ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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今回は武器作りの一歩前、閑話に近いかもしれません。


61_照らし出す『光』

原作では破壊されてしまったが、今やテラン城の一室で厳かに祀られている竜水晶から魔石を譲ってもらったドラ。

竜水晶から譲り受けた魔石…竜魔石とでも呼べる結晶体を持ってパプニカへと戻った。

 

「ドラ! 『覇者の冠』手に入れてきたぜ!」

「きゃあっ! ありがとうポップ、マァム!!」

「ピィ! ピィ!♪」

「このくらいお安い御用よ!

そっちはどう? 何か手がかりは掴めた?」

 

『覇者の冠』を手に入れるべくロモスへと行っていたポップとマァム。

無事目的の物を入手してきてくれた二人にドラが抱きつき礼を言う。

マァムはメルルの助言に従い、竜水晶へ魔石の手がかりを聞きに言ったドラに首尾を尋ねた。

尋ねられたドラが「ふっふっふ…」と勿体ぶった後に、竜魔石を二人の前に差し出す。

 

「じゃーん!!」

「うおぉ…!!」

「す、凄い魔石…! 綺麗ね…!」

 

竜魔石はドラの両手でちょうど包み込めるくらいの大きさの球体である。

ポップとマァムも杖やロッドに使われている魔石や、ナバラやメルル達占い師が使う水晶なら今までに何度も見た事がある。

しかしドラが差し出した魔石は今まで見てきたそれらとは明らかに放つ輝きが違った。

 

色は透明。しかし球の中心には青い輝きが渦巻いており、まるでゆらゆらとゆらめく水面に反射する光のように不思議な輝きが溢れていた。

竜魔石を持ったドラの手からは次から次へと、キラキラとした魔力の粒子が零れ落ちていく。

その様を見たポップとマァムはなるほど、人が作れるような代物ではないと納得するに十分だった。

 

「…やったな!!! ドラ!!

これならすっげぇ杖が作れそうじゃねぇか!!!」

「ええ…本当に…!

オーザムに行っているクロコダインとヒュンケルが戻ってきたら、すぐにロン・ベルクのもとへ行きましょう!」

「だな!」

「うん!」

「ピィ~!」

 

どんな杖が出来るかしら? 私可愛いのがいい! ぶはっ…あのオッサンが可愛い杖作ってる姿…想像できねぇ~!

…などと、和気藹々と明るくお喋りに興じていると、クロコダインの野太い声が響いてきた。

 

「…戻ったぞ!」

「クロコダイン! おかえりなさい!!

『覇者の胸当て』あった?!!」

「…ああ」

「…」

 

クロコダインと行動を共にしていたヒュンケルが無言で、布に包んだ『覇者の胸当て』を差し出してきた。

 

「あ、ありがとう、ヒュンケル…

何? 二人とも何かあったの…?」

「「…?」」「ピィー?」

 

ヒュンケルが暗いのはいつもの事だが、クロコダインがここまで意気消沈した姿など早々ある事ではない。

ポップとマァム、それにゴメちゃんも。互いに顔を見合わせて、次いでクロコダインとヒュンケルを心配そうに見つめた。

問われたクロコダインが重い口を開けて、ドラの瞬間移動魔法(ルーラ)で送られた後『覇者の胸当て』を探すべく歩き回ったオーザムについて語り出す。

 

「…オーザム城は、もはや城の形を留めてはいないほどに破壊され焼き尽くされていた。

俺たちはなんとか宝物庫と思しき部屋を見つけてな。

焼き払われた残骸の中で、唯一無事だった『覇者の胸当て』を見つけ出す事が出来た」

 

そこまで言って口を閉ざしたクロコダインに変わり、ヒュンケルが重い口を開き語り出した。

 

「………酷い有様だった。オーザムは雪に覆われた国だ。

焼き払われた残骸は雪に埋もれ、凍らされた人々はそのまま朽ちる事無く…氷に囚われたままになっていた。

 

オーザムはフレイザードによって滅ぼされた…

しかし…誰がやったかは関係ない。

全て魔王軍が…

俺や、クロコダインがかつてやってきた事だ…」

「…ヒュンケル」

「おっさん…」

 

オーザムの惨状を目の当たりにしたクロコダインとヒュンケルは、自身が犯した罪の大きさを改めて実感したのであろう。

沈黙とともに重い空気があたりを包む。

ポップとマァムは消沈する二人になんと声をかけたら良いのかわからなかった。

二人に気を使わせている事に気づき、ハッとした様子のクロコダインが努めて明るく言葉を発した。

 

「いや、すまない。お前たちに聞かせるような話では…!」

 

「なんだ、何かと思ったらそんな事か。

魔王軍の襲撃があって交戦でもしたのかと思った」

 

心配して損した~、と軽い口調でドラがクロコダインの言葉を遮った。

ドラの興味はもはや二人には無いのか、受け取った包みの布を剥いで中から出てきた『覇者の胸当て』を手の中で回しながらニコニコと眺めている。

 

その様子にカチンと来たのはマァムだ。

二人が罪の意識に苛まれているのにそれを蔑ろにするなど、大切な仲間に対する態度とは思えない。

 

「ドラ!! なんて酷いこと言うのよ!!

二人がこんなに悔いているのに…!

