ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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一つ一つ掘り下げてくとキリが無いので思いついたネタまとめました。
また溜まったら投稿します。


 小ネタ集

ドラがバランの拠点にいた時の話…

 

「ねぇねぇ、お父さん」

「何だ? ディーナ」

「お母さんってアルキード王国の王女様だったんだよね?」

「…ああ、そうだ」

「じゃあ、私って世が世ならお姫様?」

「そう…なるな」

「…そっかぁ~」

 

(そうか…この子は本来なら一国の姫君として人々から敬われ慕われていたやもしれぬ…

私はこの子から母親の祖国だけでなく、この子のあるべき未来までも奪ってしまったのやも…)

 

娘から奪ったものの大きさをあらためて思い知るバラン。

一方ドラの脳内はと言うと…

 

(今は亡きアルキード王国の王女…

つまり亡国の姫…

 

これはつまり『亡国の姫騎士』と名乗っていいのでは…?

自分、『(ドラゴン)の騎士』なわけだし…

 

う~ん…やっぱり属性が渋滞し過ぎている…

勇者、魔法使い、(ドラゴン)の騎士…

『亡国の姫騎士』ってカッコいいけど王族籍なのはお母さんまでであって私はお姫様ではないから属性としては弱いかも…

メインジョブが魔法使いだし、自分剣技はあんまりだから『正義の魔法使い』がやっぱりメインになるのかな…?

いや、でもそれならもうシンプルに『勇者』って名乗ったほうが通りが良い気がする…

『魔法少女』ならまだしも『正義の魔法使い』ってやっぱりダサい気が…)

 

「うぅ~~~ん…んみゃあうぅあぁ~~~~…

ぅあ゛~~~~~~」

 

「ディーナ、どうしたのだ突然…!?」

「へっ? あ、大丈夫大丈夫。気にしないで?

 

…う゛ぅ~~~ん」

 

(本当に大丈夫なのであろうか…?)

 

※女の子あるある。悲鳴と奇声と奇行はわりと日常茶飯事。

 

 

* * * * * * * * *

 

 

カシャシャシャシャシャシャ…

カシャーン、カシャーン…

 

ズザー!!

 

カシャシャシャシャ…!!

 

「なっ、なに…? どうしたのディーナ…」

「お兄ちゃんそのまま!! 動かないでそのままッ、笑顔キープで!!!」

「こ…怖いよ…ディーナ」

「あっ、その表情凄くイイ…! もうちょっと上目遣いでお願いッ!!!」

 

ディーノ(変な子だ…!)

バラン(変わった子に育ったな…)

ラーハルト(変なこ…奇特なお方だな…)

 

ゴメちゃん(ドラ…なんでこんな残念な感じに育っちゃったんだろう…?)

 

※前世のオタ魂が荒ぶった

 

 

* * * * * * * * *

 

キスの話

 

「えっ?! お兄ちゃんキスした事ないの!?」

「ピイィ!?」

「えっ…う、うん…」

 

詰め寄るドラにディーノが引き気味に答える。

まるで信じられない…といった表情をしたドラは今度は兄ディーノではなく、父であるバランに詰め寄った。

 

「お父さん!! お兄ちゃん、キスもした事がないってどういう事!?」

「むう…」

 

どういう事かと問われたバランは口を閉ざした。

それはそうだ。

男所帯で、しかもバランは人としての常識にいささか疎い部分がある。

そのバランに対して「なぜキスをしないのか」という質問は答えようがないだろう。

逆に「なぜする必要があるのか」という疑問しか湧いてこない。

ドラはそんなバランを置き去りにして兄に向き直って真剣な表情で語り出した。

 

「お兄ちゃん…キスは大事だよ!

大切な人に自分の気持ちを伝えたり、感謝の気持ちを現したり…

とにかく、相手に自分の愛情を伝えるための大切なコミュニケーションの手段なの。

 

お兄ちゃんが将来、大切な人に感謝の気持ちをちゃんと伝えられるように…

 

私とキスの練習しよう!」

 

とんでもない持論を持ち出したドラにバランが慌てて止めに入ろうとするが、時既に遅し。

ドラはディーノへと口付けを落とした。

 

ディーノの白く柔らかな頬へと。

 

「これが『親愛のキス』だよ。お兄ちゃんが大切だと思う人にしてあげてね?」

「ディーナ、くすぐったいよ〜」

「ほら、今度はお兄ちゃんの番だよ!

