ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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34_デパートへ行こう!

「あいすいません…なにぶんまだ店がこんな状態でして…」

「ですよねえ…」

 

ドラとポップは今、パプニカの城下町でも品揃えが一番良いと評判の防具屋へ来ていた。

しかその結果たるや…

日に日に復興の兆しを見せているパプニカではあるが、元が壊滅状態だったのだ。

店に置いてある品が『布の服』や『旅人の服』だけだったとしても懸命の努力が見て取れた。

 

防具屋を後にしたドラとポップ。

装備を整えようとあちこちの店を巡るが、どの店もまだ十分な品揃えが無く何も新調出来ずにいた。

復興に向け忙しく働く人々の喧騒を眺めながらポップが言う。

 

「でもまあ、俺たちゃ魔法使いなんだしさ。別にいいんじゃねえの?

そこまで装備に拘らなくても…」

「ポップ…」

 

普段はおっとりとした印象を抱かせる大きな垂れ目を鋭く光らせながら、ドラがポップを睨みつける。

 

「私のお気に入りの外套(マント)…もうボロボロなんだけど…」

「お、おう…そうだな…」

「フードの先っぽがとんがってて、可愛かったんだけど。色も気に入ってたし…」

「あ、ああ…良く似合ってたぜ…?

けどよ…外套(マント)なんてどれも守備力に大差無いんだし、どれでもいいだろ?」

「良くないッ!!」

 

もの凄い剣幕のドラにポップが引く。

 

「全っ然良くない!! 装備が気に入らないと気持ちが盛り上がらない!!

気持ちが盛り上がらないと気力も上がらない!

イコール魔力も上がらない!!

私たち魔法使いでしょ!?

精神力を高く保つのも大事なの!!? わかるでしょう!?

装備が可愛くないと戦闘する気になれないのッ!!」

 

ぷんっと頰を膨らませてそっぽを向くドラ。

ドラのとんでもない持論に「えぇ…」とポップはドン引く。

装備が可愛くないと戦闘する気になれないとは…?

そんな理由初めて聞いた。

 

…しかしよくよく思い出してみれば実家の武器屋でもたまに「格好いい武器はないか」と聞いてくる客がいたような…

攻撃力は二の次でとにかく見た目が良く、強そうに見えればいいという。

そんな客に対して親父が「ふざけるんじゃねぇっ!!」と店中に響く声を出して揉めていたことを思い出す。

その後「一体うちの武器をなんだと思っていやがるんだあの野郎…!」としばらく不機嫌だった父親に対して短気で粗暴としか思わず反発する一因となっていたポップだが、今になって少しだけ当時の父親の気持ちがわかる気がした。

世の中にはそれぞれ、人によっていろんなニーズがあるもんだなぁ…と、ドラに対して思うところを全て飲み込んでひとつ提案を促す。

 

「ならもうさ、姫さんに直接聞いてみろよ。

王族だろ? 各国の情報とか、俺たちの比じゃないだろうし…すげえ伝手も多いんじゃねえかな?」

「そうだった! よし、レオナに直接聞いてみよう!」

 

むくれていたかと思ったらルンルンとした足取りで王宮へ向かうドラを見てポップは思う。

 

(ドラってこんなにワガママだったっけかなあ…?

う〜ん………

 

まあ、可愛いから良いか! さっきからまわりの男どもの嫉妬の視線が凄くてちょっと優越感だしな…!)

 

本来なら兄弟子としてドラのワガママを諌めなければならないのだが…

しかしドラが年齢より若干身長が高く、傍目からは仲の良い兄妹…下手をするとカップルにも見られる状況にポップは浮かれていた。

ポップが諌めないのを良しとして、ドラもポップには甘えた声でワガママを言う構図が生まれつつある今日この頃…

二人から遠い地、修行のため『破邪の洞窟』で一人休眠を取るアバンがその姿を夢に見て

 

「いけませんっ! そこは諌めなければドラさんのためになりませんよッ、ポップ!!」

 

と自身の寝言で飛び起きて「お、おや…自分とした事が…寝ぼけましたね…」と恥ずかしそうに呟いた事は当然のこと、ドラとポップにはまったく伝わらずに終わったのであった。

 

そんなアバンの寝言はさておき、王宮へと戻ったドラ。

さっそくレオナがいるという部屋へ案内してもらった。

 

「レオナ、ちょっと相談があるんだけど…」

「あ〜〜ら〜〜?

