ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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【注意】ここから主人公のヒュンケルに対する扱いがどんどん塩になっていきます。
ヒュンケル好きな方はご注意ください。


17_不死の戦士と生還の戦士

 

目の前に立つ禍々しい鎧に身を包んだ戦士…

先ほどまでの出で立ちとはまったく違うヒュンケルの姿に、ポップとマァムが驚愕する。

 

「あ、あれは…? ヒュンケル…なの?」

「何だあの鎧…あんなのどっから出してきたんだ…?」

 

「クックックッ…先ほどまでお前達も見ていただろう…

俺が手にしていた剣…あれがこの鎧だ。

オレは戦士ゆえ呪文は使えない。

だから大魔王バーン様はオレにこの究極の鎧をくださったのだ。

あらゆる攻撃呪文をはじき返す最強の鎧をな…!

これを纏えばオレは完全無欠!! この鎧の魔剣こそ最強の武器にして最強の防具だ!」

 

(いや、驚いてるのそこじゃないんですけど!)

 

ドラの驚き、それは鎧の魔剣を纏ったヒュンケルに魔法が効かなかった事ではない。

魔法が効かないのは想定内だ。

先ほどドラは真空呪文(バギ)を応用して三人の周囲に風の壁を展開。

同時にヒュンケルの周囲にも風の壁を作って炎が立ち上がった後に必要以上の酸素が流れないよう操作していたのだ。

自然、炎の周囲は低酸素状態になる。

いくら屋外だからと言ってあんな派手な火柱の周囲、一呼吸でもすれば意識を刈り取るまでとは言わずとも、若干くらりとしてもおかしくないはずなのだが…

 

(なんでこいつ火柱からそんなに離れてない場所でこんなにペラペラ喋って平気な顔してるの…?

風の壁の展開が不完全だった…?

いや、それを抜きにしてもおかしい。

暗黒闘気の力?

暗黒闘気ってそんなことも出来るの??)

 

いやでも確かに溶岩に沈んでも重症で済んでたな…?と思い至ったところで背筋がゾッと凍りつく。

 

「くっ…くそっ! それならこいつだぁっ!!

閃熱呪文(ギラ)!!」

 

ポップのステッキから放たれた熱光線が瞬く間にヒュンケルを穿つ…

かと思われたが恐ろしいことにヒュンケルはその熱光線を手のひらで受け止めていた。

ステッキを構えたまま閃熱呪文(ギラ)を継続するポップと受け止め続けるヒュンケル…

人間が手で呪文を受け止めるどころか押しのけようとしている事も異常だが、信じられない事にヒュンケルは気合いをもってその熱光線を押し返してしまった。

押し返された熱光線がポップへと跳ね返ってくる。

 

刻印(スタンプ)!!」

 

跳ね返された光線とポップの間に魔法障壁の陣を浮かべる。

バシンッ!!という音を立てて向かってきた熱光線を受け止めると空中に浮かんだ刻印(スタンプ)はそのままかき消えていった。

 

「ピピィッ!?」

「わ、わりぃドラ…助かったぜ…」

「どういたしまして。ポップ、ちょっと提案なんだけど…」

 

(交渉は決裂したし…奥の手を使えば倒す…というか殺すのは出来るだろうけどポップとマァムの目の前でそれをやっちゃうと絶対いらない軋轢(あつれき)生み出しちゃいそう。

ここはもう撤退してヒュンケルの事は無視してレオナの所に向かうべきか…

うん、そうしよう。別に無理して相手する必要ないもんね)

 

ドラがこの場は撤退すべきと言おうとした時である。

マァムがハンマースピアを構えヒュンケルへと向かっていった。

 

「よせ…女を殺すなど性に合わん」

「バカにしないでよ、女だって命をかけるわ…

正義のための戦いなら…!!」

 

(マァム~~~!!?)

 

「…フン、それがアバンの教えというわけか!?」

「そうよ! あなたも教わったでしょう!?

先生は間違った人間には絶対にアバンのしるしを渡したりはしないはずだわ!

きっとあなただって…!」

「これか…」

 

アバンのしるしを首から外し手にするヒュンケル。

次の瞬間、彼は手にしたアバンのしるしを指で弾き床に叩き捨てた。

 

「もう必要ない…

これはもともとアバンやその弟子を探り当てるための手がかりとして持ち歩いていたもの…

オレの手で地獄へ送ってやるためにな…!!」

「…なんてことを!

なぜ!? なぜそんなにまで先生を憎むの…!?」

「それはアバンが…オレの父の仇だからだっ!!

