ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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前話「70_予感的中」を大幅に加筆修正しました。(話の流れ自体は変えてません)
体調悪い時に文章を書くものではないと反省してます…


71_北の勇者と南の勇者

「その必要はないよ…僕が行けば済むことだ」

 

「だっ…誰だおめえは!!?」

 

突然現れた大剣を背に負った戦士にポップが警戒心を剥き出しにして怒鳴り散らす。

 

「……人呼んで…〝北の勇者〟!」

 

怒鳴り散らされた当の戦士はポップのほうをちらりとも見ず、訝しむようにドラを睨め付けてから名前ではなく他称を名乗った。

 

「なっ、なにィ~~~ッ!!?」

 

まさか『勇者』だと名乗られるとは思ってもみなかったポップが大袈裟に叫び声を上げた。

ポップの中の『勇者』と言ったら勇者の中の勇者である師アバンの印象が強すぎるのだろう。

品行方正どころか不遜な態度で挨拶もしない男が『勇者』だとは夢にも思わなかったらしい。

それはレオナやマァムも同じだったようで大声こそ出さなかったが小さな声で「北の勇者!?」と戸惑う声がドラの耳に入ってきた。

 

「サババの船はボクが救う。

こういう有事のためにボクはここで待っていたんだ!!

わざわざ背伸びして戦いに加わった連中の力など借りる必要はない!!」

「なんだとォこの野郎っ! 俺達を誰だと思ってやがるッ!!?」

「〝自称・勇者〟のパプニカ御一行だろ?」

「…てめえッ!!!」

 

「よさんかっ!! ノヴァ!!!」

 

売り言葉に買い言葉でヒートアップしていくポップを止めようとした時、軍人特有の厳しい喝が響き渡り空気をビリビリと震わせた。

ノヴァと呼ばれた青年はバウスン将軍から放たれた喝にまったく怯まず、それどころかバウスン将軍さえも睨みながら静かに口を開く。

 

「…なんですか父さん…?」

「父さん!?」

 

バウスン将軍が驚くレオナに向かって心底申し訳なさそうな顔をして我が子の無礼を詫びる。

 

「レオナ姫、失礼いたしました!

このノヴァは私の息子でして…リンガイア戦士団の団長を務めている者です。

ノヴァ!! パプニカの姫君と勇者殿達に何と無礼な言葉をっ!!」

「真実を語って何が悪いのです!?

第一どいつもこいつも勝手に〝勇者〟を名乗っている事自体が不愉快だ!

この間も、勇者を名乗る連中が援軍に加わったと思ったら支給された薬草や配給する予定の食料を盗んで行方をくらませた…

〝自称〟を名乗る勇者など、どいつもこいつもろくでなしばかりだ!!

世界中で崇められる真の勇者は一人で充分!!」

 

バウスン将軍が謝罪を促そうとするが、よほど〝勇者詐欺〟の横行に堪えかねていたのだろうか。

ノヴァは間髪入れずに父親に口答えして、目の前にいるドラ達の事も小馬鹿にするような態度をとる。

それに激昂したのはポップだ。

 

「バッキャロ~~~~ッ!!! そりゃこっちのセリフだあッ!!!」

「うわわ…ちょ、落ち着いてよポップ~~~! あぁ~~~…」

「は、離せよドラ…! 一発ブン殴ってやらねぇと気がすまねぇぜッ!!」

 

ノヴァが喋っている途中から不穏な気配を感じ取ったドラがポップのベルトを持って抑えようとしたが、非力なドラの制止などまるで意味を為さなかった。

殴りかかろうとするポップに引きずられて体勢を崩したドラがズルズルとポップの足にまとわりつく。

あまりにも格好がつかないので手を離すようポップが促すがドラはそんな事をしている場合ではないと二人を諭す。

 

「いいから! 今はそんな事してる場合じゃないからっ!!

