「急ぎ伝令! カール北部及びオーザムに避難指示を出しなさい!!」
「「「はっ!!」」」
「追ってオーザム国王に
バーンパレスの動向を逐次報告、各国の主導者に伝達します!」
「「「はっ!!」」」
フローラが矢継ぎ早に命令を飛ばす。
女王フローラの凛々しい声を浴び、恐怖に身を固めていた者達は我を取り戻して動き出した。
カール王国の兵士だけではない。ロモス武術大会の精鋭達、パプニカ三賢者の一人、エイミに北の勇者ノヴァもフローラに負けじと行動を起こしていく。
「こうしちゃいられねぇッ! 俺たちもロモスに戻ってこの事を王様に知らせねぇと!!」
「ボクも父と共に一度リンガイアへ戻ります! 誰か、他に
「待って! リンガイアへ行く前に誰かパプニカまで私を連れて行ってちょうだい!」
「エイミさん!?」
驚いた表情のノヴァに、エイミは悔しそうに「私は
しかし視線を落としたのはほんの一瞬、すぐに顔を上げたエイミは決意の篭った眼差しで、周囲の喧騒に負けないよう声を張り上げる。
「でも、腐っても私はパプニカ三賢者の一人よ!
パプニカへ戻れば気球を飛ばせます…ベンガーナへの伝令役は私に任せて!」
「エイミさん…わかりました! ではパプニカへ着き次第、エイミさんはベンガーナに行ってください!
それとテランにもこの事を伝えなければ…」
「各国と連絡を取るため
バーンパレスは北へと飛び去っていった。
一瞬で視界から消えたスピードを考えると日を跨がずに世界中のどこへでも飛んでいけるだろう。
もはや一刻の猶予もない。
「他に
ゴメスが怒鳴るように叫び、魔法使いのフォブスターが呪文を唱えようとしたその時である。
「キャッ…!! あに゛ゃあ゛あ゛あ゛〜〜〜ッ!!」
「な、なんだあ!?」
大柄なゴメスの肩がビクリと跳ね上がる。
悲鳴というよりは奇声と言ったほうが正しいだろう。
フォブスターも詠唱を中断、ノヴァやエイミも何事かと音のしたほうに顔を向けた。
「ひぃっ…」
誰かが短く悲鳴を漏らす。
悲鳴をあげた人間の視線の先にいたのは誰あろうメルルだった。
しかし明らかに様子がおかしい。ブツブツと独り言を吐きながら、顔を頭ごとだらりと地面に向けてゆらゆらと体を揺らしている。
勇敢さに定評のあるカールの兵士達でさえメルルを遠巻きにして誰一人として近づこうとはしなかった。
がくん…がくり…
低く項垂れた頭を長い黒髪がバサリと覆っている。
ゆっくりとこちらに向かってくる様はまるでブラウン管から這い出てくる某怨霊のようだ。
メルルの口から出た言葉が次のものでなければ魔界から召喚されたゴーストに憑依されたか、あるいは悪魔にでも操られているのかと誤解されたかもしれない。
「あ゛あ゛あ゛…ッ
『メルルちゃん聞こえるッ!? あっ、ちょっとリュウちゃん邪魔しないでよ!』『我を一体なんだと…』
ひにゃあっ!! やっ、やめてくださいドラさん! 竜水晶しゃまも!
ひゃめて! そんなにいっぺんに映像を映さないで!
あたまがあつい、パンクしちゃいまひゅうぅ…
竜しゅい晶しゃま落ち着いて! ああっ!? ひどいれすドラさんそんなむりやり流し込むなんて…!!
お願いだから頭の中で罵り合わないで~~~っ!!」
「メルル!? しっかりしてちょうだいメルルーーーッ!!」
聞き捨てならない言葉が聞こえてきて周囲が呆気に取られる中、ぐるぐると目を回し膝から崩れ落ちたメルルにエイミが駆け寄った。
「うぅ…もう、入りません…」
「メルル! ダメだわ、気絶しちゃった…」
「何があったの!? メルル!? これは一体…」
周囲で様子を伺っていた兵士達をかき分け、気絶したメルルを見たフローラが状況の説明を求める。
どう状況を説明したものかとエイミも兵士達も困惑していると、もう一人意外な人物が人混みをかき分けて近づいてきた。
「おい、そこをどけ。ドラがまた何をやらかした!?」
「ザムザ…さん」
「待って、彼女に何を飲ませる気!?」
「フン、気を失っている人間に毒など盛って何になる。
安心しろ、ただの気付薬だ」
「うぅ…」
意識を取り戻しはしたが、真っ青な顔でえずくメルルにザムザが容赦なく畳み掛ける。
「おい、しっかりしろ。ドラがまた何をしでかした? 簡潔に話せ」
「うぅ…はい…ドラさんが、黒の
竜水晶さまを通して私にイメージを送ってきたんです…」
「黒の
「落下予測地点を竜水晶に映すから、先回りして周囲にいる人たちを避難させろと…うぷっ…
すみません、これ以上は…う、おえぇぇ…
テ、テランに行って竜水晶さま…に……」
「メルル…ッ、また気絶してしまったわ…」
「魔族どころか魔法使いでもない人間の脳にいきなり高出力でイメージを送り込むからだ、あのバカめ。
これ以上ドラの魔力の受け皿になろうものなら負荷に耐えきれず脳の神経が焼き切れるぞ。
この女はしばらく横にして頭を冷やし続けてやれ。可能なら大量に水を飲ませて、体内にあるドラの魔力ごと吐かせろ。
そこの人間ども、話は聞いていたな? 何はともあれテランだ、急げ!」
「「「は、はいっ!」」」
* * * * * * * * *
「もしもしメルルちゃんっ!??
