ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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77_意外なる救援

「お兄ちゃん…!?」

 

サババで怪我人の治療にあたっていたドラがハッとした様子で顔を上げ呟いた。

立ち上がり、ふらふらと吸い寄せられるようにして自分の身長と同じ高さの塀をよじ登っていく。

ドラの近くで同じく怪我人の治療にあたっていたメルルが異変を察知して大声をあげた。

 

「ドラさん…!? マァムさん! レオナ様! 来てください、ドラさんが…!!」

 

(死の大地にお兄ちゃんがいる…)

 

(ドラゴン)の紋章の共鳴というよりは双子ならではの気配の察知というほうが近いだろうか。

言葉では説明し難いが、ディーノが近くにいると確信したドラは吸い寄せられるようにして飛翔呪文(トベルーラ)で死の大地へと飛び立とうとした。

 

「ドラ! ちょっと、どこへ行く気!?」

「ドラちゃん!? いきなりどうしちゃったの!?」

 

マァムとレオナが塀の上に立って今にも飛び立とうとするドラの両腕を掴んで引き止める。

 

「離して二人とも…死の大地にお兄ちゃんがいるの! 私、行ってお兄ちゃんを連れてくる…!!」

「ダメよ! ドラがここを離れた隙に魔王軍がまた攻めてきたらどうするの!?

第一、一人で死の大地に向かうなんて危険よ!! ここにいなさい!!」

「そうよ! それにお兄さんがいるって事はバランも一緒にいるって事じゃないの!?

また戦闘になったり、下手をしたら捕らえられちゃう可能性もあるのよ…!?

いくらなんでも見過ごせないわよ! 

絶対行かせないんだから…!」

「嫌! 行くったら行くの!!

は~な~し~て~~~!!!」

 

ぐぐぐっ…と二人が体重をかけてドラを必死に引き止める。

レオナはともかくマァムの怪力の前には竜闘気(ドラゴニックオーラ)を発動させていないドラではどう足掻いても太刀打ち出来ない。

「行くの!」「行かせない!」という三人の押し問答にメルルは困り顔でおろおろと狼狽え、女性同士の悶着にまわりにいる兵士達も手を出せずいた。

 

(死の大地にはポップ達がゴメちゃんを探しに行ってる!

今のポップ達とお父さん達が戦闘になったら両方無事じゃすまない…!!

せっかくポップもラーハルトも死亡回避出来たのに万が一衝突して命を落とすような事があったら…

 

絶対止める!!! 絶対誰も死なせやしないんだから!!!)

 

原作では死の大地にいたのはバランただ一人。

大魔王バーンに単独で立ち向かおうとするバランを止めようとしたヒュンケルが、物陰に隠れていた親衛騎団との意図せぬ三すくみの果てに敗れその後の人生にまで響くような重傷を負ってしまう…

それだけでも避けたい事態だが、『今』のヒュンケルは槍ではなく自身が最も得意とする剣…それも呪文を全て弾く鎧の魔剣を装備しているのだ。

重傷を負うのはヒュンケルではなくバランになってしまう可能性も低くはない。

 

ヒュンケルも大概だが、バランはヒュンケルに輪をかけてコミュニケーションが下手クソだ。

喧嘩っ早いとは少し違うが意見がほんの少し噛み合わなかっただけで即武力行使になる。ディーノとバランがいるのであればその場には必ず竜騎衆もいるだろう。

 

「お互い、色々なしがらみは捨てて共に大魔王バーンを倒すために力を合わせませんか?」

「良いですね、そうしましょう! 争いは何も生みませんからね」

 

などというやりとりが交わされる可能性などほぼ…いや、まったくの(ゼロ)。皆無である。

遭遇したが最後、殺し合いと同義の肉体言語での語り合い待ったなしだ。

最悪の結末が頭をよぎり、ドラが痺れを切らして両腕を掴むレオナとマァムごと飛翔呪文(トベルーラ)で飛び立とうとした時だった。

 

カッ!!!