 

…かつてこのホルキア大陸は…」

 

(…なんか語り出した)

 

逃げるには絶好の機会なんだけれども、ポップはともかくマァムが話にガッツリ食いついてしまっている。

ここでポップとマァムを掻っ攫って飛翔呪文(トベルーラ)で離脱するのは容易いけれど…

それをやってしまうとますますヒュンケルの恨みを買いそう…というか空中めがけてブラッディースクライド撃ってきそうだ。

やりかねない、というかこいつは絶対やる。

そして寸分の狂いなく当ててくる。

 

謎の確信を持ち、とりあえずいつでも離脱出来るようにゴメちゃんを外套のフードにしまいポップとマァムとの間合いを徐々に詰めるドラ。

 

「…その時、オレは誓った! 必ず力をつけこの男を討とうと!!

それゆえアバンに師事し剣を習ったのだ!

その剣で…ヤツ自身を殺すために…!!」

「もうやめて!!

…あなたの気持ちはわかるわ! でも先生は…!」

「正義のために戦った、とでも言いたいのか!?

 

たとえ正義のためだろうとその力がオレの父の命を奪ったことに変わりはない…!

それを正義と呼ぶなら…

正義そのものがオレの敵だっ!!」

 

(対象が大きすぎない?!

というか先生を恨むまでなら、まあ、うん、わからないでもないけど…

いややっぱりわからないけれど、なんでそれで弟子にまで矛先が行くのか…

 

…この人、私の兄弟子なのかぁ…えぇ~…)

 

戦士が戦場で命を散らさずして一体どこで果てるというのか…

百歩譲って敗れた相手を恨むのはよしとしてその徒弟、更には相手の掲げる信条にまで累が及ぶというのはいかがなものか…

ヒュンケルを育てたという骸骨戦士に会ってヒュンケルに『武人』についてどういう教育をしたのか聞きたい。

今すぐに。

 

しかしドラもモンスターに育てられた身、彼らの子育てがいかに大雑把で大幅にズレているかもわかるので目の前の情緒不安定な兄弟子に対してそこそこの同情心も持っている。

前世の記憶と知識を有しているからこそ環境の異常さや人間とモンスターの根本的な思考の違いについてなんとか折り合いをつけられたが、そうでなければモンスターに育てられた12歳の少女など今頃情緒がくっしゃくしゃになっていただろう。

 

などなど…、残念な目でヒュンケルを眺めていたドラだが気がつけばマァムが再び魔弾丸を構えて今にも打ち出さんとしている。

咄嗟に飛翔呪文(トベルーラ)で距離を詰めてマァムの腕を掴んでヒュンケルから距離を取った。

 

「ドラ! 離して!!」

「ダメ、一旦退こう」

「でも…これ以上先生の教えを悪に使われるわけには…!」

「させるか…! かあッ!! 闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)!!!」

「ぐあぁッ!!」

 

「「ポップ!!」」

 

(しまった…!! てっきりターゲットは自分だから攻撃が向くのは自分だとばかり…!!)

 

「ふん…手間をかけさせるな、ドラ。

貴様は生け捕りにして大魔王バーン様へと献上する。

…しかしその前にアバンの居場所は吐いてもらおう。

居場所を吐かねばこいつを殺す…

 

吐いても殺すがな。

こいつは憎いアバンの弟子だ…。

 

だが、アバンの居場所を白状すれば少しは長く生きられるやもしれんぞ?」

「先生の居場所は私たちも知らないわ…本当よ…!!」

 

(マァムちょっと黙ってて! デタラメな場所教えるって頭は無いのかな!?

無いんだよね!! この純粋培養アバンの使徒!!)

 

突っ走る姉弟子にイライラしつつも出来る限り殊勝な顔をしてヒュンケルに切々と訴えるドラ。

 

「待って…! 教える…!

アバン先生の居場所を教えるからポップを解放して…!!」

「ふん…やっとその気になったか…

しかし、遅かったな。

見せしめにこいつは今、この場で殺す…

 

ブラッディースクライド!!!」

 

「ポップ…!!」

 

ドシュッ…!!

 

ドラがいよいよ(ドラゴン)の紋章の力を解放して向かう攻撃からポップをかばい、ヒュンケルを殺そうと動く刹那…

ポップとヒュンケルの間に割って入ったドラをさらにかばう形で大きな影が割り込んできた。

腹わたを切り裂いてボタボタと流れ落ちる血の音が耳に届く。

 

「な…なんだとォッ…!!?」

「あ、ああ…」

「うぅ…アンタは…ッ」

 

「「「獣王…クロコダイン!!?」」」

 

(ク、クロコダイーーーーン!!!