ノヴァ! 私の事気に入らないなら別にそれでいいから敵についての情報だけは聞いていって!!」

 

懇願を受けたノヴァは一見してまったく勇者には見えない…

事実、目の前で非力そうな魔法使いすらも止められず無様に引きずられて膝をついている華奢なドラを見て自身の考えが間違っていない事を確信した。

 

「…なるほど、まさかと思っていたが君が〝勇者ドラ〟だな…!?」

 

スッ、とノヴァがドラを助け起こすかのように手を差し伸べる。

ドラはこの後起こる事がなんとなく予想できたが、今は変に敵対している時間は無いとノヴァの手を取ろうとした時…

 

ドォンッ!!!

 

案の定、ドラを助け起こすのではなくノヴァはそのまま拳を天井に向けて振り上げた。

振り上げた拳から放たれたノヴァの闘気はまるで大砲のような破壊力で作戦基地の天井を易々と木っ端微塵にした。撃ち抜かれた天井からはちょうど真上にあった太陽と青い空が顔を覗かせる。

まさかこの場で攻撃行為をするとは思わなかったドラ以外の面々、特にレオナやメルルなどは落ちてくる瓦礫から咄嗟に身を守った。

視界の端でエイミがここぞとばかりにヒュンケルに抱きついているのが見えたが、ヒュンケルはまったく意に介さずノヴァが放った闘気弾の威力を推し計っている。

収集がつかなくなった状況でドラがそれでも必死に敵についての情報を伝えようと口を開いた。

 

「ノヴァ聞いて、オリハルコン生命体には魔法は…」

「…ごめんだな!! 行くのはやはり僕一人だ!」

 

ドラの言葉を遮るようにノヴァが居丈高に本心をぶちまける。

 

「噂には聞いていたが…

こんな非力そうな女…しかも剣士ですらない魔法使いが勇者だともてはやされているとは…!!

ロモスやパプニカはよほど人材不足らしい…

 

ここで大人しく待っていろ!!

真の勇者がどういうものか…僕が君達に見せてやるよ」

「待て!! 待ちなさいノヴァ!!!」

「待って! 魔法は絶対使わないで!! 跳ね返される!!!」

「ふん! 自分が魔法で活躍したいからとそんな嘘を…

瞬間移動魔法(ルーラ)!」

 

聞く耳も持たず吹き抜けになった天井から飛び去ってしまったノヴァに部屋に残された全員が憤りに近い困惑を抱く。

ポップなどは困惑ではなくハッキリと憤怒の形相を浮かべており今にも飛翔呪文(トベルーラ)で飛んでいって殴りかかりそうな雰囲気だ。

 

「…壮絶に自己中心的な勇者ねぇ〜」

「…面目ありません。男手ひとつで育ててしまったせいか、我儘な性格の子で…

それに我がリンガイアが滅ぼされたのはノヴァが全滅寸前のオーザムを救うべく遠征している途中だったのです。

オーザム王を保護し、無事だったオーザムの国民達を連れて戻った時にはリンガイアは魔王軍の手によって滅ぼされてしまっていました…

今でも、あの子は自分がいれば魔王軍を撃退しリンガイアを守れたのだと信じています。

 

…自分は母国を守れず、それどころかリンガイア王をお守りすることも叶わなかった。

そのせいか最近では父の私の言う事すら聞かなくなってきまして…」

 

自身の不甲斐なさを噛み締めるようにバウスン将軍が息子が反抗する理由を話す。

母国のみならず国王を守れなかったのだ。彼が横暴な息子の振る舞いを諌めきれないのは、誰よりも彼自身が己の力量不足を痛感しているからだろう。

 

「リンガイア王国を滅ぼしたのは魔王軍最強の軍団長…誰が戦っても勝てん。

あの坊やは国にいなかった事を感謝するべきだよ」

 

ヒュンケルの言葉に、バウスン将軍は沈痛な面持ちで頷く。

自身の立場では魔王軍に手も足も出ないと言うのは躊躇われるが、それでも我が子がその場にいなくて良かったとの思いが深い頷きに表れていた。

 

「へッ! やらせときゃあいいんだよ!!!