 

「うわっ!!」

「きゃあっ!?」

「なっ、何この光…!?」

「この神聖な魔力は…竜水晶様の放つ輝きと同じ…?」

 

突然眩い光を放ち辺りを照らしたのはドラに付き従うようにずっと宙に浮いていた『ドラの杖』だった。

竜魔石からキラキラと青い輝きを放つ杖はドラから離れ、死の大地に向かって水平に傾くやいなや光の粒子を空中に残しながら目にも止まらぬ速さで飛び去っていく。

残されたドラは何が起こったのかわからず、猛然と飛び去った杖を見て目を丸くし固まった。

ドラだけではない。レオナやマァム、メルルに、負傷し手当を受けていた兵士達まで…その場にいた全員が杖が飛び去った方角とその先に見える死の大地を呆然とした表情で眺めたのだった。

 

 

サババでドラが一悶着起こしていた頃、死の大地では…

 

「久しぶり、ゴメちゃん」

 

「ピ…、ピ…、ピイィィィ~~~~!!!」

「わっぷ…!」

 

ゴメちゃんが泣きじゃくりながらディーノの顔面に飛びつく。

上空からゴメちゃんとその仲間と思しき怪物(モンスター)が痛めつけられているのを見たディーノは咄嗟に騎乗していたドラゴンから飛び降りた。

そのディーノを追いかける形でバランと竜騎衆も続々と駆けつけてくる。

 

「このスライムは…」

「お嬢のペットの金ピカスライムじゃねぇか。おいチビ、お嬢は一緒じゃねぇのかよ」

「おおねずみ一匹とバピラス一羽…他に仲間はいないようだが…」

「ピィ、ピィ~…!」

 

ピィピィと泣きながら何かを懸命に訴えるゴメちゃん。

何を言っているのか皆目わからなかったがディーノが「仲間を助けてくれって言ってるみたい」と言うとこくこくと頷いた。

バランが血を流し気絶しているチウに応急処置として回復呪文を施す。

ボロボロと涙を流しながら不安げに見守るゴメちゃんにバランが「案ずるな、命に別状はない」と伝えると安心したのかようやく泣き止んだ。肩の上で安堵の笑みを浮かべたゴメちゃんをディーノが優しく撫でる。

 

「グゥゥッ…貴様ら、何者だッ…!??」

 

ガラリ、と。

ディーノが放ったギガブレイクによって右腕を根本からばっきりと折られ、岩にめり込んでいたフェンブレンが起き上がる。

 

「ああん?!」

「ほう、ディーノ様の技を受けてなお起き上がるとは…」

「お下がりください、バラン様、ディーノ様。こいつは我々が始末します」

 

「…チィッ!!」

 

多勢に無勢。圧倒的な不利を悟ったフェンブレンは舌打ちを鳴らし瞬間移動魔法(ルーラ)を唱えて退却した。

 

「気配がフレイザードに似ていた…彼奴はおそらくハドラーが禁呪法で生み出した金属生命体か何かであろう」

「では、この近くに大魔王バーンの居城に繋がる道がある…と?」

「ああ、必ずや」

 

かつて軍団長としてフレイザードと接していたバランがフェンブレンの気配にハドラーに通じるものを感じ取る。

単独で行動していた事、あっさりと退却した事などから大魔王の本陣にほど近いと踏んだ男達は、用は済んだとばかりにチウ達を置いてその場を立ち去ろうとした。

慌てたのはゴメちゃん、そしてディーノだ。

 

「ピッ! ピィ!」

「待って、父さん! せめてゴメちゃん達をディーナのところへ送っていってあげようよ!!」

「なんだ? スライム、離さぬか」

「ピィィ~…!」

 

ゴメちゃんがバランの外套(マント)をくわえて引っ張る。

当然ながらびくともしないバランは首を傾げつつゴメちゃんの首元(と思わしき部分)を掴んで引き離した。

 

「きっとディーナのところへ連れていきたいんだよ。そうじゃなくても、こんな危険な場所に置き去りにしたらディーナが悲しむよ…」

「むぅ…」

 

チウは未だ気絶しているしパピィはフェンブレンの凶行とバラン達が騎乗してきた複数のドラゴンの気配に怯えて飛び立てる状態ではない。

さて、どうしたものかと束の間逡巡していたその時…

 

「お~い、チウ~! ゴメ~! どこだ~!?

