ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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13_ロモス王国王城にて

「おお、正義の魔法使いドラよ、よくぞまいった!」

 

ロモス城の玉座の間にてドラ達一行は国王から歓迎の言葉をかけられていた。

 

「国王陛下、お初にお目もじつかまつります。我が師アバンより魔王軍の進撃を食い止めるよう命じられ馳せ参じました。

勇者アバンが末弟子、デルムリン島のドラと申します。

後ろに控えますはわたくしの兄弟子と姉弟子、天賦の才持つ魔法使いポップと、僧侶にして戦士、文武兼備なるマァムにございます。

以後、見知りおきくださいませ」

「うむ、大義である。いつぞやのニセ勇者一行の件、姿は見ずともその類稀なる魔法の才について家臣より聞き及んでおる。

此度の魔王復活、まさしく人類の危機である。そなたの活躍に期待するぞ!」

「かしこまりましてございます」

 

ネイルの村を旅立ったドラとポップとマァムの3人(+ゴメちゃん)は瞬間移動魔法(ルーラ)でロモスまで移動した。

そのまま太陽が真上にある時刻にロモス城へと向かい、門番に「勇者アバンの弟子が3人、魔王討伐に向けて旅をしている。ロモス王に謁見したいが可能か」と聞いた。

最初は子どもが3人、ごっこ遊びか何かかと思われて追い返されそうになったがドラが『パプニカのナイフ』を見せて「パプニカの姫君からも国難の際の助力を命じられて王家の宝を預かっている。もし嘘だと決めつけ追い返そうものなら門番の職を失う事になるが良いか」というような事を言ったら慌てて城内へと走っていった。

 

(パプニカのナイフは本物だし結果的に嘘はついていないからレオナも怒らないでしょう)

 

半刻ほど待たされたが、無事国王に謁見出来るとのことで質素な旅装束のまま壮麗な王城内を案内される一行。

マァムは少しばかり緊張しているが肝が据わっているのだろう。初めて見る典雅な王宮の雰囲気にも気圧されずに堂々と案内役の後ろを歩いている。

対して落ち着かない様子なのはポップだ。普段自分が見ている世界とはもはや別世界と言っていい王宮の雰囲気にビクビクしている。かと思えばあちこちキョロキョロと忙しなく視線を移し、遠目に見える女官や侍女の美しく洗練された仕草にでれでれと鼻の下を伸ばしたりと田舎者丸出しといった(てい)でいるものだから隣にいるマァムを終始イライラさせていた。

ドラはと言うと「造りは大きいけど案外地味というか…中世の古き良きお城って感じだな」と前世の知識を引き合いに出して心の中で感想を呟く。前世で行った博物館、美術館、迎賓館、観光地化した本物の王宮などを思い出しての所感だが圧倒的に文明のレベルが違うのだ。ひき比べられたロモス城が哀れである。

 

謁見に際しても、3人の中では一番年下ながらも落ち着いた様子のドラが一歩前に出て王様の前に(こうべ)を垂れ如才なく受け応えをするものだからポップとマァムは声には出さなかったが心底仰天した。顔には思いっきり出ていたが。

ついこの間までデルムリン島で怪物(モンスター)と一緒に生活していたドラが、一体どこでこんな洗練された口上を学んだのか…

額の紋章の力と言い、あちこちを瞬間移動魔法(ルーラ)で移動できてしまう活動範囲の広さと言い、共に過ごせば過ごすほど謎が深まるばかりである。

ちなみにドラは前世で見た小説や映画のそれっぽいシーンを思い出しながらそれっぽく言っているだけで厳密に言うと別にどこで学んだわけでもない。しかしその身から溢れる上品さやカリスマは見る者が見れば王族の血が流れていると確信させるほど威厳に満ちていた。

 

「国王陛下にお願いがございます。我が師アバンよりロモス王国だけでなく、パプニカ王国他各国で魔王軍の被害が発生していると聞きました。被害状況と、魔王軍討伐に際しての助力を乞い願えないかと…」

 

と、ドラがロモス王を訪ねた理由を述べた時である。

 

ウオオオォォォォォォォォォン………ッ!!!!!

