鉄は熱いうちに打て、ネタが降ったら即刻書き上げて投稿せよ…と。
「ディーナよ…」
「なあに? お父さん」
テーブルに本を広げて頭を突き合わせていた双子の片割れ…
まだ完璧に文字を習得していない息子のディーノに、文字を教えていた娘のディーナががこてん、と首を傾げてバランを見上げ聞き返した。
「ぐっ…」
愛らしい。実に愛らしい。
今なお深く愛している亡き妻、ソアラに生き写しの娘が愛らしい仕草で「お父さん」と呼びかけてくる。
まだ12歳の娘を見ていると出会う前の妻の少女時代もこのように愛らしかったのだろうな…と感慨に耽ってしまい、他の全てがどうでもよくなってしまう。
いや、よくはない。
バランはぐらぐらと揺らぐ決心をどうにか保ち娘に切り出した。
「ディーナよ…その格好をどうにかしなさい」
「格好?」
またもこてん、と首を傾げたディーナ…ドラが自身の格好をきょろきょろと見下ろす。
髪の長さは背中まで届くくらい、特に括ったり髪飾りは付けていない。
着ているのは袖なし無地のワンピース、丈はギリギリ膝下まで。
足元は脛の中ほどまでの長さのハーフブーツ。
以上。
…何か問題があっただろうか?
きょとんとバランを見上げるドラ。
「ぐっ…」
バランの決心がまたも揺らぐ。
しかしこのままには出来ぬとなんとか気を持ち直して問題点を指摘した。
「スカートのまま
「…?」
「衣服の中が見えてしまうであろう…!」
「ああ!」
ドラがなるほど!と合点が言った様子で手を叩く。
そして満面の笑みで言い放った。
「大丈夫よ、お父さん。今履いてるの、フリルとリボンの付いた可愛いのだから。
見られても恥ずかしくないよ!」
「慎みなさい…!」
「ふぎゃっ! いったあああ〜…!」
軽く小突いた程度だが岩をも軽く粉砕する腕力を誇るバランである。
脳天に拳を落とされたドラは痛みに涙を浮かべた。
「そういう問題ではない…!
下賎な輩が、不埒な目を向けてきたらどうする…!?」
「…? 別になんとも…?
逆に「お前の下着なんか興味ない、魅力がない」って言われたほうが嫌…いったあああい!!」
「慎めというのだ!!」
今度こそ娘の頭に反省を促す鉄拳をお見舞いしてバランは深く溜息を吐いた。
テーブルに顔を伏せ、泣きながら痛みに悶えるドラ。
ゴメちゃんがふよふよと飛んできてドラの頭を撫でた。
しかしその表情は『大丈夫?』と心配しているというよりも『そうだよ、慎みなよ』と言っているかのような呆れ顔である。
ドラの隣に座っていたディーノがどう対処したら良いのかわからず困惑しておろおろとドラとバランを交互に見ていた。
…その日の夜、深い溜息とともにバランがこぼした。
「ラーハルトよ…」
「はっ、なんでしょうバラン様」
「娘の…ディーナの性格は一体誰に似たのであろうな…
亡き妻はあのような性格ではなかったのだが…」
「………ッ!」
顎に手を当て心の底から不思議そうにしているバランを見て、ラーハルトは喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
無言のまま日中の出来事を思い出す。
先日に続きディーノの手を取り
何をするつもりなのかを聞けば前回以上の酷い飛行を決行しようとしていた。
必死に説き伏せてディーノを連れ立っての
誰に似たのか? そんなもの決まっている。
(間違いなく、バラン様です…!)
言葉より先に行動を起こす、加減を知らない、言っても聞かない、絶対に譲ろうとはしない…
出会ってからそう幾分も経ってはいないが相似箇所について心当たりが多すぎる。
…何より好戦的なあの表情だ。
顔立ちはまったく違うというのに確かな血の繋がりを感じた。
いまだ不思議そうに首を傾げる主君を見ながら、ラーハルトは気づかれないよう小さな溜息を吐いたのだった。
「お父さん、溜息吐いてどうしたの? …え、私のせい?
そっか〜、まあしょうがないよ、お父さん、『私のお父さん歴』まだ短いもんね!
大丈夫、誰だって最初は初心者だよ! すぐ慣れるよ、頑張って!」
意訳:自分の行いを改める気は毛頭無い。慣れろ。