ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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本日二話投稿。こちらは後編となります。
前話からどうぞ。


31_決着!フレイザード(後)

「うう~ん…」

 

寝起きの悪い子供がむずがりながら目を覚ますような声を出して、今までずっと気絶していたドラが目を覚ました。

 

 

「ピ、ピイィ~~~!!」

「!! …ドラ!!

目が覚めたのね…!」

「やっとお目覚めかい…

眠り姫ちゃんよぉ…!!」

 

あたりを見回し戦況を把握するドラ…

とりあえず頬ずりしながら泣いているゴメちゃんにまず謝罪する。

 

「ゴメちゃん…心配かけてごめんね…

あ、痛たたたた…

お腹絶対痣になってるこれ…

…ヒュンケルぅ~、もっと他に方法なかったの…?!

闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)使うとか何か方法あったでしょう…!!」

 

何がなんでも止めろと言ったのはドラだ。

今回に限っては逆恨みである。

言葉のとおり自身の暴走を止めてくれた兄弟子に対してぶつぶつと小声で文句を言いながら起き上がる。

 

「よく眠れたかよ小娘ぇ…

またすぐに眠りにつかせてやるぜ!

永遠の眠りになぁッ!!!」

「ドラ!! 危ない!!」

氷炎爆花散(ひょうえんばっかざん)!!!!」

 

至近距離で起こる爆発。

しかしドラは立ち上がった姿勢のまま、右手で目を守るように顔前にかざした。

手のひらを大きく広げてフレイザードへと向けただけであとは微動だにもしない。

 

爆発が少しおさまると深刻なダメージを受けているマァムに歩み寄り最大回復呪文(ベホマ)を唱えた。

苦痛に悶えていたマァムの表情と顔色が見る間に良くなる。

 

「ドラ…」

「マァム、ごめんね。

起きるのが遅くなって…守ってくれてありがとう。

もう大丈夫だよ」

「てめえ…なんでダメージを受けてねえんだよッ…!!」

 

竜闘気(ドラゴニックオーラ)によって覆われたドラは先ほどの爆発の炎と機関銃のように次々打ち出された(つぶて)を受けてもまったく傷ついてはいなかった。

フレイザードに向き直ると、どこか呆れた目を向けながら口を開いた。

 

「…私の見込違いだったみたい。

破邪呪文(マホカトール)が消えた時点で島の外に逃げられたら厄介だなって思ってたけど…

良かった、フレイザードが逃げ出してなくて」

「てめえッ…! まさかこのオレをコケにしてんのか…!!?」

 

人型へと戻ったフレイザードがワナワナと震えてドラをギロリと睨んだ。

慌ててマァムがドラにフレイザードの情報を告げる。

 

「ドラ! あいつには攻撃がほぼ効かないわ!

体を砕いても奴の数が増えるだけなの…!」

「クックックッ…そうさ…

オレは禁呪法で生み出された不死身の生命体…

人間になんか倒せるはずがねえのさ!!

クカカカカッ」

「知ってる。禁呪法で生み出された生命体を倒すには体のどこかにある(コア)を砕かないとならないってことも」

「…!!

知っていたからどうだってんだ…!

この体の無数にある弾岩の中に潜むオレの(コア)を見つけられるとでも!?」

 

一瞬たじろいだフレイザードだが倒し方を知っていても無意味だと開き直る。

しかしドラは今までスカートに隠れて見えなかった左手を上げた。

 

「その(コア)ってこれでしょ?」

 

「!??」

 

今度こそフレイザードの顔は驚愕に染まった。

ドラが左手に持ってポンポンと軽く放りながら弄んでるそれは間違いなく自分の(コア)だったからだ。

 

「てめえ…いつの間に…!!」

「さっき、氷炎爆花散(ひょうえんばっかざん)で攻撃された時。

…はあ、だから見込み違いだって言ったの。

一体私の何を見てたの?

魔法で攻撃もしたし、あれだけ大きい結界も張ったのに…

魔力感知が出来ないわけないでしょう?!

