「確かこの辺りを弄るんだったか」
移動しながら設定をがちゃがちゃ弄る。
このまま突っ込んでも死ぬ可能性が高い。
ならば自己流の必殺スキルで魔改造したサザーランドで戦おうというわけだ。
がたがたと鳴る可動部なんかを見ながら満足する。
うむ、これなら何とかなりそうだ。
センサーを起動。
戦闘の痕跡があればそこに向かえばいい。
合理的だ。
そして、何やら金属片が飛び散っている場所へと辿り着く。
うむ、ここはジャミングされていてセンサーが機能しないな。
つまりろくろがいる。
即座に動く。
さっさとナキをやっつけて拾って逃げなくては。
コーちゃんにバレたらぼろ雑巾にされてしまう。
<……で、嫉妬ですかっ!>
ろくろの声が聞こえた。
マジか、ジャミングされてるからってオープンチャンネルとか度胸があるな。
まあろくろだから納得。
<別にそんなつもりはない!>
<自分が知らないことを私が知っていたから嫉妬したんですよねー? わかりますよー私だってあなたに嫉妬してましたからねー!>
<だから違うと……!>
<うるさーい! ご主人様は私のものだー!!!>
<少なくともあいつは誰のものでもないと思うぞ私は……!>
……なんだろう。
喧嘩?
しかもその内容からすると私を取り合っている?
なんだ。
平和じゃないか。
ちょっとここで聞いてようか。
<ところで結局どこまで進展してたんですか? ふたりきりで朝帰りとかもうあれじゃないですか?>
<張り倒すぞ>
<えー私だったらがっつりですよがっつり☆ チャンス逃したらもったいないですしー☆>
<上等だ表に出ろ>
<はー認めないんですかいいですよやってやりますよ>
最終的にはナイトメアフレームから降りてしまってキャットファイトである。
まあナイトメアフレーム自体がボロッボロで使い物にならないから当然と言えば当然なのだが。
「知ってますよー夜な夜なご主人様のことを思いながらお人形さんを握りしめてるんでしょー☆」
「ばっ……なっ……!?」
「え? 当たってたんですか? うっわー引きます☆」
「殺す」
「痛っ! 髪はやめてください! ご主人様に褒められたんですよっ!」
「うるさいうるさいうるさい!」
「あっこいつ口で勝てないからって暴力に訴える気ですね!」
ろくろは口で勝ち、ナキは力で勝っている。
まるで子供の喧嘩だ。
というかこの状況どうしようか。
私が出て行っても解決しないような気がする。
下手するとぶん殴られるのは私じゃないか?
……まあいいや。
ふたりが満足するまで放っておくか。
~30分後~
「はー! これだけ言ってもわかりませんかー! あなた恋しちゃってるんですよ、恋! わかります? わからないから今殴り合ってるんでしたねごめんなさい!」
「……!」
「もはや無言で殴り始めましたねこの女!」
「うるさい。あいつは別にそんな風に思ってない」
「それ12回目ですよ!?」
ははーん。
これ終わらないな???
殺し合いの雰囲気じゃなくなったので、このまま回収してもいいんだが。
どうしようか。
悩む。
……そうだ、ろくろを今のタイミングで甘やかしてみよう。
それによってナキが化学反応を起こして何かが発生するかもしれない。
よく分からないが。
というわけで着地。
サザーランドをその辺に待機させてふたりの近くにジャンプして着地したのだった。
「げ、ご主人様!」
「ぶ、あ、いや。リヴァーサ、だったか」
何がげ、なのやら。
そしてナキの顔が歪んでいく。
なんだろう、信じたものに裏切られたような顔だ。
まあ今はろくろを褒めることにしよう。
くいっと引っ張って身体を抱えて抱きしめる。
そして頭をなでるなでるなでる。
「ええっとこの状況はなんなんですかご主人様!?」
「褒めてる」
「ああいや嬉しいんですけどちょっとこう色々と心の準備というかあれが必要なんでもうちょっと待って欲しいというか本当に私そんな資格がないというかというより今ちょっと汗臭くないですかだってお風呂ちゃんと入れてなかったしでもでもやっぱり嬉しいですご主人様このまま暫くいてもいいんですけどっていうかナキさんがこっち見てるんですけどええちょっと怖いですねへーいい気味ですよ素直になればこうやって褒めてくれるんですよーじゃなくてまだ撫でるんですかいや嬉しいですけどちょっとこう唐突過ぎて恥ずかしい気持ちもあったりしますけどまあご主人様がいいなら別に構わないというか嬉しいけどなんというか心臓がばくばくしててかなりうるさいので離れてほしいなーとか思ったり思わなかったりもするんですけどその辺いかがですかご主人様というか撫で続けるだけで何してるんですかいや本当にこっちが大人しくしていればいい気になっていいですかこれ以上私にご主人様成分を過剰摂取させると死」
「よくできたな、ろくろ。お前がいて嬉しい」
「殺す気ですかご主人様ー!?」
思い切りアッパーを喰らってぶっ飛ばされた。
痛い。
しかし本当のことを言ったまでだ。
もしかしてそれがいけなかったのだろうか。
まさかそんな。
脳内姉からは『言葉を装飾してはいけない血反吐吐くようなくっそ甘いセリフになって私が死ぬ』と言われていたが、ここはその縛りを解禁するべきなのか。
しよう(決意)。
「ろくろ」
「な、なんですか?」
「お前は私のことをずっと守ってくれた最高の従者だ」
「え、なにこの状況ご主人様本当に私を殺す気ですか?」
「お前がいない世界なんてありえないし、存在させるつもりもない。そう、お前がいれば世界はどうでもいい。だからこれから先も一緒に歩んでほしい」
「それ以上喋るなー!!!!」
今度はナキからボディーブローだ。
痛い。
というかそのままマウント取られて動けないんだが。
ろくろ、助けてくれ。
あれ、機能停止してる。
頭から煙が出るとか古典的な奴。
「そしてナキ。お前がいないと私は駄目みたいだ」
「……え?」
とりあえずだ。
この状態で殴られると死が見えるので、どうにか説得したい。
というわけでマシンガントークだ。
『お前の言葉はショットガンだよ』とも言われたことがあるが放っておく。
「なんだかお前がいないと寂しいんだ。一緒にいることが当たり前できっと気付けなかったんだろう。今後はもっと一緒にいよう」
「あ、あえ?」
「そうだ。私が名前や出自を偽っていたのはすまなかった。そうでもしないと日本でやっていけると思えなかったからだ。許してほしい」
「ああ、まあ。それは、いい」
「そしてだ。私はナキに言いたいことがある」
「な、なんだ?」
む、動揺してるな。
このまま押し切ればなんとかなりそうだ。
さあ、ここで最高の一言を。
「―――――私だけの騎士になってくれないか?」
「ご主人様が私を放置して女を誑かしてるー!!!!」
「ぐわー!」
結果として、仲間だと思っていたろくろに殴り飛ばされたのだった。