ある朝目覚めた時に戦う相手を決められていた件 作:クォーターシェル
あれからとりあえず分隊の指揮に関しては待ってもらっている。しかし余り待たせすぎると危なそうな予感がするので、近々返事は出すつもりだ。あれからデストロンは本格的な決起を行い、既に2つの都市を占領下に置いた。ここからが本番だと誰もが思っており、自分もそうだ。これからが大変になるであろうことは予想できた。
さて、今の自分の生活はというと、セイバートロン星の郊外にあるデストロン支配下の病院で暮らしている。衛生兵として傷ついたデストロンの治療を行うのが平時の日課だ。普通に前線にも戦いに行くが……今のところ相手にしているのはサイバトロンではなくセイバートロン星現政権が使っているトランスフォーマーではないガードロボットだ。スパイとしてはあまりサイバトロンと戦いたくないのでその辺は助かっているが、現政権との戦いはこちらがかなり有利のようであり、現政権が倒れデストロンが台頭するのは時間の問題だろう。と、なると自ずとデストロンに負けじとどんどん大きくなっているらしいサイバトロンとの激突は必至という訳で……どうしたものか。
さて、先に言った通りデストロン軍団目下の相手は現政府軍の主力部隊であるガードロボットだ。こいつらは個々の戦力は大したことはなく数で攻めてくるのが唯一の脅威といっていい典型的な雑魚敵だ。現に自分の主兵装である出力を絞ったビーム・スプレーガンでも一撃で破壊できるくらいである。しかし現政府軍の戦力はそれだけでない。場面は自分達デストロンがセイバートロン星の都市の一つへレックスに攻め込んだ所に移る。自分も衛生兵なのだが、前線に送り込まれた。一応後方の方にいるとはいえデストロン軍団も大きくなったことだしなんで前線にいるんだろう?とにかく自分は近づいてくるガードロボットにビームを命中させていく。その時だ、前線前方の方で悲鳴が上がった。
「うわあああああぁ」
名も知れぬデストロン兵士が吹っ飛んでいく。何事かと思いそちらの方を見ると、
「デカッ!!」
そこでは俺達の何倍もの大きさの巨大な青いロボットが暴れていた。あれが都市防衛ロボ ガデプだ。数は普通のガードロボットよりも遥かに少ないが圧倒的な怪力と火力が売りの厄介な奴だ。
「おい、やべぇぞ」
「ここは撤退だ!」
兵士達は次々と逃げ惑っていく。だがそれを見逃すほど甘い連中じゃない。
「逃がすかァッ」
と現政府軍とガデプは追いかけていった。
「あーあ、行っちまった……」
「まあ仕方ないね」
同行していたデストロン兵士、バリケードの呟きに答える。追われた兵士には悪いがその分こっちは楽になった。
「じゃあ俺たちはこのまま逃亡扱いされない程度に後退するか」
「ああ」
とそんなことを話しながらその場を離れようとした時だった。
「……ん?」
視界の端に何かが映りこんだ。
「なんだありゃ?」
「どうした?」
「いやなんか変なものが……」
「どれ?」
「ほらあの辺……」
そう言って指差したのはビルの屋上だ。そこに人影のようなものが見える。しかもかなり小さい。
「子供か?」
「いやまさか……」
「ちょっと見に行ってみるか……」
「えぇ!?」
俺はビルの中に入っていった。
屋上には誰もいなかった。ただ鉄柵があるだけだ。
「……」
俺はそれを乗り越えて外に出た。そして下を見下ろした。
「あれは……!」
そこには一人の子供…いやマイクロンが倒れているのが見えた。マイクロンは俺達トランスフォーマーの中でもかなり小さい種族で、俺の前世で言う地球人くらいの大きさしかない。セイバートロン星ではマイクロンのほどんどが移民に出て今本星に残っているのはごくわずかと聞いていたが…
「お前大丈夫か?」
と声をかけてみたが反応はない。気絶しているようだ。
「しょうがないな」
俺はマイクロンをお姫様抱っこして連れ帰った。
「こいつは酷いな……」
医者の端くれとしての分析によるとこいつの怪我は命に関わるものではないが、かなりの重傷だということだ。バリケードは
「放っておけよ」
と言ったが、俺は無視した。
「とりあえず応急処置だけでもしておくか」
俺は体内に収納している救急キットを取り出して治療を開始した。場所が場所だけに簡単なことしかできなかったが。幸いなことにそれほど時間はかからなかった。
「よし、これでしばらくは持つだろう」
「さすがは衛生兵だな。手際が良いぜ」
「ははは。このくらいは朝飯前さ」
「しかしお前、こいつをどうするんだ?」
