ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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37_竜騎将バラン

ドラ達がベンガーナからテランへと向かっていた頃…

魔王軍の本拠地偵察へと赴いたヒュンケルとクロコダイン。

ギルドメイン山脈の奥深く、鬼岩城のあった場所へと到着した二人は『あるはずの物が存在しない』という状況にしばし言葉が出せずにいた。

 

「鬼岩城が…消えた…!?」

 

荒涼とした岩山に囲まれ禍々しくそびえ立っていた鬼岩城が消失していたのだ。

まるでそこから抜け出たようにぽっかりと大きく穿たれた岩肌。

何か恐ろしい事が起きようとしている…。

そう感じたヒュンケルはこの異常事態を一刻も早く知らせるべく、クロコダインにドラ達のもとへ急ぎ引き返すように言った。

 

そして自身は鬼岩城があった場所から続く“足跡”にしか見えない大きな四角い窪みの後を追いかけたのである。

その“足跡”はギルドメイン山脈からテランを越えて、遠くカール王国まで続いていた。

カール王国の北端、「世界の果て」と呼ばれ生物が1匹もいないと噂される『死の大地』を臨む海岸へと到着したヒュンケル。

“足跡”は途絶え、鬼岩城は遠く海の向こうに見える『死の大地』へと向かったものと思われた。

 

「しかし…ドラから託されたこの紙…

ドラは鬼岩城が移動することを知っていたのか…?

なぜだ…!?」

 

ヒュンケルが出立する際にドラが「お使い」と称して託した紙には

 

『鬼岩城の現在地をなるべく詳細に地図に記しておいて』

 

という旨が書かれていた。

これを託された時点ではヒュンケルもクロコダインも鬼岩城がまさか移動しているなどとは考えもしなかった。

出発してすぐにこのメッセージを見た時も、鬼岩城がある場所はわかっているのだから不要なのではないか?と思ったくらいだ。

鬼岩城が移動すると知っていないとこのメッセージは意味を為さない。

 

「ドラ…お前は一体…!?」

 

波打ち際で思案するヒュンケルの耳に、男のうめき声が聞こえてきた。

声がする方向へ駆けるとそこにいたのは敗残兵であった。

聞けばカール王国の騎士で、魔王軍の猛攻を受けたが命だけは助かったという。

全身血まみれでもはや歩くことも困難なこの身の代わりに兄の亡骸を弔ってやってほしいと男から頼み込まれた。

これも贖罪と、男の願いを快く聞き入れたヒュンケルは破壊され焼き払われた街を歩く。

 

「この爪痕と炎の痕は…超竜軍団…

竜騎将バランか…」

 

ドラゴンにより引き裂かれた石造りの家、踏み潰された馬車、焼かれて炭となり転がっている亡骸…

惨たらしい光景に過去の自分の所業を思い知らされながら『騎士ホルキンス』と告げられた男の兄の亡骸を探す。

 

やがて亡骸があるという場所にたどり着く。

懇ろに弔ってやろうと亡骸の上にあった瓦礫を丁寧にどかしていったが、胸の上にあった瓦礫をどかした時に現れた物を見て血相を変えた。

胸にはくっきりとドラの額に浮かび上がったものと同じ、『(ドラゴン)の紋章』が刻まれていたのだ。

 

(カール王国が滅ぼされてからだいぶ時間が過ぎている…!

もしバランとドラに何か因縁が…血の繋がりでもあったとしたら…!!)

 

「ドラが…

ドラが危ない!!!」

 

 

(ドラゴン)の騎士の神殿―

 

「超竜軍、軍団長…バラン!!」

 

(声…!! 声が良い…!!!

た、体格凄い…!!

身長、190cm以上ある…?!

ヒュンケルが華奢に思える…体おっきぃ、厚み凄い~~…!

顔渋くて格好良い…

なんかもう全部ひっくるめて存在がかっこいい。

ふぇぇ…もう何て言っていいのかわかんない…

推し尊い…)

 

顔を赤らめ、ふるふると震えながら涙目でロッドをぎゅっと握りしめるドラ。

その姿を見て、こちらもまたおし黙るバラン。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

(何?! なんなの!?

お願いだから何か言って…!)