ああいうタイプは一回痛ぇ目みねぇとわかんねえんだ!!

自分が正しいと思いこんでる分ニセ勇者とかよりタチが悪いぜっ!!」

「…でも危険だわ」

 

重い空気が流れる中、まだ怒り心頭のポップはノヴァの行動を自己責任だと突き放した。

ノヴァの向こう見ずな態度に思うところがあったのだろう。

いつもならポップの態度を強く諌めるマァムもやや控えめに意見を述べる。

 

「彼がどれだけ強いのか知らないけどみんなが船の建造に出向いている時に平気で別の場所にいられるような人に仲間を率いて魔王軍を撃退する事ができると思えない…!!」

「やれるってんだからお手並拝見といこうじゃん!!? それで負けたら自業自得だろ?」

「…たしかに、説得してわかるような性格の方には見えませんでしたわ」

 

「はいッ! そこまで!!」

 

押し問答になりそうな雰囲気をドラが一喝した。

 

「ドラ…」

「ドラちゃん?」

 

自分達も一刻も早く救援に向かうべきだと言おうとしていたクロコダインとレオナが突然大声を出したドラを見た。

 

「みんな! もう時間が無い。敵の情報を教えるから頭に叩き込んで!

おそらく私が知っている敵と同じはずだから…

特にポップは気をつけて、敵の正体はオリハルコンで作られた金属生命体…魔法は効かないの。

ヒュンケル、マァム、クロコダイン、連携をとって敵の隙をついてほしい。

魔法は効かないけど極大消滅呪文(メドローア)なら通じる。

 

もたもたしてると犠牲者が増える…

ああもうっ! 出来れば入念に作戦を練って生捕りにしたかったのに…!」

 

捲し立てるドラにポップが戸惑いながら質問をする。

 

「ちょ、ちょ…待てよドラ、おめえは腹立たないのかよ…

一番コケにされてたのはおめえなんだぜ!?」

「そういう人も救うのが勇者でしょ!

っていうかどうでもいいよ肩書きなんて。

大事なのは強いか弱いかじゃなくて何を守れるか!

ほら、わかったら気持ちを切り替えて作戦練るよ!」

 

自分に意を反する人も救うのが勇者。

あまりにも説得力のあるドラの回答にポップは呆然としながら口の中で「確かに…」と呟いた。

もしこの場にアバンがいたらとポップは想像してみる。

ノヴァの態度に困り顔になりながらも、『では私たちも急ぎサババに向かいましょう! 人手は多い方が良いに決まってますからね…!』と言って躊躇なく手を差し伸べる様子が浮かんできた。

そうだ、勇者は自分の好みで助けを求める人間を区別したりなどしないのだ。

 

「グハハッ!! まったくもってドラの言う通りだ…!」

「…ったく、お前にゃほんと敵わねえや…!」

 

心底愉快そうにカラカラとクロコダインが笑う。レオナやヒュンケルもつられるようにしてドラの力強い回答に笑みをこぼした。

一本取られた、といった様子のポップが気を引き締めて「そんじゃ、敵の情報もっと詳しく教えてくれや!」とドラに請う。

ヒュンケルやマァムも、敵の仔細を聞き逃すまいと真剣な面持ちで耳を傾けた。

 

「ドラ嬢…息子を頼む!

帰ったら厳しく力を合わせるように言い聞かせるから…!!」

「はい、全力でノヴァを連れ戻します!」

 

将軍の顔ではなく、父親の顔で必死に頼み込むバウスン将軍にドラは力強く頷き返し仲間達とハドラー親衛騎団について説明を再開したのであった。

 

 

 





最近びっくりしたこと。
ずっと前にプチバズった自身のツイート(ダイ大全然関係ない)を懐かしく見返してたんです。
引用ツイしてくれてる人の名前見て吹き出しました。

ロン・ベルク役の人(東地宏樹さん)やないかーい。

まさかダイ大全然関係ないとこでエンカウントするとは思いませんでした…
Twitterすげぇなぁ…
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