5日後、人類の総力を上げて死の大地へ進撃―
魔王軍の襲撃により絶対絶命の状況に陥った
各国の指導者達が出した結論は原作と同じく、カール王国を拠点にして人類の総力を上げ死の大地へと乗り込む事だった。
更に、拠点はカール王国だが死の大地へ赴くための移動手段は船。その船がサババで造られている点も同じ…
ザムザを倒した際に超魔生物研究の結晶とも言える
…無いはずなのだが、どうにも嫌な予感が拭えなかったドラはレオナを通じてサババの造船所の防衛を十二分に固めるように伝えた。
なぜ
そうして5日後に出発すると伝えられたアバンの使徒達はというと…
ポップは師であるマトリフのもとへ修行をつけてもらいに。
マァムは既に武神流免許皆伝の腕前なので自身でひたすら鍛錬を積みに。
ヒュンケルはロン・ベルクのもとへ鎧の魔剣の修復と鍛錬に。
クロコダインはチウを伴い新必殺技を編み出すための修行に。
決戦が間近に迫りそれぞれが出来る限りの事をしようと誰に言われるまでもなく行動を起こしていた。
皆が慌ただしく動き出す中、ドラは…
「マトリフさん、いる?」
「ん? なんでぇ、嬢ちゃんか…ポップならここにはいないぜ?」
ドラはゴメちゃんを伴ってバルジ島からほど近いマトリフの庵を訪れた。
マトリフは陽光の射さない庵の中で椅子に座りじっと何かを考えているようだったが、ドラの姿を見るなりポップの不在を告げる。
「あれ? ポップが修行に来てたんじゃないの?」
「ああ、来たぜ。修行つけてくれとか抜かすから、今は海の底で耐久瞑想中だ…
クックックッ…と意地悪そうに笑うマトリフにドラが苦笑する。
この人も愛情の示し方が大概下手クソでかえってわかりやすい。痛めつけてるようにしか見えない修行でも、可愛い弟子が戦火の中で死なないようにこれでもかと鍛え抜いてあげているんだろう。
「用があるのはポップじゃなくてマトリフさんにだよ。というかむしろポップがいなくて良かった。
魔法の修行について相談に来たんだ」
「修行? おめぇさんに教える事なんざ何も無ぇぞ」
「違う違う、私じゃなくて…ポップに教えてあげてほしい呪文があるの」
ドラの口から出た『
「何で嬢ちゃんがその呪文の事を…ッ!?
…いや、そういや嬢ちゃんは知ってるんだったか。
もう片っぽの魂からの情報か…」
ドラがゆっくりと頷いた。
「魔王軍の本拠地にはオリハルコンを基に禁呪法で生み出された戦士がうようよいるの。
万が一、ポップがそいつらと交戦する事態になったら
まずもって勝ち目が無い」
「…もしかして、嬢ちゃんは使えるのか?」
「一応ね」
眉間に皺を寄せたマトリフが複雑そうな表情でドラを見つめる。
それはそうだろう。その威力と発動の難性ゆえに秘匿していた技を事もなげに使えると言われたのだから。
使えるは使えるが、ドラとしては使う機会が無ければそれに越した事は無いな…というのが正直な気持ちだった。
よくこんな呪文を思いついてしかも実践しようとしたものだ。頭がおかしいにも程がある。
力も技術もいる上に失敗が許されないし、もし失敗しようものなら命が無い。
(こんなに術者に負担のかかる呪文、そりゃあ寿命も縮むよ…)
原作でサディスト呼ばわりされてたマトリフだが、その実マゾヒストなのでは?
どちらにしろ変態だ、紛う事なき変態が目の前にいる。
ドラは逸らしていた視線をマトリフに戻して『Hは変態の頭文字』という言葉を思い出し、思わずうんうんと一人で納得してしまった。
「嬢ちゃんが使えるなら、お前がポップにやり方教えてやりゃあいいじゃねぇか」
「それじゃダメだと思う。
ポップは私と向き合ってはくれるだろうけど、真正面からぶつかっては来ないよ」
ドラは首を横に振りながら静かに答える。
理論を知り、発動のさせ方を知っているドラはその身に宿る
これは言ってみれば絶対安全な鎧を身に纏ってチェーンソーでお手玉するようなものだ。
ポップは窮地に追い込まれれば追い込まれるほどに危機を乗り越え成長する。
逆に言うと魂に火が点いてポップが心の底から本気にならない限り成長しないのだ。
ドラのように、命も魂もかけていない
マトリフの体がもうボロボロなのは知っている。その身で
しかしそれを押してでも師であるマトリフからポップに、切り札となる最強呪文を伝授してほしいのだ。
「…正直、気乗りはしねえな。
この呪文の最大の弱点はもしはね返されたりしたらこちらがひとたまりも無ぇことだ。
しかも命を縮める…この戦いが終わっても、長生き出来る保証がどこにも無い」
「でも、この呪文が使えなければポップはこの戦争で命を落とすよ?」
ドラもマトリフも、ポップの身を案じるがあまり最善策を考えて無言になってしまう。
最悪、ポップに
ドラがポップに変わって必要に応じ
沈黙が続きなんとも言えない空気が漂う庵の中に、突然場違いに明るい声が響いた。
「おいお〜い! なぁ〜に二人とも深刻な顔してんだよっ!?