 

ドラは感動してロッドを握りしめたまま何も出来ないでいた。

普通に考えれば魔王軍の軍団長が扉を破壊し攻め入って来たのだ。

攻撃するなり防御するなりしなければならないのだが、ドラはともかくバランも名乗りをあげたきり無言で立ち尽くしていた。

 

『…この神殿に立ち入れたということは…この男も(ドラゴン)の騎士…?

…ありえない、同じ時代に二人の(ドラゴン)の騎士が現れることなど、絶対に…』

 

竜水晶の言葉にハッとしたバランが思い出したように口を開いた。

 

「お前が…ドラだな…」

「えっ…あっ…はいぃっ…!」

 

推しから声をかけられて言葉が出てこないドラ。

 

「…そう怯えずとも良い。

あの竜水晶から聞いたはずだ。

自分が(ドラゴン)の騎士であるということを…」

「はっ…はい…!!」

 

こくこくと頷いて肯定する。

肯定の意を示したドラにバランが続けた。

 

「…お前の力が…欲しい…!!」

「!!?」

「私の部下になれ!!

ともに人間どもの世界を滅ぼすのだ!!!」

「………!!?」

 

(えーっと…要するに味方になってくれって言いたいんだよね? これ…

ちょっと待って…原作を踏まえるとバランさんの言う『部下』っていうのは多分守ってあげる対象だから…

翻訳すると…

 

私の部下になれ

→私の庇護下に入って仲間になりませんか?

ともに人間どもの世界を滅ぼすのだ

→一緒に残酷な人間のいない明るい世界を築きましょう!

 

…言葉の選び方ヘタクソ過ぎか!!!)

 

持ち前の頭脳をフル回転させて高速でバランの言葉を翻訳したドラ。

とりあえず敵意がないことはわかったので握りしめていたロッドをそっと下ろす。

深呼吸をしてあらためてバランと対峙した。

 

「えーっと…ごめんなさい。

大魔王バーンを倒さないといけないので部下にはなれません。

人間も滅ぼすのはちょっと…」

「何故だ」

「いや、何故だと言われても…」

「バーン様は世界の平和のために人間を滅ぼそうとなさっておられるのだ。

人間こそ地上に蔓延る悪そのものではないか。

お前も一刻も早く(ドラゴン)の騎士本来の使命に目覚め、バーン様にお力添えをするがいい!!」

 

(その大魔王、人間どころか地上丸ごと吹き飛ばして弱肉強食の地獄を作ろうとしてるんですけど。

あと冥竜王ヴェルザーも裏で糸引いてるんですけど)

 

と、言えたらどんなに楽か。

仮に今それを言ったとしても信じてはもらえないだろうが。

勧誘目的で戦闘しないというなら話し合いの余地があるかもしれない。

色々聞きたいことはあるがまずは…

 

「連絡先! 連絡先交換しましょう!

で、後日ゆっくり話し合うっていう方向で…

…ピッ!!?」

 

ちゃっかり推しの連絡先を聞き出そうとしたドラの腕をバランががしりと掴んだ。

 

「逃げようとしてもそうはいかぬ。

力づくでも連れて帰るぞっ!!!」

 

カァッ!とバランが額の紋章を光らせて物凄いエネルギー波を放出した。

おそらく飛翔呪文(トベルーラ)と似たような作用だろうか。

バランと腕を掴まれた状態のドラはそのまま天井を突き破り水中を抜けて一気に上空へと舞い上がる。

 

「きゃああッ!!」

「ぬぅっ!?」

 

必死に紋章を発動させてバランの腕を払いのけたドラは衝突したエネルギー波に弾き飛ばされた。

湖のほとりへ身を打ち付けながら着地したドラにポップとレオナ達が駆け寄る。

 

「あたた…」

「おいっ、ドラ!!

大丈夫かよっ!? 一体どうしたんだ!!?」

「ドラちゃん、しっかり!!」

「ピイィ!!」

「みんな…逃げて…!」

 

ドラが空中に浮かぶバランを指差す。

まだ戦闘には至っていないがバランが相手ではこの場の全員は守りきれない。

 

「えっ、あああっ!!

