オグリキャップに飯を食われるだけの話   作:強化人間114514号

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カップラーメンはなんだかんだで王道が一番ハズレない

 俺は一人食べる飯が好きだ。

 きっかけはちょうど思春期に差し掛かってナイーブだった頃、長男の食事マナーがあまりにもよろしくなかった。それはもうお見合いがあれば99割の確率で断られるであろう酷さだ。

 家族楽しく食事をしている最中に屁をこく、歯でコツコツと音を鳴らす、箸で摘まんだ物を縦にブンブン振り、本人もヘドバンしながら飯を食う。

 それを両親が咎めようものならば──

 

「出ちまうんだからしょうがねぇだろ!」

 

 ──と逆切れする始末。

 残念ながら長男は第三世代、それも父型の畜生共の血を濃く受け継いでしまったようだ。

 その汚らしい見た目に関しては我慢ができた。しかし、音だけは我慢できなかった。

 現に今でも隣にクチャラーが座られると、そいつの眼球に箸を突き刺したくなる。

 その為、耳栓は今でも欠かせない。こいつに何度助けられたことか……

 

 母親は食事は家族皆で食べるものだと言ってきたが、あの時の俺は幼かった。

 祖父母とかいう『自主規制』して親父を排泄したことしか誇りのない餓鬼共が、壁を隔てて食卓を共にしていなかったのも原因ではあるが──

 

「なんであいつは配慮しないのに俺だけ配慮しなくちゃいけないんだよ!」

 

 ──と母親を黙らせた。今思えば生意気なクソガキだったと思う。この時代に45chの元管理人がUmaTubeで配信していなくて本当によかった。

 結局のところ、母親が折れる形で食事を分けることになったのだが、全員が飯を食い終えた後に、俺だけで夕食を食べていると悲しそうに見つめる母の瞳が忘れられない。母親の飯は、なによりも美味い物の一つではあったが、実家での食事もなによりも苦痛となった。

 夕食は仕方ないにしても、平日の朝食はバラバラだし、昼食は学校で食べるのであまり気にはしないようにしたが、土日はどうしても家にいる時間が多くなる。そんな俺の対処方法が外で飯を食う事だった。

 

 自転車で三十分もかかる近くの公園に行くたびに糞田舎に生まれたことを恨んだが、それでも実家にいるよりはましだ。

 当時の俺には自分の部屋と呼べるものがなかったし、あの家にいたところで、第三世代の人非人共の奇声と怒号しか飛んでこない。公園の近くに新しくコンビニができた時は、泣いて喜んだ。

 とは言っても金のない学生だ。基本的には家で握った不格好な握り飯だけで、コンビニができるとカップラーメンが付いてきたが、それは月に二回だけの贅沢……精一杯の豪遊だった。

 

 そんな俺に、太陽だけは平等に暖かく、時に熱い光を降り注いでくれた。

 あのカップラーメンの味は今でも覚えている。食事で不快な思いをしないのがどれだけありがたいことか、体を通して理解した。

 

 友人と共に食事する美味さもよく知っているが、食事と真剣に向き合うのであればなおさら一人の方がいいと俺は思う。

 環境に左右されず、目の前にある料理そのものに向き合い、味を堪能することができる。時間制限付きの焼肉食べ放題だと、思っていたより食べられない事も多いし、たらふく飯を食うためにも一人飯は最善な方法であるのだ。

 

 それに、空の下で食べれば決して一人ではない。太陽や大空、草花が寄り添ってくれるからだ。

 それだけは、いつの時代でも変わらないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは余談だが、次男の兄貴が頭を抱えていた時期があった。

 話を聞くと、長男は流石に家の外のことくらいは真面目にやっていると思っていたらしく、職場でかなり問題児扱いされているのを友人から聞いて頭が痛くなったそうだ。

 その時の俺は、『まぁ、あいつだしな……』程度に思っていたが、十年後くらいに異世界転生物の小説で埋もれた長男の部屋を見て、ようやく兄貴の気持ちを理解するとこができた。

 

――――――――――

――――――

―――

 

「カップ麺日和だな……」

 

 昼前にトレーニングを見ていると、コースを走ってたオグリが絶望した顔でこっちを見つめて来た。どうやら口に出てしまったらしい。

 

 だが、俺はなんと言われようともカップラーメンを食う。今日そういう気分だ。

 こんな天気のいい日なのに、お日様の下で飯を食わねば罰あたりとなる。お供えとしてラーメンを食らう義務が俺にはあるのだ。

 

 キャンプ用の小さい椅子を設置し、バッグから水筒と3個のラーメンとおにぎりを取り出す。

 俺が食うラーメンは晋日。カップ麺の王者、まさにキングヘイローともいえるカップ麺だ。

 

 昔の俺は目移りしやすい性格で新商品に目がなかったが、失敗することが多かったので今では通常ラインナップにしか手を出さない。

 安いプライベートブランドのカップ麺を食べて『うん……なんだ……うん……』みたいな感じになるのはもうこりごりだ。あれはアミノ酸の味しかしない。

 さて、醤油、シーフード、カレーと一通り揃ってはいるが……物色していたらなんか他所のウマ娘が横でこちらを見つめていた。

 

 こいつ確か小林が担当してる奴じゃないか? 

 なんかラーメンが好きだとかどうとか……だとしてもこいつはやらんぞ。人間は野生動物に干渉するべきではないのだ。

 さて、どのラーメンにするべきか……

 そうだな、この太陽の下では汗をかきそうだし、今日はピリッとスパイスを効かせたカレー

 

 

 

 

トレーナーさぁん? 

