ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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15_立ちふさがる困難

「クロコダインめ負けよったか…」

 

水晶玉を覗き込んでいたザボエラが苦々しそうに顔を歪め呟いた。

 

(それにつけても…あのすさまじい(パワー)は何だったんじゃ…

それにあの紋章…、とにかく一刻も早くハドラーさまに事態をお知らせせねば…)

 

自身の企みが失敗に終わってしまった…

ばかりではなくクロコダインとの共同作戦が失敗した事をハドラーに報告しなければならないザボエラはギリギリと歯を噛み締めながら、近くにいた部下を蹴り飛ばして晴れない鬱憤を晴らすのであった。

 

 

獣王クロコダインとの真剣勝負が終わった後、咆哮が響き渡り百獣魔団が森に逃げ帰ったことで敵を退けたと知ったロモス王国軍は勝鬨をあげた。

刻印(スタンプ)による対怪物地雷魔法によってかなり足止めが出来たらしく、人的被害も思ったほど出なかったらしい。

刻印(スタンプ)がドラの仕掛けた罠だと伝えると驚きとともに「さすが正義の魔法使いだ…」と更に株を上げることとなったが出来れば使わないで済めば良いなと思っていたドラ自身は複雑な心境だった。

その後、玉座の間の修復や一通りの戦後処理が終わるまで城に逗留させてもらい幾日か経った頃にロモス王から呼び出しがかかった。

 

「ドラ、ポップ、マァム…そして我が城の兵士諸君…!

みんなよく戦ってくれた!

特にドラ、この度の勝利はまさにそなたのおかげじゃ…!」

 

城の兵士達が一斉に拍手を送る。

 

「もはや名実ともに勇者に相応しいと言える。

晴れて今日から『勇者ドラ』を名乗るがよい!!」

 

「「おおっ」」

 

城の兵士、それに隣にいるポップとマァムも同時に沸き立つ。

 

「やったなドラ!」

「おめでとうドラ! 凄いじゃない!」

「ピィ、ピィッ!」

 

しかし全員から賞賛と祝辞をもらったドラは神妙な顔でロモス王に跪いて発言した。

 

「…国王陛下、もったいなきお言葉、まこと身に余る光栄に存じます。

ですがこの度の勝利、わたくし一人の力ではございません。

それに我が身は未だ道半ば…我が師アバンより託された魔王討伐の旅の最中にございます。

宿願を果たすその日まで、その称号はご辞退申し上げます。

どうか、ご容赦を…」

「ドラ…」

「ドラ、あなた…」

「ピィ〜…」

 

「あいわかった! さらに大きな成長を期待しておるぞ!」

 

(おお、さすが勇者…)

(あれだけの実力を持ちながら謙虚とは…人格者としても申し分ないな…)

 

周囲が感心するのをよそに別に勇者になりたいわけでも率先して人助けを行いたいわけでもないドラはロモス王の発言にわりと本気で「勘弁してくれ」と思っていた。

 

(え〜、別に勇者になりたいなんて一言も言ってないし…。

勇者ってあれだよね? 薄給であちこち行かされて無理難題押し付けられる人の事だよね?

アバン先生も魔王倒した後で優遇されるどころか家庭教師やってたし…そもそも魔王がいないと成り立たない立場ってどうなの?)

 

澄ました顔をしつつ周囲の感嘆の眼差しとは正反対の事を考えるドラ。

なかなかに腹芸が得意なのでやったらやったで勇者業は意外と合っているかもしれない。

そんなドラの内心など知る由もないロモス王が満足げに微笑みながら居並ぶ兵士たちの最後方にいるモンスターに言葉をかける。

 

「ブラス殿…本当に良い子を育てられましたな…」

「は…はい…この子は…この子はワシの誇りです…!!」

「おじいちゃん…!」

 

ドラが設置した破邪呪文(マホカトール)の結界の中で号泣するブラス老。

クロコダイン戦の時に眠らされた彼は、その後ドラ達と一緒に城に逗留していた。

誘拐されてきたブラス老が無傷な事を確認したドラが安堵しながらブラス老に抱きつき号泣したことで、城の兵士たちにもこの鬼面道士が真実ドラの育ての親であり害の無いモンスターだと知れ渡ったのだ。

 

ロモス王が合図をすると宝箱を持った兵士が玉座の間に入ってきた。

 

「それはわしからのせめてもの贈り物じゃ。

それを身につけて国民の前に姿を見せてやってくれい。

みんな、国を救った英雄たちの姿を見たがっておる」

 

