ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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56_妖魔学士ザムザ

「元気出して? チウちゃん」

「うぅ…ぐすっ…

ドラさん…ぼくは武闘家として死刑宣告を受けてしまいました…

あんなに頑張ったのに…ぐすっ…

鍛えてくださった老師やマァムさんに顔向け出来ません…!

うわああ~~~ん!!」

「そんな事ないよ! チウちゃんにはチウちゃんの戦い方があるんだから!

これからいくらでも強くなれるよ!!」

「ドラざ~~~んッ!!」

「何どさくさに紛れてドラの胸に顔埋めてんだこのクソネズミ…!!」

「あでででで…!」

 

ブロキーナ老師とマァム以外の人間との戦闘を初めて経験したチウ。

文字通り手も足も出ず…というか手も足も相手に届かず、『手足のリーチが極端に短い』という格闘家として致命的な弱点が判明し絶望に打ちひしがれていた。

頭を撫でて慰めてくれるドラの優しさに堪えきれず涙腺が崩壊したチウは、ささやかながらも温かいドラの胸に縋りついた…が、ポップに首根っこを掴まれて引き離された顔には一筋の涙も流れてはいない。

言うほど傷ついているわけではなく、たんに甘えたかっただけらしい。

チウの変わり身の速さを見たドラは怒るでもなく、クスクスと笑いながら楽しそうに二人の掛け合いを眺めた。

 

「はっ、離せコラ! 男のヤキモチは見苦しいぞ!!」

「誰がヤキモチなんぞ妬いとるか!!」

「フンッ! 隠してもお見通しだ!

お前、マァムさんとドラさんに気があるだろう!?

残念だったな…お二人の前には今やぼくという将来性抜群の男が現れたんだからな!!

お前の出る幕は無い!」

「な…なんだとおっ!?

てめえ、怪物(モンスター)の分際で大それた事を…!!」

「…フン! 愛に国境はない!!」

「ふっ…ふざけんじゃねぇっ!!」

「うるさい奴だな。だいたいお前は一目見た時から気に入らなかったぞ…

 

…ははん、そうかお前、マァムさんとドラさんの『昔の男』というやつか。

まあ、ぼくも鬼ではない…それに女性の過去には拘らないし、愛に差はつけない主義だ。

マァムさんとドラさん、それぞれ2G(ゴールド)ずつ…特別に4G(ゴールド)あげよう。

これでスッパリお二人の事は忘れるんだな…

ウギャッ!!?」

「どこでそんなくだらねえ事覚えやがったんだ!?

このクソネズミがあっ!!?」

 

チウのあんまりな言いようにポップが鉄拳制裁を下した。

 

「き、きさまっ! 武闘家に手をあげるとはいい度胸だ!!

吠え面かくなよ!!

あちゅ〜〜〜〜〜っ!!!」

 

怒髪天をついたチウはぶんぶんと両腕を振り回しポップに反撃を試みる…が、やっぱり届かない。

頭を抑えらえれ前に進めず、振り回された拳は虚しく空を切り微かな風を巻き起こした。

やがて埒が開かないと悟ったチウは攻撃をやめ、頭を抑えつけているポップの手をすまし顔で(はた)き落とす。

 

「フン…きょ、今日はこのぐらいで勘弁してやる…!」

 

素直に負けを認めずあくまで見逃してやったという体で引き下がるチウ。

どこぞの新喜劇のようなオチにポップとゴメちゃんは呆れてズッコけ、だいぶ前から腹筋が崩壊していたドラは止めを刺されたのか座席に崩れ落ちて呼吸困難に陥っていた。

 

ワアアアアア…

 

ざわついていた観客の声が選手達の入場で大きな歓声に変わった。

司会者が入場してきた選手の紹介を始める。

 

「あっ! マァムさんだ!!

マァムさ〜〜〜ん!! ぼくの分まで頑張ってくださいね〜〜〜っ!!」

「ひっ…ひっ…、ご、ごめん…!

私ちょっと…、ぶふっ…

王様に会いに行ってくるね…!

あっは…!」

「ああ、わかった。

マァムの応援は俺とチウに任せとけって!