可哀想だとは…力になってあげようとは思わないの…!?」

「え? 思わないよ?」

 

マァムこそ何言ってんの?

 

きょとんと首を傾げながらさらりとドラが言い放った。

全員、なんとも言えない表情でドラを見る。

見つめられたドラは「あれ? なんかまずい事言ったかな…?」と顔に書いてあるようであった。

 

しかし少し考え込んだ後、ドラはキリリと表情を引き締めてクロコダインとヒュンケルに向き直った。

一つ呼吸を吸い込んで、口を開く。

 

「そうだよ。クロコダイン、ヒュンケル。

あなたがやった。

あなたが殺した。

あなたが滅ぼした。

 

事実から目を逸らさないでね。

でも、自分を責めるのはやめてね。

謝るのも、気にするのも、自分を傷つけるようなこともやめてね。

 

だってそれは、殺された人達にとって何の意味も成さないから。

残された人達にとっても、何の救いにもならないから。

 

もし、私があなたに殺された人間だったとして殺した人から謝られたりしたら

 

「今更何よ! だったら私の事生き返らせなさいよ!!!」

 

って怒るよ。

 

もし、私が生き残った人だったら

 

「今更何よ! 私から奪ったもの全部返しなさいよ!!!」

 

って怒るよ。

 

二人が殺していった人達のこと忘れて幸せになったら

 

「私の事殺しておいて幸せになるなんて許せない!!!」

 

って怒るよ。

 

二人が自分を責めて不幸のドン底に陥ったら

 

「私の事殺したんだから、そんなんじゃ足りない! もっと苦しみなさいよ!!!」

 

って怒るよ」

 

シィン…と全員が無言のままドラを見つめ続ける。

大きく息を吸い込み、呼吸を整えてドラが話を続けた。

 

「ね? 二人がどれだけ罪の意識に苛まれようが、どれだけ謝罪を重ねようが…

幸せだろうが不幸だろうが、傷つけられた人にとって何の慰めにも弔いにもならないんだよ。

 

二人に出来る贖罪は、より良い世界を作ること。

こんな悲劇を二度と生み出さないために、自分に何が出来るか考え続けること。

 

今、二人がすべき事は後悔することでも、我武者羅に戦い続けることでもない。

 

『私』のために戦うこと…

 

大魔王バーンを倒すために戦う、私の手足となって戦うこと!

 

私のために常に万全の状態を保つこと!

 

そのためには、よく食べて、よく寝て、よく遊んで、心を健全に保つこと!

 

贖罪のための戦場は私が示してあげる。

だから、無駄な自責や自傷は無しね。

見ててイライラするから。

私がイライラした精神状態だと戦いにも響くし、負ける要因になるかもでしょ?

 

よって、二人には常に心身を健康に保って万全の状態でいることを義務付けます!

これ、勇者命令ね!!」

 

あ、あとなんか恋バナあったら教えて!

 

と、胸を張って言い切ったドラにクロコダインとヒュンケルは言葉が出なかった。

 

「ドラ…ごめんなさい、私…」

「えー? なんでマァムが謝るの??

マァムのほうが二人のこと考えてあげてるし優しいじゃん~」

 

ドラの態度があんまりだと思ってつい責めてしまったが…

ドラはドラなりに、ちゃんと自分の考えがあっての事だったのだ。

その気持ちを酌み取ったマァムがドラを抱きしめる。

抱きしめられた意味がよくわからないながらも、マァムの温かい抱擁が大好きなドラはそのままぎゅっと抱きついた。

 

「ほんと、お前はよ…」

 

ポップがドラの頭をわしわしと撫でた。

マァムからの抱擁とポップの労りに「んへへ…」とだらしない笑顔を浮かべるドラ。

 

「そう、そうだな…

俺が今更懺悔したところで、なんの罪滅ぼしにもならん…!

ドラ、今一度誓おう…

俺のこの力、お前のために振るおう!!」

「ああ、俺もだ…!!」

 

気持ちを新たに、ドラへの忠誠を誓うクロコダイン。

言葉少なながらも、目を潤ませてクロコダインに倣うヒュンケル。

 

 

『勇者ダイ』のように太陽の如く心を明るく照らし、闇夜に彷徨う者を救済するようなやり方ではないけれども。

闇夜に彷徨う者を月明かりの如く照らして、行くべき道を指し示す…

形は違えども、より良い世界を築こうとする『勇者ドラ』の姿がそこにはあった。

 

 

「そうだよ、私たち世界に『幸せ』をもたらすために戦ってるんでしょ?

だったら、まずは私たちが『幸せ』になる努力をしないとね…!」

 

 

 




最近、悲しいニュースが多いですよね…
治安が良いとされる日本でもニュースを見てると気分が落ち込みます。
日本とは比べものにならない文明度と治安の『ダイ大』の世界…人々の心の荒みようは正直想像できません。

そんな中で、命を脅かされることなく、愛情を注がれ悪意に触れたことのないダイ君。
彼がいかに奇跡的な存在であり、出会う人々の心を明るく照らしていったかを考えると一層作品への愛情が深まる気がします。

本作の主人公は「ダイ君」には到底及びませんが、あの世界をより良くしたいと思う一人であってほしいと願う作者です。
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