 

「出てこいドラ!! さもなくば…ロモス王国は今日で壊滅だ!!!」

 

慌てて窓の外を見ると大型の鳥獣を操りこちらへ猛スピードで進撃してくる獣王クロコダインと百獣魔団の姿があった。

夥しい数の獣たちが町のすぐ近くまで迫っている。

空から来る魔物たちは猛スピードでこちらに迫って来るが、地上を進軍して来る獣たちはドラが以前仕掛けた刻印(スタンプ)で足止めされている。

 

(前に仕掛けた刻印(スタンプ)、ちゃんと発動してる! モンスターが上を通ったら爆発するようにイメージして構築したけどこれならいくらか足止め…ダメだモンスターの数が多すぎる…! 時間稼ぎにいくらも保たない…!!

でもなんで百獣魔団が…!? クロコダインにかけた刷り込み(インプリント)が解けた!?

いや、あそこまで強力にかけた刷り込み(インプリント)がちょっとやそっとで解けるはずがない!

ましてやクロコダインに!!)

 

さらりとクロコダインの知能を貶したドラ。

しかしあながち間違ってもいない。刷り込み(インプリント)は単純、短絡的な思考の持ち主には効果覿面なのだがずる賢い思考の相手だとすぐに抜け道を見つけられてしまうのだ。

今のクロコダインも『ドラを討ち取る』ではなく『人質を使い脅して生け捕りにする』という目的にすり替えられたからこそ、恐慌状態を継続しつつも気合いで向かってきているのだ。腐っても獣王、その克己心は本物である。

 

「王様!! 今すぐ避難を!! ポップ、マァムも王様を守って!!」

「ドラ!」

「ドラはどうすんだよ!」

「敵の狙いは私だけ! 私なら大丈夫だから…!! ゴメちゃんも安全な場所に!!」

「ピィ〜ッ」

 

ポップとマァム、それにいつもの如く外套に隠れていたゴメちゃんに矢継ぎ早に指示を出す。

ミシミシという音がしたかと思って上を見上げると亀裂が入った次の瞬間、玉座の間の天井が崩壊した。

 

ドオォォォンッ!!

 

ガラガラという音を立てて崩れた天井の瓦礫と砂塵が部屋中に舞う中、獣王クロコダインが地響きを立てて降り立つ。

国王を背に守りながら「王様、お逃げください。マァム、ポップも…」と自分以外を避難させようとするドラにポップが言う。

 

「待て、ドラ、俺は残るぜ」

「ポップ!」

「マァムがいれば王様は大丈夫だ、城の兵士もいる。…今度は逃げねえぞ」

 

一度クロコダインを撃退したドラの実力を知るマァムは指示に従い城の兵士と共にロモス王の避難を優先して玉座の間を出ていった。

反面指示には従わず残ると言ったポップ。

ドラはポップの決意を無下にはせず、こくりと頷き砂塵の中から現れたクロコダインへとロッドを構える。

 

戦斧を手に目を血走らせてこちらを睨みつけるクロコダイン。

だが様子がおかしい、一向にこちらに攻撃をしかけてこない。よく見ると踏み出そうとする足が震えている。

 

「こ、ここにいたか…ドラ…!?

貴様を…大魔王様への献上品にしてくれる…!

ぐ、ぐうぅぅ…」

 

(あれ? 刷り込み(インプリント)が解けたわけじゃない…?

恐慌状態を気合いで抑えつけてるの…!?

 

…獣王クロコダインの戦いに対する気概、舐めてた!

