オグリキャップに飯を食われるだけの話 作:強化人間114514号
冷たいご飯っていいよな。
炊き立てホカホカとはまた違った旨味を味わえるのだから。
中国や台湾では冷たい飯を食べられないとかで学校には弁当の保温機があるそうだ。
You斬『保温スイッチを入れ忘れた日直は誰だぁ!』
日直がこれを入れ忘れた日には暴動が起きるとか……面倒くさがりで日直をサボってた俺には恐ろしい話だ。
だが、俺は温かい飯と冷や飯のどちらも美味しく食べられる舌をもった。
これほど日本に生まれたことをありがたく思ったことはない。
特に昼休みに太陽の下で食べる冷や飯ほどうまい昼飯を俺は知らない。
それに温かい飯は食べ過ぎて眠くなってしまう。
そういう意味ではゆっくりとよく噛んで食べられる冷や飯は平日の昼間には最適な物なのだ。
まぁ、今日はどの道サボる予定だけどそんなことはどうでもいい。
必要なのはどれをチョイスするかだ。
冷たいご飯にその甘味を引き立てるしなしなになったふりかけがのった弁当……
梅干しで赤い窪みを作った日の丸弁当……
しなしなになった海苔とおかかのかかったのり弁当……
どれも素晴らしい。
しかし、弁当もだが日本の伝統的携行食、おにぎりも負けてはいない。
米のポテンシャルを全て引き出すシンプルな塩むすび……
そして、忘れてはいけないのが王道の海苔で巻いたおむすびだ。
これをアルミホイルで包む事を発案した人にはノーベル科学書を授与すべきだ。
俺が理事長だったら何がなんでも受賞させる、それほどの代物だ。
この海苔むすびの素晴らしい所はありとあらゆる多種多様なおかずを具として受け入れる所だ。
梅干し、おかか、昆布、鮭、明太子
何を入れたっていい。
そう、おにぎりには無限の可能性を秘めているのだから。
それら全てを具として受け入れる器の大きさは、まさしく聖母マリアとも言えるだろう。
我が舌と空腹を満たすランチとしてはどちらもふさわしい。
しかし、困った。
どちらも昼食としては素晴らしいポテンシャルを秘めている。
俺は優柔不断な男だ。どちらか甲乙をつける事など簡単には出来ないのだ。
そういうわけで、今日は両方のいいとこ取りを選択した。
少なめに持ったご飯にはのりエッグをかけておにぎりを二つ持ってきた。
具は梅干しとおかか
なんだかんだでシンプルなのが一番だ。
ちなみに梅干しは自家製で3年ほど寝かせた物だ。
これくらいの方が塩っけや梅の香りが落ち着いて一番うまい。
そしておかずだ。
いつもは昨日の余り物だけど今日は違う。
今日は金曜日、このクソッタレな平日が終わる最後の日だ。
たづなさんが今週は特別合宿があるとか言ってた気がするがそんな事は知るか。
いつも面倒くさい仕事を押し付けてくる返礼だ。今週もサボってやる。
さて、そんなしょうもない復讐よりも昼飯のことだ。
今日の弁当は手に塩をかけて作った最高傑作品、メインはお弁当のサイファーこと鶏の唐揚げだ。
シンプルに醤油と生姜だけで味付けしてある。
そして、俺のこだわりはしつこくない事と冷めても美味しいお弁当にぴったりな唐揚げを作る事だ。
鶏肉は一般流通しているブロイラーを使用した。地鶏も味は良いのだが、肉質が硬めだからな。
今回のようなお弁当にはむいていない。
衣は小麦粉ではなく片栗粉を選択。俗に言う竜田揚げという奴だ。
揚げたてならば小麦粉の場合カリッとした食感を活かすこともできるが、残念ながら冷めてしまうとべちゃっとしてしまう。そういう意味では、弁当では唐揚げのポテンシャルを活かすことはできない。
そういう意味ではザクザクとした食感を与える片栗粉はもってこいなのだ。
