ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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バルジ島を出た後、パプニカの王族とマトリフとの間でどんな会話がされたのかの小話です


 閑話_パプニカ王家とマトリフの話

ドラ達がフレイザードと交戦中、バルジ島を離れた気球の中では―

 

気球の中にいるのはパプニカ王国国王、レオナ、パプニカの三賢者、バダックと気球を操縦できる兵士の計7名だ。

魔王軍軍団長を相手に島に残ったドラ達をしきりに心配するレオナ。

 

「ドラちゃん…」

「姫様…勇者殿を信じましょう…。今はとにかく安全な場所へ御身を移さねば…」

 

勇者が命がけで作ってくれた脱出の機会だ。

心配なのはアポロも同じだが、パプニカ王国に仕える身としては何より王族が優先される。

今は一刻も早く国王と姫君を安全な場所へと移すことだけを考える。

するとパプニカ三賢者の一人であるエイミが悲鳴にも近い声をあげた。

 

「みんな! あ…あれを見て!」

「追手だ!!」

 

炎魔塔から、その身を燃え盛る炎で構成されたモンスター『フレイム』達がわらわらと気球を追って来るのが見えた。

 

「カカカカカ〜〜〜〜〜ッ!!」

 

「「中級氷結呪文(ヒャダイン)!!」」

「「「「ギャッ」」」」

 

追って来る大量のフレイム達にマリンとエイミが揃って中級氷結呪文(ヒャダイン)を浴びせる。

が…

 

「ダメだ、数が多すぎる!!」

「気球に当たってしまうわ! 上にいるフレイム達を倒せない…!!」

「このままでは大渦に落ちてしまう…

どんどん高度が下がっているぞ…!」

「くっ…!」

「お父様っ…」

 

気球にまとわりつき、燃やそうとするフレイム達。

燃やされた穴から空気が抜けていき、今にも『バルジの大渦』に落下しそうな気球…

 

その絶体絶命の様子を遠くから見つめている人物がいた。

一見なんの変哲もない、海辺の岩場…

その岩場が天の岩戸よろしく、ゴゴゴゴッ…と大きな音を立てて開いていく。

岩場から現れた大きな穴の奥から巨大な閃光が放たれ、瞬時に気球を包み込んだ。

 

ドオオォォンッ…!!

 

凄まじい閃光と轟音に包まれた気球。

しかし滅されたのは気球に群がっていた大量のフレイム達だけであった。

気球はかろうじて高度を落とさず、ゆっくりと『バルジの大渦』から離れた海辺へと落下していく。

 

「ぷはっ…」

 

穏やかな海面に落下した一行。

国王と姫を沈まぬように支える臣下達。

 

「あそこから閃光が…」

「行ってみましょう」

 

ひとまずは岸へと上がらねばならない。

ならば先ほど閃光が放たれたらしき岩穴へと行こうと意見が一致した。

果たしてその洞窟にいたのは…

 

「なんだ!? さっきの連中か…!!?

無事助かったのならさっさと帰れ。

俺は誰とも関わり合いたくないんでね」

「そ、そなたは…

 

マトリフ…マトリフ殿ではありませぬか…!?」

「んんっ!!?」

「お父様? ご存知なのですか!?」

 

パプニカの国王が洞窟にいた人物を見て驚きに目を見開く。

国王が口にした名前に疑問を呈するレオナ。

しかしその名前を聞いて仰天したのはバダックであった。

 

「マトリフ!!

たしか勇者とともに魔王と戦った魔法使いがかつてパプニカ王家に仕えていたという…」

「勇者? 勇者とはドラちゃんに家庭教師をお願いしたあのかつての勇者、アバンのことですか?」

「かつて父上に仕えていたそなたが、今なぜこのようなところに…」

 

目の前で焼いた小魚を口にくわえている人物がかつての勇者アバンの戦友、そして宮廷に仕えてた名高い魔法使いだとは到底信じがたいが、今は細かい事になどこだわってはいられない。

レオナは必死の様相でマトリフに懇願する。

 

「マトリフ様…! お願いします!

今、勇者がバルジ島で魔王軍の軍団長と戦っているのです!

どうかご助力を…!!」

「……やだ…!」

 

返ってきたのは無情な一言であった。

 

「な…なんですと…!?」

 

敬愛するレオナ姫の必死の懇願を無下にされ憤慨するバダック。

 

「やだって言ったの!

もうくだらん王家の連中の手助けなんかごめんだね」

「なぜ!? なぜ王家がくだらないの!!?」

 

王家への忠誠心の高いエイミがマトリフに詰め寄る。

 

「王家だけじゃない。人間はみんなそうさ。

魔王軍に襲われている時には一生懸命ご機嫌とって俺を戦わせたくせに勝って平和になったとたんコロッと掌を返しやがった。

俺なんか戦いが終わって国王の相談役になったのはいいけどさんざん側近の男どもにイジメられちゃってさ…」

「なんと…そのような事が…」

「ま、俺の才能が怖かったんだろうね。

人間なんてそんなもんさ。

自分の都合しか考えないんだ。

だから俺は人間に嫌気がさしてこの洞窟に移り住んだのさ」

 

語られるマトリフのかつての過去…

勇者アバンと魔王との戦いは今から15年も前だ。

その時まだレオナは生まれてはおらず、国王も当時は王太子であり王として即位していなかった。

 

マトリフが仕えていたのはパプニカの先代国王である。

大魔導士マトリフがごく短期間の宮仕えをし、ある日突然職を辞して国を去ったことを当時は不思議に思っていたが…

よもやこのような不祥事があったとは…

 

「さっきは気まぐれで助けたがこれ以上はもうダメ!

どうせ力を貸しても危機が去ったらまた平気で恩を忘れるに決まってるからな!!」

 

「そんなことはありません!」

 

マトリフの言葉が終わるや否や、間髪入れず力強く否定したのはレオナであった。

全員の視線がレオナへと向く。

 

「自分のことばかり考えている人間が全てではありません…!

少なくとも、今バルジ島で戦っているドラちゃんは見返りを求めて戦ってなどいないわ!

彼女は私が誇る、真に尊敬する友人であり勇者です…!!」

 

レオナの真っ直ぐな視線を受けて黙りこむマトリフ。

 

「マトリフ殿…かつて宮廷に仕えていたそなたに対して行われた非礼と仕打ち…私からも謝罪する。

そなたの不名誉と失った信用に対しては今後パプニカ王家の名に誓っていかようにも詫びよう。

しかしレオナの言う通り、今戦っている勇者ドラは『正義の魔法使い』として、なんの見返りも求めず世界各地にて人々を救済して巡る高潔な人物なのだ…

そしてそなたと戦いを共にした勇者アバンの弟子でもある…

 

伏してお願い申し上げる、勇者ドラの助太刀をしてはくれないか…!」

 

跪き頭を下げる国王。それに追随して跪き頭を下げるレオナ。

それを見たこの場にいるパプニカ王国の家臣一同は揃って跪きマトリフへと頭を下げた。

 

「……チッ!!

わかったわかった…!

様子ぐらいは見に行ってやるよ…!」

 

ったく、今日はとんでもねえ厄日だぜ…

と、ブツブツ言いながら洞窟を後にするマトリフ。

 

こうして、大魔導士マトリフはバルジ島、ドラ達のいるバルジの塔へと文字通り飛んで行ったのであった。

 




ドラ「知らないところでなんか凄い株を上げられてる…やめて!?」
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