な〜に、ドラちゃ〜〜ん?

 

…あ、みんな今の話はまた今度ね♡」

 

声をかけて入った部屋の中には頭に装備していた額当てを外した三賢者とバダックがいた。

 

(あ、原作のこのシーンだったか。

三賢者さん達も勇者一行の旅に同行したいって願い出たとこか。

でも、もし本当に同行したいって言われても断るしかないなぁ…

これからは本当にもう、『普通の人間』には耐えられない領域になるし…)

 

ごめんなさい、と心の中で謝罪しつつレオナに相談を持ちかけるドラ。

 

「あのね、装備を新調したいんだけど…」

「装備? ならベンガーナ王国よ!

ベンガーナにはデパートまであるんだから!!」

「デパート!」

「あら、ドラちゃん知ってるの?」

「聞いたことある! 百貨店って言ってたくさんお店を入れた建物なんでしょう!?」

 

聞いたことがある、というか前世で何度もデパートに行ったことがあるドラ。

今世ではまだ行ったことがないので是非ともファンタジー世界のデパートに行ってみたいと意気込む。

キラキラと期待に目を輝かせるドラにレオナがにま〜っ…と王女らしからぬ笑顔を浮かべた。

 

 

「こっ…国王様…大変です!!

レオナ姫様が気球を勝手に…!」

「何事だ…!?」

 

執務室で政務に追われていたパプニカ国王に三賢者の一人であるアポロが火急の要件を伝える。

重要な書類を置き取り急ぎ城の屋上へ上がると気球の見張りをしていた兵士がぐったりと倒れていた。

すでに屋上にいた三賢者のエイミが兵士の様子を伺い「催眠呪文(ラリホー)で眠らされたようです…」と国王へ報告をする。

 

「レオナ!!」

「うわっ…もう見つかっちゃった… !?

お父様、ごめんなさ〜い! すぐ戻るから心配しないでね〜〜〜っ!!」

「国王様、ごめんなさ〜い! 私がちゃんと護衛しますから〜!!」

「ピッピイィ〜」

 

徐々に空へと高度を上げていく気球にはレオナとドラ、ゴメちゃんが乗っていた。

 

「姫…」

「陛下…申し訳ありませぬ、ワシが目を離した隙に…」

 

気球を見上げ途方に暮れるマリンとバダック。

国王はそんな二人を見て叱責するでなく、仕方ないなというように一つため息をつく。

そして雲ひとつない青空へと登っていく気球を見て微笑んだ。

 

「良い。見張りをしていた兵にも目覚めたら咎めは無しと伝えよ。

…あれも、ずっと張り詰めておったからな。

それだけパプニカに平和が戻ってきたという事であろうよ。

それに勇者殿も一緒だ。数日の間なら大目に見よう」

 

ずっと鳴りを潜めていた娘のじゃじゃ馬っぷりを見て、国王はどこか嬉しそうに寛大な処遇を申し渡した。

そのまましばらく空を見上げて穏やかな風を頬に感じる。

青空の下、臨んだ城下町では人々が力を合わせて建物を直し重い荷物を額に汗して運ぶ姿が見えた。

清々しい気持ちでさて政務に戻るかと屋上を後にしようとした国王に、バダックから思わぬ流れ弾が飛んできた。

 

「…しかし、姫様のあの性格はまさしく陛下ゆずりでございますなあ。

陛下もお若い時分は何度もああして気球を使って城を抜け出して…

ワシは何度先王陛下にお叱りを受けたことやら…」

「うっ…」

 

清々しい気持ちから一転。

まだ若かった時のヤンチャっぷりを持ち出された国王はバツが悪そうな顔をしてそそくさと執務室へと戻って行った。

 

 

青空に浮かぶ気球の中ではドラが風を受けてふにゃふにゃとした笑顔で喜んでいた。

 

「風、気持ちいい〜… 気球って楽しいねえ。

…あっ、ポップにも声かければ良かった!! 今からでも呼びに行ってきていい!?」

「ポップ…!? ああ、あの魔法使い君ね、別にいいんじゃない?