おまけに炎魔塔と氷魔塔も無くなった今、フレイザードの特徴的な魔力波なんて丸裸同然に見えるよ。

…まさかここまで頭が弱いとは…

生産者の影響かな…?」

 

生まれて間もないにしても自身の予想を大幅に下回ったフレイザードの知性に落胆を禁じ得ないドラ。

これ以上の問答は無意味と弄んでいた(コア)を高く頭上に放り投げて素早くパプニカのナイフを手にした。

 

「せめて敬意をもって殺してあげる。

 

アバン流刀殺法! 空烈斬ッ!!!」

 

シュパン…!

 

目にも止まらぬ速さで軽やかに斬られたフレイザードの(コア)

フレイザード自身を現しているかのような棘に覆われた二色の石が空中で半分に分解する。

同時に、フレイザードの体も(コア)と同様に半分に分裂していった。

 

「ウギャアアアァァァーーーッ!!!」

 

バシュウウゥゥッ…

 

フレイザードの体の中心から水蒸気がもうもうと吹き出してくる。

禁呪法が解けて炎と氷の半身が反発しあっているのだろう。

 

「や…やべえっ!!

左右の身体が維持できなくなってきやがった…!!

こっ…これ以上繋ぎとめておくと…

消滅しちまうっ…!!」

 

抑えていた手を離すと反発しあっていたフレイザードの半身がバアンッ!!と勢いよく離れていった。

反発し合う磁石のように離れた氷の半身にドラがすかさず魔法を浴びせる。

 

中級閃熱呪文(ベギラマ)!」

 

「ぐわああああっ!!!」

「ゲエッ!!!」

 

ジュウウ…と蒸発した氷の半身を見てもう一方の炎の半身が蛙が潰されたような悲鳴をあげた。

悲鳴をあげた炎の半身にも間髪入れずに魔法を繰り出す。

 

中級氷結呪文(ヒャダルコ)!」

 

今度こそフレイザードの命も終決…!

そうこの場にいる全員が思った時、思わぬ援軍がフレイザードの命を救った。

 

「ま…魔影参謀…!!」

「ミストバーン…!!!」

 

ドラの中級氷結呪文(ヒャダルコ)を片手で制圧したのは魔王軍魔影軍団長ミストバーンであった。

クロコダインと、いつの間にやら気絶から目を覚ましたヒュンケルが突然のミストバーンの登場に目を見開き驚愕する。

ドラは眉間に皺を寄せて無言でミストバーンを睨みつけた。

 

「ミ…ミストバーン…!

たっ…助けてくれッ…!!」

「………」

「たっ…頼むッ!!

このままじゃ死んでも死にきれねえ…

助けてくれよォッ…!!」

 

助けを請われたミストバーンが無言のまま空中を指差す。

何も無かった空中がぐにゃりと捻れるように歪んだかと思うと、そこから禍々しいオーラを発した鎧が姿を現した。

 

「…これは我が魔影軍団最強の鎧…

お前が炎の暗黒闘気、すなわち魔炎気と自らを化す決意があるなら…

与えてやろう…」

「なにィッ!?

そ…そりゃ、てめえの部下になるってことじゃねえか…!!?

そんなのオレはごめんだぜ…!!」

 

その言葉にあっさりと退避の行動を取ろうとするミストバーン…

交渉の余地が無いと悟ったフレイザードがすぐさま掌を返す。

 

「あっ! まっ…待ってくれ!!」

「………」

「本当に…

本当にそいつと一体化すりゃあやつらに勝てるんだな…!!」

「…敵はない…!」

「…わかった! やってくれ!!」

 

勝利と生への執着に目が眩んだフレイザードが『是』の意をフレイザードに示した。

片手を妖しく動かし、フレイザードの炎を空中に浮かんだ鎧に宿らせるミストバーン…

ブワアッ…と鎧から炎が噴き出したかと思うと、畳まれていた鎧がジャキン…!と両手両足を伸ばして着地した。

 

フレイザードが新たに宿った鎧に歓喜の声を上げる…!