もっとも、俺がザクザクした食感が好きなのもあるけどな。
そしてトドメにノンフライヤーを使う。
そのままでは美味しくないのでオイルスプレーで衣に薄く油を湿らせてから使うのがポイントだ。
こうすることで、酸化した油の嫌な臭いから解放し、ヘルシーで且つザクザクした美味しい唐揚げができる。
どうでもいいが俺は鶏肉は胸肉の方が好きだ。
胸肉を食べて育ったのもあるが淡白な味わいとパサパサとした食感が好きなのだ。
世の中の食通気取り供はパサパサして美味しくないだとか、いかにして柔らかく食べるかと模索ばかりしてやがるし、酷い時には俺みたいな胸肉を好む人間にマウントを取ってきやがる。
ならば問おう。
貴様はサラダ油を原液で飲むのかと。
和牛などに代表される柔らかい脂身は、サシの入る部位があってこそ初めて調和しあうのだ。
それがなければ赤身と脂身は独立してしまう。
赤身と脂身は対立する為じゃない。どちらも美味しく食べる為にあるのだ。
しかし、ありがたいこともある。
有象無象がもも肉を好む事で俺は国産の鶏胸肉を安く、そして沢山食べることができる。
ヨーロッパではこうはいかない。あいつらは赤身肉が好きだし健康意識が高すぎる。
まぁ、あっちは医療費が馬鹿みたいに高いのもあるかもしれないが、そういう意味でも祖国に感謝だ。天皇陛下万歳!
そして副菜には卵焼きだ。我が家の卵焼きは醤油味がベースとなる。
甘い卵焼きもそれはそれで美味いのだが、今回はおかずとしていただくので醤油味にした。
これもただの卵焼きじゃない、醤油と一緒にニラを入れる。
そう、俗に言うニラ玉だ。
醤油の香りとニラの香りがワルツを奏で食欲をそそる。ニラが加わることで栄養価もバックコーラスとして参加してくれる。
そして端っこには飾り付け程度のサニーレタスとプチトマトを入れてある。
どちらも厳選した農家から仕入れた物だ。
これに野菜ジュースも合わせれば栄養バランスも問題ない。
そして一番の懸念材料である我が担当ウマ娘オグリキャップはついさっき食堂に叩き込んだ。
これによって俺は優雅なランチタイムを楽しむことができるのだ。
そう思いながら俺はトレーナー室の扉を開けると、
馬鹿な! 俺の弁当が食われているだと!?
あの野郎今日は素直に食堂に入るなと思ったがこれが理由だったか!
俺は幻覚でも見ているのかと思いながら弁当箱に触れる。
感触は……ある。この形にこの色、間違いなく俺の弁当箱だ。
蓋を開けて見ると案の定中身は入っていなかった。
おかずが入っていた所にはおにぎりの銀紙が丁寧に畳まれており、米の入っていた所にはふりかけのかけら所か米のデンプンすら残っていなかった。さては舐めたな……行儀が悪いぞ……
しかし何故だ……俺の弁当はカワカミプリンセスが蹴っても壊れないが謳い文句の金庫に仕舞い込んでいたはずだ。
ポッケの中に鍵は……ある。
オグリの奴ピッキングでもしたのか? いや、あいつにそんな技術があるとは思えないし何より弁当の存在を知っていれば俺に直接訴えてくるはずだ。
……まさか!
そんなはずはないと思い込みたかったが、俺の推測に金庫はすんなりと答えた。
―――後悔先に立たずとはよく言うが、今日ほど自分を罰したいと思った日はないだろう―――
鍵をかけ忘れた
トレーナー
自分だけの自分による自分のための料理が好きな男。
オグリキャップ
ちゃんとトレーナーの分は残そうとしてるけれどもついつい全部食べてしまう担当ウマ娘。
PS:その後半泣きで反省するけど次の日も結局全部食べてしまう。かわいい(かわいい)