ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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126_一生に一度、あるかないかの…

ドラ達が天魔の塔に到着する直前、別働隊のポップ達は…

 

「まさか俺が魔王と協力する日が来るとはねぇ」

 

アバンと二人で旅をしていた時の自分に言っても絶対に信じないだろう。

駆動装置から響いてくる重低音にかき消されて誰の耳にも届かないと思えたポップの呟きは、しかしハドラーの耳にはしっかりと届いたらしい。

 

「…()だ。

 

かくいう俺も、貴様らに手を貸す日が来ようとは思わなんだぞ」

 

言い返されて、ポップがぎょっとハドラーを見た。二人の間には結構な距離がある。

まさかあんな小さな呟きが聞こえるとは思わなかったポップは、バツが悪いのを誤魔化そうと咄嗟に口を開いた。

 

「て、『手を貸す』だぁ? まるで俺たちが劣ってるみてぇな言い草じゃねぇか。

言っとくけどな、アバン先生とドラに説得されたからし・ぶ・し・ぶ!協力してやってんだからな!!

じゃなきゃ誰が」

 

何も考えず口を開いたせいで、自分でも思ってみなかったほどに荒い口調になってしまったのを内心「しまった」と思う。

ピリピリと張り詰めた空気に感化されてポップ自身気付かぬうちに、随分と気が昂っていた。

抑え込んでいたハドラーに対するもやもやとした感情が、悪態という形になって喉の奥から込み上げてくる。

 

「テメェみてぇな化け…」

「そこまでです」

「ヒィッ!!?」

 

突然耳元で囁かれ、悪態は喉の奥へと引っ込んでいった。

無意識に両腕を上げて降参のポーズをとったポップが視線だけを後ろへやると、顔のすぐそばでアルビナスが冷笑を浮かべている。

触れるか触れないか、ギリギリまでポップに詰め寄るアルビナスは一瞬前まで確かにハドラーの隣にいたはずだ。

 

「ハドラー様を侮辱することは私が許しません。

二度と口が聞けぬよう、この場で首を刎ねてさしあげましょうか?」

「ッ…!!」

 

底冷えのする声にポップの背筋が凍りつく。

 

「よせ、アルビナス」

「ハドラー様…」

「この場に限ってくだらん諍いは無しだ。

ヒム、お前もだ。その拳はアバンの使徒ではなく今はバーンに向けろ」

「チッ」

「ハドラー様の仰せのままに…

命拾いしましたね、魔法使いさん」

 

おそるおそるポップが首を動かしてヒムを見れば『メンチを切る』という表現がピッタリの表情でこちらを睨みつけていた。

彼の肩をシグマがしっかりと掴んでいなければ、今頃オリハルコンの拳がポップの体を貫いていただろう。

 

「ポップ、こんな時に仲間割れなんてしてどうすんのよっ! アンタってやつは!!」

「ギャッ!??」

 

たらりと冷や汗と鼻水を垂らしたポップの頭にマァムのきつ~いげんこつと、レオナの冷た~い視線が降り注ぐ。

ヒュンケルはマァムからげんこつをお見舞いされたポップを一瞥して溜息をついた。

兜に覆われて顔は見えないが、呆れ顔をしているのがポップには手に取るようにわかった。

 

「痛ってぇ~~~!!」

「ピィ…」

 

頭を抑えながら地面に沈むポップをゴメちゃんが心配そうにさする。

 

「ふざけてる場合じゃないのよ!? もうちょっとシャンとしてちょうだい!」

「別にふざけてるわけじゃ…ひぇっ、ちょっ、タンマ! わかった、悪かったって…!

