「…完成だっ!!」
「これが…地上最強の、私の杖…!」
(なんて綺麗…魔石だけじゃなくて杖全体から光が溢れ出てる…)
うっとりと杖に見惚れるドラと杖が完成し汗だくになりながらも一息ついたロン・ベルクにジャンクが声をかける。
「なんてえ名前にするね?」
「こいつはドラのために生まれたこの世にたった一本の杖だ…
したがってその名前は…」
「ドラゴ…」
「『ドラの杖』以外に考えられない…!!!」
「ドラの杖…!! 良い名じゃないか!!」
(ドラゴンシャイン☆マジカルワンドが良かった…)
持ち主であるドラの意向をまるっと無視して制作者であるロン・ベルクによって名付けられた『ドラの杖』。
長さはドラの背丈よりも短く、ちょうどドラの肩より少し高いくらいだろうか。
オリハルコンで作られた柄は銀色に輝き全体的にシンプルな作りだ。
特徴的なのは竜魔石の台座…それは原作に見る『ダイの剣』の鍔によく似た、まるで広げたドラゴンの翼のような装飾が施されていた。
ドラゴンの翼の上には月を逆さにしたような大きな三日月型の装飾が輝いていて、その中にすっぽりと収まるような形で竜魔石が鎮座している。
魂を抱え、天に向かって羽ばたく輝く
吸い寄せられるようにしてドラの手が杖へと伸びる。
柄を掴んだドラはその瞬間、吸い付くようにぴたりと…体の一部のようになった杖に思わず息を飲んだ。
(す、凄い…! まるで私の体の一部になったみたい…
吸い付くように手から離れな…
んん…?)
杖を持ったドラが違和感に顔を顰める。
異変を感じたロン・ベルクとジャンクも何事かと目を見張った。
「ちょっ、ちょっと待って…
これ、勝手に魔力が吸われてる!??
危ないっ! 外ッ!! 外ッ…!!!」
慌てふためいて勢いよく扉を開け外へ飛び出したドラを、顔を見合わせてロン・ベルクとジャンクも追いかけた。
外へと飛び出したドラは手から勝手に魔力を吸った杖が、吸い上げた魔力を放とうとするのを必死に制御する。
まるで卵から孵ったばかりの仔竜が本能だけで火を吹こうと、闇雲に全力で放とうとする魔力の指向を何も無い上空へと向けた。
ボウゥン…ッ!!!
杖が勝手に放った魔力は爆炎となって空高く燃え上がっていった。
その様子を見たロン・ベルクとジャンクの血の気が一気に引いた。当然である。
あと少しドラが外に出るのが遅かったら工房ごと、火の海ならぬ爆炎に焼かれ吹き飛ばされていたところだったのだから…
この世に生を受け手初めに爆炎を放ったドラの杖はなおもドラの手から魔力を吸い続ける。
が、今度は何か魔法を発動させようというわけではないらしい。
それを肌で感じ取ったドラは杖からそっと手を放した。
「わっ、浮いた…!
ロン、こんな機能付けてくれたの?!
手で持ち運ばなくてもいいの、凄い便利!
ありがとう〜!!」
「いや…、そんな機能は付けていないが…?」
とととっ、と歩いたり走ったりするドラに合わせて杖はピッタリと浮遊している。
ドラが手を伸ばさずとも掴みたいと思えば杖のほうから手の中に収まっていくらしい。
「すげえじゃねぇかロン!!! こんな杖初めて見たぜ!!
凄い剣を作るヤツだとは思っていたが…
こんな前代未聞の杖まで作っちまえるなんてよ!!!」
どういう仕組みであんな事が出来るんだ? 俺ぁ普通の剣しか打てねえから皆目見当がつかん…!!
興奮して捲し立てるジャンクに制作者であるロン・ベルクでさえも何故そうなっているのかワケが分からず答えあぐねる。
しかし心血を注ぎ魂を込めて生み出した武器が、ドラの魂に呼応してそうなったのだとすると…
「…フ…フフ…
ワハハハハハハッ…!!」
「どうしたんだロン?! いきなり馬鹿みたいに笑い出して…」
「ロン?」
突然笑い出したロン・ベルクをドラとジャンクが近くに寄って心配する。
「いや、なんでもない…
今まで俺は数多くの武器を作ってきたが…
こんなじゃじゃ馬な武器が出来たのは初めてだッ…!!
まさかこんなに早く作り手の予想を飛び越えてきやがるとはな…
ワッハッハッ…!!」
ひとしきり笑ったロンが、ドラに杖についているもう一つの機能について説明する。
「えっ、本当!? 私でも扱える!?」
「扱えない道理が無いな。その杖はもはやお前を主人と認めている。
お前の意志に呼応して最大級の威力を発揮してくれるだろう」
「ありがとうっ!!」
「…おいッ?!」
感極まったドラが喜びのあまり勢いよくロン・ベルクに抱きついて頬に口付ける。
予想外の行動に腕を組んでいたロン・ベルクは咄嗟にドラを抑える事が出来なかった。
頬に口付けられたくらいで照れるような初々しさなど残ってはいないが、ドラはまだ12歳…
魔族どころか、人間の目から見てもお礼と称して接吻を贈るにはドラは幼くも、かといって成熟しきってもおらず不適当と言っていい年頃だろう。
まったく喜べないロン・ベルクは説教代わりにドラに発破を掛けた。
「ふん…マセガキが。
まあ、お前さんが将来その杖に負けないくらいイイ女になったら口説きに行ってやるよ。
せいぜい、武器に見劣りしないよう努力するんだな」
「わかった! 楽しみに待ってるね!!」
「ブッ…ワッハハハハ!!
