ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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46_ドラの真意

「どちらの味方かって?

そんなの決まってるじゃない。

人間の味方だった事なんか一度もないわ。

魔物や魔族の力になる気もない。

 

生まれた時から今この瞬間まで、私はあなたの味方よ。

 

お父さん…いえ、バラン」

 

バランの目を真っ直ぐに見据えながら、ドラがきっぱりと断言した。

 

「ドラ…嘘だろ…

人間の味方じゃないなんて…バランの味方だなんて…!

お、俺たちの敵になっちまうって事かよっ…!?」

「嘘でしょう…? ドラちゃん…」

「…ドラよ」

 

妹弟子の言葉を聞いて、ドラがバランと共に去ってしまった時と同じ絶望感に襲われたポップ。

呟きながら納得が行かないとばかりにギリリと拳を握りしめた。

信じていた勇者…いや、友達の言葉に涙を目一杯に溜め、手で口を抑え必死に嗚咽を堪えるレオナ。

深いため息を吐きクロコダインはドラから目を逸らした。

 

「私の味方だと…!?

ならばなぜ、薄汚い人間どもの命など助けた?」

 

味方だと断言され、少しは気を落ち着けたバランがドラの行動の真意を問う。

 

「それが貴方のためだから」

「どういう意味だ」

「だってそうでしょう?

私、お父さんが魔王軍の軍団長として人間を殺しているって聞いて少し悩んだのよ?

娘として父親の『仕事』のお手伝いをしたほうがいいのかしら?って」

 

地面に落ちていたヒュンケルの剣をドラが拾って歩きながら構える。

バランのギガブレイクを受けた際にヒュンケルの手からこぼれ落ちた魔剣だ。

ヒュンケルにとっては片手剣だが、ドラにとっては大ぶりな両手剣になってしまう。

 

「お父さんが『仕事』が楽しい、田畑を焼いて街を壊して人間を殺すことが最高に幸せ!っていうのなら、私も率先してお手伝いするつもりだったのよ?

『お父さんの仕事のお手伝い』って昔からちょっと憧れてたの」

 

ドラが構えた剣をでたらめに振り回す。

まるで子供のごっこ遊びに出てくる『英雄』のように、目の前にいるであろう見えない敵をバッタバッタと斬り倒してくるりと回ってポーズを決める。

次いで地面から見えない何かを片手で拾い上げて頭上に掲げた。

まるで物語の『英雄』が、倒した敵の首を掲げて勝利を手にし、万雷の拍手を浴びている姿のように。

 

「妻と子供を守るために剣を構える父親を焼き殺して、必死に子供をかばう母親をその子の目の前で斬り刻んで、すやすやと眠る赤ちゃんの首をたくさん集めて貴方の前に並べてあげる。

嬉しい?

前に『私の部下になれ。ともに人間どもの世界を滅ぼすのだ』って言ったじゃない…

それってそういうことでしょう?」

 

音さえ聞こえなければ「今日の夕飯は何にしようか?」とでも言っていそうな表情なのに…

朗らかな微笑みを浮かべながら、まるで小鳥が囀るような声で空恐ろしい事を口にするドラ。

ドラが喋るたびに周囲の空気がどんどんピンと張りつめていき、聞いていた者の顔が強ばり硬直していく。

 

特にバランは険しいなどという生温い表現では言い表しようのない顔をしていた。

徐々に悪くなる顔色と見開いた目、引き結ばれた口元。

まるで昼の太陽の下に出現した幽鬼を凝視するかのような表情だ。

しかしそれはあながち間違ってもいなかった。

彼は娘の顔に亡き妻ソアラを重ねていたのだ。

 

 

今…恐ろしい事を口にしたのは本当に私の娘なのか…?

魔王軍の誰かが送り込んだ、娘に化けたマネマネが見せる悪趣味極まりない冗談ではないのか…

どちらにせよ今すぐに止めろ…純粋で美しかったソアラの顔で、優しく響いたソアラの声で、そんな事を言うのは…

 

「やめろ…

 

やめろッ!! タチの悪い戯言を口にするのは!!!」

 

ドラが怪訝な顔でバランに聞く。

 

「どうしてそんな事言うの? お父さんがいつもやっている事でしょう?」

「違う…私は…」

「違わない。ドラゴンが食い殺そうが、吹いた火で街ごと焼き払おうが、殺したのは貴方。

お父さんがやっているのなら、私もやっていいでしょう?

何も問題ないじゃない」

 

一体何が問題なのか、見当もつかないわ。と大袈裟なジェスチャーで聞き返すドラ。

 

「お前はそんな事をする必要はない。

ただ大人しく、私のもとで静かに暮らしていれば良い!!」

「『そんな事』! 人間を殺す事って『そんな事』なのね!」

 

あははっ!とドラが乾いた笑い声をあげる。

 

「ほら、答えが出たじゃない。

お父さんにとって大事な娘である私に『そんな事』させたくないっていうのは、『そんな事』したら苦しむだけだってわかってるからでしょう?」

 

笑顔から一転。

鋭い眼差しでバランを睨みつけながらドラが続けた。

 

「地上から人間を滅ぼす? その先にあるのは誰も幸せになれない地獄よ…!

