ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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43_片割れ

落ちた意識の中、真っ暗な空間に泣き声が木霊する。

泣き声がどこともしれない空間の中に響き渡り、うわんうわんと反響して痛む頭をさらに締め付ける。

 

(うあぁぁぁん…!

おっ、お父さんのバカーーー!!! もうやだ~~~!!

お父さん嫌い~~~!! こっ、こっ…

殺してやるんだからーーーーっ!!! うわ~~~ん…!)

 

待て待て、殺すな殺すな。

だからなぜそう(ドラゴン)の騎士は即武力行使になるのか…

原作でも開幕アバンストラッシュからのギガブレイクで果てはドルオーラ放ってたわよね…!?

なぜ“話し合う”“距離を置く”という選択肢がすっぽ抜けるのかしら…

 

ああ、もう…! 最近はほとんど魂が同化していたのに…

『共鳴』で意識と記憶を吹き飛ばされた本来の『ディーナ』の魂が分離して心の奥底で泣き喚いてる。

まあ、無理もないか…

いくら言葉に詰まったからといっていきなり娘の記憶を吹き飛ばすなんてやり過ぎだ。

『推し』とはいえ子供に対する横暴は許せん…!

 

(お父さんのおたんこなす〜〜〜〜ッ!!!)

 

…ちょっと…父親に拒絶されたのがショックなのはわかるけど、少し落ち着いて…

喚かれると…

…頭に…響く…

痛ぅッ~…!!

 

 

…ィーナ! ディーナ!」

「ピィィ~~~!!」

 

必死に呼びかける声に沈んでいた意識が急浮上する。

ほんの少し開いた瞼に日差しが飛び込んできて視覚を通って脳に突き刺さる。

暗闇から抜け出たばかりの脳に眩しさが痛みに姿を変え襲ってきた。

仰向けに倒れていたドラは思わず頭を抱え込み体を丸くして横を向く。

頭と膝を抱え込み、歯を食いしばりながらガンガンと響く痛みを必死に抑え込んだ。

 

「ぅぅ~~~………

痛い痛い痛い…!」

「ディーナ! しっかり!」

「ピィ! ピィ…!」

「二人とも少し静かにしてぇ…!」

 

はーっ…と長く息を吐き出す。息と一緒に痛みも吐き出してほんの少しだけマシになった頭痛を堪えてドラは起き上がった。

片膝を立てた状態で、眉間のシワを抑えながら呻く。

心配そうに見つめるディーノとゴメちゃんに悪いなと思いつつも頭の中…いいや、意識の奥底、いまだ泣き喚いている魂に向かって語りかけた。

 

(あいたたた…。ええと、記憶は…

あ、良かった…ちゃんとある。というか、『ディーナ』の記憶は飛んだけど『私』の記憶は無事だったみたい…

また魂が同化すれば補完出来そう。バックアップ大事、うん。

 

…で、そろそろ泣き止んでくれないかしら?

頭痛が引かないのよ…!

 

『だって! お父さんが私のこと!

怒鳴って叱って吹き飛ばしたんだもん!!

許せない…!! お父さんなんかブッ飛ばしてやる…!!!』

 

元気にたくましく育ったわね…お姉さん、嬉しいわ。

ブッ飛ばすのには同意するけど殺すのは待ちなさいな。

全力で我儘言って甘えてもいい人材が減るわよ…

 

『え…それは嫌。

じゃあ、頑張って殺すのやめる…

 

そのかわり真魔剛竜剣欲しい』

 

あら、いいわねそれ。

案外おねだりしたらすんなり貰えたりして。

真魔剛竜剣でも竜の牙(ドラゴンファング)でも超竜軍でも、精一杯ねだり倒して困らせてやりなさい。私が許す。

我儘を言えるのも一つの才能よ…遠慮しなくていいわ!

フォローは任せなさい!

 

『わかった!』)

 

意識の奥底で泣いていた『ディーナ』をうまく宥めすかして落ち着けたドラはそれでも分離したままの魂に違和感を覚えた。

通常、大元の魂の持ち主である『ディーナ』が表層意識に出るのだがそうならない。

魂が再度同化するのに少し時間がかかりそうだ。その間は前世の記憶を有している『私』が表層意識に強く出るらしい。

慣れない感覚に戸惑うが記憶がすべて無くなるよりはマシかと思い直して閉じていた瞼を開いた。

 

「はーっ…」

「だ、大丈夫? ディーナ…」

「ピィ…」

「なんとかね…私が気絶してからどれくらい経った?」

「まだそんなには…」

 

ディーナ…?とディーノが不思議そうな顔をした。

気絶する前と何かが違うと本能的に感じ取っているらしい。

さすが双子、過ごした時間は僅かだが通じ合うものがあるのだろう。

 

「ダイ君…じゃなかった、ディーノ。

ゴメちゃん、光ったりしてなかった?