あっ、あの紋章はドラと同じっ…!!」

「あの男も…(ドラゴン)の騎士…!??」

「超竜軍団軍団長のバランさんだって」

「ええっ!?」

 

掴まれて痣になっていた腕に回復呪文(ホイミ)をかけながらドラが言った。

 

「魔王軍にも(ドラゴン)の騎士がいたのかよ…っ!?」

「そんなはずは…

伝説によると(ドラゴン)の騎士はこの世にただ一人しか現れないはずです」

 

驚愕するポップとメルル。

メルルの言葉に空中から降り立ったバランが答える。

 

「…そう、この私こそがこの時代ただ一人の、

真の(ドラゴン)の騎士だ!

…だが、本来この世に一人しか生まれぬはずの(ドラゴン)の騎士一族にも例外が起こった。

それがお前なのだ!」

 

ドラを指差しバランが吠える。

 

「今こそ(ドラゴン)の騎士としての使命に目覚め、私とともに人間を滅ぼすのだ…!!」

「お断りします」

「何故そこまで人間に肩入れする…!?」

 

間髪入れずに拒否したドラをまるで信じられん、といった表情でバランが見つめる。

バランの理屈で言うと今進行形で世界を我が物にせんとしているのは大魔王バーンなので滅ぼさなければいけないのは魔族ということになるのだが…

それとバランが人間を滅ぼそうとするのは使命ではなく私怨である。

どちらにしろ断るしかない。

 

「…まだ人間どもの醜さを理解していないと見える。

子供の頃の(ドラゴン)の騎士は並みの人間とたいして変わらん。

…だが、お前が成長し(ドラゴン)の騎士の力に目覚め始めるに連れ、人間はお前を恐れ、疎み、迫害を始めるだろう!!

その時地獄の苦しみを味わうのはお前なのだぞ!!」

 

訳【君が人間に酷いことを言われて傷つく姿を見たくないんだ。人間を信じて裏切られる前に、魔王軍においで!】

 

「ふざけんじゃねえっ!!!

ドラは俺たちの仲間だぜ!! たとえ正体がなんだろうと迫害なんざするもんかいっ!!!

人間を滅ぼすために手を貸せだとお!?

ドラが…ドラが死んでもそんなことするかよぉッ!!」

「ポップ…!」

 

ポップが自身の持つ『輝きの杖』を構えて魔力を集中させる。

 

重圧呪(ベタ)…」

「待って!!!」

 

バランに向けて魔法を発動させようとしたポップにドラが待ったをかけた。

すたすたとバランの前まで行き、ギッとバランを睨みつける。

 

「まず聞きたい。私を殺しに来たの?」

「…違う」

「魔王軍に入れってこと? 断ったよ?」

「…力づくでもついて来てもらおう」

「敵対したくはないってこと?」

「…そうだ」

「私と同じ、(ドラゴン)の騎士なんだよね?」

「…そうだ」

「私とあなたはどういう関係なの?

私、聖母竜(マザードラゴン)から生まれたんじゃないの!?」

 

次々と質問を浴びせるドラ。

最後に一番聞きたかったことについてズバリ聞いた。

 

 

「…お前は、私の娘だ。

本当の名は…

 

ディーナ!!」

 

「………!!?」

 

目をまん丸く見開いて驚くドラ。

その場にいた人間も皆揃って絶句した。

 

(可能性の一つとして考えてたけど…

私、推しの娘だった…?!

 

 

…ということは私自身がこの世の至宝…!!!)

 

 

 




ドラ(ディーナ)
推しを前に言葉が出なかった限界オタク。
やっとはっきりバランの娘だということが判明した。
推しが尊すぎて推しの娘である自分のことも宝物認定した。
自尊心が止まるところを知らない。
持ち前の頭の回転の早さでひとまずしなくてもいい親子喧嘩は回避できた模様。
高性能翻訳機能搭載。

バラン
想像以上に亡き妻に生き写しだった娘を前に言葉が出なかった。
会話の順序が間違っているし言葉の選び方も間違っている。
ドラの軌道修正のおかげで娘の大切な友達を傷つけずにすんだ。
ただし神殿は無駄に破壊した。
自分に似た息子には強く出れたが妻に似た娘にはあまり強く出れない。

竜水晶
バランが手加減したのか破壊はされずにすんだ。
しかし神殿が水中に没したため多分もう尋ねる人間はいない。

(ドラゴン)の騎士の神殿
破壊されて内部が水浸しになった。
修復は多分困難。
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