…その笑い、ちゃんと引っ込めていけよ」

「げほっ…!! ダ、ダメ、ツボに入った…!!」

 

笑い止まないドラを呆れ顔でポップが見送る。

ゴメちゃんに背中をさすってもらいながら途中何度も崩れ落ちつつ、ドラはなんとかロモス国王のいる専用観覧席へと向かった。

ようやっと笑いを引っ込めて気を取り直し、扉の前で警護にあたっている兵士に持っていた親書を見せて中へと通してもらう。

 

「おお…よく来た勇者ドラよ! 息災そうじゃの!!」

「国王陛下、お久しぶりです。

この度は貴重な機会にお招きいただきましたこと、深くお礼申し上げます」

「ほっほっ…そう畏まらんでもよい! 

そなたの勇猛っぷりは聞き及んでおる!

この大会は腕自慢を集めて国力増強を図るのが狙いでな。

そなたのような手弱女(たおやめ)だけに魔王軍との戦いを背負わせるのは国の名折れ…

ドラほどの魔法使いはそうそうおらぬであろうが、血気盛んな益荒男(ますらお)が集っておる。

きっとそなたの力になる強者もいよう。

ほかにも、ワシで力になれることがあれば何でも申すが良い!」

「身に余るご厚情にございます、陛下。

魔王軍を蹴散らすことで、賜った御恩に報いてみせましょう」

「うむ…!」

 

ドラから返ってきた力強い言葉にロモス王が満足そうに頷いた。

深く頭を下げていたドラが顔を上げて本題を切り出す。

 

「実はひとつ、お願い事があって参りました。

この大会を主催した方に会わせていただきたいのです」

「主催者…おお、ザムザ殿のことじゃな!

…ん? ザムザ殿はどこじゃ!?

つい今しがたまでここにおったのじゃが…」

「陛下、ザムザ殿があちらの観客席に…」

「んん!? いつの間に…」

 

部屋で警護にあたっていた兵士達もいつ部屋を出て移動したのかわからず首を傾げている。

ドラは内心「しまった」と舌打ちした。

ザムザが観客席に移動する前に穏便に処理してしまいたかったのだが…どうやら行き違ってしまったらしい。

 

会場を見下ろしてみればいつの間にやら決勝戦が始まろうとしていた。

舞台には決勝戦に勝ち上がった出場者が8人…その中にはマァムの姿もある。

観客席に立つザムザが司会者のアナウンスに促され、舞台に立つ選手達に向かって見下した態度を隠そうともせず口を開いた。

 

「諸君、よく勝ち残った!

想像以上のメンバーで私は大いに満足している…!

国王陛下にご提案申し上げ、この大会を開いた甲斐があった…実に素晴らしい素材が集まったものだ!

 

…お前達8人は、明日の魔王軍の血肉となるのだッ!!」

 

「なんの冗談だ?!!」

「遊びはここで終わりだ!!

キィ〜ヒッヒヒヒ!!!」

 

選手からの糾弾にゲームオーバーを宣告したザムザが指を鳴らすと、円形の舞台の端々に大きな亀裂が生じた。

亀裂から生えてきた鋭い先端が見る間に突き上がり、選手達を包み込んで大きな丸いドームとなって覆っていく…

一見すると蝙蝠の羽に似た丸いドームはよくよく見ると、骨を歪に連ねた柱に皮を剥がれた肉の膜を張ったかのような醜悪さだった。

不気味さ溢れる巨大な物体と雲ひとつない晴天が場違い過ぎてなんとも現実感が湧いてこない。

あまりの出来事に観客席にいる人々は悲鳴も上げられず、目の前の異様な光景にただただ呆然とした表情を浮かべていた。

 

「ザムザ殿!? これはどういうことじゃ!!」

 

人間ではあり得ない跳躍力でドームの頂上に飛び移ったザムザに、ロモス王が常に浮かべている朗らかな表情をかなぐり捨てて叫び声をあげた。

 

「ご協力感謝しますロモス王…

これで我が魔王軍も大いに助かる!!」

「魔王軍!!? きっ…貴様は…!!?」

 

ぶわり、とザムザの体が激しい炎に包まれたかと思ったら炎はすぐさま消え去った。掻き消えていく炎とともに人間に化けていた時の衣装の燃え滓だけが風に流されていく。

正体を現したザムザは落ち着いた風合いの青い衣装から一転。黒と深緑を基調とした禍々しい衣装にその身を包み、肌の色も父親であるザボエラによく似た土気色に、耳も魔族の特徴である大きく尖った形に変化していた。

 

「キィ〜〜〜ッヒッヒッヒッ!

