ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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24_大魔導士による見解

「…お前、『勇者』じゃねえな」

 

ドラを睨みつけながらマトリフが言う。

 

「マトリフおじさん何言って…」

「え? あ、はい」

「おいドラ!?」

「…ドラ? 何言ってるの、あなた勇者でしょ?」

「え? 違うよ?」

「んん? おい、どういうこった」

「いや、こっちが聞きてえよ」

 

「一体どういうことだこれは?」

「彼女が姫様が常々おっしゃっていた勇者殿ではないのか?」

「あれほどのお力を持った方、勇者以外ありえんだろう…?」

 

ドラに対して勇者じゃないと(のたま)ったマトリフ。

そしてそれをすんなり肯定するドラ。

困惑するポップとマァム。

さらにすんなり肯定されるとは思わなかったマトリフも逆に困惑しているしパプニカの兵士たちも今のやりとりを見て困惑している。

 

(何このカオス)

 

「マトリフさんは何で私が勇者だと思ってたんですか?」

 

とりあえずマトリフがドラを『勇者』だと思っていた根拠が知りたくて質問する。

 

「俺に助けを求めに来た王家の連中が言ってたんだよ。

この島で戦っている勇者はアバンの弟子で、さらに世界各地で善行を積んでいる人呼んで『正義の魔法使い』だってな。

で、アバンの弟子な上に勇者で正義のヒーローなんてどんな熱血漢かと思って来たら、だ。

 

熱血漢なんてとんでもねえ。

さっきからこちらの隙と出方探るような至極冷徹な目線向けやがって…

お前の目は一流の魔法使いか、さもなきゃ軍人の目だ。

おとなしい美少女のツラしておっかねえな…

おまけになんだ、お前さん…魂が大きい?違うな二重になってんのかそりゃ…?!

桁違いの魔力量と言い、人間じゃありえん。

 

…何者だお前。

何が目的でアバンに取り入りやがった…!?」

 

鋭い視線で杖を構えドラへと向けるマトリフ。

返答次第では一触触発といった雰囲気だ。

 

(ありゃ、出方探ってたのバレてた)

 

心の中で舌を出して失敗失敗…、と苦笑するドラ。

 

「アバン先生に取り入ったって…

マトリフおじさん、その言い方じゃドラがまるでアバン先生を騙そうとしたみたいじゃない!」

「そ、そうだよ…確かにドラはちょっと人間離れしたとこあるけどさ…

アバン先生に取り入ろうとなんてしてねえぞ! むしろアバン先生から弟子にならないかって言ったんだぜ…!!

そんな言い方じゃ、ドラがまるで魔物みたいじゃねえかよッ!!」

 

ドラのこれまでの戦歴を振り返って、全てではないがぽつりぽつりと思い当たる節があるのだろう。

言いながらも顔色が悪くなっていくポップとマァム。

おっと、これは良くない流れだぞ。と慌ててドラが釈明する。

 

「えーと…どっから話せば…

まず私は『勇者』じゃないよ?

自分でなりたいって言ったことも無いし、ロモス王国で名乗っていいって言われた時もちゃんと辞退したし。

『正義の魔法使い』も、なんか勝手にそう呼ばれてるだけだよ。

あれ、自分で名乗るなんて恥ずかしくて無理だよ…ダサいし…

 

アバン先生に弟子入りしたのは目的があるから。

強くならなきゃいけなくって。

アバン先生の弟子だから『アバンの使徒』っていうのは否定しないけど、別にアバン先生の名を借りて悪さするとか、アバン先生を騙そうっていうつもりは全然無いってば!」

「目的ってのはなんだ?」

「家族と仲間と推しを守ること!!」

「推し…?」

「好きな人で心の支え的な…? 生きる意味みたいな感じ」

「ふ〜ん」

 

ドラの言い分を聞き構えていた杖を収めるマトリフ。

その様子にポップとマァム、兵士たちもホッと胸をなでおろす。

 