こりゃ一本取られたなロン!! もうすでにイイ女だぜ、このお嬢さんは…!」
「クッ…」
将来イイ女になる事を微塵も疑っていない…どころか、すでにイイ女であると自負するドラ。
「そうか、私が大人になったら口説いてくれるのか。なら楽しみにしてるわ」という意味を込めて満面の笑みで返事をした。
そのあまりにも自信に満ちた表情に二人のやりとりを見ていたジャンクが爆笑し、釣られてロン・ベルクも吹き出す。
ただ、そのまま笑ってしまうとなんだか負けた気がするので必死に堪えたが…側から見れば笑いを堪えているのなど一目瞭然であった。
「杖も出来たし私、パプニカに戻らなくちゃ!
ジャンクさん、それにスティーヌさんも、ありがとうございました!
ロン、今度あらためてお礼しに来るね!」
「礼はいらん。ただし、成果はちゃんと聞かせに来い!」
「うん!」
ジャンクの傍らにはつい今しがた来たポップの母、スティーヌがいる。
夫と息子の帰りが遅いので心配になって森の奥の工房を訪ねて来たのだ。
一年以上も帰らなかった息子が戻ってきたと思ったらまたすぐにいなくなってしまった事に些か動揺した様子だったが、ドラが事情を説明し今度はパプニカ王国の危機に駆けつけただけで戦闘が終われば必ず帰宅させると約束すると心の底から安堵したようだった。
「ドラさん、あの子を…ポップをよろしくお願いします…!」
「フン! 何言っとる!!
足手まといになるようならほっぽっといてもいいぞ、ドラさん!!」
「心配は無用です、ジャンクさん!
なんたってポップはとっても強い天才魔道士…私の自慢の兄弟子ですもん!!
…じゃあ、今頃敵をバッタバッタと薙ぎ払ってるポップのお手伝いに行ってきますね!
勇者であるドラの口から力強く『天才魔道士』『自慢の兄弟子』という言葉を聞いたジャンク夫妻は、少しだけ不安が和らいだ顔をした。
実家にいた頃は頼りないとばかり思っていた息子が、世界を脅かしている魔王軍との戦いの最前線に赴いているのだ。
親としては「逃げ帰って来てもいい。ただ無事でいてほしい」というのが本音であろう。
しかし戦いに身を投じるという選択をした息子の気持ちを尊重したいというのも、夫妻の偽らざる本音だった。
そんな夫妻の葛藤を、「彼は強いから心配無用」というドラの一言が明るく照らす。
空の彼方へと飛び立っていったドラを、ジャンクとスティーヌ…そしてロン・ベルクが見送った。
「…ご苦労だったな。まあ、一杯呑め」
「気がきくな…年の功ってやつか?」
差し出された酒瓶の蓋を器用に片手で開け、そのままぐびりと呑んだロン・ベルクに自身ももう一本持ってきた酒瓶の蓋を開けながらジャンクが軽口を叩く。
「よく言うぜ! 俺の何倍も生きてやがるくせによ!!」
「…魔族の人生は密度が薄い。
人間の何倍も生きられるもんだからダラダラ生きるヤツが多い…
何百年生きたってカラッポの人生もある…!」
一口呷った酒の余韻を感じながら、ロン・ベルクはドラが飛び去った方角…
もっと言うのなら自身が作り出した杖を持ったドラの姿を思い起こしながら、満足そうに今の気持ちを打ち明けた。
「…こんなにうまい酒が呑めたヤツは何人もいないさ…!
俺は今、満足しきっている!!
あの杖は、よく出来た…!!!」
「…今日はとことん付き合うぜ、ロン!!」
同じ職人として、満足がいく武器を作り上げる事がどれだけ困難なのかを嫌と言うほど理解しているジャンクがロン・ベルクに祝杯をあげる。
頑なで意地でも自分の信念を曲げず、恐ろしく器用に武器を作り上げる一流の職人同士。
しかし生き方自体は至極不器用な男二人の酒宴を、武器職人の妻として長年寄り添ってきたスティーヌは優しい眼差しで見つめたのであった。
ダイの剣「無闇に振るうと危ないからご主人様が悲しい思いをしないよう、僕がしっかりしなきゃ!」
ドラの杖「姐さん!出陣はまだっすか!? 自分いつでも行けますよ!! なんなら自分だけでも特攻仕掛けてきやす!!」
ドラ「ステイ、ステイ!」
ドラの杖イメージ
【挿絵表示】
やっと杖完成。なかなか戦闘までたどり着かない;
コンビニに文才と画力売ってないかなー…