さてさて。
漸く事態が動き始める。
私は力こそないがスタミナは溢れんばかりにある。
時間にして48時間ぶっ続けでナイトメアフレームを動かし続けてもおつりがくる。
まあそんなことしていればナイトメアフレームが先に潰れるわけだが。
実際潰れた。
それはさておき。
何故こんな話をしたのかというと、ろくろはスタミナがないなーということに尽きる。
確かに暗殺するならスタミナよりも瞬発力だ。
一瞬で仕留める感じで行くべきだろう。
しかしろくろは作戦開始30分で汗を垂らしている。
いやこれはまずくないだろうか。
戦闘になれば更に悪化するだろう。
それはまずいのだ。
「そして今の状況もまずい……」
「?」
ユーフェミアは気付いていない様子だが、彼女がいることが最大の障害である。
彼女を守らなくてはならない状況に持って行かれたのが駄目だった。
確かにコーちゃんに言われただけだが、ここで約束を反故にすると、後々そこをつつかれて何か言われるだろう。
それがまずいのだ。
故に私はここを離れられない。
だから、ろくろには頑張ってもらわないといけないのだが……。
「ろくろ、大丈夫か?」
<はひ、だい、じょうぶ……ですっ!>
駄目だこりゃ。
暫く休憩してもらおう。
「今から示すポイントに向かって、そこで休憩」
<え?>
「分かったら返事」
<は、はい!>
これでまあ、ひとまず安心。
ろくろが休憩しておけば、そうそうナキに負けることはない……はずだ。
多分。
……なんか北斗に変な改造を加えられてなければだが。
『冷却放射装置の導入をやめる? わたくしに死ねと申すか』
シャドーレイク=ニシキノがそう叫んだのを覚えている。
別に死んでほしいわけではない。
ただ冷蔵庫にも放射装置を付けるのはやめなさい。
キャベツが凍る。
まあいいや。
とにかく、奴らは規格に合わない装備をとにかく放り込む悪癖がある。
そうでなければ4本腕のナイトメアフレームなど作らない。
いや作れないんだが普通は。
『イェース! ワガハイのミラクルパンジャンストライクの出来はどうですカ! クソでしょうそうでしょう! だがそれがいい!』
そして思い出す日村バイソンの叫び声。
こいつはブリタニアの血を引いてるはずなんだが……なんで私の誘いに乗ったのか。
よく分からない。
そして、気付けば識別信号のない機体がろくろの近くを通る。
多分というか確実に北斗だ。
「多少破壊しても構わないからパイロットを捕まえるんだ」
<はーい☆ 頑張っちゃいます>
「よし、あとで願い事を何でも聞いてやるぞ」
<な、なんでも……?>
「わたくし知ってますよ。それは駄目な奴です!」
何故かユーフェミアにツッコミを入れられたが、まあいい。
「……4本腕、発見したそうです」
「目視したか?」
<しました☆>
とにかく。
私が前線に出ることができない以上、ろくろに任せるしかない。
頼んだぞろくろ……。
帰りにお前の好きなおかし買ってやるからな……。
直後、巨大な振動が周囲を襲った。
「何が起こった……?」
周囲は混乱している。
この状況下でユーフェミアが指揮できるとは思えない。
ついでに私の言うことも聞いてくれないだろう。
事態はかなりまずい方向に進んでいる。
どうする。
どうする。
ろくろは無事か?
いや、多分大丈夫だ。
ろくろのいた場所はちょっとやそっとの衝撃で崩れるような場所ではない。
となると問題はコーちゃんの方だろう。
何故ならここは安全だからだ。
狙うなら、分断してしまいやすいコーちゃんの方。
「といったものの……」
「? どうかしましたか?」
「いや、何もできないなと思ってな」
仕方ない話ではあるが。
とはいえこのまま棒立ちしていてはまるで役立たず。
何かしておこう。
「というわけでサザーランド一機お借りしますね!!!!」
「ええっ!?」
脱兎。
やっぱり約束は破るためにあるよね!!!