魔王軍妖魔士団長ザボエラが一子…妖魔学士ザムザだっ!!!」

「まっ…魔族か…!!?」

 

信頼していた側近の正体が魔族だと知り衝撃を受けるロモス王。

ザムザの正体が魔族と知った護衛達はロモス王の前に立ち剣を構えた。

 

(妖魔学士ザムザ…おお、やっぱり額から目元にかけて父親のザボエラに似てる…笑い方も…

けど、それ以外は似てないなぁ。

身長高いし、頭良さそうだし…)

 

「我が妖魔士団が研究中の超魔生物学の実験体としてどうしても強靭な肉体を持つ人間が欲しくてな!

お前を利用してこの武術大会を開かせたのだ!!

おまけに魔王軍に逆らいうる人間を一気にロモスから奪える!

まさに一石二鳥の作戦よ!

キィ〜〜〜ヒッヒッヒッ!!」

 

(有能かよ!!

えぇ…ザボエラのザルみたいな作戦内容のハニトラとのなんて違い…

見たところ王様や兵士さん達が薬を盛られたようにも見えないし…

え? 地道な下準備と実力だけで王様に取り入ってこんな大掛かりな武術大会開催させるとこまで持っていったの?

マジで?

え、マジで…!?

…天才かな?)

 

えぇ〜…本当にザボエラの息子ぉ…? と、ドラがまじまじとザムザを見つめた。

 

「おっ、おのれぇっ!!

よくもこのワシを謀ったなっ!!」

「フン! 今更遅いわ…この8人はオレが貰う!

…そのついでにロモス王…お前の命も消せれば言うこと無しッ!!!

 

死ねぇッ!!」

 

刻印(スタンプ)

 

ザムザがロモス王めがけて放った中級爆裂呪文(イオラ)は爆発こそ巻き起こしたものの、ドラの魔法障壁によって難なく防がれ国王はおろか観覧席にも傷ひとつ付いていない。

それを見たザムザが初めてドラの姿を認識し、何者かと問い詰めた。

 

「なっ…なんだッ!? お前は…!!?」

「ドラよ…助かったぞ…!!」

「ド、ドラだとおっ!!?」

 

ロモス王から出た「ドラ」という名を聞いたザムザは驚愕に目を見開く。

しかしその目はすぐさまドラを『勇者』ではなく、『思いがけず出現した希少サンプル』を映すものへと変わっていった。

 

「魔王軍です!! お逃げくださ〜〜〜いッ!!!」

 

ヒイィ…!! キャアアア…!!

 

司会者の賢明なアナウンスによって会場にいた人々は我先にと闘技場の外へと駆け出した。

一般人を巻き込まなくて済みそうだと安堵したドラが心の中で司会者に感謝しつつザムザを見据える。

マァム達を閉じ込めている生体牢獄(バイオプリズン)も、即座に命を奪うような物ではないしザムザに交渉を持ちかける時間くらいはあるだろう。

 

「…ん? オレの生体牢獄(バイオプリズン)に汚い手で触るな…

このドブネズミめっ!!!」

「!! 極大真空呪文(バギクロス)!!!」

「ぐあぁッ!?」

 

視界のはるか下、囚われたマァムを助けようと生体牢獄(バイオプリズン)に齧り付いていたチウめがけてザムザが最大火炎呪文(メラゾーマ)を放とうとした瞬間、ドラが放った極大真空呪文(バギクロス)によって炎はかき消されザムザもまた巻き起こった旋風に吹き飛ばされた。

 

「ポップ! チウちゃんを安全な場所に避難させて!」

「ああ、わかった!!」

「なっ…はっ、離せ!! 中にまだマァムさんが…!!」

 

暴れるチウをポップが引きずって生体牢獄(バイオプリズン)から引き離す。

ロモス王も護衛の兵士達に守られながら避難していった。これで心置きなく戦える。

 

観客席に叩きつけられたザムザはゆっくりと立ち上がりドラを睨みつけた。

しかしその口元は歪み、にやにやと不気味な笑みを浮かべている。

その口から漏れ出てきた仄暗い笑い声が徐々に大きくなっていった。

 

「ウッ…フフフッ…ウヒヒヒッ…

キイ〜ッヒッヒッヒッ!!

