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「恨みを込めて殺してやらあ…!!」
フレイザードがバダックを…正確にはバダックに背負われたドラを抹殺せんと半身の炎を燃え上がらせる。
「そうはさせるものですか!」
マァムが
発射された弾は真っ直ぐにフレイザードめがけて空を切る。
マァムの狙い通り、フレイザードの脳天に命中…するかと思われた瞬間、フレイザードの頭部がバラリと崩れた。
高速で発射された弾はフレイザードの脳天を貫く事なくフレイザードの後方、バルジの塔を囲む雑木林に着弾し爆風を起こして木々をなぎ倒していった。
「おおっと、危ねえ危ねえ…
クカカッ…」
「なっ…」
フレイザードは頭部をバラバラの
空中に浮遊していた
「オレがただ逃げ回ってるだけだとでも思ったかあ~?!
お前らの戦い方は石に擬態しながら、ちゃ~んと見てたんだぜ…!
その銃…魔法使いが弾を込めねえと使えねえ代物みたいじゃねえか。
ってことは躱し続けてりゃ弾切れは必至…
そこの小僧はもう魔力が残ってねえみたいだし小娘は気絶…
さあ、ジャンジャン撃ってこいよなあ~~~!?
ウヒャハハハハッ…!!!」
「…っ!!」
「くっ…フレイザード…!」
ケタケタと笑い声を響かせるフレイザード。
その笑い声を阻むかのように、若干回復したヒュンケルが立ち上がって剣を構えた。
ピタリと笑うのをやめたフレイザードは下卑た態度を一変させ氷のように底冷えする低い声でヒュンケルを
「ヒュンケルゥ~…てめえ、地底魔城でくたばったんじゃねえのかよ…
クロコダインといい、しぶとい野郎どもだぜ…!
ハッ…まあいい…
またすぐ地獄に送り返してやるよ!!」
そう言うとフレイザードは炎に包まれた左腕を上げて指を一つずつ立て始めた。
「メ…ラ…ゾー…マ…!
「アバン流刀殺法! 海破斬!!」
「ぐおぉっ!!」
「きゃああっ!!」
「な、なんの…っ!」
「うわあああぁっ!!」
「ピィィ!!」
フレイザードから放たれた五発同時の
それをヒュンケルは海破斬で斬り裂いた。
しかし向かってくる炎の全てを斬り裂くことは出来ずわずかに打ち漏らした炎が容赦なく味方に襲いかかる。
クロコダインが盾役となって全員を炎から守ろうとしたがフレイザードが放った炎の勢いはクロコダインを持ってしても防ぎきれなかった。
「くっ…みんな無事か…!?」
「あっちちち…無事なわけねえだろっ!!」
「うぅ…ヒュンケル…
こちらの事はいいからフレイザードを…!」
「ドラは俺が守る…! ヒュンケル、フレイザードを斬り伏せろ!」
「クロコダイン、ドラを頼んだぞ…!
たあああああっ!!」
ヒュンケルがフレイザードに鋭い一閃を放つ。
フレイザードも負けじと炎で目眩ましをしつつ氷の刃でヒュンケルに応戦するが鎧に弾かれてあまり効果がない。
純粋な力押しでは圧倒的にヒュンケルが有利であった。
「チィッ、ボロボロでもさすが元軍団長…
一筋縄ではいかないってか…
んんっ…?!」
ヒュンケルと打ち合っているフレイザードの目がマァムへと向けられた。
見れば先ほどの
フレイザードの半身の炎がブワリと膨らむ。
「てめえっ!! 何余計なことしてくれてんだこのクソアマァッ!!
ヒュンケルよりもてめえを先に灰にしてやるッ!!!」
カッとなったフレイザードが攻撃する対象をヒュンケルからマァムへと移した。
手にした氷の刃をマァムめがけて投げつける。
「危ねえマァム!