ゴメちゃんのほっぺにキスしてあげて!」

「…こ、こう?」

 

ちゅう、とディーノがゴメちゃんのぷるぷるとした頬にキスをする。

 

「ピィ〜♪」

 

キスをされたゴメちゃんも嬉しそうにディーノの頬にキスをし返した。

照れるディーノの頬にもう一度キスをしたドラがお返しのキスをねだる。

 

「お兄ちゃん、私にもキスして!」

「う、うん…

んー。

これでいい?」

「んふふ、くすぐったい♪

でもお兄ちゃん、それじゃ『唇を押し付けてる』だけだよ〜。

キスはもっと…こう、ちょっと吸う感じでやってみて?」

「も、もうやめようよ…恥ずかしいよ〜!」

「そこは慣れだよお兄ちゃん! ゴメちゃんもお兄ちゃんにキスしてあげて!」

「ピィ〜♪」

 

キスしてはキスをし返す子供達…

例えるなら子猫同士が拙い毛繕いを交互にし返す様子に似ている。

あまりにも尊いその光景を見たバランは片手で目を塞ぎ天を仰いだ。

脇に控えていたラーハルトもその光景を目に焼き付けんと瞬きもせず凝視している。

 

(ソアラ…君にもこの愛らしい子供達の姿を見せたかった…!)

 

ついにはその目に涙を浮かべ始めたバランの気持ちなど露ほども知らないドラはと言うと…

 

(お兄ちゃんのほっぺ、ぷくぷくのすべすべ〜♡

今のうちにうんと堪能しとこっと。うへへ…)

 

なんとも邪な感情で延々とキスをねだり続けたのであった…

 

 

* * * * * * * * *

 

推しが解釈一致の回答する姿が見たかっただけの話

 

「ねぇねぇ、ラーハルト」

「なんでしょう、ディーナ様?」

「私とお父さんが命の危機に陥ってどちらか一方しか助けられないとしたら、どっち助ける?」

 

テーブルに頬杖をついてニコニコと無邪気に微笑むドラからとてつもなく重い質問をされたラーハルトは答えに窮した。

ドラの後ろではバランも娘の口から出た荒唐無稽な質問に少し眉を顰めている。

だいたい主君(バラン)が命の危機に陥るほどの事態が思い浮かばない。なんだその状況は。命の危機どころかこの世の終わりか何かでは無いのか?

 

ラーハルトの気持ちを正直に伝えるなら答えなど一つしかない、『主君(バラン)』である。

しかし目の前の少女にそう言ってしまうのはあまりにも大人気がない。

これは要するに「もちろん答えは『私』でしょう?」という解答が決まっている類の質問だろう。

 

バランの方に目をやるとバランもそう思ったのか無言で頷いていた。

長年バランと接していたラーハルトにはバランが何を言いたいのかなど目を見ればわかる。

 

(お前の気持ちは良く理解している。ここは娘の機嫌を損ねないよう、すまぬが合わせてやってくれ)

(畏まりました、バラン様)

 

目配せだけで会話した後、ラーハルトはドラを見つめて微笑みながら答えた。

 

「もちろん、ディーナ様をお助けします」

「はあ?」

 

ニコニコと微笑んでいたドラの顔から一瞬で笑顔が消えた。のみならず、恐ろしく底冷えした声でラーハルトに質問を返す。

 

「え? 今なんて言った?

私? まさかと思うけど私を助けるって言ったの? ねぇ!?

私の聞き間違いかなぁ…もう一回質問するね?

 

私とお父さんが命の危機に陥ってどちらか一方しか助けられないとしたら、どっち助ける…!?」

「バラン様です」

 

先ほどとは打って変わって眼光を鋭く光らせながらドラが同じ質問を投げかけた。

嘘を言ったら殺されるやも…というほど殺気を漲らせたドラにラーハルトが間髪入れず本音を語る。

 

「…だよね〜〜〜!!

あ〜、良かった! 私の聞き間違いだったみたい!

ラーハルトはお父さん助けるよね、もちろん!!」

 

ラーハルトの本音を聞いたドラが満面の笑みを浮かべる。

花まで飛ばしそうなほど一気に上機嫌になったドラにバランが呆気に取られたように尋ねた。

 

「…ディーナはそれで良いのか? 自分が見捨てられても…?」

「え? だってラーハルトお父さん大好きじゃない。

お父さんのこと助けて当然でしょ?