「病院に連れていくよ」
「いいのか?このマイクロンはデストロンじゃないぜ?」
確かにそうだ。普通ならこんな得体の知れないマイクロンを連れて行くなんてことはしない。だがこのマイクロンからは微弱ながらビーコンの反応があったのだ。恐らくは何らかの理由でセイバートロン星に戻ってきたのだろう。だから放っておくわけにもいかない。
「いいさ。これも何かの縁かもしれないし、それに……」
「それに?」
「単純にこいつが心配だしな」
「……そうか。じゃあ俺はもう行くぜ」
「ああ、また会おう」
「ああ、元気でな」
そういうとバリケードはオルトモードに変形して前線の方へ向かった。さて、自分も近くの病院に向かうか…そう思った時だった。
「ッ!?」
地響きがしたので急いで辺りを見回す。するとガデプがこっちに向かって来ていた。ガデプはこちらにビームを撃ってくる。
「くそっ!」
咄嵯にシールドを展開して防ぐ。なんとか直撃は免れたがダメージは大きい。
「ちぃっ!こうなったらこっちも!」
ビーム・スプレーガンを構えガデプに向けて連射するが、やはり硬い装甲を貫くことはできない。ガデプが俺を潰そうと腕を振りかぶった時だった。
「?どうした!?」
ガデプが腕を振り下ろそうとした姿勢のまま動きを止めた。すると俺に内蔵されている通信機から通信が入ってくる。たった今ヘレックスを別働隊が制圧したとのことだった。つまりガデプもコントロールを奪われ動きを止めたということか。
「助かった……」
◇ ◇ ◇
難を逃れ、任務が終了した俺は、根城である病院にマイクロンを連れてきていた。傷ついた彼(彼女?)に本格的な治療をするためだ。
「ふぅ……」
ひとまず落ち着いたところで彼をベッドの上に寝かせる。まだ意識が戻らないようだ。無理もない。あれだけの傷を負ったのだから。トランスフォーマーはスパークが無事なら生きてられるとはいえ流石に身体に大きなダメージを受ければ命にかかわる。しかし手間は掛かるとはいえ俺が手を尽くせば大丈夫な傷だ。俺は処置に取り掛かる事数時間……彼の傷は大体塞がり、修復された。これで大丈夫だろう。俺が安堵のため息をつくと彼はうめき声を上げて目を覚ました。
「うう……」
「起きたか」
俺が声を掛けるとその小さな目を開いた。
「ここはどこ?」
「ここはセイバートロン星のとある町だよ」
「セイバートロン星……?僕は……どうしてここに……?」
「君はある都市で戦闘に巻き込まれて重傷を負ったんだ。それを俺が助けたんだよ」
「そうなの……?」
「ああ。俺はセブンツールっていうんだけど、君の名前はなんだい?」
「名前?えっと……」
「わからない?」
「うん……」
「名前はわかるかい?」
「……わかんない」
どうやら記憶を失くしているらしい。俺は彼に説明を始めた。
「そうか、まぁ簡単に言えば君のいた場所は今、戦場になっているところなんだ」
「戦争?」
「ああ。デストロンと政府軍の戦いだ」
「なんのために戦っているの?」
「それは……」
一瞬言葉に詰まる。この子は地球で育ったわけではない。ならば戦争の理由など知らないだろう。俺は少し考えて答えた。
「正義の味方になるためだ」
「せいぎのみかた?」
「困ってる人を助けるためだ」
「僕みたいな人を?」
「ああ、そうだ」
「でも、それってすごくたいへんなことじゃないの?」
「大変だけど、それが俺の仕事だ」
「すごいね!」
「ははは」…… それから数日が経過した。その間、俺はこの子の面倒をよく見ていた。この子には親がいないようだったので俺が保護者代わりになった。幸いにも他に色々な種族がいる病院ではマイクロンはあまり珍しくないらしく、俺もこの子がマイクロンだとわかってもそれほど驚かれなかった。ただ、マイクロンは小さい種族なので治療にはそれなりに時間がかかった。俺は医者ではないが、それでもかなり高度な医療技術を持っている。そして俺には医療知識がある。簡単な手術くらいはできる。幸いにもマイクロン用のパーツもあるし、この子に合うサイズもすぐに見つかったから特に問題はなかった。そして今日でこの子と出会ってから1週間が経った。
この日、俺はこの子をセイバートロン星の首都アイアコンに連れ帰ることにした。
「そろそろ行こうか」
「どこにいくの?」
「この星の首都さ」
「首都?」
「この星の王様が住む場所さ」
「おーさま?」
「そうだ。このアイアコンはセイバートロン星の中でもかなりの都市だ。きっとこの子にとってもいい環境だと思うよ」
「わかった。いく」