 

…んじゃまあ、ハドラー達と協力するとして」

 

笑ってれば可愛いのに怒るとおっかねぇんだからよ…と心の中でこぼして、ポップは頭の上にいるゴメちゃんに話しかけた。

 

「同時攻撃とか言ってたけど一体全体、どうやってアレを同時に攻撃しろってんだよ?」

 

アレ、とポップが指差した先には巨大なバーンパレスを動かしている、これまた巨大な駆動装置が視界を埋め尽くしている。

今ポップ達がいるのはドラ達から見て左手、バーンパレス右翼に繋がる駆動部側面にあたる場所だ。

ドラ達は正面、ポップ達は側面部から。二方向から同時に放つ攻撃が交差して重なり合うようにする算段だ。

 

「ピィ、ピッピィピピ。ピピピッピィ~」

「『みんなはいつでも必殺技を撃てるように準備して。ドラの合図が来たらボクがちゃんと教えるね!』だとよ」

「ピィ!」

「…よくそいつの言っていることがわかるな、ポップ」

「ん? まあ、そろそろこいつとの付き合いも長ぇしな」

「そうか…」

「アバン先生と二人でデルムリン島に辿り着いた時からの付き合いだもんな。

まだ半年も経ってないはずなのに、なんだか随分昔のことみたいに感じるぜ。

先生の修行受けてた時のドラ、ひでぇ泣きっぷりだったよな~」

「ピィ~」

 

キャッキャッと仲良く昔話に興じる二人にヒュンケルは憮然とした表情になった。

そんなヒュンケルを、隠そうとしても隠しきれない切なげな瞳で見つめるマァム。

複雑になりつつある三人の関係を察して、下衆な笑顔が抑えきれないレオナ。

 

なお、ハドラー達は敵地のど真ん中で甘酸っぱい空気を醸すアバンの使徒を完全に無視し、とっくに攻撃体勢に入っていた。

 

「ブローム…!」

 

ブロックの声にハッと我に帰ったレオナが慌てて「私たちもやるわよ!」と叫ぶ。

 

「チッ! ブロック、何もわざわざ教えてやらなくてもよかったんだぜ?

そいつらの攻撃なんか加わったところで焼け石に水だ」

「ブローム…」

「そうブロックを責めてやるな、ヒム。遠距離攻撃に向かない彼なりにハドラー様のお役に立ちたいのだよ」

「フ…案ずるなブロック。確かに万全とは言い難い身だが、こやつらの力などハナから当てにしておらん」

 

「言ってくれるじゃない! 私たちにだって奥の手があるんですからね」

 

レオナがどこからか金属製の羽根を取り出し、それを勢いよく空中へと投げつける。

五枚の羽根は落下する事なく宙に浮かび、光り輝く五芒星の陣を描き出した。

 

「姫さん、ありゃ一体…!?」

「アバン先生から授かった破邪の秘宝よ。攻撃力を増幅させる効果があると仰っていたわ。

みんな、あの五芒星に向かって技を放ってちょうだい!!」

 

「了解っ!」「承知!」「わかったわ!」

 

「ほう、また面白いものを出してきたな。

能力を底上げする装備品ではなく力を増幅するアイテム…なるほど、奴らしい」

 

ハドラーがニヤリと口角を上げる。

と、その時。

視界の端にチカチカと点滅する光弾が見えた。

 

「来たぞ、ドラの合図だ!」

「全員、構えろ!!」

 

光弾は点滅を繰り返しながら徐々に膨れ上がっていく。

その点滅に合わせてゴメちゃんが「ピッ、ピッ、ピッ…」と掛け声を鳴らす。

 

「おい、ハドラー」

「なんだ、小僧」

 

膨れ上がった光弾がギュッと収縮したかと思うと、次の瞬間激しくスパークして空に光を撒き散らした。

 

「ッピィーーーーーーッ!!!!」

 

「俺たちの力、見くびんじゃねぇぞッ!! 極大消滅呪文(メドローア)ーーーーーッ!!!」

「…!!」

 

ズガアアアァァンッ!!

