ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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08_託されるもの

魔王ハドラーの襲来から一夜明けて…

 

「ブラスさん、ドラさんは…」

「横になって魘されております… よほど恐ろしい思いをしたのでしょう…」

「無理もありません。しかしドラさんはそれでもハドラーに立ち向かい、見事退けました」

「はい、優しく、勇気のある子なのですじゃ…」

「…まさしく『勇者』にふさわしい子ですね」

 

魔王ハドラーを退けたあと、体調を崩したドラはアバンとブラス老によって強制的に休養を取らされた。

放心状態だったポップも修行を中断して精神を落ち着けるよう言い渡されてお休みしている。

今はみんな、島のモンスターたちも含めて『お休み』の状態だ。

それだけ魔王ハドラーの襲来はこの島に住まうものに衝撃を与えたのだ。

 

 

(ああ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!  やっちゃった!!

忘れてたあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!)

 

自室の布団の中でジタバタと自分の仕出かした大失態に悶えるドラ。

 

(そうだよ!! 何「レベル上げてワンターンキルで魔王(ハドラー)を倒して(ドラゴン)の騎士一家魔王軍離脱余裕♪」とか考えてたの自分!?

黒の核晶(コア)、あれ絶対もうハドラーの体内に埋め込まれてるじゃん!!)

 

原作終盤で登場する黒の核晶(コア)

とてつもない爆発力を秘めた禁じ手中の禁じ手である。

戦いの最中にハドラー自身の体内に埋め込まれていることが判明するが“いつそれが埋め込まれたか”については詳しく言明されていない。

ハドラーは作中幾度も勇者ダイとの戦いで死の縁を彷徨う。

何度目かの瀕死の時に勇者ダイを脅威と見た大魔王によって埋め込まれたか?

 

答えはNOだ。

 

“あの”大魔王バーンがそんな思いついたように「そうだ、黒の核晶(コア)を埋めてみたら良いかも」なんて考えるはずがない。

最初から、魔王ハドラーを蘇らせた時から、どんな事態に陥っても対処出来るように狡猾に仕込んでいたに違いない。

あいつはそういう奴だ。

そうでなかったら『大魔王バーン』足り得ない。

 

(危うくデルムリン島ごとあたり一帯、ハドラーを倒した瞬間に爆散するところだった…)

 

思い返すたびに背筋が凍る。

 

(でもそうならなかった…。大丈夫、まだ大丈夫…

気持ちを落ち着けて… 結果的にはハドラーを痛めつけて撃退できたし、何よりアバン先生が無事だった。

そう!アバン先生がまったくの無傷! 修行が続けられるし戦力的にも大きなプラスになる!)

 

原作では死んだと思われ終盤まで姿を消していたアバンだが、原作とは異なりドラの魔法によってハドラーによる攻撃を一切受けていない。

ドラの胸に大きな希望が宿る。

来たる魔王軍との戦いでもアバンの持つ指導力と叡知はドラだけではなく多くの人心に希望をもたらしてくれるはずである。

 

丸一日休養を取らされたドラだが、翌朝アバンから「落ち着いたようなら話があります」と呼び出された。

呼び出された先、家の前にある小さな広場(集会場)にアバン、ポップ、ブラス老、ドラ、ゴメちゃん、友達(モンスター)達が所狭しと勢揃いする。

 

「え〜、おっほん! 本日はお日柄も良く…」

「先生! ふざけないでください!」

「ポップ、厳しい状況の時こそ余裕が大事だと教えたでしょう…

まあ、冗談は程々にして…少々説明をしましょう」

 

そうして語り出したのはアバンの過去であった。

かつて自分が勇者として魔王と戦ったこと。

一度は魔王を討ち破り世界に平和をもたらしたこと。

魔王ハドラーとはどういう存在か…

大魔王バーンとは何者なのか…

一通り話し終えたところでアバンが真剣な表情でドラへと語りかける。

 

