「■■■■!!!!」
まるで地の底からひびいてくるような怒声。とてもじゃないが、この世のものとは思えない。
「凛さん、あれ」
そう言ってイリヤが指差す方を見つめると、どす黒い空気とその空気よりもさらに深い漆黒の鎧に身を包んだ騎士が私たちに背を向けて立っていた。あれこそが今回の敵なのだろう。
「これはまた厳つい鎧ですねー。先ほどの狂ったような怒声からしてもクラスはバーサーカーといったところでしょうか。見たところ宝具どころか武器すら持っていないようですし」
「バーサーカーなら好都合よ。狂化された戦士じゃ高度な技術や宝具も使えないでしょうからね。どちらにしても向こうが私達に気づいてない今がチャンスよ、イリヤ」
「行くよ、ルビー」
「サファイア、私達も」
「フォイア!!!」
黒き騎士めがけて放たれた2つの魔力弾。それらが騎士の眼前に迫り、あっけなくも勝敗は決したかに思われた。次の瞬間―
「なっ、魔力弾が弾かれたですって。それも素手で!? ちょっとイリヤ、あなたまさか手を抜いたんじゃないでしょうね」
「そんなことないですよ、正真正銘全力でした」
「素手ではないようですわよ。あの英霊今は何か持っていますわ。あれは何かしら。ただの木の枝に見えるのですが。まさかあれが敵の宝具なのかしら」
「何言ってんのよ。ただの棒っきれが宝具な訳ないでしょう。どういうこと。説明しなさい、ルビー!!!」
「うーん、私にもはっきりとは見えなかったんですが、どうやら一撃目を屈んで避けると同時に、落ちていたあの枝を拾ってそのまま二擊目を防いだようですね。」
「恐らく、手にしたものならどんな物でも宝具として扱うスキルかと思われます。現にあの枝からも宝具と思しき魔力を感じています」
「なるほど、だったら接近戦は分が悪いわね。イリヤ、空中から魔力弾で応戦して」
「ミユもイリヤスフィールを援護して差し上げなさい」
バーサーカーとは破壊衝動だけを持った狂戦士である。先の魔力弾により、イリヤたちはバーサーカーの破壊対象として見定めらてしまった。
「ua、、、、、、aaaaa――――!!!!!」
バーサーカーは再び怒声を上げると共に、手にした自身の宝具をイリヤたちに向けて投擲した。手にした武器をいきなり投げつけるという騎士にはあるまじき攻撃とそのあまりのスピードにイリヤとミユは一瞬対応が遅れ、その一撃はミユの足を貫いた。
「くっ、足が」
「ミユッ、はやく私につかまって」
「私のことはいいから。二人ではやつに捕まってしまう。私はここであいつを迎え撃つから、イリヤスフィールあなたは空中から援護を」
「イリヤさん、あれを相手に接近戦は危険です。はやく空中へ」
「逃げないよ。仲間を、友達を見捨てることなんて私にはできない」
「イリヤスフィール、、、、、、」
「イリヤでいいよ、ミユ」
「はー、仕方ないですねー。魔力を物理保護と身体強化に回します。ミユさんが足を回復するまではそれで時間を稼いでください」
「ありがとう、ルビー」
「■■■■!!!!」
「くらえ、特大の散弾ッ!!!」
イリヤの判断は正しかった。いかに必殺の威力を誇る魔力弾とはいえ、当たらなければ意味はなく、かえってこちらが隙を作ることにもなりえる。回避不能のこの散弾でバーサーカーの足を止めることは今のイリヤにできる最善の一手であった。
「これで、引き下がってくれたらいいんだけど」
「いえ、、、、、、来ます!!イリヤさん、下がってください!!!」
そうルビーが言い終わらぬうちに、砂埃の中からバーサーカーはその姿を現し、すでに魔力弾を打つ余裕すらない距離へ迫っていた。
恐るべきはバーサーカーのその衝動である。先ほどイリヤが放った散弾はいかに威力が落ちるとはいえ、並みの英霊ならば必ず足を止めるだけの攻撃であった。しかし、狂化された騎士は散弾によるダメージをものともせず、ただその余りに大きすぎる破壊衝動に身を任せて突き進んだのである。
「キャッ」
「危ないイリヤさん、伏せて!!」
無手のバーサーカーが振り下ろした手刀は、身体強化されているとはいえイリヤが受け止めるにはあまりにも重く、攻撃をかばったルビーは弾かれてしまった。
「ルビー!!」
ルビーを手放したイリヤに為す術はなかった。バーサーカーは彼自身の次の宝具にすべくルビーを拾い上げ、その黒い思念をルビーへと送り込んだ。
「あっ、、、、、、あっーん。助けてサファイアちゃん。何か黒いモノが流れ込んでくる!!!」
「姉さん。ミユ様、イリヤ様、お願いします。姉さんを」
特定の宝具を持たない代わりに、あらゆるものを自身の宝具へと変えるバーサーカーのスキル。たとえ英霊の宝具であろうと無関係に効力を発揮する破格のスキル、これによってルビーまでもが彼の宝具となってしまったかにみえた。しかし―。
「なーんちゃって。あんまりカレイドの魔術礼装を見くびらないでください。この程度の干渉力なら、パスを利用して逆にこちらから干渉することだってできるんですよーっと。私を汚したくばこの3倍のスキルを持ってこい」
「、、、、、、」
「ルビー、あなたって」
「さぁ、サファイアちゃん、姉さんがこいつを抑えてる今のうちよ」
「、、、、、、」
「ミユ様、姉さんごとお願いします」
「わかってるよ。ランサー限定解除」
「■■!!」
魔槍で心臓を貫かれた騎士は力なく崩れて、光となり、そこにはバーサーカーのカードだけが残されていた。
「いやーん。サファイアちゃんったら積極的なんだから」
「申し訳ございません、ミユ様。仕留め損ないました」
「まぁまぁ、ルビーのおかげでバーサーカーも倒せたことだし、今回は大目に見てあげようよ」
「イリヤは甘すぎ」
「まったく、一時はどうなることかと思ったけど、結果オーライってところね」
「ええ、それにしても英霊のスキルすら跳ね返すとは、今更ながら恐ろしいステッキですわね」
「確かにね。大師父が私達にこんな任務押し付けるのも納得だわ。こんな任務、本来なら封印指定の執行者が派遣されるレベルだもの」
「さぁ、はやくこんなところ抜け出しましょう。イリヤ達を呼んでこないと」
「かはっ」
熱い。なに?これ。斬られたの。迂闊だった。まさか、もう一体英霊がいたなんて、、、、、、
ここから登場する英霊はちょっとだけ変えていくつもりです。
よろしければ最後までお付き合い下さい。