ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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29_暴走と制止

「ごふッ…!??」

 

心臓を真正面から突かれたハドラーはその勢いのまま、地面に叩きつけられるようにドウッ…という音を立てて仰向けに倒れた。

胸に刺さったままの大剣が、まるで墓標のように突き立っている。

 

「ドラ…!?」

 

剣の柄から手を離しゆっくりと立ち上がるドラを、ヒュンケルは驚愕の表情で見る。

激しい戦闘と多量の出血で意識を保つのがやっとという状態のヒュンケル。

しかし戦況は待ってはくれない。

朦朧としながらもドラに状況を問いただす。

 

「ドラ…クロコダインはどうした…?

フレイザードは…?!

炎魔塔と氷魔塔があったということは奴はまだ死んでいないはず…!

今の状況はどうなっている…!?」

 

しかしドラは倒れているハドラーの方を向いたまま、背をこちらにして何も答えない。

 

「ドラ…?」

 

「よ、よくもハドラー様を…!」

「貴様、もしや勇者を名乗る小娘か…!!」

「ハドラー様の仇だ! 今ここでその命、奪ってやる…!!」

 

まだ残っていたハドラーの配下であるモンスター達が目の前で殺された主の仇を討たんと手にした武器をギラつかせてドラへと殺気を向けた。

 

「死ねえええッ!!!」

 

十体ほどのガーゴイルやアークデーモン達が我先にとドラへと攻撃を仕掛けていく。

そこでやっとドラが反応を示した。

振り向きざま、何かを投げつけるかのように素手で空を振り払ったのだ。

ヒュッ…と僅かな音を立てて空気が鳴る。

 

「うおおおおぉぉっ!!

 

お…おおっ…??!」

 

「なっ…!? 極大真空呪文(バギクロス)か…!!

なんという威力だ…!」

 

ドラが向かって来るモンスター達に放った極大真空呪文(バギクロス)はするりと敵の間を吹き抜けていった。

ドラの極大真空呪文(バギクロス)を受けたモンスター達は一歩進むごとにその身を崩していき、二歩三歩と進むころには全員が細切れの肉塊と化す。

細切れになったモンスター達には一瞥もくれず、すぐにハドラーに向き直るドラ。

そのまま無言でゆっくりと両手を上に上げて魔力を集めていく…

 

「ドラ…!! 何をしている…

もはやハドラーは息絶えた…

それ以上の攻撃は無意味だ…! ぐうぅ…っ!!」

 

ヒュンケルはドラを止めようと何とか立ち上がりドラへと歩み寄る。

ドラに届くまであと数歩というところで魔力を集めていたドラの両手に炎が生じた。

それはハドラーが放とうとしていた魔法と同じ色、同じ形の炎であった。

 

「ま…まさか…!? 極大閃熱呪文(ベギラゴン)か!!?

ドラ! 止せ!!」

 

ハドラーと同等、いや、それ以上の巨大な炎でハドラーの亡骸を消し炭にしようとするドラ。

その細い両の手で極大閃熱呪文(ベギラゴン)をハドラーへ落とそうとしたその時…

 

「ピイイイイィィィィ~~~~~~~!!!」

「わぷっ…!?」

 

もの凄い勢いで金色の物体がドラの顔面にすっ飛んで来た。

ドラを止めようと必死に羽ばたいて来たゴメちゃんだ。

今、極大閃熱呪文(ベギラゴン)を落とせばゴメちゃんも巻き添えになってしまう。

極大閃熱呪文(ベギラゴン)の炎を展開させたまま固まるドラ…

さらにそこへ頼もしい援軍がやってきた。

 

「ドラ!! 止せ!!

それを放てばヒュンケルも巻き添えになるぞ!!」

「そうじゃ! 何に攻撃しようとしておるんじゃドラ!!

正気に戻らんかあっ!!」

「ううっ…」

 

駆けつけたクロコダインがドラを羽交い締めにして動きを制した。

一緒に駆けつけたバダックもまた、ドラを正気に戻そうと声を張り上げ敵はここにいないことを告げる。

ゴメちゃん、クロコダイン、バダックの制止の声に苦しげに呻き出すドラ。

しかしまだ攻撃態勢のまま、極大閃熱呪文(ベギラゴン)の炎は消えていない…どころか魔力を溜め続けているのか徐々に炎が膨れ上がっていく。

このままでは魔力を溜めすぎて暴発してしまうだろう。

 

(致し方なし…!)

 

ヒュンケルが力を振り絞り、かつて師に教わった『闘気』を握りしめた拳に集中させる。

 

「クロコダイン…! そのまま抑えていろ…!!