 

 

「おお~!」

 

皆が全力で放った必殺技の威力にドラがパチパチと手を叩く。

全員同時の複合攻撃ではあるが、中でも特に破壊力が大きかったのはバランのギガブレイクと極大消滅呪文(メドローア)だった。

ギガブレイクが駆動装置の厚い外殻を破壊しヒビを走らせ、極限まで魔力を練り上げたポップの極大消滅呪文(メドローア)は駆動装置に巨大な風穴を開けた。

 

「んん? すいやせん姐さん。

なんだか今、竜闘気(ドラゴニックオーラ)越しにハド公の心臓が跳ね上がった気配が…」

「えっ、嘘っ!? 黒の核晶(コア)の影響!? 爆発しそうな感じ!??」

「いや、そういうんじゃなさそうです。なんつうか驚きと喜びが一緒に来た感覚というか…とんでもねぇ感情の揺れが伝わってきたんでさぁ」

「あっそう、黒の核晶(コア)に影響なさそうならいいや」

 

ハドラーへの興味を一瞬で失くしたドラは爆発を繰り返しながら崩壊していく駆動装置を上機嫌で眺める。

きっとこれを作り出すためにバーンは途方もない時間と労力を費やしたことだろう。胸のすく光景だ。

 

「そうだ、記念に一枚撮っておこう」

 

そう言ってドラが手で作った四角い枠越しに駆動装置を見る。

ピントを合わせようと意識を集中すると、燃え盛る駆動装置の内部で何やら蠢く物を捉えた。

 

「んん?」

 

何かと思いよくよく目を凝らして見れば…それは魔力炉の『根』だった。

どうやら駆動装置の内部に張り巡らされていた魔力炉の『根』が、危機を察知し集結したらしい。

うぞうぞと絡まり合いながら蠢くそれは、まるでタコのような動きで崩壊する駆動装置から脱出してバーンパレスを駆け上がってきた。

 

「きゃああっ!! 何あれ気持ち悪いっ!!

誰かアレ撃ち落としてえぇぇっ!!!」

 

異様な生物が駆動装置から出てきた呆気に取られていたが、ドラの悲鳴で我に返ったバランが蠢く物体に目掛け袈裟がける。

放たれた一閃で真っ二つになった『根』は駆け上がる勢いを落とさぬまま、ドラ達の目の前に来た瞬間ぶわりと熱を発して蒸発していった。

しゅうしゅうと音を立てる蒸気と共に消えゆく『根』から出てきたもの、それは…

 

「きゃっ…!?」

「あ、あれは…ッ!!」

「大魔王…バーンなのか…!?」

 

長く美しい白銀の髪。

雄々しい肉体は戦を司る男神そのもの。

瞳を閉じてはいるが、その美しい相貌にはドラ達の前に姿を現した大魔王バーンの面影が見える。

 

足元に僅かばかり絡みついていた触手を振り払うように一歩踏み出した男は、ゆっくりと瞼を開いた。

ポタポタと全身から水を滴らせながら不敵に笑う男に向かって、ドラが堪らず叫び声をあげる…!

 

「大魔王バーン…ッ!!

 

なんでアンタがそのポジションなの!!?

そういうセクシーな役どころ私が担当するって決まってたでしょう!?

返して! 返しなさいよ! 私の触手チャンスッ!!!」

 

「「「なんて?」」」

 

ツッコミを入れたのは一人ではなかった。

途轍もない威圧感を放つバーンに釘付けになっていたディーノやチウだけではなく、アバンやバランでさえも「触手チャンスとは?」と盛大な疑問符が浮かんでドラに目が行ってしまった。

 

「うっ、うっ、ひどい…巨大な触手に絡まれるチャンスなんて一生にそう何度も無いのに…」

 

ドラは大魔王バーンの足元で消滅していく魔力炉を見てさめざめと泣き崩れる。

飛翔呪文(トベルーラ)で飛んできたポップが飛んできた勢いそのまま、ドラを張り倒すまでの数秒間。

おそらく歴史上一、二を争うほどくだらない理由の悔し涙がドラの瞳から溢れ落ちていった。

 

 

 




ハドラーほどの男が新たな好敵手を見つけた瞬間。
そしてついに真バーン登場。
ヒロインも思わず涙…物語も佳境ですね!
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