真っ暗なフルフェイスの奥に憎悪に燃え盛る瞳がカッと見開かれた。

 

「コオォォォ…

 

力が…力が漲ってくる…

信じられないような…

すさまじい力だ…!

こいつあ凄いぜェェッ!!!」

「………」

 

先ほどの命乞いから一変。

圧倒的有利に立ったと確信したフレイザードがドラめがけて突進してきた。

 

「い…いかん…!」

 

クロコダインが突進してきたフレイザードを全身を使って押しとめる。

しかし鎧を纏い、体格も重量もクロコダインより一回りも大きくなったフレイザードを止めるにはあとほんの少し足りなかった。

寸の間の押し合いの後、クロコダインはその巨躯を遠くの地面に放り投げられてしまう。

ズズゥン…と振動が地面を伝わり足に響く。

 

中級氷結呪文(ヒャダルコ)!!」

 

ポップが残った魔力をかき集めて放った呪文はしかし、フレイザードの鎧にはまったく意味を為さなかった。

フルフェイスの奥からギロリと目を光らせポップを睨みつけると今度はポップめがけて突進してきた。

ヒュンケルが間に入り、ポップを庇う。

 

ドガアッ…!!

 

「がはっ…!!」

「ぐぅぅっ…」

「ギャハハハッ!! 気に入った…!

最高だぜこの身体はよ…ミストバーン!!

クロコダインより強くしかも速い…!!

おまけにヒュンケルの鎧と同じ金属で出来てやがるようだな…

呪文を全く受け付けねぇぜ!

クククッ…完全無欠ってやつじゃねえか…!

 

ドラ…これでお前も…

終いだあああああッ!!!」

 

ドラめがけて突進するフレイザード…

 

「危ないっ! 避けてドラーーーッ!!」

「ピイィ~~~!!」

「くっ…ドラ…!」

「逃げろ…うぅっ…」

 

 

そんな周りの声を受けたドラはというと、いつの間にかヒュンケルの魔剣を手に必殺技の構えを取っていた。

足元にはヒュンケルの兜が転がっている。

 

「だから…お前は、私の、何を見ていたっていうの?

フレイザード…!!

次に生まれ変わる時は、もっと頭の良い奴に作られるといいね…!」

 

 アバンストラッシュ!!!

 

竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏ったドラの渾身のアバンストラッシュ。

それはまるで熱したナイフでケーキを切るかのように、フレイザードの鎧をいとも簡単に真っ二つに…

元の体のフレイザードを現すかのようにちょうど半分に斬り裂いた。

 

 

「「「やっ…やったあああああ!!!!」」」

 

「…素晴らしい!」

 

魔王軍に属するはずのミストバーンが、勇者であるドラへの賛辞を口にした。

斬られた衝撃で、フレイザードの鎧がバラバラと分解していく…

 

パサッ…

 

「………」

 

分解して地面に散らばった鎧の残骸の中…

かろうじて目玉だけになったフレイザード。

 

「てっ…てめえ…

嘘つきやがったな…

なにが…

最強の…鎧だ…!」

「…あれは紛れもなく、我が軍最強の鎧…

壊されたのはそれより相手の技が優っていたというだけの話だろう」

「たっ…たのむ…

もう一度チャンスを…

ミストバ…!?」

 

言い終わる前に、ミストバーンは言い募るフレイザードを足で乱暴に踏みつける。

呆気なく最後を迎えたフレイザード…

フレイザードが消滅したと見るや、ミストバーンの姿はフッ…と空中にかき消えていった。

一部始終を見ていたポップが思わずといったていで口を開く。

 

「ひでえことしやがるぜ…

味方なのによ…

 

…破片くらい集めて、墓ぐらい作ってやっか…?」

 

その言葉にヒュンケルが崩れ落ちたバルジの塔を指し示す。

そこには夕日を受けてキラリと光る『暴魔のメダル』が落ちていた。

 

「…いらんよ…

あれがヤツの墓標だ…」

 

その時ヒュウゥ…と吹いた風はどこか、フレイザードの短い人生を惜しむかのように物悲しい音を鳴らして過ぎ去っていった。

 

 

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