ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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130_刻印

バーンは地上を見下ろした。

何の変哲もない景色。しかし『太陽』という恩恵を受けた海は輝き、大地に根差した木々は生命力に溢れている。忌々しい眺めだ。

視界の隅で口を手で覆い笑いを堪えているドラが癇に障る。どうせブラフだろうと思ったが、ドラの表情を見るに何かを仕掛けたのは確かなようだった。

 

バーンは両の眼ではなく、額にある『鬼眼』で地上を見通した。

たとえ千里離れていようと、次元を超えた場所であろうと看過できる。

鬼眼を通して地上を見たバーンは、その両目を驚愕で大きく見開いた。

 

「なんだこれは………なんだこれはッ!!?」

 

「アッハハハハハハハハハハハ!!!」

 

ようやっと地上の異変に気がついたバーンを見たドラが床を手で叩きながら大爆笑した。

バーンの鬼眼を通して見た地上には至る所に…いや、至る所などと言うレベルではない。

死の大地を除いて、地上のほぼ全ての場所にドラの魔力が行き渡っていた。数珠繋ぎのように連なったそれは超巨大な五芒星を描き出し、地上に落とされた黒の核晶(コア)の魔力を抑え込んでいる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「アハハッ…! …ハァ〜〜〜。あーーーウケる…!

バーン、あんた本当に『地上』に興味無かったのね…!!

たった一回でも地上に降りて、ほんのちょっとでも注意深く見たら絶対気がついたのに。

あーヒヤヒヤした…いつバレるかずっと心配してたのに、ぜ、全然、バっ、バレないんだもん…! ブフッ!!

何年もかけて地上を回って、私が行った場所全部に刻印(スタンプ)して…少しずつ私の魔力を地上に行き渡らせたの。

ビックリした? ねえねえビックリした!?」

 

キラキラと目を輝かせながら、ドラが驚愕しているバーンを魔法で連写する。

あまりにも壮大な仕掛けに仲間も絶句する中、カシャカシャというシャッター音だけがやかましく鳴り響いた。

 

一瞬で冷静さを取り戻したバーンは笑いながら写真を撮り続けるドラに向き直り荒々しく大地を蹴る。

目にも止まらぬ速さで移動したかと思うと、ドラの体を真っ二つに引き裂こうとカラミティエンドを繰り出した。

 

「させぬわッ!!」

 

バーンの手刀をバランが真魔剛竜剣で受け止める。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏ったバランと鍔迫り合いになり、バーンはもはや表情を取り繕う余裕すら消えたようだった。

心底忌々しそうな顔で飛び退くと、一瞬前までバーンがいた場所目掛けて仲間たちの攻撃が雨霰と降り注ぐ。

 

ドラを消さねば…!

 

ギリギリと砕けそうな力で歯を食いしばるバーンの頭にはそれだけしかなかった。

ドラの魔力が大地を巡っていると判明した瞬間にバーンパレスのピラァを落とそうとしたがすんでのところで思いとどまった。

 

今ピラァを落とせば各地に落としたピラァに誘爆はするだろう。

しかし五芒星の力で爆発の威力は半減してしまう。

地上にある物を全て消し飛ばすことは容易に出来ようが『地上そのもの』を吹き飛ばすには威力が足りない。

それでは意味がないのだ…!

地上そのものを消し飛ばせなければ全てが無意味…!!

ドラだ。ドラを消し、魔力を絶って地上の五芒星さえ消滅すれば余の野望を果たすことが出来る!!

 

ドラ一人に狙いを定めたバーンは他の者には目もくれずドラだけを狙い続ける。

そうはさせじとバランやディーノ、アバンの使徒がドラの前に立ち、バーンを迎え撃った。

 

「バーン様…! 今一度私が地上に行き、ドラの魔力を断ち切ってまいります!!」

 

「逃さんぞミストバーン!!」

 

バーンパレスから離れようとしたミストバーンをヒュンケルが歯がいじめにする。

 

「ヒュンケル…貴様…!」

「フッ、抜け出せないだろうミストバーン…!」

 

ヒュンケルは十字に交差させた腕に光の闘気を集中させた。

何をしようとしているのか察したミストバーンがヒュンケルの腕の中で足掻く。

 

「や、やめろヒュンケル…!! 自爆する気か…?!」

「自爆? 生憎貴様と心中する気はさらさら無い…!」

 

心中する気はないと言いつつ、ヒュンケルは交差させた腕の内側…ミストバーンのみならず自らに向けてグランドクルスを撃とうとしている。

 

正気の沙汰ではない…!