「…さて、ドラさん」

「は、はい…」

「あなたは魔王ハドラーを退けました。見事というほかありません。

 

………同時に、私自身の不甲斐なさを痛感させられました」

「先生?」

 

アバンがドラの両手を握りしめ、まっすぐに目を合わせて続ける。

 

「ドラさん。あなたは魔王を退けたばかりでなく、『正義の魔法使い』として、日々人々を救済してきましたね…?」

「へ…? せ、『正義の魔法使い』…?」

 

こくり、と真剣な眼差しでアバンが頷く。

 

「私がこのデルムリン島に赴いたのは『未来の勇者』育成のためだけではありません。

各地で人々を救済している正義の使者…『正義の魔法使い』の正体がドラさん、あなたなのか見極めるためなのです」

「ま、待ってください。何ですその『正義の魔法使い』って?」

「正義の魔法使いとは…」

 

まだ年若い少女にして類稀なる魔法の使い手

(類稀なる…? 別人なのでは…?)

 

世界各地を放浪している

地図作成(マッピング)のために世界中あちこち行きました)

 

凶悪な魔物や盗賊を討伐して去っていく

(レベリング目的に凶悪な魔物狩りまくったし絡んできた盗賊全員返り討ちにしました)

 

討伐した盗賊を改心させる

(改心はさせてないです。例えるなら眉間に銃口突きつけて「悪いことしたら引き金引く」って言ってるようなものです。ただの脅迫です)

 

金銭を一切要求しない

(デルムリン島に『お金』の概念が無いので…盗賊たちのお宝から装備品とお土産代くらいは有り難く頂戴しました)

 

心当たりはあるけれど微妙に食い違っている…。

100%、自分自身のため、ひいては推しのための活動で断じて「正義」のためには行動してない…!

そうは思ったドラだが、だからと言って

「違うんです。救いたいのは敵勢力にいるまだ会ったこともない人たちで別に正義のために戦うとか人々を救いたいなんていう大志を抱いているわけではないんです」

と言い出せるはずもなく…

 

「ドラさん、あなたの心には本物の勇者の資質が備わっています。

…敵は私の想像をはるかに上回る存在でした。

今の私では勝てない…それどころか足手まといにしかならないでしょう。

ドラさん…私に変わり魔王ハドラー、そして大魔王バーンを倒してください!!」

「…ッ!?」

「先生…!?」

「アバン殿…」

「ピィ〜」

 

(12歳の女児に世界の命運を託さないでください先生…!)

 

「待ってください先生、わ、私まだ修行の途中です…!」

 

驚きを飲み込み、自分はまだ未熟者だと言い募るドラ。

しかしアバンは静かに首を横に振って続けた。

 

「いいえ。『正義の魔法使い』としての勇名…

そして魔王ハドラーとの戦いを見て確信しました。力不足なのは私のほうだと…

ドラさん、ポップ、あなた達の修行は一時中断します。

私自身の修行のやり直しをさせてください。

近いうちに必ず、修行の再開をすると約束します。

その日まで、これを預かっていてください」

 

そう言うとアバンは懐から『アバンのしるし』を2つ取り出してドラとポップへと差し出す。

 

「先生、これ…」

「これ、卒業の証じゃないですか先生…!?」

「ああ、違います。修行の終わりを意味するのではありません。

今はまだ預けておくだけです。…お互い、必ず生きてまた会いましょう!

その約束を守るための願掛けですよ」

「い、いやだ…ッ! 俺、こんなの受け取りませんからね!!」

「ポップ!!」

 

ポップは『アバンのしるし』を授けようとしていたアバンの腕を振り払うとそのまま走り去ってしまった。

 

「ポップ…」

「ポップ君…」

「ピィ〜…」

 

森の中へ消えていくポップの後ろ姿をじっと見つめるアバン。

しかしポップへ授けようとしていた『アバンのしるし』を懐にしまうと今度は別の物を取り出してドラに向き直る。

 

「ドラさん、あなたにはこれも預けておきます」

「…ッ!?」

 

思わず「ヒッ…」と情けない悲鳴を上げそうになるドラ。

目の前に差し出されたそれは『カールのまもり』という、カール王国の王女からアバンへと贈られたカール王家の宝であった。

 

(待ってください先生…ほんとうに待って!? それ言わば結婚指輪(概念)みたいなものじゃないですか!!? ダメですってそんな大切なもの渡しちゃ!! しまってください!早く!! フローラ王女さまから贈られた大切な物!!!!)