 

生きてた~~~!! 良かった~~~!!)

 

出会いから今に至るまで好感度を下げ続けた兄弟子に対して、再開した瞬間にドラの好感度が天元突破するという偉業を成し遂げた元魔王軍百獣魔団長・獣王クロコダイン。

怪力無双・堅牢堅固たる肉体の持ち主が死の淵から生還したのである。

 

(良かった無事…じゃない!! 全然大丈夫じゃない!!

腕から大量出血してる…っていうか右腕の傷口がどんどん開いていってる!?

これほっといたらまずい…!!!)

 

「ク…クロコダイン…!? 生きてたのか…!?」

「何の真似だっ!! クロコダイン!!」

「フフフッ…み…見てのとおりだ…

ドラたちは殺させん…!!」

「バカな! 気でもふれたか…!? ぐっ…」

 

腹に突き刺さったままのヒュンケルの剣をクロコダインが掴む。

手から流れる血も気にせずクロコダインは今にも千切れそうな右腕でなんとか魔法の黒い筒を取り出すと召喚の呪文を唱えた。

 

「デルパァッ!!」

 

召喚されたのは大きな翼とそれに負けないくらい発達した鉤爪のついた大足を持つ怪鳥、ガルーダであった。

 

「クワワァッ!!」

「おい、小僧!!」

「ハ…ハ…、ハイ!! な…なんですか!?」

「こいつでドラを連れて逃げろッ!!」

「ええっ!?」

「モンスター達の中にはオレの直接の命令しか聞かぬ奴らもいる。このガルーダもその一匹だ。

今のお前達のレベルではヒュンケルには勝てん…! 逃げるのだ!!」

「だっ、だけど俺とドラを運んだらマァムが…!!」

「…心配いらん…

このヒュンケルという男は間違っても女に手をかけるような奴ではない…

あの娘はオレが何とかする! 今はとにかくドラを逃すのが先決だ!

ハドラーの狙いはドラなのだからな…!!」

「で…でも…」

 

刷り込み(インプリント)!! ガルーダ! ポップとマァムを連れて逃げろ!」

 

「クワワァ…!!」

「んなっ…」

「きゃっ!?」

 

「ド、ドラ…お前何を…」

「喋っちゃダメ!!

…ヒュンケル、取引しよう。

クロコダインの手当てをさせて。

手当てをさせてくれるなら私はもう抵抗しない。

大人しく大魔王のもとに行く。

アバン先生の行き先も教える。

ただしクロコダインの手当てをさせてくれないなら今、この場で自害する。

アバン先生の居場所も言わない。

取引するなら剣を収めて、早く!」

 

ドラの気迫と真剣さに嘘は無いと見てとったのかヒュンケルが早々に剣を抜く。

 

「ぐ、ぐうぅ…」

「クロコダイン…どこか休める場所に案内して!」

「アバンの居場所が先だ。吐け」

「クロコダインの治療が終わったら言う。この条件が飲めないなら交渉決裂、首を掻っ切る」

 

いつの間にか手にしていたパプニカのナイフを首に当てているドラ。

 

「チッ…今、部下を呼ぶ。

大人しくしていろ」

「言われずとも」

「ドラ…なぜ逃げなかった…っ!

敵の目的はお前だ…お前が魔王軍に取られでもしたら…」

「私は大丈夫。なんとでもなるから…

今はあなたの怪我の治療の方が大事だよ」

「ドラ…」

 

応急処置として回復呪文(ホイミ)をかけながらクロコダインに答えるドラ。

クロコダインはドラがいざとなれば瞬間移動呪文(ルーラ)で即離脱可能な事もいかに卓越した魔法の使い手なのかもよく知らないのであろう。

蘇生液の中で意識を取り戻した瞬間からドラの身を案じ、動けるようになるや駆けつけてくれたのだ。

その気持ちがドラは純粋に嬉しかった。

 

やがてヒュンケルの部下であろう動く骸(アンデッド)達がやってきた。

クロコダインの巨体を動く骸(アンデッド)達数人で運び、ドラは黙ってヒュンケルの後をついていく。

案内される先はかつて魔王ハドラーの居城であり今は魔王軍不死騎団の拠点、地底魔城である。

 

 

「ちくしょうっ…ドラ~~~!!」

「お願い、無事でいて…! ドラ…!!」

 

離れ離れとなってしまったアバンの使徒…果たして再会は出来るのであろうか…

 

 




展開と復活が早いって?
でもまだ原作3巻途中!
ダイの大冒険は始まりから終わりまでおよそ三ヶ月間の出来事って…
ダイ君の成長率えげつない…
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