「安心したぜ。

ま、あの結界(破邪呪文(マホカトール))見りゃ悪いモノじゃねえってのはわかってたけどよ。

なんせアバンの野郎、昔っから変なところで抜けてるうえに妙なモンに好かれやすいし言い寄られる性分でな。

ちっと警戒させてもらったぜ」

「もう! びっくりさせないでよね…」

「まったくだぜ…てっきりドラが美少女に化けた悪魔かなんかかと疑っちまったじゃねえか…」

 

わりぃな、ドラ。と謝罪するポップ。

人間ではないのは確かなのでドラは微塵も気にしていないのだが「いいよいいよ」と謝罪を受け取る。

 

「アバンがお前を見いだして弟子としたんなら、勇者じゃあないにしても何か感じるものがあったんだろうさ。

変なところで抜けてるがここぞという判断は外さねえヤツだ。

 

…で? お前さんが悪いモノじゃねえってのはわかったが。

今、どういう状況だ?

俺は苦戦してるであろう勇者を助太刀してくれって頼まれてきたんだが?」

 

もう倒しちまったのかフレイザードってやつは…と言うマトリフに今の状況を説明するドラ達。

 

「今のうちがチャンスなんです!

一刻も早くヤツを見つけ出して倒さないと!」

「そうよ! 早く探しに行きましょうよ!」

「今度こそ、俺の魔法でやっつけてやるぜ!」

「待て、お前は俺と修行だ。来い」

 

言いながらポップの首根っこを掴んで引きずっていくマトリフ。

 

「へっ…!? ちょっ、なんっでだよ!?

離せよクソジジイ…!!」

「マァム、お前は嬢ちゃんと一緒にフレイザードを探しながら経験値を積んでこい。

こいつは俺が預かる。今のままだとこいつ、死ぬぞ?」

「ま、待ってください! フレイザードが弱っている今が好機なのに…」

「アホ、だからだよ。

敵が弱って猶予があるうちに少しでも強くならにゃ、こんな機会めったに無えぞ。

見たところ、このパーティはレベルに差があり過ぎる。

嬢ちゃん一人が突出して強すぎてパーティとして機能してねえだろ?

嬢ちゃんに何かあってこいつやマァムだけで戦わなきゃいけない状況になってみろ。

 

…間違いなく死ぬぞ」

 

ぐうの音も出ないとはこの事か。

確かに今までドラ一人でどうにかなってきてしまったのだ。

ドラが瞬間移動呪文(ルーラ)飛翔呪文(トベルーラ)が得意なものだからそれすらもポップはドラに頼りきりだった。

このままではいけないと思いつつも特訓する時間もないまま来てしまっていた。

 

「ま、敵だっていつまでも逃げ続けてくれるわけねぇからな。

一日くらいしか時間は取れんだろう。

それまでに少しでもこいつを鍛えておいてやるよ。

こいつもアバンの弟子なんだろ? これも何かの縁だ。

特別サービスにしといてやる。

あと、ここに残ってるパプニカの兵士も王族の連中のとこに連れてくぜ。

いても足手まといだ」

 

ぎゃああああああ〜…

 

言うが早いか、ポップ、パプニカの兵士たち三人を乱暴に掴むとマトリフは瞬間移動呪文(ルーラ)と唱えて飛び去っていってしまった。

男達の悲鳴が空中に消えていく。

残されたドラとマァムは顔を見合わせて、今起こった嵐のような展開にため息をついた。

 

「なんかいろんな意味で凄い人だったね、マトリフさん…」

「昔っからああなのよ、あの人。根は悪い人じゃないんだけどね…」

 

これでこの島に残っているのはドラ、マァム、フレイザード、氷炎魔団のモンスター達という結果になってしまった。

 

「まあ大丈夫だよ!