わざわざ呼ばなくても…

なんかちょっと頼りなさそうだしまだまだ実戦経験足りなさそうだし。

いてもいなくてもおんなじだと思うけど…!」

「大丈夫だよ。ポップ、ああ見えて頼りになるし今頑張って修行してるもの。

これからどんどん強くなるよ」

「そうかな? ああいうタイプって仲間がピンチになったら真っ先に逃げるわよ…!!」

「レオナ、鋭い…!」

 

付き合いは短いはずなのにしっかりとポップの内面を見抜いたレオナにドラが感心する。

まあ事実ではあるのだがポップの将来性を信じてフォローを重ねるドラ。

そんなふうに諤々とお互い言い合っているといつの間にやら気球の下に飛んで会話を聞いていたポップが勢い良く飛び出した。

 

「言いたい事言ってんじゃねえ!!」

「あら、いたの?」

「ポップ! 良かった、呼びに行こうかと…」

「せっかく女の子だけでお買い物行こうかと思ったのに…パプニカに戻れば?」

「なんだとこの…!!」

「まあまあ」

「ピィピィ」

 

何はともあれ和気藹々とベンガーナに向かった三人と一匹であった。

 

 

ベンガーナ―

 

人々の間で“最も安全な国”と呼ばれる軍備・商業ともに発達した王国である。

世界一とも言われる経済力をバックに豊富な武器・物資によってなんとか魔王軍の侵攻を防いでいる、人類にとって『最後の砦』とも呼べる国だ。

 

気球から見下ろした先には魔王軍の爪痕がどこにもない、それは見事な街が広がっていた。

気球から馬車に乗り換えた一行は馬を操れるのがレオナだけとあって、手綱を任せる。

 

「あはははっ! そおれっ!!」

「きゃ〜♪」

「もっ…もうちょっとスピード落とせよ姫さんよおっ!!」

「なんてことないわよこのぐらい…!」

「ど…どーゆー性格してんだよこいつ…!!」

「レオナっ! もっと飛ばして!」

「お前もどーゆー性格してんだよ!!」

「オッケー!! しっかり掴まってて!」

「ぎゃああああ…!!」

「ピィ〜〜〜…!!」

 

猛スピードで駆け抜く馬車から落ちそうになり悲鳴をあげるポップ。

女子二人に文字通り振り回され、デパートに到着する頃にはぐったりとして馬車からまろび出てまるで生まれたての子馬のように足をガクガクとさせながら歩くはめになった。

同じく振り回されたゴメちゃんもくるくると目を回しながらフラフラと飛んでいる。

 

「あ〜、楽しかったねえ!」

「ど、どこがだ…とんでもねえのととんでもねえのが出会っちまった…

俺…生きて帰れるかな…」

「さあ、二人ともデパートに着いたわよ!」

 

レオナが指し示した先にはお城と言っても信じてしまうような立派な建物がそびえていた。

大きい店と言われてせいぜい二階建ての大きな建物を想像していたポップは予想をはるかに超えた大きさに驚愕する。

 

「でっ…でけえ、俺の実家の武器屋の百倍くらいあらぁ…」

「可愛い服、あるかな〜」

「装備を揃えるなら4階からかしら…上から順に見て回りましょう」

 

デパートの中に入った三人は装備を中心に、あちこちを見て回る。

さすがファンタジー世界、武器や防具をメインに売っているのもなんだか不思議な光景だが日用品のコーナーにも最高級品と書かれた馬糞がドンと置いてあったり薬草の専用スペースが大きく取られていたりと前世のデパートとの違いにドラは興奮しきりだった。

せっかくなので購入はせずともレオナと二人あれこれと試着をしまくる。

あまりにも試着を繰り返したせいで待たせていたポップがいい加減にしろとうんざりとして怒り出す始末である。

大サービスでレオナと二人、『あぶない水着』を来てポーズを決めたら「つつしめこのバカ!!」と怒鳴られてしまった。

しっかり食い入るように見て鼻血まで出していたのに…解せぬ。

 

お目当ての可愛い外套(マント)も手に入り大満足のドラ。

そんなこんなではしゃぎながら装備を整えてデパ地下グルメも堪能して店内をブラブラしていたら武器屋の階の一角に人だかりが出来ていた。

吸い寄せられるように近寄るドラ達。

 