それにお父さんが危険な目に遭ってる時に助けられる実力の持ち主なんてラーハルトくらいだし…

私は大丈夫だよ。ラーハルトに助けてもらわなきゃならないほど弱くないもん。

ラーハルトはお父さんとお兄ちゃん優先して助けてよ。

 

で、ラーハルトがお父さん助けたら、助かったお父さんは絶対私のこと助けに来てくれるでしょ?

そうしたら私たち超最強家族じゃない?!」

 

今でも最強だけどもっと強くなれるよ!!

 

あっけらかんと言い放ったドラをバランとラーハルトが見つめる。

華奢な少女の内側から溢れ出てくる底知れない『強さ』…

その『強さ』に触れて、ラーハルトは自分でも気付かぬうちにその身を震わせた。

 

その震えが自分の心情をよく知り、かつ肯定してくれた『歓喜』であったとラーハルトが理解するのはドラがバランと離別した後のことであった。

 

 

ドラ「お父さん最優先じゃないラーハルトとか解釈違いなんで…」

 

 

* * * * * * * * *

 

アバンの使徒わちゃわちゃ

 

「ヒュンケルを泣かせたい」

「ドラ?」

「なんだよ藪から棒に…無理じゃねぇ?」

 

ドラの突拍子もない発言にマァムとポップが呆れた視線を向け、クロコダインはストレスでも溜まっているのだろうかとドラの頭を優しく撫でた。

 

「フ…俺を泣かせる? 戦い以外で俺の心を動かせるものなどそうそうないが…まあ、せいぜい頑張ってみるんだな」

「お? 今鼻で笑ったね? その言葉…後悔させてあげる!

 

それでは聞いてください『ぶちスライム』」

 

ドラが子供に聞かせるように物語を語り出す。

 

「…ぶち、お前だったのか、いつも、栗をくれたのは…」

 

「なんて悲しいお話なの…っ!」

「うぅっ…ぐずっ…うあぁっ!!」

「ぶちよ…お、お前…!!」

「ぐっ…クソッ!」

 

「いや、ヒュンケルどころか全員号泣じゃん…」

 

後日、『泣いた赤トロル』の話でクロコダインの涙腺が決壊した。

 

 

* * * * * * * * *

 

 

「ドラのお料理教室〜!」

「ピィ〜!」

 

わ〜、パチパチ!

 

「で、何をすればいい?」

「なんっで俺まで…」

 

お城の調理場の隅を借りて、大量の食材を前にエプロン姿で張り切るドラ。

荷物持ちの延長で手伝いに入ったヒュンケル。それとなぜかポップまで駆り出されて料理を手伝うことになった。

 

「二人は料理ってどれくらい出来るの?」

「アバンに基本は習ったのでな、皮剥きくらいならば出来る。

…が、正直に言って料理は切って焼くくらいしか出来んな」

「俺もアバン先生に習ったのと、実家でもそこそこ手伝ってたからな。

まあ簡単な料理なら作れるぜ」

「なるほど。じゃあまずは水洗いと皮剥きお願い」

「ああ、わかった」

「だからなんで俺まで…」

 

大量の下拵えをする三人を、厨房で働いている城勤めの料理人達が微笑ましげに見守る。

 

「よ〜し、下拵え完了〜!

じゃあまずはこの野菜を全部微塵切りにします!

真空呪文(バギ)!」

 

大量の野菜が大鍋の中で細切れになっていく。

 

「で、火炎呪文(メラ)でじっくり炒めてる間にこのお肉もミンチにします。

真空呪文(バギ)!」

 

これまたボウルの中で細切れになる肉。

 

「そうしたら調味料と合わせて味を染み込ませるんだけど、真空呪文(バギ)を応用して真空状態にして一気に味を浸透させます。

あとデザートは果物を氷結呪文(ヒャド)で凍らせてあらかじめ作っておいたアイスクリームと一緒にこれまた空気を含ませながら真空呪文(バギ)でかき混ぜて〜…」

 

目の前で次々と展開される魔法にヒュンケルとポップだけではなく、料理人達もポカンとした表情でその光景を凝視した。

 

「はい! 具沢山スープとハンバーグ、それにふわふわ食感フルーツアイスの完成!

ね、簡単でしょう?」

 

「………」

 

「………ちょっと待てよ…え〜と…

真空呪文(バギ)

 

こんな感じか!」

「そうそう! ポップ上手〜!!」

 

ドラの魔法を真似してあっという間にモノにしてしまったポップ。

キャッキャッとはしゃぎながら料理をする妹弟子と弟弟子をヒュンケルは微笑ましげに見つめた。

その後も続いたドラのお料理教室の規格外っぷりを見て動揺した料理人達のせいで、その日の王族の晩餐は形が崩れたり焦げが付いたりと散々な出来になってしまったのだとか…

 

 

ドラ:チート

ポップ:ド天才

ヒュンケル:天然

 

* * * * * * * * *

 

 

「レオナ…私たち、ついに雌雄を決する時が来たみたいね…?」

「あら、ドラちゃん私に勝てるとでも…?

