に変色している。

 

「く、黒の核晶(コア)…!! なんで…!?」

 

刷り込み(インプリント)ッ!!!

お前の能力でどうにかしろッ!!!

早くしないと爆発に巻き込まれて死ぬわよッ!!」

 

「チ…チックショーーーーッ!!!!」

 

原作でも黒の核晶(コア)を起動させて10秒以内に逃げようとしていた奴だ。

瞬間移動なり、異空間に身を隠すなり、何か策はあるだろうと踏んでドラはピロロの脳天に全力で刷り込み(インプリント)を叩き込んだ。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)で自分の身だけを守ることも考えたが、それだとバーンパレスにある他の黒の核晶(コア)にも誘爆してしまう。

ドラはバーンの結界に重ねるようにして、竜闘気(ドラゴニックオーラ)と魔力で多重結界を構築し天魔の塔だけを覆った。

 

カラミティウォールが黒の核晶(コア)に接触する寸前、衝撃波の隙間からバーンの顔がちらりと見えた。

 

「あっはは…! 大魔王のポカン顔なんて見たの、私が初めてじゃない?

自分が把握してなかった爆弾目の前に置かれて今どんな気持ち〜?」

 

瞬時に事態を把握したのか、バーンは瞬間移動で逃げようとするが、そうは問屋が卸さない。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)の結界に邪魔されて、天魔の塔から脱出出来ないと悟ったバーンの顔から表情が抜け落ちた。

 

「逃すもんかはこっちのセリフよ…!!」

 

 

バーンパレスに閃光が走る。

太陽も眩むほどの光が駆け抜けた後、鳴り響く轟音と続いて起きた爆発はバーンパレスだけではなく、眼下に広がる地上と海までをも大きく揺らしたのだった。

 

 

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