VTuberになりました。 作:コトさん
20××年 3月×日 16:00
【初配信】初めまして! 月乃 姫莉夜です! 【モープライブ】
23人が待機中
配信4日前——
今日はマネジャーの吉川さんを通して挨拶の確認をしてもらった。
『こんにちは! モープライブ3期生、月のお姫様こと、月乃 姫莉夜です! よろしくです!』
トーンや話すスピード、原稿をかまないよう気を付けたのだが、足りない箇所があるらしく、
「もうちょっと特徴的な何か……例えば語尾とか決め台詞とか。そんなものを入れるといいと思いますよ」
とアドバイスをくれた
語尾は付けると慣れるまでが大変だと聞いたことがあるからなしとしよう。
とすると消去法で決め台詞になるが……。思いつかないんだよな。
なにかお姫様らしい決め台詞を考えねば……。
しばらく悩んだ末にほかの配信者も行っている挨拶の部分を変えることにした。
しかし、いったい何にすればよいのか……。
またまた悩んだ末に、
「こんつき~」
という挨拶が浮かんできた。
名前とこんにちはを混ぜる……。シンプルでいいんじゃないか?
決め台詞が決まったから早速挨拶を取り直そう!
「こんつき~。モープライブ3期生、月のお姫様こと、月乃 姫莉夜です! よろしくです!」
録音完了。そしたら吉川さんに送って……と。
よし。今日の仕事終わり!
翌日──
吉川さんからの返信が届いた。
「良いですね! これなら大丈夫でしょう!」
だそうだ。
ただ、この挨拶だと明るいキャラを演じなければいけないらしい。
陰キャの私にはきついかもしれない。
まあ、声を大きく、コメントにもたくさん反応すれば大丈夫。かな……?
翌日——
今日から本格的に配信の準備に取り掛かる。
まずはTwittorでの告知。1回目は公式がしてくれたが、自分のアカウントの方でもやっておいてほしいとの事だ。
月乃 姫莉夜@3期生@tukinokiriya_mo-puraibu
こんつき~。
初配信の予定をおしえます!
3月×日に配信予定! 絶対見に来てね!
これでよし。初配信どれくらい人が見に来るかで今後が決まる。しっかりと告知をしなければ……!
次は配信機材とlive2Dの動作確認だ。
試しに録画機能を使って動くか確認する。
首を右に振ったり、まばたきしてみたりしたが問題はなし。
音もしっかり入っていたし、カメラに関しても問題なく映っていた。
そして最後に、待ち時間の準備画面設定。
今回もイラストレーターのお方。名前はsatoooさん。通称「ママ」なる人物に書いてもらった。
vtuberの界隈では自分のイラストを作ってくれた人のことを、ママと呼ぶらしい。
産んでくれたという事なのだろうか?
ママの作ってくれた画像を一目見て、
「かわいい……」
と、思わず口からこぼれてしまった。
私を小さくしたようなイラストが月の周りをぐるぐる走っている。
画像に見とれながら、こちらも録画をして動作の確認をした。
これで確認事項は終わり。あとは配信の日を待つのみ……。
ちなみに初配信は自分の家で吉川さんとディスコードを繋ぎながらやることになっている。
何かハプニングが起きた時の対応のためだと言っていたっけ?
配信当日──
20××年 3月×日 16:00
【初配信】初めまして! 月乃 姫莉夜です! 【モープライブ】
12489人が待機中
かなり、いや、めちゃくちゃ緊張してきた。約12000人……。
とんでもない数だ。
無論私は12000もの人に注目されたことなんてない。
いや、普通の人はそんな機会滅多にないだろうけども。
手の震えが止まらない。
ふとコメントを見ると、まるで光のような勢いでコメントが流れている。
あと5分だ
緊張してきた
うお。
楽しみ~。
間に合った~。上司に適当な理由付けて仕事抜けてきてよかったぜ
↑お前は仕事しろw
こんな感じのコメントが一秒で消えていく。
怖い。怖すぎる。
その時、つないでいたディスコードから吉川さんの声がする。
「そろそろ本番です! トップバッター頑張っていきましょう!」
励ましの言葉をいただいた。これから先の2人の配信のためにも私が頑張らなければ……。
本番開始60秒前になったところで待機画面の準備をする。
待機画面を30秒ほど映したら本番開始だ。
……よし。うまく待機画面を表示できたぞ。
うおおおお!!
待機画面カワユス。
なんだこれは!
かわいいな。
今待機画面か。よかった。間に合ったよ。かわいいな。
先ほどよりも流れが速くなり、かろうじてこのコメントのみ見えた。
それ以外は速すぎてちょっと何言ってるかわからない状態だった。
時の流れとは速いもので30秒などあっという間だった。
待機画面を消し、カメラとマイクをオンにする。
きたきたきたきた!
