轟音とともに振動。
直後、4本の腕が壁を引き裂く。
北斗に乗ったナキの登場である。
「どうやってこの包囲網を突破したんです?」
いつもの様子ではない。
割と焦っているのが分かる。
早く逃げ出したいのだろう。
「跳んだ」
そして返答は簡単なものだった。
ああいや、確かに跳躍性能は高かった気がするが……湖だぞここ?
まあいいか。
また奴らが改造したんだろう。
私のポケットマネーは有限なんだけどなー。
「じゃあ乗って」
「はーい☆」
「助かる」
「死なれては困る」
というわけで、後方に備え付けられている2本の腕にそれぞれ掴まれながら、私達は宙を舞った。
跳ぶというよりほぼ飛んでいたが、いや本当にこの機体にいくら使うんだろうか。
当然のように包囲網を上空から突破し、事なきを得る。
銃弾が当たることもなかった。
まあ当たったら死ぬけどね、私たちが。
<待て! 貴様ら何者だ!>
着地に成功した私たちだったが、背後から追いかけてくるサザーランドが3機ほど。
まあ、これくらいなら大丈夫か。
私は即座に手の中から這い出し、命令を下す。
「やっていいぞ」
<了解!>
スラッシュハーケンが飛ぶ。
即座に1機が寸断された。
早い。
<おのれ!>
<遅い>
後方部についている腕が変形する。
肘の辺りから長い棒状の何かが飛び出した形状へ。
なるほど、今日はそれか。
加速してサザーランドに肉薄。
そのまま頭部を後方部の腕でつかんで、機構を放つ。
ぐしゃあ! と大きな音を立てて鋼鉄の杭が、サザーランドの頭部を貫いていた。
そう、今回の武装はパイルバンカーだ。
『パイルバンカーは浪漫である』
技術部の沢渡敏郎がそう言っていた。
『なので本来の腕とは別の腕に搭載しました』
ということだった。
見て分かったが、聞いただけではよくわからなかった。
まさか本当に腕を増設してしまうとは……。
これのせいで私の分のナイトメアフレームが完成するまで時間がかかっている。
私がナイトメアフレームに乗らない理由の一つだ。
そしてもう一方の後方部の腕は、ギイイイイイと大きな音を立てて回転するチェーンでサザーランドを両断していた。
こちらはチェーンソーか。
『チェーンソーは格好いいんです!』
技術部の二階堂さつきが言っていた。
『なので貴方のナイトメアフレームの駆動部のものを使いました!』
整備性が……とも思うが、その辺は作った当人たちに任せることにする。
というかチェーンを使ったナイトメアフレームって、どんな異形を作るつもりだったんだ……?
まあいいや。
とにかく、追手は撃退した。
即座に移動だ。
今度は前方の腕に乗って脱出を再開するのだった。
「……」
「……」
生徒会のメンバーに、何故か紛れ込んでいるろくろ。
しかも無言。
珍しいものだ。
いつもなら
「きゃー☆ ご主人様さいてー☆ クソ煮込みー☆」
とか言っている所だろう。
「……それはそれで、ろくろ怒っちゃいますよ☆」
飛んできたナイフを避ける。
もう怒ってるじゃん。
「え、ナイフ? え?」
「あ」
ろくろ、いつも家にいる調子で投げたな。
油断し過ぎだ。
「あれはろくろの愛情表現だ」
「え、違いますけど☆」
「え?」
「え?」
素に戻ったので本当らしい。
じゃあなんで投げるんだナイフを。
私じゃなかったら死んでるぞ。
100回は。
「どうせ死なないんだから気にしないでください☆」
「そういう奴だったなお前」
「褒めないでください☆」
気を取り直して。
生徒会メンバーとろくろが向かい合っている。
議題は『ろくろの強さとかあんなことをした理由とか』である。
「……」
ろくろは無言。
ちらちらとこっちを見てくるのは助けを求めているのだろうか。
珍しい。
いつもなら煙に巻くところなのだが。
「ははーん、さては初めてできた友達に嘘はつきたくないけど本当の自分が知られるのが怖いんだな?」
「……」
「今日のナイフは鋭いな」
頬をかすめた。
毒とか塗ってないよなこれ。
まあいいや。
「全部吐いてすっきりしたらどうだ? 少なくとも、私はお前から離れたりはしないから安心しろ」
「―――――」
目を見開いて驚くろくろ。
よくよく考えなくても、私が生きているのはろくろのおかげである。
向こうから離れない限り、離れるつもりはないのであった。
「実は―――――」
ろくろが漸く口を開く。
さあ、どんなことを告白するんだ……?
実は私もろくろのことをあんまり知らなかったりするのだ。
気になる。
「―――――ろくろの名前は、ろくろじゃないんです☆」
「知ってた」
そうじゃないだろ。