宝箱に入っていたのは新しい服と装備一式だった。

先の戦闘でボロボロになったり破損してしまったのでこちらはありがたく頂いておく事にしたドラ。

着替え終わると城の中で一番大きな、街の広場に面している露台(バルコニー)へと案内された。

高らかに鳴り響くラッパの音に合わせて厚い布で織られた緞帳が左右に開かれる。

 

広場に集まっていた民衆が一斉に喝采を浴びせてくる。

にこやかな笑顔で手を振るドラと、予想以上の喝采に呆然とするポップとマァム。

 

「どうしたの? ボ〜ッとしちゃって」

「ん? いや…。俺、あんまり役に立ってなかったからさ…

こんなに感謝されて、なんつうか場違いっつうのかな…」

「ポップ…。…それは私もよ、

でも旅はまだ始まったばかりなんだし。

これから一緒に頑張りましょう!」

「そっか…そうだな!

イエ〜イッ! ご声援あっりがと〜〜〜っ!!」

 

ワアァァァァァ

 

大衆の歓声に応えるドラ達を見つめるロモス王国国王、シナナは思う。

 

(ドラ…聞きなさいこの歓声を…

たとえそなたが望まずとも人々はそなたをこう呼ぶだろう…

小さな勇者、正義の魔法使いドラと…!!)

 

(とっとと大魔王バーン倒して推し(バランさん)解放してデルムリン島でのんびり暮らした〜い)

 

 

 

「おじいちゃん、じゃあ行ってくるね。

ご飯ちゃんと食べてね、風邪ひかないでね!

またすぐ帰ってくるからね!」

「うぅ…ドラや…無事に帰ってくるんじゃぞ…」

「うん! 1人じゃないから大丈夫だよおじいちゃん!」

「ピピィッ!」

「ゴメ…ポップ君、マァムさん、ドラをどうかよろしく頼みますぞ…!」

「ええ、まかせてください」

「安心しろって、じいさん! 俺たちがいれば何も心配ないって!」

 

ブラス老との別れをひとしきり済ませたドラが三人の騎士に向かい丁寧にお辞儀をする。

 

「騎士様方、どうか祖父をよろしくお願いいたします」

「お任せください! 我らロモスの騎士、勇者ドラ様の祖父君の護衛、必ずややり遂げましょう!」

「勇者様を育てられた方の護衛、光栄の至りです!」

「うぅ…ありがとうございますじゃ…」

 

ロモス王に当初の目的であった旅の助力について相談したドラ達一行。

デルムリン島への送迎、ブラス老の護衛騎士数名、パプニカまでの帆船での移動や旅の資金に至るまで諸々援助をしてくれるという事でお言葉に甘えて今はデルムリン島からパプニカへ向かう洋上である。

 

「はぁ…」

 

デルムリン島を出てからため息しかついていないドラ。

 

「ドラ…」

「やっぱり辛いわよね…おじいさんとの別れは…」

「よおしっ!! いっちょうハッパかけてやるかぁっ!!

お〜い、ドラ!!」

「ポップ…」

「なぁんだよ〜っ そのシケたツラは? 元気ねえぞ!」

「うにゃぁ〜、ほっぺおしつぶさないれぇ〜!」

「あははっ、ドラったら面白い顔になってるわよっ!」

「ま、じいさんを想う気持ちは良くわかるけど心配いらねえよ!

俺たちでパパ〜〜〜ン!と大魔王を片付けちまえば問題解決さ!!」

「ポップ…うん、そうだよね」

 

ポップの励ましに笑顔を浮かべるドラ。

しかしドラの心配事は島でドラの帰りを待っているブラス老についてだけではなかった。

 

(はあ…クロコダイン大丈夫かな…

原作では蘇生液で復活するけど、ダメージの入り方全然違うし…

右腕、付け根から斬っちゃったし…あれほとんど皮一枚で繋がってる状態だったよね…

もしかしたら復活出来ても武器握れないかも…

ほんとう、出来れば戦わないですめば良かったんだけど…

というか次の刺客が大問題…

魔剣戦士ヒュンケル…色んな意味で殺せないし殺しちゃダメな人なんだもん…

どうしよう…なんとか話し合いで解決できないかなぁ…無理かなぁ…うぅ…)

 

そうなのだ、原作通りの流れで行けばこれから向かうパプニカにはアバンの使徒の長兄たる『魔剣戦士ヒュンケル』がいるはずである。

原作では苦戦ののち勝利。彼の心を解きほぐすエピソードも挟みつつ仲間になる流れだが、それは様々な偶然が重なって起きる奇跡のような確率の話なのだ。

今のドラでは不確定要素が多すぎて対策がまったく練れない。

ほとほと困り果ててため息しか出てこないのだ。

 