 

 

 

 

 

 ……なんとなく嫌な予感がしたのでこれは帰ってから食べる事にしよう。

 

 そうなるとシーフードだな。本当は残ったスープで茶碗蒸しにしたいのだが、それは時間が許してはくれないだろう。

 今日はおじやで我慢だ。そう思いながら水筒からお湯を注ぐ。

 

「トレーナー……」

 

 ラーメンにお湯を入れ終えると同時にオグリがこの世の終わりのような顔で見つめて来た。

 一番奥のコースを走ってたのにもう戻ってきたのか……相変わらず足が速いなこいつ。

 

「お弁当じゃないのか……」

 

「今日はラーメンの日だ」

 

「ラーメンは体に悪いぞ……」

 

「俺のモットーは太く短くだから問題ない」

 

 こいつは俺の健康に気を使ったつもりだが、結局は俺の作った飯が食いたいだけだ。仮にこれが俺のお手製ラーメンだったらとっくによだれでバ場は不良になってる。

 ふと横に目をやると、小林が自分の担当を連れ行こうとしてるが、テコでも動かなそうだ。こいつも苦労してるな……

 

「お願いだ! もう私はトレーナーのモノ無しでは生きていけないんだ!」

 

 こいつとんでもないこと言い出したぞ。

 ターフにいるウマ娘たちが、顔を赤らめながらキャーキャー言ってやがるし、最悪なことにマスコミまでいやがった。

 耐えろ俺……! 75日の辛抱だ……そうすれば変な噂も聞こえなくなる……

 

「だからといって貴様に飯を作る気は微塵もないぞ」

 

「私を捨てるのか!?」

 

 おい小林そんな目で俺を見るな。これは言葉が足りてないからそう聞こえるだけであって、要約すると俺の飯を食わせろってだけだぞ。

 

「最初は普通の美味しいご飯だと思っていた……でも、どれだけたってもあの味が頭から離れないんだ!」

 

 そういいながらオグリキャップは地面に頭を打ち付け始めた。

 

 飯の話だよな? こいつなんかヤバい薬やってないよな? なんか俺も不安になってきたぞ……

 

「お願いだ……お願いだからトレーナーのをたくさん出してくれ……熱いのじゃないともう私はダメなんだ……」

 

「曖昧な表現しないで固有名詞を使え」

 

 そして頭を上げろ。この絵面は社会的に問題がありすぎる。

 お前は国民的ウマ娘オグリキャップなんだぞ。

 

「昨日食べたトレーナーの白くて熱いドロドロしたシチューが忘れられないんだ……」

 

 最初の擬音いらないよなぁ? 最後のシチューだけでいいよなぁおい! 

 確かにあのクリームシチューは、市販のルーを使わずに鶏ガラから丁寧に出汁を取って、トロミのつく具材を煮込み続けて作った一級品だ。

 全部貴様の胃袋に収まったがな。F○CK! 

 

 そして小林テメェなんつー顔してるんだよ。俺のタイプはボインなお姉さんだ。七つの大罪の一つを具現化したこいつではない。決してない。俺は下の方もグルメなんだ。

 これ以上話が拗れないうちに追い払おう。弁解するのが面倒くさくなる。

 

 小林が担当してるウマ娘に、余ったカップラーメンを渡すと、すんなりと離れていきやがった。この貸しはこの前見つけた良さげな焼肉屋で勘弁してやる。

 

 ふとターフのほうに目をやると、ウマ娘達が軽蔑する目で俺を見つめていた。お前らやめろや、俺にそんな趣味はねーんだよ。

 むしろこの状態に興奮できたのであれば、どれだけ楽だったのだろうか。イチャラブ甘々甘やかしスロー『自主規制』が好きな自分の性癖を今日ばかりは恨んだ。

 

 いや、二人例外がいるな。

 流石は白い稲妻。あれは言葉が足りてない事を見抜いてやがる。その調子で俺を助けてくれ。ここにいる暴食大罪芦毛娘に一言ツッコミを入れてくれればいいんだ。

 

 さて、もう一人は

 

こわっ! 

 

 あれスーパークリークでいいんだよな? 

 なんかどす黒いオーラを放ってるんだけど……ドラゴンボールでもあんなん見た事ないぞ……

 ていうか足元の芝生が見る見るうちに枯れていってるよ…….芝貼り直す人は大変だろうなぁ……

 

 あ、タマちゃん逃げた。タマモクロス逃げております! 前代未聞の大逃げです! 

 そら逃げるわなあんな状況。俺だって逃げるわ。

 それに学園の方からもガラスが割れる音が聞こえて来たし、このままここにいるのはやばいから俺も逃げよう。

 他人の不幸は蜜の味というが、我が身に降りかかる不幸ほどエグい物はない。ワラビを生で食べるようなものだ。

 

「トレーナー! 置いて行かないでくれぇ!」

 

 ちょ、おま足にしがみつくんじゃねぇ! さっさとこの場所から離れねぇと

 

 

 

 

 

「トレーナーさん。少しよろしいですか」

 

 

 

 

 

 あーあ、たづなさん来ちゃったよ……

 

「これ食べてからじゃ駄目ですか?」

 

 ──―どれだけ時代が変わっても、愛情が最高のスパイスというのは変わることはないだろう。

    逆に飯を不味くするスパイスもこの世にはありふれている。──―

 

 ──―嫌いな奴と食事をしたり、他人のご機嫌を伺いながら食べる飯程まっずいものはない。

    それを改めて実感した。──―

 

 

 流石に説教されながら飯は食いたくないなぁ……




トレーナー
 好きなラーメンは塩系が多い。

オグリキャップ
 具だくさんのラーメンが好き。

ファインモーション
 ラーメン大好き。

小林トレーナー
 中華屋にある昔ながらの醤油ラーメンが好き。

タマモクロス
 うどんはおかず。

スーパークリーク
 気性難。

駿川たづな
 トレーナの天敵。
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