素晴らしいっ!!! 凄まじい魔法の威力だぁッ!!!

まさか本物の(ドラゴン)の騎士という最高のサンプルが目の前に現れるとはなぁッ!!」

試験品(サンプル)…」

 

ドラの片眉がピクリと動いた。

 

「お前が来た時には正直、内心ドキリとしたが…

本物の(ドラゴン)の騎士が見られるならこれほどありがたい偶然はない!!

我らの研究目標はその力を得る事なのだから…!!」

「………」

 

無言でザムザを睨むドラを前に、恐怖で慄いていると思ったザムザは自身の目的を喋り続ける。

 

「我らが妖魔士団は妖魔力においては他軍を圧倒するがパワーと生命力が無い!!

それを補うために父ザボエラの発案でオレが秘かに研究を続けていたのが『超魔生物学』なのだ!!

超魔…すなわち魔族を超えうるもの!!

我々はありとあらゆる怪物(モンスター)の長所を移植手術することによって人工的に超魔生物を誕生させることを思いついていたのさ…!」

「…(ドラゴン)の騎士って言っても、ちょっと体が頑丈で、魔力が強いだけで、そこまで魔族と大差無いと思うけど?」

 

そう、原作ではバランが竜魔人と化した姿を見て超魔生物の到達点だと信じたザムザが自身の研究のために実験体として人間を求めたが、先の戦いにおいてバランは竜魔人にはならなかった。

よって竜魔人を一つの到達点として見なすことも、(ドラゴン)の騎士を超魔生物学の研究のサンプルとする必要もないはずだが…

 

「いいや!! オレは感じたのだ!!

(ドラゴン)の騎士の真の力はあんなものではないと…!

まだまだ隠された力があるはず…!!

オレはそれが見たいのだ…!!

 

たとえそうではなかったとしても、尋常ではない強さを誇るその(ドラゴン)の力…

 

まさに飛んで火に入る夏の虫!

最高のサンプル!!

お前ら親子のような…化け物を作るためのなああっ!!!

キィ〜ッヒッヒッヒッ!!!!」

 

ブ チ ン

 

「ガハッ…!??」

極大真空呪文(バギクロス)

「ヒュッ…」

 

虫、試験品(サンプル)、化け物、という三段活用で罵られキレたドラが(ドラゴン)の紋章を発動させ、ザムザに飛びかかった。

ザムザの頭を掴み、石で作られた観客席にそのまま叩きつける。

後頭部を叩きつけられただけではなく、ザムザは頭を抑えつけれたままゼロ距離で極大真空呪文(バギクロス)を浴びせられた。

 

悲鳴すら唸る風に飲み込まれたザムザは死んでこそいないようだったが、真空の刃を浴びせられ息も絶え絶えといった様子だ。

八つ裂かれた衣服の胸ぐらを掴んだドラが血まみれになったザムザを両手で持ち上げる。

 

「へぇ、今ので死ななかったんだ?

すごいすごい。

でも、痛かったでしょ?

ごめんね? お詫びに回復してあげるから…

 

劣化回復呪文(デホイミ)

「うっぎゃああああ…ッ!!!」

 

説明しよう! 【劣化回復呪文(デホイミ)】とは!

ドラが作ったオリジナル魔法である。

通常、回復呪文(ホイミ)系呪文は発動する際に傷や神経を刺激しないよう麻酔効果も備わっている。

自然治癒で怪我が治る際に痒みを伴ったり、皮膚が引き攣れて痛みを伴ったりするが回復呪文(ホイミ)で治療を施すとじんわりと温かく心地良く感じるのは呪文に込められた麻酔機能が働いているからである。

 

劣化回復呪文(デホイミ)はその真逆…

治療を施す際に神経を過剰に刺激して激痛を引き起こしながら回復をするのだ。

負った損傷自体は治癒しているので、呪文をかけた対象の体力をすり減らしつつ再度損傷を与えては繰り返し激痛を伴った治癒を施す事が出来る…

まさに拷問に打ってつけの呪文である!

 

※開発者コメント:少しレベルが高い相手に刷り込み(インプリント)を使う際に弱らせるために併用したり、腐りきった性根の人間をギリギリ殺さないで痛めつけるために作りました!

