解説の宮永さん   作:融合好き

20 / 27
ネタバレ:福路さんが緑一色を聴牌します。


おそらく全てが混沌に染まるこの日

 

 

 

 

 

宮永咲 配牌

{①①①②②③③北北北北中白}

 

 

 

(……うーん)

 

与えられた配牌を見て悩む。配牌の時点で高打点を狙える一向聴。客観的にも主観的にも良配牌なのは間違いないのだが、何故かなんとなく嫌な予感がする。

 

普段であれば……部活の時であったのなら、私がこの配牌で悩むことはなかったであろう。次に引くだろう中を手牌に入れ北で暗槓、嶺上牌の2筒を引き込んでそのまま適当に和了ればまるで問題ない形。

 

多分、感覚的には行けるとは思う。のだが、どうにもその選択に不安が付き纏う。これはただ単純に私が警戒し過ぎなだけじゃなく。困ったことに、私はこういう時の勘を外したことがない。

 

「………」

 

 

宮永咲 一巡目 手牌

{①①①②②③③北北北北中白}

ツモ

{中}

打牌

{白}

 

 

虫の知らせ、という諺があるように、嫌な予感ほど良く当たるもの。単に警戒のし過ぎなだけで仮にそれが的外れだったとしても、それはそれでこの卓の“程度”を知れるので判断の助長にも繋がる。

 

故に、ここは静観する。聴牌云々は私には関係ない。父辺りには悠長だと思われるかもしれない。しかし検めるまでもなく、私の力は強大であるが故に特に他の人の影響をとびきり受け易い。本来、スペックを存分に活かせば100%勝てるだろう勝負。ならば一局や二局、いやいっそこの半荘一回を落としてもでも状況が整うなら代償としては安いと私は考えている。

 

(いや、そこまではちょっと厳しいかな? お姉ちゃんもいるし……)

 

とはいえ、多分静観はこの一巡だけで十分だろう。妹尾さんの地和には流石に驚いたが、あれは対処のしようがないからこそ対抗が叶う。お姉ちゃんなら詳しい原理まで見抜いて私にも読めない不安要素を排除できることを考えると、やはりあの力は是が非でも欲しいなぁと思うところではある。

 

(まあ、お互いに両立できないからこその力なんだろうけどね)

 

姉の言葉を借りるなら、私と姉の力は両立出来ればそれこそ『理不尽』以外の何者でもない。故におそらくはどう足掻いても両方成立することはないだろう。それは私と姉が組んで戦った場合でも同じで、以前試しにやってみた場合では力の所在が曖昧な私側に猛烈なデバフが降り注いでいた。

 

どんな偶然(オカルト)にも穴はあり、その穴はおそらく意図的に残されている。だから絶対的に見える妹尾さんのアレにも対策は存在しているはずで、事実アレより先んじて和了する運命はか細いながらも確かに繋がっていた。

 

(………)

 

 

宮永咲 2巡目 手牌

{①①①②②③③北北北北中中}

ツモ

{①}

 

 

「カン」

 

──問題は、少なくとも現時点において、まともに妹尾さんのアレに対抗できるのが多分私しかいないだろう事実。そして妹尾さんのアレはおそらく姉の眼の範囲から外れていて、しかし対抗するためには私も相当の能力を使用する必要があり、そうなるときっと姉がこれ幸いと私を潰しに来る。

 

この状況を利用し、妹尾さんを持ち上げる形で2位に甘んじる手段も考えたが、今は是が非でも点数が欲しい。誰かのために、なんてガラじゃないけれど、あれほど育て甲斐のある打ち手は中々いないのもまた事実。やはり私も姉の血縁者ということなのか、あるいは私の能力から成る固有の感性に依るものなのか。

 

 

宮永咲 嶺上ツモ

{②}

 

 

「もいっこ、カン」

 

 

宮永咲 手牌

{②②②③③中中} 暗槓{裏①①裏} {裏北北裏}

 

 

(後者っぽいかな……まあ、別に良いか) 

 

いずれにしろ、ここは無理をしてでも一度和了る。私の勘が正しければ、多分きっとまだおそらくは姉もこの手を妨害できない、はず。

 

「………」

 

嗚呼──“多分”だの“きっと”だの“はず”だのと、それを断言できない自分が嫌になる。実際には内心で確信出来ているのがもっと更にますます嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嗚呼嫌だ嫌だ。

 

どうして私はいつもこうなんだろう。離婚騒ぎも京ちゃんの時でさえも、結局私は何も出来なかった。あの日の火事の時だって、本当は、私には、()()()()辿()()()()()()()()()()()()()()()()はずなのに──

