パプニカへと帰ってきたドラ達一行は王城の前に降り立った。
高台に建てられた王城からはパプニカの港町が一望できる。
パプニカ王国が不死騎団の襲撃で壊滅状態に追いやられてから約二ヶ月…
破壊された街並みは人々の努力により徐々に復興の兆しを見せ、風光明媚で知られたかつての姿を取り戻しつつあった。
物珍しそうに港町を眺めるチウと一緒に、ドラもしばし海風を胸いっぱいに吸い込み海鳥の鳴き声に耳を傾ける。
すると後ろからドラ達一行の帰りを待っていたクロコダインの、大きな足音と嬉しそうな声が響いてきた。
「ようっ!! 帰ってきたなあっ!!!」
「クロコダイン!!」
振り向いたチウはクロコダインを見るなり尻尾の先まで全身の毛を逆立ててビシリ、と固まった。
久々の再会にマァムが嬉しそうな笑顔でクロコダインに駆け寄る。
「マァムッ!! 久しいな!
聞いたぞ、武術大会では大活躍だったそうだな!!
お前が加わればドラ達もまさに『鬼に金棒』ってとこだっ!!」
「いやね、鬼とか金棒はないでしょ! 女の子に向かって!!」
「ワハハッ! すまんすまん!!」
カラカラと大口を開けて笑うクロコダインにドラが話しかける。
「ただいま、クロコダイン」
「おお! ドラ、待っていたぞ!
お前の活躍も聞いている…大事なくて良かった」
「えへへ、ありがとう」
またも一人で戦い敵を蹂躙しただけではなく、その敵を捕虜として捉えたと聞いたクロコダインはドラの身を案じていた。
無事であることは聞いていたが実際に自分の目で見て、ドラが大きな怪我を負っていないことに安心したらしい。
まるで幼な子を案じる父親のように大きな手でドラの頭を撫でた。
「そうだ、クロコダイン。
「うむ、すでにほとんどの王がこのパプニカに来ている。
ベンガーナ、テラン、それに滅ぼされたオーザムの王もな」
「今、王様達はどこにいるかな? 聞きたいことがあるんだけど…」
「案内しよう」
言って歩き出したクロコダインの後をドラ達がついていく。
道中、怯えっぱなしのチウをクロコダインがつついたり、ポップから武術大会の話を聞きながら一行は各国の王達が集まる『パプニカ大礼拝堂』へと向かった。
「みんな!! お帰りなさい!!」
「ただいまっ、レオナ!」
「久しぶりね、レオナ!!」
「…マァムも…!!」
大礼拝堂の一室には
部屋に入ってきたドラ達を見たレオナが話し合いを中断し、嬉しそうに駆け寄ってくる。
一行の中にマァムの姿を見つけたレオナは思わぬ場所での再会に、一層笑顔を溢れさせマァムの手を取った。
以前の時とはガラリと印象が変わり、鮮やかな色の拳法着に身を包んでキリリと引き締まった表情を見て頼もしそうにマァムを見つめる。
「ずいぶん強くなったみたいね! 頼りにしてるわよ!!」
「レオナの方こそ凄いわ! 世界中の王様を一つにまとめちゃおうなんて…!!」
「残念ながら世界中ではないわ…滅びてしまった国の指導者達はいまだに行方知れずだし…」
声を萎ませるレオナに変わり、三賢者の一人アポロが言葉を続けた。
「我ら三賢者がそれぞれの国に向かったのだが、リンガイア王軍はほぼ壊滅…
国王も行方が知れず、猛将と謳われたバウスン将軍を救出することしか出来ませんでした。
将軍が言うにはリンガイア王とは離れ離れになってしまったと…」
「それと、バウスン将軍からお話を聞きリンガイアで保護されていたオーザム王国の国王をお連れしました。
オーザム王国は壊滅状態、オーザム国王は力になれないかもとおっしゃっていましたが…」
アポロに続くマリンの言葉にドラは少し目を丸くした。
原作ではオーザム王国はフレイザード率いる氷炎魔団により滅亡、国王はおろか国民すべてが滅ぼされてしまっていたが…
だいぶ前にオーザム王国を訪れた時に仕掛けまくった
しかし同じく
不甲斐なさとやるせなさに拳を握りしめつつも、続くエイミの言葉に耳を傾ける。
「カール王国の女王、フローラ様の行方もわからないままです。
姫様もかねてより尊敬されていた方、ご無事だと良いのですが…」
「…大丈夫よ、女性ながら勇猛果敢なことで知られた方ですもの。
きっとご無事だわ…!」
「へぇ~~~っ!
姫さんより勇猛果敢とはね!!
そりゃ、ドラより強ぇんじゃねぇの!!?」
「…言ってくれたわねポップ君!!!」
それを聞いたみんなからアハハッ、と笑い声が上がった。
(…ん? あれ? 今微妙にディスられた…?)