拷問や尋問、体力を回復させたくない捕虜に使うのに最適だと思います!

(ただし普通の人間は三回以上連続で使用すると廃人になるおそれがあります。使用する際はよく注意してください)

 

回復させてはまた至近距離で魔法を叩き込み、劣化回復呪文(デホイミ)をかける…という作業を繰り返すこと数回。

弱りきったザムザに刷り込み(インプリント)を叩き込んだドラは「服従しろ!!」と命じた。

 

「その額の記憶媒体(メモリー)、私に頂戴♡」

「うぅ…」

 

満面の笑みで要求してきたドラに「絶対に渡すものか…!」と顔に書いてあるザムザはしかし、弱りきったところに全力でかけられた刷り込み(インプリント)には抗えず震える手つきで額の記憶媒体(メモリー)を外してドラへと渡す。

記憶媒体(メモリー)を受け取ったドラはそれを太陽にかざし、くふくふと嬉しそうに笑みをこぼした。

 

(やった〜〜〜!

これさえあれば超魔生物は完成しない!

ハドラーの超魔生物化も遅らせることが出来る!

せめて最終決戦までハドラーが大人しくしていてくれれば味方の生存率も大幅に上がる!!

あとは…)

 

闘技場を見渡すと、避難したはずのロモス王とポップ、ゴメちゃんとチウが物陰に隠れてこちらの様子を伺っていた。

どうやら一方的にザムザを蹂躙しているドラをずっと見ていたらしい。

若干引き気味な体勢でこちらを見ているロモス王にドラがほくほくとした笑顔を浮かべて声を張り上げた。

 

「王様〜! ザムザの身柄、私が預かりますね〜〜〜!!」

「う、うむ…。勇者殿であれば、大丈夫であろう…」

「わ〜い! ありがとうございま〜すっ!」

 

「えっげつねぇな…あいつ…」

「ピィ…」

 

妹弟子の鬼畜の所業にドン引きするポップと同意するゴメちゃん。

チウは声も出せない様子でプルプルと震える尻尾を握りしめている。

と、その時である。

 

「閃華裂光拳!!!」

 

バァンッ、という強烈な破砕音とともに生体牢獄(バイオプリズン)が破られ、囚われていたマァムが自らの力で脱出に成功した。

 

「あ、あら? 一体どういう状況…?!」

 

あたりを見回し、外から聞こえてきた呪文の数々からてっきりまだ戦闘中だと思っていたマァムは状況がよく飲み込めない様子だった。

マァムの姿を目にしたチウが人目も憚らずに観客席を転げ降りてマァムに抱きつく。

 

「マ、マァムさん!! 良かった、ご無事で…!!」

「チウ…良かった、無事だったのね!」

「マァム、心配したぜ…!」

「ポップ、あなたも無事だったのね…良かった…!」

 

お互いの無事を確認し合う仲間の姿を見たドラは更に機嫌を良くして後始末に取り掛かった。

ひとまず会場に残っていた兵士達に協力してもらって拘束したザムザの身柄を一時預かってもらう。

生体牢獄(バイオプリズン)の中で麻痺毒により動けなくなっていた選手達を回復した後、拡声魔法を闘技場上空に放ち魔王軍を撃退した事を人々に伝えて事態の収拾を図ったのである。

そして…

 

 

 

「おじいちゃ〜ん! ただいま〜!」

「おお、おかえりドラや!

…んん? その青年は…!?」

「今日からこの島に住むことになった、魔王軍妖魔士団軍団長ザボエラの息子さんのザムザ!

よろしくね、おじいちゃん!!」

「ひ、ひえぇ…!!」

「みんな〜! 新しいお友達連れて来たよ〜!!

仲良くしてあげてね〜!!」

「ギャッ、ギャッ!」「キィ、キィ!」「アオォン!!」

 

「くっ…なぜこのオレが…!

こんな下等生物どもと…!!」

 

「あ゛? 何か言った?」

 

「ヒッ…、な、何も…言ってなどいない…!」

「…そう? 仲良くね♡」

 

こうして、デルムリン島に新しい仲間が一人加わったのであった。

 

 

 




ザムザ君生存ルート入りました〜!

ドラの欲しかったもの
超魔生物研究のデータが入った記憶媒体(メモリー)
と、ついでにザムザ

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