何か変わった様子は?」

「え、ゴメちゃん? ううん、光ったりはしてないけど…?」

「そう…良かった…」

 

ほーっ…と安堵から長い溜息を吐き出した。

ゴメちゃん本人にも『奇跡』の行使は制御できないのだ。ゴメちゃんの、いわば『寿命』と引き換えに行使される『奇跡』は出来れば使ってほしくない。

上を見上げれば気絶する前とほぼ同じ位置に太陽があった。

本当に束の間だけ気絶していたようだ。今なら追えばまだ間に合う。

 

立ち上がり、すぐに飛翔呪文(トベルーラ)で飛び立とうとしたドラはハッと気付いてディーノに向き直った。

 

「ディーノ」

「な、何…?」

「あなた、お父さんが戦う姿を見てどう思う?」

「…戦ってるとこ、見たことない…」

「じゃあ、戦いから帰ってきた姿は? でなければ一人でいる時」

「………疲れてるみたい。

たまに溜息が出るし、辛そう? 悲しそうに見えるよ。

僕、何か出来ないかなって思って声かけるんだけどさ、「お前は何も気にせずとも良い」って言われるんだ。

それでも「何か手伝う」って言うと「黙りなさい、余計なことはするな」って…

僕、父さんに嫌われてるのかな…」

 

やっぱり、拗れていた。

大方「自分のことは気にしないで、遊んでいなさい。お前はそこにいるだけでいいんだよ」とでも言いたかったのだろうが。

子供は案外よく見ているものだ。無抵抗な人間を殺して快楽を見出すタイプではないバランが、日々の殺戮に疲弊していないわけがない。

世話役であろうラーハルトはバランには絶対服従だ。その姿勢ではディーノのフォローをしようとしても選択肢は限られてくるだろう。

 

…はっきり言うとフォローなんて無理だ。元凶のバランを止めなければ…このままではディーノの将来にも暗い影を落としてしまう。

父と義兄の不穏な空気を日々感じていながら、この優しい男の子は見て見ぬ振りを続けてきていたのだ。

大好きな父と義兄に心配をかけまいと。

 

あまりのいじらしさに引っ込んでいた頭の痛みがぶり返す。

目頭を抑えながら歩き出したドラの後をディーノが慌てて追いかける。

 

「ディーノ、お父さん今かなりしんどいみたいよ。

止めたくない?」

「と、止めたい…!」

「なら、お父さんのこと、もっとよく知らないとね。

見に行きましょう。で、二人で止めてあげましょう。

あの人、自分では止まれないから…」

「う、うん…でも、怒られないかな?」

「大丈夫よ、お姉さんに任せなさい」

「お姉さんって…ディーナのが妹じゃんか」

「ディーノ、外に出てお金稼いだことある? 何かを自分で手に入れたことは?」

「ないけど…」

「なら、まずは社会見学からね。

もう家に閉じこもるのはやめて、外に出ましょう。

あなたも強くならないとね…!」

 

話しながら家の中に置きっぱなしにしていた外套(マント)をばさりと羽織ってゴメちゃんを肩に装備する。

バァンッ!と乱暴に扉を開いてディーノの手を取り飛翔呪文(トベルーラ)で空へと飛び立つ。

目指すは天下の不器用者、父バランだ。

気配を探りながら猛スピードで空を駆け抜けていく。

 

テランとベンガーナの国境あたりまで来た時にぶわりと気配が強くなった。

空中で一旦止まり、あたりを見回して気配の元を探す。

なんだか嫌な緊張感を感じ、じわりと浮き出た冷や汗が背中をつぅっと流れた。

 

「あっ、あそこ!」

 

ディーノが荒涼と続く岩場の一角を指差した。

指差した先には父バランと竜騎衆…それにポップとクロコダイン、レオナの姿まで…

 

「大変…!! クロコダインとボラホーンがもう戦って…

ポップがスカイドラゴンに捕まってる!!」

「ピイィ!!?」

 

(一足遅かった…! 既に交戦してる…!

 

『お父さんいた! ブッ飛ばす!』

 

その意気や良し!! 行くわよ!!)

 

間に合え…!と祈りながらドラはディーノとゴメちゃん、そしてディーナを伴い戦場へと駆け下りて行った。

 

 

 




ドラ
前世の魂と今世の魂が同化して一つの人格として成り立っていた。
片方の魂の記憶が飛んでももう片方の魂に保存しておいた記憶で補完が可能と判明。
バックアップは大事。
現在は前世の魂が表層に出で精神年齢がぐっと上がった状態。
他は特に変わりなし。

ディーナ
大元の魂。甘えん坊で寂しがりなのはこっち。
(ドラゴン)の騎士としての本能が強く敵対者は親でも殲滅しようとする。アカン。
普段は表層意識に出ていたが泣き疲れたため『私』にバトンタッチ。
我儘。

『私』もしくは前世の魂
前世は成人済社会人。
『美少女の我儘は一つの才能、そして財産』という教育方針によりドラ(ディーナ)の個性を伸び伸びと育てた。
フォロー、バックアップ担当。
最近は魂の同化に伴い人格自体はほぼ消滅していた。
表層意識に強く出ている今のドラの表情は甘さが消えてクールな雰囲気が漂っている。
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