(それにレオナの事も心配。パプニカの周辺にも刻印(スタンプ)仕掛けまくったけど、敵がどこをどう攻めたのかは描写に無かったからちゃんと作動してるかどうか…

せめて少しでも人命が助かってれば良いんだけど…)

 

初めての人間の友達、レオナ。

また会おうと約束したのだ。

本当はアバンからパプニカ王国が被害に遭ったと聞いた時にパプニカまで飛んでいこうかと思ったがやめた。

逃げのびたであろうレオナがどこにいるかわからなかったし、そちらに時間を取られてアバンの教えを請う時間が無くなってしまっては本末転倒だったからだ。

じりじりとした焦りを感じながら今日まで過ごしてきたドラ。

そこに来て不安要素が重なり常ならぬ落ち込んだ様子で仲間に心配をかけてしまっていた。

 

(いつまでも落ち込んでても仕方ない…もしかしたら意外と話し合いだけで済むかもしれないし…

よしっ、気合い入れていこう!)

 

フンスッ、と拳を握り締めるドラ。

しかしその希望は儚くも叶わぬ事となるのをこの時のドラは知る由も無かった。

 

やがて船はパプニカの港町に到着する。

徐々に近づくに連れ見えてきた異様な街の様子に、舵を握っていた船長の顔がどんどんと青ざめていく。

 

「こっ…、これが…風光明媚で名高いパプニカの港町とは…!?」

 

眼前に広がる景色に風光明媚の面影は無く…

そこにあるのはただの瓦礫の山と、壊され、燃やされて沈められた船の残骸、一人の人間も見当たらない荒涼とした街の姿であった。

 

「船長! 私たちが降りたらすぐに港を離れてください!

ここまで送ってくださりありがとうございました!

国王陛下にもよろしくお伝えください!!」

「おお、君達も気をつけてな…!!」

「レオナ…!」

「お、おい…!待てよドラッ!!」

「待ちなさい、ドラ…! 一人で突っ走っちゃ…」

 

甲板から港に飛び降りて一人走り出すドラ。

慌ててドラを追いかけるポップとマァム。

船旅の道中、ドラからパプニカのお姫様と友達になった時の話やまた会おうと約束した事などを聞かされていた二人。

ドラの心中を思い街の中心部へと駆け抜けていくドラを必死で追いかけていく…

 

しかし小高い丘を駆け上った先に見えたのは無残にも破壊された王城と思しき建物の残骸の山であった。

 

「あ…ああ…

レオナ! レオナ〜〜〜!

うわあ〜〜〜ん…!!」

「ドラ…」

「…ひでえや…こりゃ…

ドラには悪いけど、生き残りはいねえだろうな…」

「うゔぅ〜…!」

 

知っていた。わかっていた。

原作の漫画で見た。

だけど実際に被害にあった街並みと崩された無残な王城を見た時に涙がこみ上げてきてしまった。

理解していても到底納得はできない。

二次元と現実はまったく違うという事を、この世界に生まれて何度叩きつけられてきただろうか…

前世と原作の知識を持っているドラでさえ絶望的な心境になったのだ。

『ダイ君』のこの時の心境たるや…絶望なんてものではない、胸が押しつぶされるような感覚だっただろうに…

 

後から後からこみ上がる涙を必死になって止めようとするドラ。

直後、泣いているドラの目の前、升目状に区切られた石床がゴトゴトと蠢く。

一瞬ピタリと動きを止めたように見えた石床が次の瞬間、バァンッ!!と勢いよく撥ね上がった。

撥ね上がり、ぽっかりと口を開けた床下の空洞から大勢の骸骨の戦士が這い出て来る。

 

「んぬわあっ!! ば、化け物っ!!!?」

「こいつらがパプニカを…!」

「よくもレオナの国を…!!」

 

全員即座に臨戦態勢へと移る。

群れを為してじりじりと迫ってくる骸骨の戦士たちを攻撃しようとしたその時である。

 

カッ!!

 

一閃の閃光が煌めいたかと思うと目の前に迫っていた骸骨の戦士たちが爆音とともに四散していた。

閃光が放たれたと思しき先…崩れた王城の上階にあたるであろう場所を目で追う。

そこにいたのは…

 

「なんだあいつは…!?」

「アバン流刀殺法、大地斬…」

「ええっ!? それじゃあ…あの人は…!?」

「「アバンの使徒…!!?」」

 

魔剣戦士ヒュンケル…

 

音には出さず口の中で呟くドラ。

魔王軍不死騎団軍団長、魔剣戦士ヒュンケル…

…そしてアバンの使徒の長兄たる人物がそこにいた。

 

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