プリズマイリヤ ~もう一つの聖杯戦争~   作:R-spo

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第3話

「さぁ、バーサーカーも倒したことだし、はやく帰ろうよ。私、凛さん達を呼んでくるね」

 

「待って、イリヤ」

 

そう言って、ミユが指差す方向には血だまりの中に倒れる凛とルヴイア、そして黒い甲冑に身を包み、大剣を携えていた騎士が二人を見つめていた。

 

「そんな。凛さん、ルヴィアさん。」

 

「ダメ。落ち着いてイリヤスフィール」

 

「こんな時に何言ってるのよ。早く行かないと凛さん達が殺されちゃう」

 

「こんな時だからこそ落ち着くのよ。今、下手に相手を刺激すれば、それこそあの二人が殺されてしまう」

 

「―ッ。ごめん。そうだよね。こんな時だからこそ冷静にならないとね。それで、ミユには何か考えがあるの」

 

「見たところ、敵にはこれ以上あの二人に危害を加える様子はない。つまり敵には他に目的があるのよ」

 

「目的?」

 

「恐らく、私たちが持つカード。カードが持つ強い魔力に惹かれているのだと思う」

 

「つまり、今出来ることは、カードを持った私たち二人のどちらかが囮になって、その隙にもう一人がその二人を連れて脱出することよ」

 

「囮には私がなるから、イリヤは二人を」

 

「ダメだよ!!!ミユは足を怪我してるじゃない。囮役は、、、、、、私がやる」

 

「ダメよ。イリヤ」

 

「私なら空も飛べるから大丈夫。お願い、任せて」

 

「―ッ。わかったわ」

 

「ありがとう、ミユ。ルビー行くよ」

 

何とかして、あいつの気をこっちに引き付けないと。まずは威力を抑えて。

 

「フォイア!!!」

 

騎士にとって完全な死角から放たれた魔力弾は威力にこそ欠けるものの、そのスピードは衰えておらず、先のバーサーカー戦同様、完全に騎士を捉えていた。

 

しかし、魔力弾は躱されるでもなく、バーサーカーのように弾かれるでもなく、騎士に当たる寸前にかき消されてしまった。

 

「うそっ。魔力弾が消えちゃうなんて」

 

「あの黒い霧です。あの霧はただの霧じゃありません。高密度の魔力でできた霧です。同じ魔力である以上、あれを魔力弾で突破するのは今のイリヤさんには難しいかもしれません」

 

「そんな。だったらどうすればいいの」

 

「宝具を使用できれば一番いいのですが、ランサーの宝具は先ほどミユさんが使ってしまいましたし、ライダー、アーチャーの宝具はそれ単独では効力を発揮しません。バーサーカーのカードも先ほどの戦闘スタイルから察するにこの状況を打破できるものではないでしょう。ここは一度引いて、体制を立て直すことに専念して下さい」

 

黒い騎士はイリヤの存在に気づき、その剣を高々と掲げて、眼前の空間を切り払った。

同時に騎士を包んでいた黒い霧の一部が斬撃とかしてイリヤに向けて放たれた。

 

「イリヤさん避けて!!!」

 

反射的に空中へと逃げたイリヤであったが、騎士はあれほどあった間合いを瞬時に詰めてすでにイリヤの眼前に迫っていた。

 

「しまった。耐えてください、イリヤさん。物理保護全開!!!」

 

容赦ない騎士の一撃はイリヤの腹部を完全に捉えたが、遥かに後方に吹き飛ばされながらも、ルビーの物理保護によって一命はとりとめていた。

 

「うっ、かはっ」

 

「イリヤさん、今全力で治癒しています。頑張ってください」

 

 

お腹が、全身が熱い。身体がバラバラになったみたい。

 

あれが英霊なんだ。なんで今まで気付かなかったんだろう。戦うってこんなにも痛くて、こんなにも怖いことだったなんて。

 

魔法少女になんてなるんじゃなかった。

 

だいたい、、、、、、初めから無理だったんだよ。私なんかが戦うなんて無理だったんだよ。

 

ほら今だって、私を殺そうとしてあいつがやってきてる。私、こんなとこころで死んじゃうのかな? 殺されるなんて嘘みたい。

 

コロサレル?

 

チガウ

 

ワタシが殺すのよ。

 

アレは、英霊。ワタシが殺さなくちゃいけないもの。

 

ここは冬木の地で、ワタシはアインツベルンの最高傑作なのだから。

 

長い間忘れていたわ。自分が何者なのかも、何をすべきかも。

 

さぁ、始めましょう。聖杯戦争を。

 

「まずい。剣に魔力が集中している。凛さんもルヴイアさんも大丈夫だから。お願い、逃げて、イリヤ」

 

「告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「もう離脱も間に合いません。イリヤさん、前方に強化面を貼りつつ、物理保護で守ります。生きる残ることだけを考えてください」

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者」

 

「エクスッ」

 

「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」

 

「カリバーーーー!!!!」

 

突如として巻き起こった光の奔流は辺り一面を埋め尽くし、全てを飲み込んだ。

 

イリヤと突如として現れた一人の青年を除いては。

 

「やれやれ、アイアスでは防ぎきれないと思ったのだがな。まぁ、ま特の供給がない上に、偽物とあってはこの程度ということか」

 

そう言って黒衣の青年は自分を呼び出した少女を振り返り、どこか悲しげな目をしながらも一人納得したように頷いた。ついにこの時が来ただけなのだと。

 

 

 

「問おう。君が俺のマスターか」

 

 

 