俺についての話を俺抜きでするなんて…随分水くさいじゃねぇの〜」
「ポップ!?」
「ポップ、おめえ…」
今の会話を一番聞かれたくない人間に聞かれてしまい、マトリフがじろりとポップを睨む。
「師匠の言いつけどおり、瞑想を終えてへとへとになって帰ってきたらよ…ゴメのやつが静かにしろってジェスチャーするもんで何かと思ったら…
二人とも俺について何やらコソコソ話し合ってんじゃねぇか」
「ゴメちゃん」
「ピィィ」
ドラがゴメちゃんをジロッと睨む。
申し訳なさそうな顔をしているが、ゴメちゃんはゴメちゃんでポップのためを思って二人の真剣な会話を聞かせたのだという事はよく伝わってきた。
「なんだと思って聞き耳立ててたら、オリハルコンの戦士がどうとか…俺の命がどうとか…
要するに、俺がそのメド…なんたらって呪文を覚えりゃいいだけの話っしょ!?
簡単簡単♪ この俺様にかかりゃあ呪文の一つや二つ、覚えるのなんて楽勝よ〜♪
棺桶に片足突っ込んでるジジイと12年しか生きてない妹弟子に命の心配される謂れなんてどこにも無いってえの!」
ペラペラと調子良く捲し立てるポップ。
ポップの身を案じて相談をしていたマトリフとドラがちらりと目を合わせてひそひそと小声で話始める。
「楽勝だって、簡単に言ってくれちゃって」
「こちとら覚えるのも使うのも危険な呪文、教えるかどうするか真剣に悩んでるっていうのに」
「だいたい、ポップがなかなか真剣になってくれないのが悪いのに」
「命の心配してやってるってのに人を棺桶に片足突っ込んでるとか失礼な事抜かしやがって…」
「たった3歳しか違わないのに大人風吹かして偉ぶっちゃって、やあねぇ?」
「「ねぇ〜?」」
「おい、聞こえてんぞ」
まるで女子高生のようなノリで話す98歳と12歳にツッコミを入れたポップはお調子者の仮面を取り去り、真剣な表情で本心を打ち明ける。
「二人が俺の事を真剣に考えてくれてんのはわかるし、ありがてぇなって思うよ。
けど俺だっていい加減師匠や妹弟子に心配ばっかりさせたくねぇんだ…
俺だって守りてぇんだよ、仲間を…!
鬼岩城が攻め込んできた時のヒュンケルの強さはそりゃもう凄かった。
俺、あいつに比べたら全然弱いし情けなくてよ…
…けど、今のあいつを見てるとあいつの強さってのは文字通り命を削って出来てるんだなってのも心底わかるぜ。
ヒュンケルも、マァムも、クロコダインのおっさんも…今、命をかけて強くなろうとしてる。
俺の命が削れるくらいで仲間を守れるってんならいくらでも削ってやるッ!!
師匠、頼む!! 俺にその最強の呪文を教えてくれッ!!!」
「ポップ…」
ポップの真剣な表情を見たドラは、自分の思い違いを恥ずかしく思った。
窮地に陥らないと真剣になってくれないなどと上から目線でポップを見ていたが、もうとっくにポップの魂は燃え上がっていたのだ。
マトリフも同じ事を感じ取ったのだろう。
椅子から立ち上がり、ポップを外へと促した。
「ポップ、表に出な…」
「師匠!」
「マトリフさん、体の具合は…」
「ハッ、弟子が命かけるってのに師匠の俺がへっぴり腰じゃあ格好がつかねえだろうよ。
嬢ちゃんは黙って見てな。
この俺が弱すぎる弟子のために超強ぇ呪文を教えてやるよ…!」
「くっ…相っ変わらず口の減らないジジイだぜ…
弱すぎるは余計だってんだ!!」
「うるせえ、事実だろうが」
いつもの調子で掛け合いを始めた二人の後ろをドラとゴメちゃんが追いかける。
そうして今代の大魔道士マトリフから次代の大魔道士ポップへと、最強の呪文『
「本当、なんで初見で
ポップも変態だ…」
「ピィ〜…」
変態変態言ってるけどドラも大概。
乗って大会出てみろって言われて初めてなのに運転出来ちゃうしレース出て優勝するのがポップ。
多分それくらいポップの才能は異常。
余談
「ロ〜ン! ちょっとお願いがあるんだけど…ヒュンケルの武器の修復と、あと鍛錬もつけてあげてほしいの」
「よろしく頼む」
「何で鍛錬までつけてやらにゃならん…武器の修復が終わったら帰れ」
「機会があったらお父さんに真魔剛竜剣直接触らせてくれるようにお願いしてあげ」
「少し揉んでやる、本気でかかってこい!」
「ああ、望むところだ!」
(ロン、本当ちょろ…頼りになる人で助かるなあ)
さらに余談
ワンピース好きの友人(ダイの大冒険ミリしら)に「主人公達の修行が熱くて燃えるんだよ〜」と話したら「へえ、どのくらいの期間修行するの? 二年くらい?」と言われたので修行期間5日と答えたら「合宿じゃん」と言われました。
旅立ちから大魔王打倒まで全期間三ヶ月だからしゃあないねん…!