ちょっと、動画送信途中で遮断されちゃったんだけど!!? どういうことリュウちゃん!?」
『たわけ…受信容量オーバーだ…
というか神が作りし宝具たる我を
「動画の一つや二つ1ギガもしないでしょ!! あっ、通話も繋がらない!?
アナログにしてもこれは酷い…!! 神様が作ったんなら世界の危機にくらい役に立ちなさいよこのクソユニット!!!」
『………ッ』
「もしもし!? もしもーしッ!!?
通信切られた…! リュウちゃん~…帰ったら覚えてなさいよ~~~」
竜水晶を通じてメルルに念話を試みていたドラは恨みがましい声で文句を垂れる。
媒体である竜魔石を通じて竜水晶が機嫌を損ねた気配が伝わってきた。
「リュウちゃんっていっつもそう! 機嫌悪くなると無言で不貞腐れるんだから!
生産者に会ったらクレーム付けてAIの人格矯正要求してやる…!」
腕の中の娘が竜水晶を罵る様にバランはなんとも言えない渋い顔になる。
並走していたガルダンディーが主君の珍しい顔が見れたとゲラゲラ笑い声をあげ、直後にラーハルトに小突かれていた。
ドラ達が今向かっているのはバーンパレスの中心、天魔の塔だ。
動き出したバーンパレスを止めるには動力部を壊すしかない、という結論に至ったからである。
(魔力炉は私が壊したはず…と、思ってたけどもしかしたら予備バッテリーか何かがあったかも。
あああ、しくったあぁ~! 魔力炉だけじゃなくてその下にある動力部も壊しておけば…
いや、それやっちゃうと黒の
ぐぬぬ…、と爪を噛むドラにバランが話しかける。
「ディーナ、バーンが生きているといのは
「うん、お父さん」
こくり、とドラがバランの腕の中で頷く。
未だ体力が回復しない娘を横抱きにしたまま、バーンパレスを駆けるバランの額に嫌な汗が一筋流れた。
ドラとバランに追随するディーノ、竜騎衆、アバン、クロコダイン、ビーストくん、それにチウも…
「バーンパレスが動いたという事はバーンは確実に生きている」とドラが断言した事で高まっていた緊張感がさらに高まった。
「とにかく今からでも遅くない…駆動装置を壊してバーンパレスの動きを止めないと…!!」
バーンパレスの中心にある駆動装置は倒壊した天魔の塔の真下。
巨大な円形を模っていて一方向からではとてもではないが破壊しきれない。
ドラとポップ、二人がかりで
よって、ドラを除いたアバンの使徒とアシスタント役のゴメちゃん、ハドラー及び親衛騎団は別働隊で動く手筈となったのだ。
ドラが竜水晶と通信しバランと話している間にも、バーンパレスは物凄い速さで雲を縫って進んでいく。
自分達と同じ高さに浮かんでいる雲がドラ達に湿気と冷気を浴びせながら通り過ぎていった。
幾つもの雲が流れていく中、一際巨大な雲の中を通り抜けた時だ。
通り過ぎていく眼下の景色にドラは違和感を覚える。
「あ、あれ? オーザムを通り過ぎていく…黒の
バーンパレスは一体どこに向かってるの!?」
その問いに答えられる者がいるはずもなく…
そのままリュミベルを握りしめたドラは神妙な面持ちで「もしかして黒の
そうこうしているうちに崩壊した天魔の塔へと辿り着いたドラ達。
バーンパレスの駆動装置に向けて、一斉攻撃をするため皆武器を構えた。
「バーンパレス…出来れば手に入れたかったけど仕方ない…
私の物に出来ないならこんな物に一片の価値も無いわ!!
さあ、みんなで気合い入れてブッ壊すわよ!!!」
「バランさん、この戦いが終わったらお嬢さんの教育方針について少々お話があります」
「………うむ」
ドラを最新スマートフォンとするとダイ大世界の一般人は初期のガラケー程度のスペックしかありません。
20MB以上の動画は受信不可。
あとドラの魔力は例えるならストロングゼロなのでメルルちゃんにしてみればいきなり脳に直接テキーラぶち込まれたみたいになってます。かわいそう。
吐き散らすところポップに見られてないのが不幸中の幸い…