いざとなったら瞬間移動呪文(ルーラ)で逃げることも出来るし。

あ、魔弾銃(まだんガン)もジャンジャン使ってね。

私補充出来るから!」

「心強いわ、ドラ! よ〜し、私たちでフレイザード倒してポップの見せ場、無くしちゃいましょっ!」

 

ニコッと朗らかに笑うドラにフフッと微笑むマァム。

かくしてここに魔法使い(攻撃・回復魔法可能、魔力量ほぼ無限。回避特化)と僧侶戦士(装備:ハンマースピア、魔弾銃(まだんガン)、自身も回復魔法使用可能)という、なんとも戦力バランスの良い女子チーム結成となったのであった。

 

 

鬼岩城、玉座の間―

 

「ハ…ハドラーさま…

いまなんと…!?」

 

魔軍司令ハドラーによって出された作戦。

その作戦に耳を疑ったザボエラが信じられぬといった表情で聞き返す。

 

「総攻撃をかける!!

炎魔塔と氷魔塔の破壊を狙ってくるであろうやつらを叩く…

戦力が分断されるであろうところへ、全軍団で一気に攻撃してドラたちを始末する」

 

聞き返されたハドラーは再度、ドラ抹殺に向けての作戦を説明した。

フレイザードがバルジ島へ出陣した後、玉座の間へ来るよう命じられたザボエラとバラン。

その理由を今、ハドラーによって講じられた作戦により知ることとなった。

 

「しかしあの手柄にうるさいフレイザードが納得しますかな」

「あいつは伝説の禁呪法によりこのオレが生みだした怪物(モンスター)

いわば我が子も同然だ。親には逆らうまい…」

 

懸念事項を申し出るザボエラにハドラーが答える。

次いで作戦内容を聞いたバランが不敵な笑みを浮かべて意欲を見せた。

 

「面白い!

ようやく我が超竜軍団にも出番が回ってきたというわけだな」

 

颯爽と出陣の意を見せて玉座の間を後にしようとするバラン。

軍団長が通過する際には差し支えがないよう、鬼岩城に仕える部下によって扉が自動的に開くように指示が出されている。

ゆっくりと左右に開かれた扉をバランが出ていくその前に、ハドラーが待ったをかけた。

 

「待て、バラン…!

お前には別にやってもらいたいことがあるのだ」

「なんだと?」

「実はミストバーンの担当しているカール王国がなかなかの手練れ揃いで手こずっておるのだ。

お前には早急にカールを落としてもらいたい!」

 

説明された作戦内容とあまりにも逸脱した命令に憤慨するバラン。

 

「…たったいま“残る全軍団”と言われたはず!

それに各戦線の侵攻よりも“勇者打倒”が優先なればこその六大団長集結ではなかったのか…!?」

「………」

 

憤慨し、物申すバランに対してただおし黙るだけのハドラー。

そこにいかなる理由があるのか…

側で見ているザボエラにはまったく見当も付かなかった。

おし黙るハドラーの様子に何事かを感じ取ったバランが多少落ち着いた声音で尋ねる。

 

「それとも…

そのドラとかいう小娘と私が出会ってはまずい理由でもあるのかね…?」

 

押し黙ったままのハドラー。

よほどの理由があるらしいと察したバランだがここで尋問しても口を割らないと判断し、開かれたままの扉へと向かう。

 

「…フッ、まあ良いわ。

ここは魔軍司令どのの顔を立てておこう。

カール王国へ向かう!!」

 

バランが出た後、部下によりゆっくりと閉じられた扉を見てハドラーが小さく安堵の息を漏らす。

 

(いかなバランでもカールだけはそうそう落とせんはず…!

フレイザードからの通信が途絶えたのが気がかりだが、よもや苦戦はしておるまい…

なんとしてもドラを始末せねば…)

 

「バルジ島を奴らの墓場とするのだ!!」

 

 




その頃のバルジ島

ドラ「フレイザードくーん、あっそびまっしょ〜?
出ておいでよ〜…?
ドラお姉ちゃんと遊ぼうよ〜?」クスクスクス…
マァム「もうっ、ドラったら遊びじゃないのよ?」(魔弾銃(まだんガン)でフレイムたちに攻撃しつつ)

フレイザード「ヒイィッ…」
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