ある朝目覚めた時に戦う相手を決められていた件 作:クォーターシェル
皆さんは輪廻転生というものをご存知だろうか?
生き物が死んだとき、その魂が新しい命としてこの世界に生まれ変わってくることを言う。まあ簡単に言えば生まれ変わりだな。
基本的に転生した場合、生まれ変わる前の記憶はない。…はずである。……でもたまに覚えている奴もいるんだよねー……。俺もそんな一人である。
どうやら俺は生まれ変わったらしい。生まれたばかりの赤ん坊のようだ。しかし俺の今世は人間では無かった。かといって動物でもない。
「キュウ……(えぇ……)」
一言でいうと、メカメカしい。自分の視界に入る自分の手脚はどう見ても金属製にしか思えない。そして胴体にはコードのような物が繋がっているし、自分の周りにはこれまた金属製の殻の破片が転がっていた。
いや待てよ。冷静になって考えてみよう。ロボットみたいな赤ん坊って何だよ!
「キュッ!?」
自分が置かれた状況に混乱していた時だった。自分の座っているSFな機械的な部屋の中に誰かが入ってきた。それは白い人型のロボットだった。
「おや、予定よりも生まれるのが早いな」
生まれる?まさかこのロボットが自分の親なのか?するともう一人白いロボットが部屋に入ってくる。
「ラチェット先生。孵化室の計器が反応を示していたのですが……まさか、もう生まれているのですか?まだ1デカサイクルは掛かると思ったのですが」
もう一人の白ロボがラチェット先生と呼ばれたロボに言う。ロボでラチェット…まさか……?
「ああ、そうだよファルマ。急いで彼を保育器に移そう。どうやらまだ身体が出来上がり切っていないのにせっかちなようだ」
やはりそうだった。ラチェットというロボットはこの世界で医者に当たる存在だ。そして今自分を抱えているファルマと呼ばれたロボットはその助手にあたる存在であるようだ。どうやら自分はトランスフォーマーの世界に転生してしまったようだ。
◇ ◇ ◇
どうも改めまして皆さん。この世界に産まれて十年くらいたったと思います。既に身体は大人くらい大きくなりました。それでもトランスフォーマーの寿命からいえば十年くらい誤差みたいなものなので周りからは赤子の様な扱いを受けることもあります。名前も貰いました。アゲット(瑪瑙)という名前です。どうしてこういう名前になったかというと、成長する際に色々検査を受けてテストをして自分には「常人が出来得る範囲の物事を直ぐに習熟できる」という特殊能力かどうかは微妙ですがとにかくそんな能力を持っていることが判明し、様々な色で色々加工できる瑪瑙に例えられたのが由来です。さて俺は生まれてからのことだが、ある程度ラチェットのクリニックで育てて貰った際に義務教育として色々教えてもらった。まず自分が生まれたこの惑星の名前はセイバートロン。何度も聞き返したがセイバートロンで合っているらしい。旧邦訳の表記なのでトランスフォーマーシリーズの所謂G1の世界なのかと思ったが、それもどうも違うようだ。なぜかと過去の記録で、メガトロンが剣闘士をやっていた情報があった。確かそれはプライムやアメコミの設定だったはずだ。他にもクリニックからアクセスできる範囲で色々調べてみた所、トランスフォーマーシリーズの様々なキャラの名前が発見できた。どうやらこの世界はどのアニメの話とも違う世界らしい。
トランスフォーマーといえばオートボットとディセプティコン。ひいてはサイバトロンとデストロンだが自分が生まれた時代の現時点ではどちらもまだ結成したてらしいのだ。まずサイバトロンだが、オライオンパックスが中心人物となっている自警団で政治が腐敗して犯罪が多発しているセイバートロン星で独自に犯罪と戦っている。一般市民から次々に加入者がでているとはいえまだ小さいグループである。次にデストロンだが、こちらは俗に言うセイバートロン星の野党の様なものだが、裏では武力行使を行っていてメガトロンが率いるギャング団ともいうべき存在になっている。こちらも小さいグループだがかなりのスピードで勢力を拡大しているようだ。まだコンボイがいないなどではあるが、直ぐにでも戦争は起こりそうだ。
ちなみに自分はサイバトロンに所属している。前世では平和な暮らしをしていて戦いは正直嫌いなのだが自分を育ててくれたラチェットへの恩もあり彼と一緒にサイバトロンに参加することにした。あとファルマもサイバトロンに所属している。アメコミでその存在は知っていたけどとち狂わないよね?