これでもパプニカ王国を背負って立つ身。その私に勝とうだなんて笑止よ!!」

 

「「いざ尋常に…勝負!!」」

 

「ドラ、負けんなよ〜!」

「姫様、頑張ってください!」

 

ワーワーと歓声が取り囲む中、勇者ドラとパプニカ王国王女レオナ姫の腕相撲対決が開催されていた。

なぜこんなことになっているかと言うと、ドラが自分よりも弱い対戦相手を求め続けた結果としか言いようがない。

ドラの腕相撲による戦績は以下の通りである。

 

VSクロコダイン:不戦敗(体格が違い過ぎてそもそも腕が組めない。よしんば組めても勝負にならない)

VSヒュンケル:負け(勝てる要素がどこにもない。ストレート負け)

VSマァム:負け(元僧侶戦士現武闘家。勝てるわけがなかった)

VSポップ:負け(魔法使いだけど意外と力持ち。実家の武器屋でよく手伝い(重い資材運びや商品の棚卸など)をさせられてた)

 

と、いうわけでレオナに行き着いたドラ。

体格もほぼ互角の上、勇者が姫に負けるわけにはいかないと気合十分で挑んだのだが…

 

「ぐぬぬぬぬ…!

 

いやっ…待って…! やだやだ…ッ!

そんなに強くされたら…っ

このままじゃ私、負けちゃう…ッ!

イヤ…そんなっ…やめてっ!

 

あっ…

 

アア゛〜〜〜〜〜!!

ア゛ア゛ア゛ァ〜〜〜〜〜!!!」

 

「…とてもではないが、女性があげていい声では…」

「この声、怪物(モンスター)討伐任務の折に退治したおおにわとりの断末魔そっくりじゃな…」

 

ドラの悲鳴を聞いたアポロとバダックがそう呟く。

 

「勝者、レオナ姫〜!」

「やったあ! ドラちゃんに勝ったわ!」

 

勝負がついて万歳をするレオナとは対照的にドラは力尽きてテーブルに突っ伏している。

突っ伏したままの姿勢のドラの口からおかしい…こんなはずでは…という呟きが聞こえてきた。

 

「なんでお姫様のレオナに負けるの〜っ!?」

 

ふえぇ、と涙を流しながら悔しがるドラ。

それを見たマァムがふと疑問を口にした。

 

「ドラ…あなたデルムリン島でどんな仕事やお手伝いをしていたの?

いくらなんでも力が弱すぎる気がするけど…」

「デルムリン島で? え〜っとねぇ…」

 

 

「う〜ん…おじいちゃん、この瓶、蓋が硬くて開かない〜」

「どれどれ…ホレ、開いたぞ」

「わあっ、おじいちゃん凄い! ありがとう〜♡」

「ほっほっ、他にも何か困った事があったらすぐに言うんじゃよ」

「うんっ」

 

 

「あの木の実食べたいっ! ドラキーちゃん取ってきてぇ♡」

「キィ!」

「わ〜、ドラキーちゃんありがとう〜♡」

「キィィ〜♡」

 

 

「今日はお魚いっぱい食べたいから、マーマンちゃんお魚獲ってきて♡」

「ギョイ〜!」

「わあっ、こんなにたくさん…マーマンちゃんありがとう〜♡」

「ギョギョ〜♡」

 

 

「集中して勉強したいっ! あとおっきい本棚も欲しいっ!

ゴーレムちゃん、頑丈な建物作って〜」

「ゴゴーッ!!」

「ゴーレムちゃん凄いっ! 頼りになる〜っ♡」

「ゴ〜♡」

 

 

「あれ? 考えてみたら私…力仕事ってした事ないや。

全部友達がやってくれてた〜」

 

あははっ、と笑うドラに周囲を囲んでいた面々が一斉に脱力した。

 

 

※ドラの甘え癖と非力さはデルムリン島の環境によって培われた

 




もっと日常のわちゃわちゃした話書きたいけど一旦手仕舞い。
挿絵や落書きももっと描きたい…時間と手が足りねえ…

次回からまた本編に戻る予定です。

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