巻き上がる砂埃の中でミユは先の宝具発動とイリヤが行動不能に陥っていたことから、現時点で考えられるあらゆる可能性を考慮していた。しかし、どう見積もってもイリヤが生き残っている可能性は限りなくゼロに近く、イリヤを行かせてしまった後悔とバーサーカー戦で不覚をとった自分に対する自責の念で押しつぶされそうになっていた。そう、イリヤが助かっているなんてことは奇跡でも起こらない限りありえないのだと。

 

しかし、砂埃が晴れることでミユが目にした光景は予想とは全く異なるものであった。

 

「そんな、イリヤ。あれは一体」

 

「アーチャー、目の前の敵を油断なく、躊躇いなく、殺される前に殺しなさい」

 

「了解した」

 

アーチャー?イリヤは一体何を言っているの。しかし、あの男が放つ雰囲気も魔力も英霊が放つソレに極めて近い。そんなバカな。イリヤは魔術師の家系ではなかったはず。それに仮に魔術師であったとしても英霊の召喚なんて大儀式を個人の力で行えるわけがない。あのカードにしてもそうだ。あのカードには英霊を召喚する力なんて備わっていないはずなのに。どうして。

 

「いったいこれはどういうことなのイリヤスフィール?」

 

「これは聖杯戦争。アレはワタシの敵なのよ」

 

これは本当にイリヤなの? まるで人形のような冷たい眼差し。この姿こそ本当のイリヤだというの?

 

「どうしちゃったの。イリヤ!!」

 

「ワタシはこの戦いを勝ち抜かないといけない。ワタシはあの人たちとは違うから、、、、、」

 

「イリヤッ!!?」

 

「わ、わたし、今何を」

 

頭が痛い。それに身体が焼けるように熱い。まるで全身の神経が焼かれたみたい。それに気分が悪い。何かを思い出しそうな。思い出さない方がいい何かを。

 

「ねえミユ、私どうしちゃったの? そうだ!!凛さん達は、あの英霊はどうなったの」

「あの二人なら大丈夫。今は安全なところで休ませている。さっきの英霊なら彼が戦っているわ」

 

「あれ、誰なの?」

 

「覚えていないの?」

 

「おそらくカードを使ってイリヤさんが召喚した英霊です」

 

「えっ、私? 私そんなの知らないよ。ルビーがやってくれたんじゃないの」

 

「いえいえ、私じゃありませんよ。私ができるのはあくまで魔力供給と魔力の放出、それに使用者の身体強化位のものです。英霊の召喚なんて高度な儀式を私単独ではとてもできません。あれはイリヤさんが行使した儀式に間違いありません。イリヤさんってホントは魔術師だったんですか?」

 

「違うよ。私はルビーや凛さん達と会うまで魔術なんて全く知りもしなかったもん」

 

「まぁ、その話はまたの機会にしましょうか。どうやら勝負がつきそうですよ」

 

 

 

「剣、水を分かつ!!!」

 

「―ッ」

 

アーチャーの双剣による一撃。躱すことも、受けることも許されないその一撃を受けて騎士は膝をついた。

 

騎士が顔を上げるとそこに追撃を加えるアーチャーの姿はなかった。アーチャーは既に騎士の間合いからは遠く離れ、その手には先ほどの双剣ではなく、弓を構えていた。黒き螺旋の魔剣を矢として、弓を限界まで引き絞り、渾身の魔力を込めてその両目に黒い騎士を捉えながら、微かに笑いながら呟いた。

 

「今回は、かわせんぞ?」

 

「赤原猟犬!!!」

 

「ーーーーーッ!!」

 

大気を揺るがすほどの一撃。先の宝具開放で魔力を消耗していた騎士ではその必殺の一撃を防ぐことは叶わず、勝敗は一瞬で決した。

 

 

 

「やれやれ。とんだ化物だったな。これは特別手当でも貰わないと割に合わないな。とはいえ、命令通り敵は倒したぞマスター?」

 

「えっ、マスターって私? え、あ、あの」

 

「なにかしこまっちゃてるんですか、イリヤさん? イリヤさんがマスターなんですからもっとこう、堂々としないと」

 

「そんなこといったってー」

 

「そいつの言うとおりだぞ、マスター。俺は君に呼ばれたから来たに過ぎない。まぁ何はともあれ俺の仕事は終わったようだから、そろそろ帰るとするよ。また何かあったら呼んでくれ」

 

「ちょ、ちょっと待っ」

 

それだけ言い残すとアーチャーは消えて、そこにはアーチャーのクラスカードだけが残されていた。

 

 

 

「(ただいまー)」

 

「窓から家に入るなんてイリヤさんもとんだ不良少女になっちゃいましたねー」

 

「しーーーーッ、静かにして。そんなこと言ってもしょうがないでしょ。夜出歩くなんてセラが許してくれるはずないんだから」

 

 

 

「ただいまー」

 

「何がただいまーですか。とっくに門限は過ぎていますよ。あなたは仮にもこの家の長子なのですからしっかりしていただかないと困ります」

 

「そんなこといったって今日は生徒会の手伝いがあるから遅くなるって言ってあっただろう?」

 

「それにしたって遅すぎます。今何時だと思ってるんですか」

 

「セラ厳しすぎ」

 

「リズ、あなたが甘すぎるのです。まったく。まぁいいでしょう、ごはんにしますから着替えてきてください」

 

「セラ、イリヤはどうしてるかな?」

 

「イリヤさんは食事も済ませて、もうとっくに休まれています。あなたと違って」

 

「はは、これから気をつけるよ」

 

 

「こんな時間まで学校だなんて学生って大変なんですねー」

 

「うん、でもお兄ちゃんがこんな遅い時間に帰ってくるなんて初めてだよ」

 

そういえばアーチャーって雰囲気がお兄ちゃんにちょっとだけ似てたな。今度会ったらちゃんとお礼言わなきゃ。

 

 

 

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