ちなみに自分の役職は衛生兵だ。自分は直ぐにスキルを習得できる才能も有って就職先は引く手あまただったが、特にラチェット達から医術を教わったのでこの役職についている。あと自分のオルトモードはセイバートロン星製のSFカーである。しかし実は自分をサイバトロンだと知る人物は少ない。なぜかというと、
「おいセブンツール。怪我しちまったから直してくれ」
「サンダークラッカーか。かしこまりだよ。まあ見た感じ数サイクルで済みそうかな」
現在自分はデストロンに潜入しているからである。名前もセブンツールと名乗っている。なぜこんなことになっているかというと。
――サイバトロン加入から間もなく――
自分はサイバトロンでの上司であるプロールに呼び出された。
「なんですかプロールさん」
「アゲット、君に頼みがある」
「頼み?」
「君にデストロンに参加してもらいたい」
「えっ、デストロンに!?」
「君は加入したばかりで君をサイバトロンだと知るものは少ない。そして今デストロンはあちこちからメンバーを集めている。今がチャンスなんだ。メガトロンはこれから必ずデカい事件を起こす。今のうちにデストロンにスパイを放っておきたい」
「あの……それって……」
「ああ、私が君に頼みたいことはただ一つ。デストロンに潜入して欲しいということだけだ」
「ちょっと待ってください!俺には無理ですよ!」
「大丈夫だ。君の能力ならデストロンの中でもやっていける」
「分かりました…ラチェット先生にはこのことを伝えてもいいですか?」
「……分かった。ラチェットは君と同時に入った。彼ならどちらにせよ感づくだろう」
「ありがとうございます」
こうして俺はデストロンに入る事になったのだ……
◇ ◇ ◇
現在自分はデストロンではそこそこ使える一兵卒という扱いだ。デストロンの中でも数少なく医術が使えるのでその辺は重宝されているが、やはり有用な情報を得るには出世することが大事だろう。デストロンは実力主義だ。これから力を示して行けばメガトロン達幹部の目にも留まるだろう。とは言えサウンドウェーブには要注意だ。情報参謀である彼は心を読むことが可能である。下手に動いて目を着けられれば最悪スパイがバレて殺されてしまうだろう。つまりギリギリ怪しまれないよう立ち回る必要がある。
「前途多難だな……」
「んっ?何か言ったか?」
「この状況がってことだよスカイワープ」
と自分は誤魔化す。今隣に立っているスカイワープはジェットロンと呼ばれている航空部隊の一人で指示待ち屋の傾向がある典型的なデストロン兵士だ。今俺達は闘技場の観客席にいる。ある二人のトランスフォーマーの決闘を見る為だ。闘技場の広場には二人のトランスフォーマーが立っている。一人は青系統の色で頭部に鹿の様な大きな角を生やしている。彼はサンダーフーフ。このセイバートロン星のマフィアの中でも最大規模の勢力を持っている人物だ。そしてもう一人は銀系統の色の人物。デストロンの破壊大帝メガトロンだ。なぜこの二人が対峙しているのかというと、デストロンの下っ端とサンダーフーフの部下が諍いを起こし、抗争が発生した。そして激化する抗争の決着をつける為にメガトロンはサンダーフーフに一対一の決闘を申し込み、サンダーフーフはこれを了承した。こうして決闘が行われる闘技場にはデストロンやサンダーフーフの手下が集まっているのだ。
「メガトロン様そんなチンピラやっちまえー!」
「サンダーフーフの旦那ー!早くそいつをスクラップしちまってくださいよ!」
「グローリアースメガトロン!!」
「あんな田舎者旦那の敵じゃないぜー!」
「やれー!」
「殺せー!」
ほんとガラの悪い奴が多いな…まあ相手はマフィアだしデストロンもチンピラが多いしこうもなるか……
「スタースクリーム。お前はどっちが勝つと思う?」
自分の近くに座っていたサンダークラッカーがこれまた近くに座っているデストロンの幹部の一人、スタースクリームに尋ねる。ファンの間では裏切り者の代名詞とも言われる男、スタースクリームはこれに答える。