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロン」

 

 

宮永照 和了形

{一二三四赤五六七八九九九東東} {東}

 

 

「一気通貫、混一色。赤1で親跳。18000」

「…………」

 

 

 

決勝戦先鋒戦東二局

 

風越    96000

龍門渕  116000(+18000)

清澄    80000(-18000)

鶴賀   108000

 

 

 

(…………)

 

嗚呼、また──否、久々にやらかした。しかも、よりにもよってこんな大舞台の大切な場面で。あの日から、これからも。後悔なんて腐るほどしてるのに、本当に私は駄目な人間だ。全てを忘れて投げ捨ててしまえば──あるいは、だからこそ、私にはこのような力があるのだろうか。

 

私一人がどう足掻こうと、結局は何一つとして運命は変えられない。私が弄っている()()()()()()()()は、実はそれさえも既定路線で、

 

(そんなことあるわけがない、か……)

 

目を瞑る。世界に張り巡らされた糸の中から一つ、妹尾さんと思わしきごん太いソレを己の運命に重ねて混ぜ合わせる。

 

(ゔ……)

 

とんでもない不快感。しかし我慢できないほどではない。しかもやったはいいものの、どうやらあんまり意味がないっぽい。私がごっそり掠め取ってもなお、妹尾さんには無数の因果が絡みついている。それはまるで、天から注がれる恵みのように。

 

考えても詮方ない。いずれにしろ、土壌としてはこの一本で十分。後はこの力を姉に見咎められない程度に均して、上手く使え、ば……。………。

 

(何、この力……? びっくりするほど馴染まない……)

 

一体、本当に彼女にはどのようなモノが憑いているのか。少なくとも、私とは致命的なまでに相性が悪いというか、多分きっと私では使用条件を満たしていない。()()()()()()と力の方が訴えている。具体的には一局もしないうちに霧散しそう。

 

(──仕方ないか)

 

どうせ使えないのなら、と。得た力を使い潰す勢いで卓に支配をかける。流石にこのレベルの能力を行使すると姉に察知されてしまうがそれも問題はない。この所為で不意の一撃を受ける可能性もあるけどそれも構わない。

 

いずれにせよ、この状況ではまともに戦える気がしない。多分オカルトに拠らない豪運?に、能力無し(姉がいる卓)で立ち向かうなんてちょっと無理がある。ならばせめて嫌がらせ、じゃなくて、少しでも有利な方向に卓を導く。

 

因果を絡め、運命を掴み、そして世界を嘲笑う。あるいは、仮に人間が滅んでも、それでも世界は揺らがない。どちらがマシか、どちらが良いのか。分からないけれど、ならば存分に活用しよう。

 

(奇跡とは、()()()()()()()()()()()()()()──)

 

その力の名は『運命奏者(フェイタライザー)』。運命を手繰り、嘲笑う力。ちなみに命名は姉である。更に言うなら、多分私がやってるのは語感から受けるソレとは別物である。

 

(さて。どうなるかな?)

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

(やばい……何というか、これはとんでもなくヤバい)

 

混乱で死滅した語彙力が、とにかく全身で警鐘を訴えている。

 

あの咲と同卓する公式戦。間違いなくロクな目には遭わないだろうことは当然覚悟していたわけなのだが、それでも咲が私を前にここまで大掛かりな能力行使をするのは随分と久しぶりだ。

 

以前に遭遇した場面は確か3年くらい前で、その時は衣ちゃんと龍門渕さんの合わせ技みたいな場を自分含めた全員にかける自爆戦術を使っていた。その時は悪配牌に慣れていた私に辛うじて軍配が上がったが、多分今回はその真逆。それは、この配牌を見れば直ぐに分かる。

 

 

宮永照 配牌

{二二二三三三⑨⑨⑨北北中発}

ツモ

{北}

 

 

配牌が良い、なんて次元じゃない。配牌の時点で聴牌──しかも四暗刻単騎。加えて他の人の表情を“見”る限り、おそらくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ここまでぶっ飛んだ状況だと、勝利条件に流れも読みも運も技術もまるで一切の必要がない。役を知っていればそれだけで──ど素人だろうと熟練者であろうとも、全て等しく同様に運命の気紛れで和了る。そして、咲の狙いはその一点に尽きる。即ち、

 

(あいつ──この状況だと分が悪いから、()()()()()()()()()ことで誰が和了ってもおかしくない状況を創り上げたんだ……!)