出来れば殺したくはなかったけどもうやむを得ないか…)

 

ドラが最初にクロコダインを殺さなかったのは原作での彼をリスペクトしていたからだ。

しかしここはもう原作とは異なる世界…

目の前にいるのは原作の『クロコダイン』ではない、『魔王軍百獣魔団軍団長クロコダイン』だ。

そう思いドラは覚悟を決めた。

 

ポップが集中して自身の最大攻撃呪文である極大火炎呪文(メラゾーマ)を、ドラがクロコダインのその首めがけて得意の真空呪文(バギ)を放とうとした時である。

意を決した表情のクロコダインが自身の鎧の中から黒い筒を取り出す。

 

「待って、ポップ!! 打たないで!!!」

「ドラ?」

 

突然の攻撃中止の指示に戸惑うポップ。

ドラを見ると今までに見たことがないほど驚いた様相で目を見開いて固まっている。

 

「なんであれが…!?」

 

(嘘でしょう!? まさか竜闘気(ドラゴニックオーラ)で強化した破邪呪文(マホカトール)が突破されたの!?)

 

「…出でよ! デルパッ!!」

「なっ、なんだ…!?」

 

獣王クロコダインが解放の呪文を唱え、黒い筒からモンスターを召喚する。

召喚された鬼面道士(モンスター)、それはまぎれもなく故郷デルムリン島にいるはずのドラの育ての親、ブラス老であった。

 

「さあ行けッ!! 鬼面道士ブラスよ!!」

「おじいちゃん!!」「ピピィッ!?」

「ううう…」

 

妖魔司教ザボエラが水晶玉に映し出された映像を見てほくそ笑む。

ロモス城で今起きている事態を安全な場所から覗き見ているのだ。

 

「ク〜ックックックッ!! 見たか? これが答えじゃよ…!!

子供(ガキ)が絶対にさからえんもの…それは“親”じゃっ!!

あのブラスはもともと鬼面道士…一歩島を出て大魔王様の魔力に影響されれば我が魔王軍の先兵に早変わりする…!!

育ての親に手出しはできまい!? ドラに対してこれ以上の刺客は考えられんて…!!

キィ〜ッヒッヒッヒ!!!」

 

「おじいちゃん!」

「うう…ここは…ドラ? なぜワシはこんなところに…?」

 

「ヒッヒッヒッ…ヒッ…?」

 

「おじいちゃん、魔王軍に誘拐されたのよ!

ごめん、おじいちゃん! 話は後で!! 催眠呪文(ラリホーマ)!」

「うう…ぐぅ…」

「なあっ…!?」

「ポップ、おじいちゃんをお願い」

「あ、ああ、わかった」

 

魔王軍の尖兵、そしてドラに対する人質として連れてこられたブラスだがなぜか正気を失ってはいなかった。

あまりにも予想外な出来事に絶句するクロコダインとザボエラ。

まさか目の前の、一見人間の中にいても最弱の部類に入るであろう少女が魔力の影響力と支配権において魔王級だとは考えも及ばなかったのである。

ドラにより即効で深い眠りの呪文をかけられたブラスはポップの手により玉座の間から連れ出される。

それを確認したドラはスッと姿勢を正しロッドを片手に、まっすぐとクロコダインへと構えた。

空気が張り詰め、ピリピリと肌を刺すような殺気が玉座の間に充満し、窓の外の喧騒がどんどんと遠ざかっていく。

 

「…さて、

 

選ばせてあげるよ。

 

戦って逃げ帰るか、

 

戦わないで逃げ帰るか、

 

さあ、 え ら ん で ?」

 

額の紋章を青く光らせながら怒気を放ち好戦的な笑顔を浮かべるドラ。

その瞳はどこまでも静かに、そして冷たい光を宿していた。

 

 

 




ドラ「殺さないよ?戦死なんて武人にとっての誉だもん。社会的に死ね」

刻印(スタンプ):ドラの魔力が込められた目印用魔法陣兼対怪物(モンスター)地雷。
魔王が復活した時に備えて少しでも進軍が阻止できるようドラがコツコツ仕掛けてた。
爆発だけじゃなくて他にも電流や麻痺とかいろいろできる。便利。

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