ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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04_ガールミーツガール

ニセ勇者一行を追い返してから3ヶ月後…

いつもと変わらぬ波の穏やかな日の朝、デルムリン島にちょっとした事件が起きた。

 

「おじいちゃん、なんか大きな船が来たよ」

「あ、あれは…」

 

ブラス老が望遠鏡を覗き込みながら唸る。

 

「あれは聖なる船じゃ…。修行に修行を重ね、魔法使い・僧侶の呪文をすべて使いこなすほどに成長した“賢者”にのみ使うことを許される船なんじゃぞ」

「へえ…」

 

なぜこの島に聖なる船が…と訝しむブラス老を横目にドラは「ついに来てしまった」と複雑な気持ちになった。

あの船が来たということはこの世界は限りなく『原作』の流れに沿って動いているということだ。

 

原作では「勇者ダイ」だからこそ為し得た奇跡が数多あった。

「ダイ君」だからこそ仲間との絆で数々の危機を乗り越えられたのだ。

正直自分は世界の危機を救うなどという大志はまったく持っていない。自分の望みはあくまで(ドラゴン)の騎士一家の救済であって世界の救済ではないのだ。

なるようにしかならないと思っていても、「自分」という原作には無いイレギュラーな存在がどのような結果を招くのか想像もできない。

 

しかしドラとて今日までただ指を咥えて無為に時間を過ごしていたわけではない。

やれるだけの準備はしっかりしてきたし努力した分、実力も自信も付いた。

その上でこれから先、様々な人との出会いが良い未来に繋がっていくのかそれとも悪い未来に繋がるのか…

ええいままよ。女は度胸である。

 

やがて大きな船から複数の人間を乗せた小舟が出て来て砂浜に到着した。

パプニカの司祭と賢者と名乗る男たちが「パプニカの姫にお力添えを…」と慇懃な態度で申し出る。

大人達に傅かれるなか、一人の少女が姿勢良く威風堂々といったオーラを醸して近づいてくる。

 

「「…」」

 

美しい黄金(こがね)色の髪を靡かせた姫君と艶やかな美しい黒髪の少女(ドラ)が無言で視線を合わせる。

じっ、とお互い見つめ合うこと3秒

 

「やっだ〜〜〜っ! 凄腕の魔法使いって言うからもっといかついかと思ったら私と同じくらいの女の子じゃな〜〜〜いっ!」

 

「きゃ〜〜〜っ! 私お姫さま初めて見ました!!

御髪(おぐし)がすごいキラキラしてるっ! 肌白〜〜い! 綺麗〜〜〜!!」

 

会って5秒できゃあきゃあとはしゃいでガールズトークをし出した2人に周囲がズコッと脱力した。

お互いの容姿を褒めて名前は何か年はいくつかと矢継ぎ早に質問タイムに移った2人を慌てて引き離して近くの小岩に座らせる。

年頃の女子のおしゃべりは放っておくと永遠に終わらないと判断した臣下たち、英断である。

その後の流れは原作と同じく、島の奥地にある大穴へ行き儀式をしなければならない。その道案内を頼みたいとの申し出にブラス老が快諾をした。

 

「王家の者の洗礼は実に50年ぶりなのです。そんな折、ロモス国の王からドラ嬢の勇名を伺いましての…

なんでもおよそ少女とは思えない魔法の使い手とか…」

「うむ、その通りですじゃ!ドラこそ魔法に愛されし魔法の申し子!

姫君の道案内など造作もないこと、大船に乗ったつもりでご安心めされよ!」

 

ニセ勇者一行の件でロモスに行った時の事がどうやらパプニカにも伝わっていたらしい。

ドラとしては「はて?あの時は瞬間移動呪文(ルーラ)飛翔呪文(トベルーラ)くらいしか使っていなかったと思うけど…?」と内心不思議に思っているが瞬間移動呪文(ルーラ)の使い手が希少なこの世界。ドラくらいの年齢で大人4人を運べる時点で超が付くほど優秀な魔法使いに分類される。

そんな事を考えていたドラを置き去りにして会話は進みあれよあれよとお姫様の道案内を任される事となった。

 

「ドラちゃんって言うのね、あたしレオナよ」

「初めまして、ドラです。島には私とおじいちゃんとゴメちゃん達モンスターしか住んでないから、女の子のお友達初めて! それがお姫さまなんて! すっごく嬉しいし素敵!」

「あたしも、『同じ年くらいの女の子のお友達』って実は初めてなの! 仲良くしましょ!」

「うん!」

 

キャッキャッとはしゃぎ通して道を進む2人。

お互い話せば話すほど気が合う事がわかったのか会話に花が咲く。咲きすぎて花束に出来そうな勢いである。

ちなみにドラは12歳にしては背が高いほうなのでレオナより少し低い程度の身長だ。

並んで歩くとほぼ同い年にしか見えない。

おしゃべりしながら歩いているとあっという間に大穴に到着する。

さっそく洗礼の準備に取り掛かる神官たち。

それを遠目に見ながら、森に身を潜めた男が手にした筒を空に構えて「デルパッ!」と唱える。

 

「姫、もうじき儀式の準備が整います。姫もそろそろご準備を…」

「は〜い」

「お姫さま、頑張ってくださいね!」

「ありがと、ドラちゃん。行ってくるわね」

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!! なぜだ!? なぜ姫を襲わん!!?