 

今更説明するまでもなく、私のオカルトは“見る”ことだけに特化していて、その先に関してはノータッチというか、例えば危険牌なんかの読みの部分は基本的に私の経験則に依る。

 

とはいえ、私はその“見える”範囲が広過ぎて視線の動きや理牌の癖、意識の揺めきなどから未来予知の真似事が出来たり、更にオカルトが絡めば“山がどう干渉されたのか”なんかも見えるので自然と抵抗の仕方も浮かんでくる。

 

故に私は、この舞台が咲によって整えられたものだと分かるし、それが妹尾さんの豪運を利用したものだということもなんとなく理解している。

 

しかし、しかしだ。私に見えるのは言ってしまえばそれだけ。常時『照魔鏡』というオカルトに頼っている私は、()()()()時の経験が圧倒的に不足している。無論、ダブリーする能力とかに当たった時なんかで似たような経験はあるにはあるのだが、それは追い縋ることを前提にというか、その前提があった上で“和了れる可能性がある”からこそ、和了り筋という名のパズルを詰めるように打つ──とにかく、私が劣っていることがその根幹にあった。

 

だが、今回の咲のやったことは違う。()()()()()()()()()()()という、これまで私がしていたこととは真逆の選択肢が正答になる能力。逆らってはいけない、力場に逆らえば逆らうだけその恩恵を見失うオカルト。

 

「…………」

 

宮永照 打牌

{発}

 

 

 

 

 

「カン」

 

宮永咲 手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} 明槓{発横発発発}

 

 

(………!?)

 

そして私はもちろんのこと、他の面子にもこのような異常な場面の経験はないはずで。そうなると一体、誰がこの卓で一番優位を取れるのだろうか。

 

「もう一つ、カン」

 

 

宮永咲 手牌

{裏裏裏裏裏裏裏} 明槓{発横発発発} 暗槓{裏白白裏}

 

 

言い訳をするようだが、油断をしていたわけでは断じてない。今の鳴きにはオカルトの気配を感じなかった。単なる咲側の上振れ──あってもおかしくはない。その程度の、普通の麻雀でもそれなりの確率で起こり得る、ただの運命の悪戯だろう。

 

「ツモ」

 

しかし、今はそれが心底から憎らしい。この卓とは比較にもならないほど高確率で起きる現象、それが上手く噛み合うとこれほどまでに取り返しが付かなくなる。

 

 

「嶺上開花。大三元──32300」

 

宮永咲 和了形

{四五六⑧⑧中中} {中} 明槓{発横発発発} 暗槓{裏白白裏}

 

 

無常の一撃。たった一打、ただの一手で毟られたとは信じ難い致命打に、思わず唇が引き攣る。されど、それこそが麻雀であるのだと、私は深くため息を吐くのだった。

 

 

 

決勝戦先鋒戦東二局一本場終了

 

風越    96000

龍門渕   83700(-32300)

清澄   112300(+32300)

鶴賀   108000







ちょっと短いけど区切りがいいのでここまで。先鋒戦はじっくり書いていきたいので。


オカルト解説コーナー③

『運命奏者』

フェイタライザー。名前の由来は漫画『咲-saki-』の作者による前作から。

能力の概略については作中で解説しているので省略。要するに『なんでもできる能力』だと思って差し支えない。

本来ならほぼ無敵の能力と言えるのだが、『とある魔術の禁書目録』を読んでいればなんとなく察しが付くように、その能力を持つ者が宮永咲という一人の人間であることが最大の弱点。

どういうことかというと、例えば『絶対に勝てる能力』を生み出したところで、何かの間違いで、あるいは能力の設定やらが甘くて窮地に陥った場合、その“不穏”がそのまま形として現れてしまうため。

とあるの錬金術師も鍼治療により思考を安定させていたように、なんでも出来るからこそ能力に対し疑念を抱いてはならない。作中の咲がやたらと自信家なのはそのためで、本来であれば本人も言ってるようにかなり根暗でネガティブ気質だったりする。

他にも弱点としては如何にどのような能力が使えようと最大出力は本人の実力に比例するため、作中で戦う予定のない原作の面子だと姉帯さんとか獅子原さんのような『複数の能力を自在に切り替えられる』人相手には練度の差で不利になる。

現実的な路線だと、性格上ブラフやハッタリが結構効くので、片岡優希辺りは現時点でも普通に勝てる可能性があったりする。

神代小蒔や鶴田姫子のような『能力の出力が異常に高い』タイプについてはネタバレに繋がる可能性があるのでノーコメント。また、ネリーの能力がこの名前である疑惑があるが、仮にそうだとしても全くの別物である。
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