 

拘束が解けないと悟ったミストバーンが体を乗っ取ろうともがくが、光の闘気に満たされたヒュンケルの体には一分の隙も見つからなかった。

このままグランドクルスを受ければミストバーンは消滅するだろう。

よしんば直撃を免れたとしても、技を放ったヒュンケル自身も無事ではすまない。

 

地上を消し去るという、積年にわたる主君の大望

自分だけの最強の肉体を手にいれるという自身の渇望

 

ミストバーンの持つ二つの望みが今、潰えようとしていた。

 

「グランドクルス…ッ!!」

「ウッ…! ウオオオォォォ…ッ!!!」

 

 

 

「ヒュンケル!?」

「おいマァム、よそ見すんな!」

「でもヒュンケルが…!!」

「心配なのはお前だけじゃねぇ! ヒュンケルを信じろ!! 今はバーンに集中…ッ!?」

 

「カラミティウォールッ!!」

 

「み、みんな! 避けろーーーーッ!!!」

「くっ…!」

「キャアアアアッ!?」

 

母竜の揺籠(ドラゴンズクレイドル)

 

「!!?」

 

ドラの呪文によって皆の体が光の玉に包まれる。

凄まじい衝撃波が襲うが、光の玉に包まれた仲間の体には一切のダメージがない。

それどころか…

 

「なんだこれ…魔力が回復してる…?」

「力が漲ってくるぞ…!?」

 

カラミティウォールを無力化されて呆然としているバーンに、ドラが不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「地上の五芒星を通じて魔力を吸い上げてるの。魔力の供給源はもちろん…」

 

「黒の核晶(コア)ッ…!!」

 

「ぴんぽーん! 大正解〜♡」

 

「ドラッ!! 貴様よくもーーーーーッ!!!」

 

いよいよ激昂したバーンがカイザーフェニックスを撃ち、間髪入れずに再びカラミティウォールを繰り出した。

炎と衝撃波によって視界が遮られる中、バーンは正確にドラの位置を捉えて攻撃を仕掛けてくる。

 

「「ディーナ!!」」

 

バーンの攻撃を防ぎドラを守ったのは二人の(ドラゴン)の騎士だった。

バランとディーノはその額に輝く紋章によって、正確にドラの位置を把握しバーンを挟み撃ちにした。

 

「クソッ…! (ドラゴン)の騎士どもめが…

こうなったらドラよりも先に、そこの子竜を仕留めてくれるわ!!」

 

バーンの言葉を聞いたドラが手にした杖をバーンに向ける。

 

「お兄ちゃんに手出しはさせない…お前の相手は私よ、バーン」

 

額に浮かぶ(ドラゴン)の紋章が一際大きな輝きを放ったかと思うと、ドラの姿が変わり始めた。

背中から一対の翼が生える。大きく広げたそれは竜魔人となったバランとよく似ている、ドラゴンの翼だ。

体は一回り大きくなり、長い髪はさらに長く…

竜魔人バランには程遠いが『ダイ』よりもドラゴンに近い。

 

竜魔人となったドラの姿がそこにあった。

 




映像記録(スクショ)…ドラのオリジナル呪文。魔法で記録した光景を写真に出来る。量産も可能。

ドラ「地上に戻ってキレちらかしてるバーンの顔写真を大量にバラまいてやる。絶対にだ」

母竜の揺籠(ドラゴンズクレイドル)…ドラの固有スキル。マザードラゴンの力を借りて対象者を一定時間バリアで包む。

五芒星なしバージョン挿絵(赤い×はピラァ落下地点)
ちっちゃい点がドラが地図作成(マッピング)しながら刻印(スタンプ)した場所。
使う事態にならなければいいな…というかお願いしますバーンにバレませんように…!と思いながらコツコツ自分の魔力を大地に染み込ませてた。

【挿絵表示】
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