がっ、はぁ…!!」
「きゃあああああっ…!」
「マァム!!」
とっさにその身を盾にマァムを庇ったポップ。
飛んできたポップの体がマァムにも当たり、マァムも数メートルほど地面を転がっていく。
氷塊とポップ、二つ分の質量を伴った衝撃を受けてマァムは地面に倒れ伏した。
二人ともかろうじて息はあるが、全身を殴打し虫の息だ。
仲間を傷つけられたヒュンケルが激しく憤る。
「フレイザード…貴様…
女相手に刃を向けるとは…!
見下げ果てた真似を…!!」
「女に刃を向けたぁ…?」
フレイザードがジロリとヒュンケルを睨みつける。
「笑わせるなッ!! ここは戦場だ!
殺し合いをするところだぜ…
男も女も、ガキだろうと関係ねェ…
強い奴が生きて弱い奴は死ぬんだよ!!
傷つくのがイヤなら戦場に出てくるんじゃねえ!!」
「くっ…!」
そう言い放ち再びヒュンケルへと向き直り今度は炎の鞭をしならせるフレイザード。
海破斬で次々と炎を斬り裂くがヒュンケルばかりではなくクロコダインやドラ、バダックにも炎の鞭を向けるフレイザードを相手に徐々に防戦一方になっていく。
回復したとはいえハドラーから受けた傷は浅くはない…
ヒュンケルは自身の限界と焦りを感じ、クロコダインへと駆け寄り耳打ちをする。
「マァムが戦闘不能になった以上、長引けばこちらが不利だ。
クロコダイン…奴を少しの間でいい…
全員からひき離してくれ…!!」
「ああ、わかった。
だが、何をする気だ?」
「ブラッディースクライドでは奴の体を全て捕らえきれん…
成功するかは賭けだが、アバンより授かった技を試す…!」
ふむ…と頷き、抱きかかえていたドラをバダックへ預けクロコダインが立ち上がる。
自身の武器である真空の斧を構えてフレイザードを睨みつけた。
「フレイザード…今度は俺が相手だ…!」
「ハッ!! 小娘を守らなくていいのかよッ?!
大将…!!」
「ふん! わけもない!
その前に貴様が死ぬからなぁッ!!」
「抜かしやがってーーーッ!!!」
「カアアアアーーーーッ!!」
激昂したフレイザードがクロコダインに
しかしそれを
「ガアァッ…!!」
クロコダインの圧倒的なパワーの一撃にフレイザードの左腕が砕かれる。
その隙を逃さず、立て続けにクロコダインは必殺技を放った。
「獣王会心撃!!!」
「ギャアアッーーー!!」
ドオオオオォンッ…
放たれた獣王会心撃による衝撃波…
フレイザードの体の中心を捉えたそれは、しかしフレイザードの必死の回避により体の一部を少し削る程度に留まった。
フレイザードに当たらなかった衝撃波はその代わりバルジの塔に当たり、塔の根元をごっそりと抉り取っていった。
獣王の一撃を回避したフレイザードがハッと我に返りあたりを見回す。
構えていた剣を兜へ収め、両腕を眼前で交差する形で身構えるヒュンケルが目に飛び込んできた。
その後ろにはクロコダイン、さらに後ろにはバダックに抱きかかえられたドラとゴメちゃん、少し離れた位置にはポップとマァムが身を寄せ合っている。
「しまっ…」
「グランドクルス!!!!!」
カッ…!!