「まあ普通にメガトロンだろうよ。あれでも永らく剣闘士のチャンピオンをやっていたんだ今更マフィアに後れを取るかよ」
「おっ!そろそろ始まるみたいだぞ」
「元鉱夫に元剣闘士が何だってんだ!このセイバートロンを制するマフィアはサンダーフーフただ一人だ!」
サンダーフーフはマイクで周囲を威嚇、或いは鼓舞しているようだ。対するメガトロンは
「……」
無言のまま微動だにしない。
「どうした!ビビッて声も出ねえか!」
「……」
「ほらかかってこい!」
「……」
「さっきからだんまりか!じゃあこっちから行くぜ」
サンダーフーフは腰から二本のブレードを抜き構える。
メガトロンは黙ったまま右腕からエネルギー弾を放つ。
しかしサンダーフーフは器用にこれをかわして接近してくる。
メガトロンはその腕を振り回し攻撃するがサンダーフーフはこれも回避、
「くたばれえぇぇ!!死ねェッ!!」
と叫びながらブレードを振るう。が、メガトロンはそれを受け止める。
「何ィ!?」
驚くサンダーフーフ。そのままメガトロンは相手の腹を殴りつける。
「ぐふっ!」
吹き飛ぶサンダーフーフ。
「……まだやるのか?」
「へっ、まだまだこれからだぁ!」
そう言って立ち上がるサンダーフーフ。
「その意気だ。来い」
「余裕ぶってんじゃねぇぞォ!!」
とサンダーフーフは蹄の一撃を見舞おうとした。
「……」
それをメガトロンは難なく受ける。
「ぬぅん」
そしてそのまま蹴り飛ばす。
「ぎゃあああっ」
吹っ飛ばされて壁に激突するサンダーフーフ。
「……貴様では相手にならんな。失せろ」
「てめぇ……」
サンダーフーフはよろめきながらも起き上がる。そしてメガトロンに向かって突進、突き刺そうとするがメガトロンはこれをあっさり避ける。そしてメガトロンはすれ違いざまにブレードでサンダーフーフを斬る。
「ぐうわああああああああああ!!!!」
悲鳴を上げて倒れるサンダーフーフ。メガトロンはそのままスタスタ歩いていく。
「今日はこの辺にしておいてやろう」
「クソが……」倒れているサンダーフーフが呟いた。
「負け惜しみか?」
「うるせぇ……」
サンダーフーフは力を振り絞って答えた。
メガトロンは観客に今日の決闘の勝敗を説いた。
「わしとサンダーフーフ勝者はどちらだ?」
「メガトロン様だ!」
「メガトロン…」
「メガトロン!」
「メガトロン……」
「メガさまー」
「グローリアース!メガトロン!!」
この場の空気はほぼメガトロンが支配していると言っても過言ではないだろう。自分は先程の決闘を見て思ったことがある。それはメガトロンには戦闘における才能があるということだ。パワー面に関しては圧倒的にサンダーフーフの方が上だったのだが、メガトロンは戦いの中で徐々にサンダーフーフを追い込んでいったのだ。これが実力の差というやつだろう。
「おお~スタスクの言う通りになったよ」
「俺はこうなると読んでたぜ」
「はッメガトロンの弱点でも分ると思いきや使えねーやつだぜ」
なにはともあれ、これで
サンダーフーフの一味はデストロン入りだ。また一つこのセイバートロン星の歴史が動いた瞬間だ。このことを切っ掛けに大幅に勢力を拡大させることになったデストロンは完全に新たな政権を作るために動き出し。その過程で当時貨物輸送印として働いていたサイバトロンの中心人物オライオンパックスは重症を負い、長老アルファートリンの元でサイバトロン戦士総司令官コンボイとして生まれ変わることになる。
自分はというとそろそろ本格的にデストロン内チームに入らないかと言われていた。分隊の指揮ならできるはずと。どーしようかなー凄く個性的な面子を任されそうな気がするんですけど……
駄文閲覧ありがとうございました。現時点で主人公のテックスペックは殆どが5の状態です。
名称の補足
セイバートロン星=サイバトロン星
サイバトロン=オートボット
デストロン=ディセプティコン
コンボイ=オプティマスプライム