ててーん
パプニカの ナイフを てにいれた !
砂浜でキラキラとした波を反射して光るナイフを太陽にかざす。
まさかレオナから友情の証としてパプニカのナイフを貰えるとは…
戦闘で使うことはまず無いとは思うが、パプニカ王国の正式な紋章入りの貴重なナイフだ。
ぜひとも有効活用しなければ…
それにしても…
「グルルルル…」
「ウゥ〜〜〜…」
「シュ〜〜〜ッ…」
「ど、どうしたの?みんな、今日は落ち着かないみたい?」
朝からみんなの様子がおかしい。
おじいちゃんも「なんだかムカムカ、イライラするのう…?」って言ってたし、まさか魔王が…?
いや、まだ決めるのは早い。
魔王が復活しない世界線の可能性は捨てていない…!
「おや? この島は無事なようですね…?」
「………っ!!!?」
海岸に着いた小舟から降りて来た人間2人を見てドラは驚きのあまり声が出なかった。
「突然失敬。
私はアバン・デ・ジニュアールIII世と申します。
職業は家庭教師。
勇者、賢者、魔法使い…正義を守り悪を砕く、平和の使徒とすべく超一流の戦士を育てあげるのが私の仕事と自負していますっ!!
こちらは弟子のポップ、現在魔法の修行中の身です。」
自己紹介した後、アバンはやや後方にいた少年を引き寄せて紹介をする。
紹介された少年、ポップが照れくさそうにペコリと挨拶する。
目を見開いて驚くドラにかまわずアバンは話を続ける。
「…今、世界は復活した魔王のせいで邪悪な
私はロモス・パプニカ両国の王家に頼まれてここに来ました。
デルムリン島に住むドラ嬢こそまさしく未来の勇者だと。
彼女を1日も早く勇者に育てあげてほしいと…」
ドラはヒュッ…と息を飲み込んだ。
心臓がバクバクと波打つ。
「…魔王って…あの…レオナやロモスの王様は…」
アバンが首を横に振りながら神妙な面持ちで告げる。
「魔王の配下の
今まさに両国は危機的状況にあります。
ドラさん、世界を救うため、魔王を倒すために、私の修行を受けてみませんか?
もちろん修行はムチャクチャハードですが…」
「
ニヤリとした笑みを浮かべるアバンに即答するドラ。
それを横で聞いていたポップは「ん?なんだか今物凄い殺意がこもってなかったか?」と首を傾げた。
魔王が復活した…
それを聞いたドラは青ざめる。
恐れていた事態が起きてしまった。
レオナの事も心配だが魔王が復活しているということは各国への魔王軍進軍が始まったということだ。
時期は定かではないがかなり早い段階でほとんどの国が壊滅状態に陥っている。
原作の流れ通りになってしまった…
「ダイ君」がいないならもしかしたら…と思っていたが『この世界』は限りなく原作『ダイの大冒険』の流れに沿っていると思っていいだろう。
こうなってしまっては仕方ない。
とっとと
「ケケケッ 人間だ!! 人間がいたぞー!!」
「殺せ殺せーッ!!」
ドラが決意を新たにしていると遠くの空から
「おや、この島はなぜか無事だと思ったんですが…
魔王の偵察隊がやってくるとは。やはりこの島も魔王の影響下に入っているようですね。
ポップ、あれをやっつけ
「
て…へ?」
自分の縄張りにちょっかいをかけに来た
そう、縄張りである。
デルムリン島の
長年かけてドラの魔力が染み込んでいったデルムリン島は魔王の邪悪な波動を寄せ付けない、いわば『聖域』と化していた。
ドラから放たれた
「「…」」
お互い、傷一つ付いていない事を確認すると大爆笑をし始めた。
「ギャハハハハハッ!! なんだ今の
こんなそよか…ぜ…?!」
「ギャハハッ! なんともねえじゃねえ…か…?!」
ドラの
ほぼ無音で放たれ、吹き飛ばすような空気の渦を発生させることなく攻撃対象を幾重にも切り裂く。
空中でバラバラになった
「な…!?」
「嘘だろ… なんだよあの威力の魔法…?!」
(こんな年若い少女がこれほどまでに強力な魔法を使えるとは…
話に聞いていた以上の逸材ですね…)
アバンは島を訪れる前に招かれたロモス城でのやりとりを思い出す。
「アバン殿、貴殿に頼みたいことがある。デルムリン島に住む少女について調べていただきたい」
「デルムリン島…話に聞く怪物島ですか?」
「うむ、そこに住む『ドラ』という少女なのだがの、年齢にそぐわぬ魔法の使い手じゃ。
噂ではパプニカの王女の命も救ったとか…
強力な魔法を使う少女…世界各地で報告に上がっている『正義の魔法使い』ではないかと思うての。
アバン殿の目でその少女『ドラ』が真実『正義の魔法使い』なのか、見極めてもらいたいのじゃ。
もしかすると彼女こそ我々人類の希望となるやもしれん」
ロモス王曰く『正義の魔法使い』とは
・まだ年若い少女にして類稀なる魔法の使い手
・世界各地を放浪している
・凶悪な魔物や盗賊を討伐して去っていく
・討伐した盗賊を改心させる
・金銭を一切要求しない
もしこの話が本当であれば勇者の資質として申し分ない。
ロモス王としてはアバンが直々に勇者教育をした後、彼女を勇者として国に迎え入れたいとのことだった。
パプニカ王国の国王からも同じ依頼を受け、ポップを伴いデルムリン島に赴いたアバン。
しかして早々にその脅威的な魔法の才を見せつけられたアバンは修行を通じ、ロモス・パプニカ王国の依頼を別にしてもドラを立派な勇者に育てあげることを決意したのである。
「アバン先生」
「私、1日も早く魔王を倒さないといけません。
アバン先生に教えてもらいたいことが山ほどあります。
ご指導、よろしくお願いします!」
やる気に満ちたドラの姿勢にアバンの指導者としての心がウキウキと弾んでいく。
「よろしい! ドラさんにはズバリ!
一週間で勇者になれる“
「ゲエ〜〜〜〜ッ!? “
「わあっ、よろしくお願いしますっ!」
「(おい、やめとけって! お前みたいな細い女の子には無理だ!!
悪いことは言わないから通常の特訓にしとけよ!)」
ポップがヒソヒソと耳打ちをする。
「ポップ〜、あなたも参加していいんですよ?
後輩に追い抜かれちゃったらカッコ悪いでしょ?」
「いいい、いいですよ俺はっ! 通常の特訓で!!」
「大丈夫です! 私、頑張ります!!」
“
ポップは「こいつ、本当に“
(アバン先生の指導力は本物だもんね。
レベルはカンストしてるけどちゃんとした指導と知識があればもっと強くなれるはず!
ダイ君とバランさんとラーハルトのために魔王と大魔王、早く倒さなきゃ!)
よしっ!と気合を入れて闘志を燃やすドラ。
推し>>>>世界の平和という前述した『正義の魔法使い』とは到底思えない思考で修行への思いを馳せる。
こうして純粋に「世界の平和のため」に勇者を育むアバンとあくまで「推しの幸せのため」に強くありたいと願うドラの微妙に噛み合わない修行がスタートしたのである。
作者のイメージとして魔法使い・戦士などは「職業」、勇者は「役割り」なので「魔法使いであり勇者」が存在する世界ということにしておいてください。