「なにかしらこの人だかり…」

「あっ、ありゃドラゴンキラーじゃねえか!!」

「へえ〜、あれがドラゴンキラー…私初めて見た。

面白い形してるね?」

 

人だかりの中心に置かれているドラゴンキラーは剣ではなく、腕に装着して突くように攻撃する手持ち武器の一種だった。

近くにいた店員に話を聞くと、形状や素材が特殊で作れる人間が限られるので滅多に市場に出ることはなく値段も相応に張るということだった。

原作と同じく、これからオークションが開かれて競い合って値段が決まるらしい。

三人でふんふんと感心しながら話を聞いていたら突然声がかかった。

 

「あんたら、その武器買おうってのかい?」

「へっ…!? い、いいえ? 珍しいから話を聞いていただけです。

私、魔法使いだからそもそも使いませんし…」

「ああ、それがいいよ。

大金払ってバカの仲間入りなんかすることはないさ…

まったく、高い金払ったところで強くなれるわけじゃないってのにさ…!

なんでそんなこともわかんないんだか…」

 

(この二人は…)

 

話しかけて来たのは小柄な老婆。

黒いローブと黒いとんがり帽子を被り、『童話に出てくる魔女』というイメージがぴったりだ。

そのそばに静かに佇んでいるのは手に水晶玉を持ち、長衣を身に纏った清楚な美少女。

流れるような黒髪と大きな黒目が特徴的で、片方だけ露出させた肩が清楚な中に色っぽさを醸し出している。

占い師のナバラとその孫のメルルであった。

 

しゃがれ声ながらもよく通る大きな声で喋るナバラの言葉に、ドラゴンキラーを熱心に見つめていた客の男達が怒鳴り声をあげた。

 

「なっ…なんだとぉ!? このババア!!」

「そりゃあオレたちのことか…!?」

「へっ、他に誰がいるんだい…!!」

「てめえっ!!」

 

がなる男達にまったく怯むことなく言い返すナバラ。

さすがに言葉が過ぎると思ったのか、そばに寄り添うメルルが止めに入った。

 

「おやめください、おばあさま!

みなさん、すみません…祖母は口が悪くて…」

「…フン、あたしゃ思ったとおりを言ったまでだよ…!!」

 

ペコペコと謝罪し、祖母を伴ってその場を離れていくメルル。

突然やってきて侮辱された男達は謝罪されてもなお腹の虫がおさまらない様子だった。

 

「…占い師みたいだったわね…」

「ああ…でもさ、若いほうのコはちょっと美人だったよな…!」

 

(ちょっとどころじゃなくてしっかり美人だったじゃん…)

 

呆れた目でポップを見るドラだが、ドラは自分にも原因があることに気づいていない。

アバン、ドラ、マァム、レオナ、ヒュンケル…ポップのまわりの顔面偏差値が高過ぎるのだ。

他にもあげればアポロ、マリン、エイミとポップの周囲には基本的に顔の整った人間がよく集まる。

生まれ持った幸運値の高さは伊達ではない。

運の良さは意外なところで、本人すら知らずに発揮されていた。

 

用事を終えてデパートの階段を下り店を出ようとするナバラとメルル。

 

「…だめだね。この国も見せかけばかりが発達してさ…

どうした、メルル?」

「…おばあさま…何か来るわっ…

恐ろしい力を持った生き物が…たくさん!」

「なんだって!!? …あたしにゃまだ見えん…

メルル、お前にも我が一族の能力が備わってきたようだね…」

「…来るわ…今すぐに…!!」

 

顔色を真っ青にして震えながら敵の襲来を予言するメルル…

一方その頃ドラ達は…

 

「屋上レストランの展望、すごいね! 海、綺麗〜!!」

「ああ! こんな景色を眺めながら食事が楽しめるなんて、やっぱデパートってすげぇぜ…!」

「ドラちゃん、パフェ来たわよっ!

写真撮って写真!!」

「オッケー! あ、ゴメちゃんも入って入って!

そうそう可愛くポーズして〜」

 

スイーツを手に映え写真を撮る美少女二人と観光地で全力ではしゃぐタイプの少年一人、そしてマスコットの一匹。

全員で思いっきりデパートを満喫していた。

 

 




日常回書くのが楽しすぎる…!
ナバラとメルルは多分デパートによくある占いコーナーで仕事した帰りだったんじゃないかな…
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