 

はぁッ!!!」

 

「かはっ…!!」

 

ヒュンケルは羽交い締めにされたドラの鳩尾(みぞおち)に鋭く拳をめり込ませた。

極大閃熱呪文(ベギラゴン)の炎が搔き消えて魔力が霧散していく。

ガクリと気絶したドラをクロコダインが心配そうに覗き込んだ。

 

「おい、ドラ! しっかりしろ!」

「案ずるな…気を失わせただけだ…

ぐ、うぅ…」

「お、おい! おぬしも酷い傷じゃあ…!

すぐに手当てをせんと…」

「ピィ、ピィ~!」

 

膝をつき意識を失いかけたヒュンケルからポップとマァムが中央塔へ避難した事を告げられる。

クロコダインがヒュンケルを、バダックがドラを背負い一同は中央塔…バルジの塔へと向かうことにした。

 

 

バルジの塔入り口―

 

「ヒュンケル…ドラも…みんな無事かしら…」

「大丈夫だって! さっき炎魔塔も崩れていくのが見えたし、きっとクロコダインのおっさん達が駆けつけてくれたんだ!

そうとくりゃ、鬼に金棒よ!」

「そう…そうよね…!」

 

バルジの塔へと避難していたポップとマァム。

二人はバルジの塔の入り口で回復をしつつみんなが来るのを待つ。

バルジの塔にかけられていた破邪呪文(マホカトール)は破られてしまっていたがまだドラが描いた魔法陣が残っていた。

もう少し魔力が回復すれば魔法陣に魔力を流して再度破邪呪文(マホカトール)をかける事もできるはずだ。

そうすればここを拠点に態勢を立て直せる。

そう自分に言い聞かせてマァムを励ますポップ。

 

そこへ遠くから低い声が響いて来た。

 

「おお〜い! ポップ! マァム!」

「クロコダイン!」

「おっさん! 来てくれたんだな!

…っておい! ドラ! どうしたんだよ!?」

「ヒュンケル! 酷い怪我を…!!」

 

クロコダインとバダックに背負われたドラとヒュンケルの惨状に悲鳴を上げる二人。

ドラは深く気絶しているしヒュンケルは満身創痍で息も絶えだえだ。

マァムがヒュンケルに慌てて中級回復呪文(ベホイミ)をかける。

 

「ドラの様子がおかしかったが…

お前たち、あの紋章が何か知っているか?」

「そうじゃ、額がピカーッと光ったかと思うと次々と敵をなぎ倒していったんじゃ。

こちらの声など何も聞こえない様子じゃったぞ」

「額に紋章…」

 

マァムがかつてクロコダインとドラが戦った時のことを思い出す。

ポップはデルムリン島で、ハドラーと戦ったドラの姿を思い出していた。

 

「俺たちにもわからねえ。

…けど、その紋章が額に浮かび上がるとドラはとんでもなく強くなるんだ。

それ以外は何も知らねえ。

ドラに聞いても『不思議な力』としか言わなかった。

ドラ自身にもよくわかってねぇんじゃねえのかな…」

「むぅ…」

「ピィ~」

 

ドラの持つ超常的な力について話し合い、おし黙ってしまった一同…

そこに不気味な笑い声が響いてきた。

 

クカカカカッ…

 

ハッと顔を見合わせるポップとクロコダイン。

マァムが中級回復呪文(ベホイミ)をかけていた手を止め、魔弾銃(まだんガン)を構え周囲を警戒する。

 

「その声は…フレイザード…!!」

 

バルジの塔に潜んでいたフレイザードがドラ達勇者一行の前に姿を現した。

 

「クカカカカカーーーーッ!!!

ようやっとツキが回って来たぜーーーッ!!

 

魔王軍総がかりでも倒せなかった勇者の一行!!

おまけに裏切り者の軍団長二人も付いてくるたあ…クククッ…!

しかも全員ボロボロの状態で、勇者に至っては気絶してるってんだから笑いが止まらねえぜ!

お前らを全滅させりゃあ俺の大金星よっ!!!

 

 

…そこの小娘に受けた屈辱。

恨みを込めて殺してやらあ…!!」

 

ヒュンケルは満身創痍、ドラは気絶。

ポップとマァムも残った体力と魔力はごく僅か、バダックは武器を何も持っていない。

残る戦力はクロコダインだけという窮地。

 

勇者一行にとっての窮地は、しかしフレイザードにとってはまさに理想とも言える戦況であった。

 

 

 




ドラ(ヒュンケル~~~~~…!!!)(怒)

理性はブッ飛んでたけど意識はあったドラ。
通常、闘気を纏ったヒュンケルの拳は屈強な戦士相手でも肋骨粉砕、内臓破裂します。
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