回避に夢中になるあまりアバンの使徒から離れた位置におびき寄せられた事に気づくがもう遅い。
ヒュンケルが放ったグランドクルスが凄まじい生命の輝きを放つ。
放たれた闘気の光がフレイザードを包み込みバルジの塔を十字に刻み破壊した。
ガラガラと轟音を響かせて倒壊するバルジの塔…
「おお…!!」
「なんじゃ…今の技は…」
「すっげえ…!」
「ヒュンケル…! ヒュンケルーッ!!」
もうもうと上がる土煙の中、ガクリと膝をついたまま項垂れているヒュンケルに駆け寄るマァム。
気を失っているがしっかりと息をしているのを確認して安堵の表情になる。
「まさか塔を破壊しちまうとは…」
「今のは生命エネルギー…闘気を衝撃波として繰り出す技のようだな…
しかし闘気は制御が難しい…
無尽蔵にエネルギーを放出してしまい精魂尽き果てたのだろうよ。
このまま休ませてやれ」
「は~…魔法でもないのにこの威力…
やっぱすげえんだな、こいつ…」
クロコダインがヒュンケルを横たわらせて兜を外しながら言う。
フレイザードが目の前で倒されたのだ。
もはやこの島に脅威はない。
みんなが緊張を解いてその場で休息を取ろうとした瞬間…
叫び声とともに凄まじい爆発と暴風が巻き起こった。
巻き上げられた
「だっ…!!!」
「キャアアッ!!」
「痛たたた…! そんな…
奴を倒したのをワシはちゃんと見ておったぞ…!」
「まさか…まだ生きていたのか…
フレイザード!!!」
舞い上がっていた無数の
「危ないところだったぜ…
あと一瞬体を分解するのが遅かったら消滅しちまうとこだった…
残念だったなぁ~、仕留め損なっちまってよ~…
クックックッ…
けどなあ…
あんな凄まじい技をくらってなお余裕ぶっこいてられるほどオレぁ呑気じゃねえんだよッ…!
勝利の栄光のため…
オレも命をかけててめぇら全員をブッ殺すことにしたぜ…!!
死にやがれッーーー!!!」
静止していた無数の
「
「
「ふんっ!!」
「ピイィ!」
「ひいぃ…!」
それぞれが空中に向かって攻撃をするがまったく手応えがない。
どころか呪文を受けた氷の
クロコダインによって粉砕された
「ギャッハッハッハッ!
無駄無駄ぁ…! 呪文も怪力も意味がねえ!
砕かれれば砕かれるほどオレの数が増えるだけだぜ!!
破れるわけがねえ…!」
「うぅ…、ヒュンケル…ドラ…!
せめてどちらかだけでも回復出来れば…!!」
吹き荒れる
しかし伸ばした腕はフレイザードに踏みつけられ進行を阻まれてしまった。
人型に集合していくフレイザードの体を見上げ、その異常に気づく。
(炎と冷気が消えかかっている…!!?)
見上げたフレイザードの体は纏っていた炎と氷がほぼ消えかけて剥き出しの岩だけという有様になっていた。
「ハア…ハア…
…フッ…、情けねえ姿だと思っているだろう?
この最終闘法はオレの命を著しく消耗するからな…」
「な…なぜ…
なぜそこまでして勝とうとするの!?
死の危険を冒してまで!!」
「…オレの人格には歴史がねぇ…」
「…!!?」
「ハドラー様がオレを作ってからまだ一年足らずしかたっていない…
だからオレは手柄が欲しいんだ。
たとえ百年生きようと千年生きようと手に入らねえぐらいの手柄がな!!」
「…なんて…哀れな人…
戦い以外に自分の存在を証明できるものがないなんて!」
「…クッ…
クハハハハハハハハッ!!」
その言葉を受けてフレイザードは笑いながら足に力を込めてマァムの腕を踏みにじった。
ジュウッ…という音を立てて布と肉が焼けていく何とも言えぬ嫌な匂いが煙とともに広がる。
「ああああっ!!」
「同情なんかいらねえよ!!!
勝利の瞬間の快感だけが…! 仲間の羨望の眼差しだけが…!
このオレの心を満たしてくれるんだ!!
このまま大人しくてめえらが死んでくれりゃ…
万事めでたしなんだよッ!!!!」
フレイザードがマァムへトドメを刺さんと左手に炎を集めだしたその時…
「うう~ん…」
寝起きの悪い子供がむずがりながら目を覚ますような声を出して、今までずっと気絶していたドラが目を覚ました。