ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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バーンパレスがピラァ・オブ・バーンを出来なかった経緯については『98_アバンストラッシュC(挿絵あり)』を参照。
(簡単に説明するとドラの魔力で魔力炉が不具合を起こしてたので今作では各国にピラァ爆撃を行えてなかった)


129_ピラァ・オブ・バーン

飛行するバーンパレスは大破邪呪文(ミナカトール)によって完全に停止した。

大破邪呪文(ミナカトール)の陣の中央にいるバーンも、自身の魔力が半減したのを感じ取り攻撃の手を止める。

 

「さあ、あとはみんなでバーンをタコ殴りにするだけ…覚悟しなさいバーン!! 泣いて謝るなら今のうちよ!!」

 

ドラが手にしたリュミベルをバーンに向けた。

バラン、ディーノ、ハドラー、アバンの使徒…竜騎衆に親衛騎団、クロコダインやチウに至るまでこの場にいる全員がバーンに向けて構えをとる。

 

「………」

 

一斉に武器を向けられたバーンは何も言葉を発しなかった。

加えてその表情からは何の感情も汲み取ることが出来なかった。

 

(おかしい…天地魔闘の構えもとらないなんて)

 

窮地に追い込まれているというのに奥の手を出さないバーンに、ドラは恐怖にも近い違和感を抱く。

 

「バーン様…」

「ミストバーンッ!?」

 

バーンの影からミストバーンが姿を現した。暗闇と怨嗟を煮詰めたような負のエネルギー集合体…

ヒュンケルはそれがミストバーンだと悟るやいなや、ミストバーン目掛けブラッディースクライドを放つ。

しかし闘気を込めた渾身のブラッディースクライドはミストバーンの体に吸い込まれるようにして消滅してしまった。

技をくらったミストバーンは攻撃を受けたことなど無かったようにヒュンケルを無視してバーンへと跪く。

 

「遅かったではないか、ミストよ」

「はっ、申し訳ありません」

「首尾は?」

「万全に整いましてございます」

「ならば良い」

 

「バーン…それにミストバーン! 貴様ら、一体何を企んでいる!?」

 

殺気立つヒュンケルを見たバーンがクッ、と口角を上げる。

 

「良いだろう、教えてやる。地上を見てみるがいい」

 

ドラが弾かれるようにして駆け出した。

崩れたバーンパレスの床を覗き込み遠い地上を見渡すが、眼下に広がる景色に特に変わった様子はない。

 

「ピィ、ピィィ〜!」

「ゴメちゃんどこを指差して…あっ、あれは…!?」

 

ゴメちゃんが海の向こう、かすかに見える雪に覆われた大地を指す。

 

「あそこはオーザム…待って…あそこに見える柱ってまさか…」

 

ピラァ・オブ・バーン

 

黒の核晶(コア)を搭載した柱。

真っ白な景観の中、ただ細長い棒がポツンと佇んでいる様子は遠目に見ても見間違えようもなかった。

バッと振り返りドラはバーンを睨みつける。

 

なぜだ、なぜピラァが地上にある。

バーンパレスの魔力炉はドラが無力化した。バーンパレスは機動力を失いピラァを落とすことは出来なかったはず。

ついさっき機動力を取り戻しはしたが、ピラァを落とす様子は微塵もなかった。

 

「ミストバーン、お前の分身たるシャドウの働きに報いねばならんな」

「不要です」

「そう言うな、今の余は気分が良い」

 

バーンがゆっくりとドラに…いいや、地上がよく見える位置まで移動した。

清々しい表情で地上を見下ろしたバーンは遠くに見えるピラァを見て両手を広げる。

 

「見よ! 貴様らが余に釘付けになっている間に、ミストバーンが黒の核晶(コア)を搭載した(ピラァ)を地上に仕掛けていたのだ!!」

 

バーンの額が光ったかと思うと、空間が歪んだ。

歪んだ空間の奥に大地に深々と突き刺さったピラァが映し出される。オーザム、ロモス、バルジ、パプニカ、リンガイア、カール…計六箇所。とてつもない魔力を内包した兵器が地上を脅かしている。

バーンは両手を広げたまま、この場にいる全員に向かって滔々と語りかけた。

 

「今、このバーンパレスは各所に仕掛けたピラァの中心に位置している。

チェックメイトだ…! あと一手、余がバーンパレスを魔力で操作すれば最後のピラァが落とされる…!!

地上に落ちたピラァが砕け散ったが最後、搭載された黒の核晶(コア)も爆発しピラァにある全ての黒の核晶(コア)が誘爆する!!!」

 

「そ、それほどの大爆発…このバーンパレスも無事では済むまい…!?

大魔王バーン、貴様…地上ごと消滅する気か…?!」

 

クロコダインの言葉を一笑に付したバーンは「否」と答えた。

 

「愚かよな、クロコダイン。余と戦っている間にバーンパレスがどれほど地上から離れたか…その目で確かめてみるがよい」

 

バーンのその言葉に、全員が視線を地上に移した。

元々遠かった地上が更に遥か彼方…バーンパレスに乗り込んだ当初、同じ高さにあった雲が今は見下ろすほどに低い場所にある。

横を見ればただただ青い空が広がる場所で太陽の光がギラギラと降り注いでいた。

 

「今から地上に降りてピラァを除くか?

無駄だ。地上に辿り着く前に余が最後のピラァを落とすぞ?

それとも今から全員で余を挑むか?

無駄だ。戦っている最中でも余はバーンパレスを操作出来る。

再度言おう、チェックメイトだ。

地上を吹き飛ばし、閉ざされた魔界を太陽が照らす…!!

光栄に思うが良い。

余に刃向かった貴様らにもその輝かしい瞬間を味わわせてやろう…!!!」

 

天空から太陽の光が降り注ぐ。

じりじりと肌を焦がすような光はしかし、バーンの底冷えた笑い声によって絶望の淵に立たされた者たちを温めはしなかった。

たった一人を除いては。

 

「…っう、ふふ、くっ、ぷふっ…あっ、あっははははは…!!」

 

「む…? 絶望して気が狂ったか…」

 

腹を抱えて笑い転げるドラをバーンが痛ましい目で見る。

 

「ひっ…ひっ…ちょ、ちょっと待って…! お腹いたい…くるし、あっはははははははははは!!!」

 

「ド、ドラ…」

「ドラちゃん…?」

 

ポップやレオナ、他の面々も。

地面にひっくり返って文字通り腹をよじりながら大笑いを続けるドラを心配そうに見やる。

元々気が狂ったような子なので精神崩壊などあり得ないと思い込んでいたが、よもや本当に気が狂ってしまったのだろうか。

 

駆け寄ったバランとディーノに助け起こされる。

それでもドラは笑いが堪えきれないようでひぃひぃと情けない声をあげながら、バーンに向かって口を開いた。

 

「ま、まさかこんなに上手くいくなんて…ぶふっ!!

もう一度、その曇った眼で地上をしっかり見てみなさいよ…バーン!」

 

 

 




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