比較対象に挙げたポップとそれを受けて憤ったレオナにちょっと納得が行かないドラであった。
「なっ、なんか変なやつらが来るッ…!!」
難しい話にはとんと興味が無く、大礼拝堂から見渡せる景色を眺めていたチウが叫び声をあげた。
すわ、敵襲かと駆け寄りチウが指差した方向を見る一同。
そこに見えたものはベンガーナ王率いる戦車部隊…そして港に停泊している一際大きな軍艦であった。
魔王軍に動向を隠すために各国の王達にはお忍びで来るよう通達していたレオナと三賢者の表情が曇る。
軍艦に戦車部隊…どう考えても進軍するのが見て取れてしまう。
自国ならばまだ良いかもしれない。しかしここはパプニカ王国…
やっと復興の兆しが見えてきたばかりだというのに軍艦を見た魔王軍が攻め入ってきて、また街を破壊されては堪ったものではない。
通達を無視し、他国を安易に危険に晒すベンガーナ王にレオナと三賢者は抗議したい気持ちを隠せない様子だ。
一方、軍艦を見たドラはと言うと…
(大きい軍艦…!
砲台もあんなにたくさんついて…
ほっ、欲しい~~~ッ!!!
あれ、おねだりしたら何とか手に入らないかなっ…!??)
頬を紅潮させキラキラとした目で軍艦を眺めるドラ。
肩に乗っているゴメちゃんと隣にいたポップがその表情を見て、「あ…こいつまたろくでもない事考えてるな…」と察したことに軍艦に夢中なドラはまるで気づかなかった。
その後、大礼拝堂へと到着したベンガーナ王とレオナが若干揉めたためベンガーナ王への聞き込みは諦めざるを得なかったが、アポロの助言を受けテラン王に『ドラにも扱える強力な杖かロッド』が無いかを聞くに至ったのである。
案内された客室で相も変わらず寝台に伏せっているテラン王を見たポップが心配そうに声をかける。
「…お身体が悪かったんじゃないんスか?」
「フフフッ…レオナ姫にハッパをかけられてな。
この年寄りの知識が少しでも世界の役に立つならと思い無理をして出てきたのだ…
さて、質問の杖のことだが…
おそらくこの地上にはない!」
断言するテラン王に落胆を隠せないドラとポップとマァム、そしてゴメちゃん…
落胆の色を隠せないドラ達にテラン王はなぜそう思うのか説明を続けた。
「『覇者の剣』や『真魔剛竜剣』など、オリハルコンで出来た伝説の剣の話は聞いたことがあるが、『杖』…
それもオリハルコンで出来た、あるいはオリハルコンにも対抗し得るような杖など聞いたこともない。
おそらく各国の王に聞いても同じ答えが返ってくるじゃろう」
「…そうですか。
せめて、出来得る限り強力な『杖』か『ロッド』について何かご存知ありませんか?」
この世界において『杖』や『ロッド』というのは『剣』ほど重要視されていない。
魔法使いは『杖』や『ロッド』が無くても魔法を発動させられるし、鍛冶屋もまず『剣』を作れるように修行を重ねる。
さらに『杖』や『ロッド』には通常【魔石】が必要になってくる。
この【魔石】によって『杖』や『ロッド』が底上げ出来る魔力が変わってくるため、作り手にとっては手間がかかるわりに完成してみないと駄作か傑作かわからないという鍛冶屋泣かせの武器なのだ。
「…ふむ、メルルを呼びなさい」
「かしこまりました」
ドラの言葉を受けて、テラン王が従者に指示を出す。
(あ、良かった。メルルちゃんもパプニカに来てた。
剣にしろ、杖にしろ、ロン・ベルクさんを当たってみたかったけどメルルちゃんの案内無しではロン・ベルクさんの隠れ家に辿り着けないからなぁ…
あと、ポップとマァムとメルルちゃんはなるべく一緒に行動してほしい。
レオナとの恋バナする時の材料にしたいから…!)
もう一つの魂の存在を明かした今、やろうと思えばロン・ベルクの存在を示唆してメルルの手を借りずともランカークスへ赴くことは可能だっただろう。
しかし自身の楽しみを優先してあえてロン・ベルクの存在を黙っていたドラ…
ザムザを捕虜として連行するわ、軍艦を欲しがるわ、あえてロン・ベルクの存在を明かさないわ…
自身の欲求最優先で行動するドラを、もう一つの魂である『お姉ちゃん』はドラの中から微笑ましげに見守っていた。
その後入室してきたメルルの占いにより、示されたキーワード『ランカークス』…
テラン、ベンガーナのやや東方に位置する村であるとテラン王が説明する。
どう行こうかと思案する面々に自身の故郷であり
飛び出してきた故郷へ帰る事を渋るポップをみんなで説き伏せて、ドラ達アバンの使徒一行はメルルとチウを伴いランカークス村へと赴いたのである。
ドラ「あれも欲しい、これも欲しい!」
お姉ちゃん「せっかく『ダイの大冒険』の世界に生まれたんだし、原作に寄せて生きる必要もないんだし…
いいんじゃない? 好きになさいな…協力するわよ」
ドラ「ヒャッフゥゥゥッ!!」