かわeeeeeee!!
なんだこれは!
かわいいい!!!
うおおおお! きちゃああ!!
コメントの流れを見ながらこの日の為に練習してきた挨拶を言う。
「すぅー。うぁ。こんつき~。モープライブ3期生、月乃 姫莉夜です! よろしくです!」
声のトーンやスピードに気を付けたつもりが緊張のせいで変な声が入ってしまった。
仕方ない……このまま突っ切るしか……。
声可愛いやんけ!
こんつき~。
こんつき
最高だなこりゃ。
来たあああああ! 声も最高やああああ!!
こりゃ仕事を抜け出してきた甲斐があった。
うぁww
こんつき~。
うぁかわええw
草wうぁw
変な声が入ってしまった、と思ったものの、コメントでの評判は上々だ。良かった。
だがまだ課題が残っている。
自己紹介タイムである。
私にとって初配信で最も過酷なのが自己紹介である。
「えっと……、この度モープライブ3期生としてデビューした月乃です。好きな飲み物はお酒です。好きなことは星を見てお酒を飲むこと、動物を見ることです」
動物か。ええなぁ。
星空……。まあ月乃だもんな。
酒は草w
酒ww
日本酒? ビール? それともチューハイ?
酒か。趣味が合うね。この後一杯どうかな?
↑ずるいぞ。俺も参加させろ。
お酒が好きだというのは意外だったようだ。そうかな?
そのあとは配信を見てくれる人……。確か、リスナーというんだっけ? の質問に答えていった。
『お酒は何が好き?』
「一番はやっぱりビールですかね……。ビールしか飲んだことないですけど」
『動物の中で一番好きなのは?』
「ウサギとハムスターですね。猫とか犬も好きですけど」
『何か飼ってる?』
「いえ。何も飼ってないですね。将来的にはウサギを飼いたいなと思ってたりします」
『星空ってなに見てんの?』
「月見とかは良くしますね。星を見るだけでもお酒が進みます」
いろいろな質問が来て、コメント欄も盛り上がりを見せていた。
そのままあっという間に時間は過ぎ、30分たったところで配信終了のお時間がやってきた。
「みなさん。そろそろお別れの時間です。次の配信は妖狐ちゃんです。それではまた今度! さよなら~」
もう終わりか。
もう少し声聞きたかったな。
思ったよりいい配信だったよ。
お疲れ様~。
バイバーイ!
いい配信だったよ!
妖狐のとこ行くか。
そしてマイクを切り、配信終了のボタンを押す。
配信が終わっていることを確認し、吉川さんとの通話を始める。
吉川さんは、
「いい配信だったね。もう少し聞いていたい、見ていたいと思ってしまう。配信の才能あるんじゃない?」
と言ってくれた。
久しぶりに人に褒められた気がする。純粋に嬉しい。
その後、最大同時接続数などの配信の情報を確認した。
【初配信】初めまして! 月乃 姫莉夜です! 【モープライブ】
最大同時接続:13682人
高評価:3472
低評価:248
いつの間にか13500人もの人に見られていたことが分かった。
集中すると気が付かないんだな……。
そして疲れからか、妖狐さんと流星君の配信を見た後、夕食を食べてすぐ寝てしまった。
翌日──
目が覚めたのは午前8時。
今日は少しゆっくりできる。
初配信後は数日ほど配信をせずにマネージャーさんと今後の配信や活動の内容について話し合う予定になっている。
次の配信は雑談をするかゲームをやるかの話し合いである。
午後2時になり、本格的に話し合いを始めた。
吉川さん的には、ゲームをやるよりも雑談配信をして、視聴者との仲を深めた上でどんなゲームをやってほしいか聞くほうが良いとの事。
他にも、
「雑談配信をするなら、マシュマロが便利」
と言われた。
マシュマロを食べながら配信をするのだろうか。
気になって調べてみたところ、食べ物ではなかった。
匿名で多くの質問を集めることのできる質問箱の事を言うらしい。
だから便利なのね……。と思いつつ、マシュマロを使ってみることにした。
月乃 姫莉夜@3期生@tukinokiriya_mo-puraibu
こんつき~。
次回は雑談配信をします。
そこで! マシュマロを募集したいと思います。
下のリンクから飛んでください。
質問、やってほしいゲーム等のマシュマロ、待ってます!
Twitterに乗せておいたが、質問ほんとに来るのかな……。
不安感を残しつつTwittorを閉じた。
2日後——
20××年 3月▲日 18:00
【雑談】雑談しながらマシュマロ食べます【モープライブ】
2432人が待機中
誰が好き?
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星夜 流星
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妖狐 狐
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月乃 姫莉夜