 

差し出された逆三角形型のペンダント、それがどのような事情でアバンが持つに至り作中で大事な役割を果たしたのか。

(つぶさ)に知っているドラだが話すわけにも行かずにこれまた涙声で弱々しく抗議する。

事情を知らない第三者(ブラス老やゴメちゃん)から見たら師からの贈り物としばしの別れに涙する感動的なシーンにしか見えていない。

 

「受け取れません先生…!『アバンのしるし』だけで十分です…!!」

「いいえ、ドラさん。あなたが持っていてください。

これはさる方から、私が魔王討伐に赴く際に託された物です。

これから魔王に立ち向かうドラさんにこそ持っていてほしいのです」

 

静かに、しかし確固たる決意で『カールのまもり』をドラへと託すアバン。

もはや辞退できる理由も出せず、拒否できる雰囲気でも無くなってしまい涙目で受け取るドラ。

アバンがしるしとペンダント両方をドラの首にかけるとブラス老、ゴメちゃん、まわりのモンスター達が一斉に湧き立つ。

 

「『正義の魔法使い』ドラさん、真の勇者となれるよう邁進してください。

あなたのこれからの活躍に期待します」

 

わ〜っ!!と歓声を上げて盛り上がる周囲をよそにドラは「なんだか大変なものを託されてしまった…」と気が遠くなっていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

一方、魔王軍の拠点『鬼岩城』

ドラにより両腕を切断された魔王ハドラーが玉座にて負傷した体を癒していた。

 

「ウゥ…ヌゥゥ…ッ!!」

『手酷くやられたな… ハドラー…』

「申し訳ありません大魔王さま、お見苦しい姿をお見せしてしまいました…」

『まあ気にやむことはない… 復活したばかりで、まだ余が授けた()が体に馴染んでおらぬのであろう…

余はお前に全幅の信頼を置いておる…

我が魔王軍を率いてかつて成し遂げられなかった世界征服の夢をかなえるがよい!!』

「ははーーーっ!!」

 

大魔王さまのお力により復活する前よりも強大な力を手にいれた…

翻ってかつての宿敵アバンは齢を重ね全盛期より弱くなっているはず…

今のオレの敵ではない…

しかしアバンが育てているとかいうあの小娘…!

このオレが!手も足も出ず、恐怖心を抱いただと…!?

有り得ん…ッ!! 断じて認めぬぞ…ッ!!

それにあの額の紋章は…(ドラゴン)の紋章…!!

もしヤツが(ドラゴン)の騎士で、かつアバンの修行を受け更に強くなっていくのだとしたら…

生かしてはおけぬ…!!

オレに手傷を負わせたこと、死を持って償わせてくれる…!!!

 

大魔王から授かった力により得た強靭な生命エネルギーで瞬く間に両腕を再生させたハドラーは、鬼岩城の上層にあたる玉座の間から外を見下ろす。

鬼岩城の周辺一帯、殺気立ちながらひしめき合うモンスター軍団を満足げに見渡すと地の底から響くような唸り声で宣言した。

 

「叩き潰してやろうではないか…! 偉大なる我が魔王軍とともに!!」

 

 

 




ドラ「ワンターンキルできるよう頑張ったけどワンターンキルしちゃダメな敵が多いことに今気がついた…」

アバン先生が生きている事をみんなが知っている世界線なので全体的に雰囲気明るめになる、はず…
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