行ってレオナ姫を始末するんだ!!! どこへ行く?!!!」

 

大穴で儀式をするレオナ姫を見守る神官たち。

さらにその周囲をぐるりと大きく島のモンスター達が取り囲む。

島のモンスター達に周囲を警戒するようあらかじめ指示を出していたドラは、森に身を潜めレオナ姫を不慮の事故に見せかけて暗殺しようとしていた賢者バロンと、賢者バロンが使役している魔のサソリを冷えた目つきで遠くから見据えていた。

ドラの無言の威圧に、本能で恐れを為した魔のサソリはバロンの命令を無視し、森を抜けて海岸の方角へと走って行く。

予期せぬ事態に慌てたバロンも瞬間移動呪文(ルーラ)で移動する。

 

「みんな、儀式に邪魔が入らないように見張っててね!」

「ピィッ!」

「グルルルル」

「ウォーン!」

 

言うが早いかドラも魔のサソリを追いかけて海岸へと向かった。

 

ゴウウウウゥン!!!!!!

 

海岸から物凄い音が鳴り響いてきた。

魔のサソリを追いかけ森を駆け抜ける。砂浜に着いたところで魔のサソリに追いついたドラは『刷り込み(インプリント)』を使って強制的に命令を下す。

 

「アレを攻撃しろ!」

 

ドラが「アレ」と指差した先には、炎上し煙をもうもうとあげた停泊中の船が、そしてその火煙の中から殺人機械(キラーマシーン)が姿を現した。

命令を下された魔のサソリは猛毒を持つ尾を大きく上げ、両手に備わった鋭利なハサミからシャキンッ、シャキンッと凶悪な音を出して殺人機械(キラーマシーン)へと突進した。

魔のサソリが向かっていった先の殺人機械(キラーマシーン)目掛け、ドラは次の行動をとる。

 

中級火炎呪文(メラミ)!!」

 

放たれた火球がボゥンッ!!と大きな音を立てて殺人機械(キラーマシーン)を包む。

 

「おじいちゃん! みんなも! あいつから離れて!!」

「な、な、なぜあれがここに…?! ド、ドラ…無茶じゃ…こいつに魔法は効かん…!

ドラも早く逃げるんじゃ…!」

 

殺人機械(キラーマシーン)はかつて魔王が勇者を葬るために作った戦闘機械だ。

その装甲は魔法も物理的な攻撃も、並大抵の力量では傷一つ付けられないよう頑丈にコーティングが施されている。

殺人機械(キラーマシーン)を包んでいた火球が徐々に消えていき、現れた殺人機械(キラーマシーン)の頭部、コックピットにあたる部分にバロンが座っていた。

 

「そのジジイの言う通りだ、小娘…

この殺人機械(キラーマシーン)に魔法は通用しない…

…ついでに、」

 

殺人機械(キラーマシーン)が大きく足を上げ、足元で攻撃をしていた魔のサソリ目掛けて振り下ろす。

次の瞬間…

 

グシャァ…ッ!

 

魔のサソリの硬い甲殻は殺人機械(キラーマシーン)によりいとも簡単に踏み砕かれてしまった。

 

「魔のサソリの攻撃程度でどうこうなるとでも思ったか?

残念。この装甲にはどんな毒も攻撃も通用せん。

くっくっく…」

「魔のサソリがここに… どういうことだバロン!!

貴様、まさか姫の抹殺にしくじりよったか!?」

「くっ…、うるさい!! このまま殺人機械(キラーマシーン)で儀式をしている姫を殺せば良いのだ!」

「こ、こやつら…まさか姫君を殺めようと…

神に仕える身でありながら主君の命を奪おうとは…許せぬ!」

 

殺人機械(キラーマシーン)を操っているバロンに対し、司教テムジンが詰め寄る。

魔のサソリが殺人機械(キラーマシーン)によって砕かれたことでレオナ姫の暗殺計画の失敗を悟り本性を現したのだ。

司教テムジンに同行していた幾人かの神官達も計画の失敗を知り、口封じをしようとドラとブラス老を取り囲む。

槍を持ちこちらを取り囲む神官達に向かってブラス老が咄嗟に魔力波で衝撃を与える。

 

「ぐぁっ!?」「ぎゃっ!!」

 

閃光が走り、神官達が昏倒する。司教テムジンは持っていた魔力耐性が高かったのか、一瞬怯んだようだがさして効果が無かったようだ。

しかし意識を保っているのが自分だけと見ると、状況の不利を感じたのか殺人機械(キラーマシーン)に乗ったバロンに向けて声高に命令を出す。

 

「バロン! こいつらを踏み砕け!