人間をいくら殺したって恨みは晴れない。

誰も浮かばれない。

誰も彼も、楽しくも、嬉しくも、幸せにもなれないのよ!

『そんな事』、私だってもうお父さんにしてほしくないわ…貴方と同じ気持ちよ!

 

お母さんも最後に言ってたのよね…『人間を恨まないで』って。

 

人間を殺す理由、何にも無くなったわね?」

 

ねぇ?お父さん。

 

「黙れェッ!!!」

 

惨たらしく人間を殺すと言いだした娘。

やめろと言えば、父親のやっていることを自分もやって何が悪いと問うてきた娘。

大人しくしていろと言えば、人間を殺す理由など無いと理屈付ける娘。

これほど己の言うことを聞かず、一筋縄でいかない相手など敵以外ではバランの人生に今まで存在しなかった。

 

「先ほどから黙っておれば長々と…

親に逆らおうなど、片腹痛いわ!

黙って私の言う事に従わぬというのなら力で従わせるのみだッ!!」

 

自分に服従し、黙って大人しく籠の鳥にならないのなら力ずくで籠の中に押し込めるのみ。

実力行使に出ようと一歩踏み出したバランに対して負けじと一歩踏み出し、ドラが剣の切っ先を向けた。

 

「何よ、やる気?

…いいわよ、そっちが力ずくで来るならこっちだってそうするわ。

 

もう二度と、人間は殺させない。

お母さんが命がけで守りたかったお父さんの『幸せ』…蔑ろにする奴は全員ブッ飛ばす!!

 

お父さんだけじゃないわ。

人間、魔族、魔物…種族なんて関係ない、私は生まれてからこの方ずっと『家族』と『仲間』の味方よ!

私の大事な家族と仲間の幸せを邪魔する奴は、

神様でも! 大魔王バーンでも! たとえ貴方自身だろうと!!

 

全部まとめてブッ飛ばしてあげるわッ!!!」

 

剣の切っ先を向け、好戦的な笑みを浮かべてバランを睨みつけるドラ。

その瞳は陽を受けてギラリと光を反射する剣の刀身にも負けないほどに、ギラついた光を宿していた。

 

 

大きな声で語られたドラの真意。

それはただ父親に味方し、その行いを肯定するというものではなかった。

大事な人だから間違った行いを止める、という…

何とも単純で力強い宣誓。

 

「ドラ…お前…

ははっ…なんだよ、俺の心配返せよなぁ〜」

 

弄びやがってよ〜、と力が抜けた様子のポップがぐったりとしながら悪態を吐く。

 

「ブッ…ブッ飛ばすって…ドラちゃん…!

あははっ…お、お腹痛い!」

 

何かがツボに入ったらしいレオナが目に溜まっていた涙を流して笑い泣く。

 

「ドラよ…やはりお前は優しく、純粋で、そして強い心を持った娘よ…!

まるで太陽のように俺の心を照らす…!!」

 

種族なんて関係なく『家族』『仲間』だと言い切ったドラの言葉に感激するクロコダイン。

よほど嬉しかったのか両の目からはしとどに涙が流れている。

 

(ドラ…お前のおかげで俺は命を救われ、人間としての誇りを失わずに済んだ。

俺と同じように憎しみに囚われたバランの心を救い、血塗れた道を歩むその足を止めてやってくれ…!!)

 

ヒュンケルは何も言わず、心の中で恩人である妹弟子にかつての自分と同じ境遇に身を置いているバランの行く末を託した。

 

四人だけではない。

ディーノ、ゴメちゃん、ラーハルト、ガルダンディー、ボラホーン…

先ほどの言葉を受け、それぞれがそれぞれの想いを胸にドラを見つめた。

 

皆が見つめる先にいるのはバランに切っ先を向けたドラ。

そのドラの視線の先には激昂し竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にして愛刀・真魔剛竜剣を構えるバラン。

果たしてドラの想いは猛り狂うバランを止めることが出来るのか…

 

 

(さぁ、わからずやに一発かましてやりましょうか。

 

『一発だけじゃなくて千発くらいお見舞いしてやって!』

 

今回ばかりは私が主導権握ってて正解だったかしら…)

 




原作だと竜魔人となったバランと対決する流れだが今回は竜魔人化しなかったバラン。
読み返した原作の流れがバラン視点だと…
・人間の元にいる息子を取り返しに来た(内心もの凄い焦燥)
・激しく阻止された
・部下を皆殺しにされた
・殺された部下の鎧を纏ったさして親しくない元同僚(ヒュンケル)がいきなり説教してきた(しかも秘密話暴露)
・あまつさえ亡き妻の名前を呼び捨てにされた
という数え役満だった…
そりゃあ…竜魔人なるよ…

【緊急事態報告】
パソコンが…壊れました…
いきなり画面がバツンッて…
多分バランとドラの竜闘気(ドラゴニックオーラ)に充てられたんだと思います…
次話投稿まで少し間が開くかもしれません、悪しからず(泣)
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