いたら返事しろ~~~!!」

「おいポップ、あまり騒ぎ立てるな。敵に見つかりでもしたらどうする」

「そんな事言ったってよぉ…! さっきの稲妻見ただろ!!」

「物凄い雷撃だったな、魔王軍の誰かが放ったものだろうか…?

巻き込まれていなければよいが…」

 

「あ」

「ア゛ァッ!?」

 

声が聞こえてくる方向を向いたガルダンディーと、複雑に入り組む岩陰から姿を現したポップの目が合った。

 

「ヒッ…!! お前らは…!??」

「てめえッ!! ルードの頭を吹っ飛ばした魔法使いじゃねぇかッ!!!

あの時の礼だ…その腕斬り飛ばして使い物にならなくしてやるぜぇーーーッ!!!」

「待て! ガルダンディー!!」

「よさんか!」

「うるせぇ!!」

「うわああぁぁーーーッ!!!」

「「ポップ!!」」

 

出会い頭にトサカを逆立て飛び掛かるガルダンディーにポップが悲鳴を上げた。

ラーハルトとボラホーンが止めに入るが頭に血が上ったガルダンディーは二人の制止を無視して腰に佩いていた細剣を抜く。

ヒュンケルとクロコダインがポップを守ろうと前に進み出るが至近距離、しかも以前戦った時よりもスピードが増し研ぎ澄まされた動作になっているガルダンディーの攻撃を防ぐには一歩届かなかった。

ガルダンディーの剣が咄嗟に防御しようと顔の前で交差させたポップの腕を斬りつけようとした刹那…

 

「貰ったあぁーーーッガ…!!?」 

「うぎゃあああーーーッ…!!!

 

………へ?」

 

何かが高速で飛来し、カアァーーーン!!という甲高い音を立ててガルダンディーの頭部に直撃した。

 

「ガルダンディー!?」

「おいッ、しっかりしろッ!!」

「何だ…?! 今何かが奴の頭に物凄い速度で当たったぞ…」

「一体何が…」

 

「父さん、あれ…!」

「む…」

「あれは…!?」

 

白目を剥いて昏倒してしまったガルダンディーをボラホーンが助け起こす。

ラーハルトはポップ達が何かを仕掛けたと見て、バランとディーノを後ろに守りながら槍を構えた。

ポップとクロコダインは何が起きたのかまったくわからず呆気に取られている。

 

その場にいた面々の中でディーノとバラン、そしてヒュンケルはガルダンディーの頭部に直撃したものを目でしっかりと追っていた。

ディーノが空中を指差し、ガルダンディーの頭部に当たったものをバランに告げる。

唸るバランに続きヒュンケルも空中に浮かんでいるものを見て驚愕に目を見開いた。

バランの手の中、首根っこを掴まれていたゴメちゃんが空中に浮かんでいるもの…『ドラの杖』を見て歓喜の叫びを上げる。

 

「ピイィ~~~ッ!!」

 

竜魔石から清浄な青い輝きを放つ『ドラの杖』が、高速で飛来しガルダンディーの頭部を強かに打ち据えてあわやの大惨事を止めた。

空中にふよふよと浮かぶ杖からはピリピリとした空気が漂い、まるで怒りながら喧嘩を仲裁しに来たかのような錯覚をその場にいる全員が感じたのだった。

 

 

 




ガルダンディーとボラホーン
ディーノの稽古に付き合っていたので原作よりも強くなっている。
ただし性格は相変わらずなので強くなったように見えない。
ドラの刷り込み(インプリント)により「人間を殺すな」という命令は継続中なのでポップを攻撃したが最後、ヒュンケルに倒される未来しかないしそうなるとバランが黙ってはいないので最悪の結末が待っていた。
オリハルコン製の杖で頭部を打ち据えられても死なない程度には防御力も高い。

ドラの杖
兄貴分のゴメちゃんを救うべく、ついに自律行動し始めた。
ご主人様が動けないなら自分がかわりに駆けつけるぜ!
溜め込んだ魔力でドラがいなくてもある程度の魔法は使える。

ヒュンケル
原作で大魔王バーンに単独挑む無謀なバランを止めようとした。結果重傷者に。
「大魔王バーンと戦って無事ではすまない、ダイのためにもお前を失うわけにはいかない!

だからお前を倒す!」←!?

バランもだが、大の大人二人もう少しやりようは無かったんだろうか…
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