 

…な、何をするかバロン!! わしではない!! あのジジイと小娘だ!

こら… やめっ… ぎゃあっ!!」

「俺に口出しするな…お前も、姫も、神官達も皆殺しにしてパプニカを牛耳るのは、この俺だ!!」

「いかん…あの男は完全に殺人機械(キラーマシーン)の破壊力に心を奪われておる…!!」

 

殺人機械(キラーマシーン)がガシャン、ガシャン、と一歩ずつこちらに近づく。

 

「ドラ…お前だけでも逃げるんじゃ…

…ドラ?」

 

ドラは静かに目を瞑り集中していた。

手には短めのロッドを構え、殺人機械(キラーマシーン)へ向けて魔力を構築していく。

すぅ、と短く空気を吸い込み、言葉に乗せた魔力とともに息を吐く。

 

最大火炎呪文(メラゾーマ)

 

ドラが瞑っていた瞳を開け、静かに呪文を口にすると殺人機械(キラーマシーン)の足元から炎の渦が舞い上がった。

 

「ふはっははははは! 無駄だ小娘!

殺人機械(キラーマシーン)に魔法は効かないと言っているだろうが!!」

「も、もの凄い炎じゃ… しかし殺人機械(キラーマシーン)には効いておらん…」

「おじいちゃん、危ないから離れてよう」

 

巨体を包むほどに魔力を練り上げられて大渦を巻く見事な最大火炎呪文(メラゾーマ)

しかし殺人機械(キラーマシーン)の装甲は高温の炎にも余裕で耐えている。

慌てた様子も無く殺人機械(キラーマシーン)から歩いて離れるドラの後をブラス老も慌てて追いかける。

炎に包まれ、視界が悪いのか殺人機械(キラーマシーン)はその歩みを止めていた。ブラス老は「まさか最大火炎呪文(メラゾーマ)で足止めをする作戦か…?」と思ったがそれにしてはドラの様子が落ち着きすぎている。

炎の熱気が届かなくなったところで歩みを止めるドラ。

未だ上がり続けている炎の渦。

 

 

 

 

長い。

 

「なんと… ただでさえ強力な炎を呼び出す最大火炎呪文(メラゾーマ)をあれほど長く維持できるとは…」

 

およそ5分ほど、最大火炎呪文(メラゾーマ)殺人機械(キラーマシーン)をこんがりローストしてかき消えた。

炎が消えるや否や無傷の殺人機械(キラーマシーン)の頭部がパカンッと開き中からぐったりとした様子のバロンが飛び出してくる。

 

あ、良かった生きてる。

 

最大火炎呪文(メラゾーマ)の時間調整は難しかったが何とか上手くいったようだ。

殺人機械(キラーマシーン)本体への攻撃ではなく、中にいる人間の酸欠を狙い、魔のサソリで足止めをしている間にドラは最大火炎呪文(メラゾーマ)の構築に意識を集中していた。

 

意識朦朧としているバロンと浜辺に散らばっている謀反人たちを回収して縛り上げる。

数時間ほど待つと儀式を終えた姫と神官達が戻ってきて海岸の惨状に仰天した。

 

 

 

 

「ドラちゃん…ありがとう。命の恩人ね」

「レオナ姫さまが無事で良かったです」

「ちょっと! 他人行儀ね! 『レオナ』って呼んでちょうだい!」

「レオナ…」

 

照れくさそうに自分の名前を呼んだドラに、満足そうに頷いたレオナは一振りのナイフをこちらに差し出す。

 

「これ…」

 

それは特徴的な形と美しい刀身を持ち、煌めく宝玉が埋め込まれた『パプニカのナイフ』だった。

 

「これ、あげるわ。助けてくれたお礼と、私たちの友情の証。

けっこう由緒正しいナイフなのよ。

…ね、また会いましょうあたしたち。約束よ」

「うん!レオナ!」

 

お互いをぎゅっと抱きしめて別れの挨拶を交わす。

迎えに来た船が沖に進んでいく。

パプニカに帰っていく船が小さくなって見えなくなるまでドラはずっと手を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うわあああああっ!!」

「ぎゃあああああっ!!」

「ま、魔王だ! 魔王の怪物たちだ…!!」

「まさか… それでは…!」

 

「魔王がよみがえったーーーーーーっ!?」

 




ドラちゃんの装備
・ぬののふく(ひざ下くらいのスカートタイプ)
・まほうのロッド
・パプニカのナイフ←new
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