「よし、じゃあ行こうか」
………… こうして俺たちはこの病院を後にしてアイアコンに向かった。道中、この子は色々と質問してきた。例えば自分がどんな存在なのかとか、なぜ自分はあの場所に倒れていたのか等々。俺はそれに丁寧に答えていった。しばらくしてアイアコンが見えてきた。
「あれがアイアコンだ」
「あそこが?すっごい大きい!」
「はは、そうだろう」
「ねえ、あれはなに?」
「あれは自動車という乗り物さ」
「じどうしゃ?どういうものなの?」
「動力はエネルゴンと呼ばれる燃料で動くんだ。そしてタイヤというもので地面を走ることができる」
「へぇ~!すごぉい!ぼくも乗れるかな!?」
「多分、無理じゃないかなぁ……」
「そっか……ざんねん……」
◇ ◇ ◇
その後、俺はこの子を連れてサイバトロン基地までやってきた。そこで俺がここにやってきた事情を話した。するとコンボイ司令官はすぐに納得してくれた。
「そうだったのか……大変だったろう」
「いえ、私はそれほど」
「デストロンの兵士が子供を連れてやってきて何事かと思ったが……そういうことだったか」
「はい……」
「それでその子はこれからどうするんだ?」
「ひとまずそちらの医師に預かってもらえませんか。そこで治療を受けさせるつもりです」
「なるほどな……」
「今のデストロンの情報を聞いていればこの子をデストロンに置いておく訳にはいかないでしょう」
「確かにその通りだ。だが、我々としてはこの子に罪はないと思っている。だからできればこのままこの星で暮らせるようにしたいのだが……」
「それは難しいと思います」
「そうだろうな……」
「それに、まだ他にもマイクロンがいたみたいですし、他の中立グループに任せてこの星を脱出してもらった方がいいと思います」
「そうだな……。君は、この後は?」
「私は一度デストロンの病院に戻ります」
「そうか。気をつけてくれ」
……それから数日後、俺はこの子と一緒にセイバートロン星のセイバートロニアン専用空港にやってきた。セイバートロン星のアイアコンにあるセイバートロン星専用の空港だ。
「わぁ……すごい……!」
初めて見る光景に感動しているようだ。無理もない。ここはセイバートロン星の中心的な都市なのだから。
「ついたぞ。ここがこの星の一番の町だよ」
「これが町?」
「ああ。周りを見てみてくれ」
「うわぁ……きれい……」
「ああ。いい景色だろ?」
「うん」…… 俺は早速この子に新しい名前をプレゼントした。
「君の名前は今日からフォスフォフィだ」
「フォスフォフィ?」
「ああ。君の名前は今日からフォスフォフィだ」
「ふぃすふぉ?なんだか長い名前だね」
「ははは、そうかもしれないね。でも、覚えやすいだろ?」
「うん。おぼえやすいよ」
「よかった」
……フォスフォフィの身柄を一旦サイバトロンに預け、その後惑星を脱出する中立派に混じってもらう。これがフォスの為だと思っている。だが、もし万が一のことがあればそれはそれで仕方がない。その時はその時だ。
「じゃあ、また会おうね」
「うん。ばいばーい」
……こうしてフォスと別れた後、俺は再びセイバートロン星の病院に向けて発進した。
セイバートロン星病院
「グリット先生、ありがとうございます」
「気にしないでください。患者を助けることが私の仕事ですから」
「本当に助かりました。まさかこんな小さな子があんな大怪我をしていたなんて……」
「あなたも大変でしたね」
「はい……。あの子は回復しましたがこの病院にはまだ怪我人が大勢いますちょっと留守にしていた分頑張りますので!」
「セブンツール。早速だが回診を手伝ってくれ、今回はノックアウト医師も参加するしね」
「えっノックアウトが」
ちょっと紹介がまだだったがこの病院によくいる同僚を二人紹介しよう。一人目はグリット。サウンドウェーブが紹介してきた医者でデストロン一の医術の腕前を持っている。人格者で負傷者は余裕があるなら敵味方関係なく治療するデストロンらしからぬ人だ。キスぷれではカセットロンだったがこの世界ではレスキュービークルに変形するトランスフォーマーだ。二人目はノックアウト。プライムではメディックの名も持っていたナルシスト医師である。移民惑星の一つスピーディア出身で医療のことより走ることが好きというドクターとしてどうなの?って男である。グリットはともかくノックアウトはなー…と思いながら回診の準備を進めるのだった。
駄文閲覧ありがとうございました。感想等もそうですが活動報告の募集も是非!