ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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 閑話_ドラとラーハルト

深夜、全員が寝静まった頃を見計らってドラはゆっくりと起き上がる。

夕刻を過ぎて簡素な食事を頂いた後、日が沈む頃には早々に寝てしまう習慣らしくドラも休むようにと言われた。

今日のところはディーノと同じ寝室を使うようにと言われてその通りにする。

 

同じベッドで寝ているディーノとゴメちゃんを起こさないようにそっと寝床を抜け出したドラは寝室を出た。

そのまま気配を消して音を立てないように外へと出る。

家から少しだけ歩いた時、後ろから声がかかった。

 

「ディーナ様、どちらへ?」

「ラーハルト…眠れないからちょっと散歩にと思って」

 

ずっと外にいたらしい、魔槍を手にしたラーハルトが厳しい顔で問いただした。

穏やかではない空気のラーハルトに対してにこやかな笑顔で返すドラ。

 

(さすが忠臣…まあ主君(バラン)の娘だからって普通、『勇者』をすぐには信用しないよねぇ)

 

「こんな夜半に出歩くのは危険です。お戻りください」

 

時刻は月がちょうど真上に来る頃合い。

雲ひとつない空に満月がぽっかりと浮かんでいる。

あたりは当然暗いが月明かりに照らされて歩くのに支障はない。

 

「ラーハルト、ちょっと付き合ってよ。

私、ここらへん詳しくないから案内して?

…少しお話しよう」

「…承知しました」

 

ラーハルトが先導して森の小道を進んでいった。

家からかなり離れて大きな声を出しても聞こえないだろうという距離まで歩いた時にドラが話し出した。

 

「ねえ、ラーハルトに聞きたいことがあるんだけど…」

「なんでしょう?」

「お父さん、人間を殺してる時楽しそう? 幸せそうに見える?」

「…バラン様は人間どもを討ち取る任を果たした後はいつも満足そうにしておられます」

「そっかあ、幸せそうじゃないかぁ…

困ったねぇ…」

 

ラーハルトは振り返りドラを見る。

腕組みをして上を向きながら「どうしようかな…」と悩むドラが「あ」と思い出したように続けた。

 

「そうそう、ひとつラーハルトにどうしてもお願いしたいことがあるんだけど…」

「…なんでしょうか?」

「もし私が死んだら私の首、お父さんに届けてほしいんだ。

で、それ大魔王に献上してよ。

そうしたらお父さん、魔王軍で出世間違いないでしょう?

仲間にも伝えておくから」

 

自身の死をまるで土産物を渡すかのような気軽さで話すドラに、ラーハルトの怒気が膨れ上がった。

 

「よろしく…」

「ふざけるなッッ!!!」

 

目にも止まらぬ速さでドラの首を掴んで怒鳴る。

掴んでいるだけ、締めてはいない。

しかし鍛え上げられた戦士の握力、片手で掴めるほどか細い少女の首など少し力を入れるだけで文字通り一捻りに出来る。

 

「ふざけるなよ…ッ!! 貴方の無事を、バラン様がどれほど祈ったと思っている!!?

どれほど心を砕き探し続けたと…!!

そのバラン様に首を届けろだと!?

貴様、どういうつもりだ!??」

 

鬼の形相で激昂するラーハルト。

よほど腹に据えかねたのだろう。

締められてはいないが首に回された手がわなわなと震えて今にも力が入りそうなのが伝わってくる。

 

首を掴まれ顔を憤怒に染めた大の男から怒鳴り声を浴びたドラはしかし、眉ひとつ動かさずにじっとラーハルトを見つめ返した。

目を見据えたままゆっくりと口を開く。

 

「ラーハルトはお父さんのこと、好きじゃないの?

大事じゃないの?

幸せになってほしいと思わない?

辛そうにしてる姿を見ていて、悲しくならない?

辛そうにしてるお父さん、なんとかしてあげたいと思わない?

 

お父さんのために命、かけられない?」

 

ドラがラーハルトを睨んで首が締まるのも構わずグッと一歩踏み出す。

そして睨みつけたまま、口角をニッと上げて不敵な笑みで言い放った。

 

「私はかけられる…!

お父さんの為ならこの命、いくらだって」

 

そう宣言する好戦的な表情が、あまりにもバランを彷彿とさせてラーハルトは一瞬怯んで思わずドラの首から手を離した。

拘束から逃れたドラが、また元のにこやかな表情に戻って来た道に向かって歩き出す。

そしてラーハルトを振り返り、こう言った。

 

「大丈夫だって! 私、なるべく死なないように頑張るし!

お父さん、すっごい不器用で自分のこと無頓着だからさ。

私とラーハルトで協力して、お父さんのこと幸せにしてあげようよ。

 

まずは明日の朝食からね。

作るの手伝って~♪」

 

軽い足取りで鼻歌まで歌い出したドラの後ろを、無言でラーハルトがついていく。

 

「晩御飯のパンとスープ、まずくなかったけど素っ気なかったね。

いつもあんな感じ?

あと誰も喋らないのびっくりしちゃった。

朝食はさ、もうちょっとお喋りしながら食べようよ。

食事は毎日あるんだから少しでも楽しいほうがいいでしょう?」

 

あとは何から始めようかな~、と一人で喋り続けるドラをラーハルトはじっと見つめる。

この方なら、バランの内に秘めた悲しみを癒し血塗られた道を進むその足を止めてくれるのではないかと。

一縷の淡い望みをその胸に宿して…

 

 

(すっごい殺気だったな~。あれ、私がお父さんの娘じゃなかったら殺されてたなあ…

…良かった~! 原作通りラーハルトがお父さんのこと大好きで安心した~♪

ラーハルトの協力が得られたらとっても心強い…!!)

 

 

 




ドラ(ディーナ)
バランガチ勢過激派同担歓迎
同担同士、協力したら火力強くて良いよね!という心構え

ラーハルト
バランガチ勢過激派同担阻止
バランのために命をかけるのは自分のみで良いという心構え
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