夜、仕事をしている間、あさひは俺の腕にしがみついたまま、あれやこれやと楽しそうに聞いてきた。
基本的には、ストレイライト以外のメンバーとはあまり交流がないので、何をしているのか気になるらしい。
すっかりいつものあさひの仕草だが、そもそもずっとくっついている時点で普通ではない。日頃スキンシップが多い方でもないし、そもそもどこかに触れたことすら数えるほどしかない。
平静を装っているが、腕に当たる柔らかな感触を意識せずにはいられない。相手がまだ中学生で、膨らみも成長途上なので、辛うじて我慢できている。もっとも、下半身はいきり立っているが、さすがにそれをあさひに指摘されることはないだろう。
そろそろ風呂に入ると言うと、あさひが「入るっすー」と元気に拳を握った。まるで一緒に入るみたいな仕草だったが、無意識の煽りだろうか。
湯を張っても傷が沁みて痛いだろうから、シャワーにするか聞くと、あさひは満足そうに頷いた。
「それでいいっす」
「先に入る?」
「一緒に入るっす」
さらっと迷いのない顔で言われて、俺は心の中で頭を抱えた。この子は異性というものをまったく意識していないのか、それとも、本当に俺は肉親枠になっているのか。
さすがにまずいと思うが、もしそれを説明して、あさひに「プロデューサーさんは、わたしをそういう目で見てるんすか?」などと嫌悪されたら、今後の関係に影響する。
じゃあそうしようと、何でもないように二人で脱衣所に入って服を脱ぐと、あさひがブラジャーを外しながら言った。
「なんか、ちょっと恥ずかしいっすね」
「恥ずかしいという感情を持っていたのか、あさひ」
茶化すようにそう言って振り返ると、あさひの綺麗な胸が目に飛び込んできた。あさひは下を脱ぎながら「当たり前っす」と無感情な声で言ってから、両手で俺の背中を押した。
少しぬるめの湯で体を洗い流す。沁みるか聞いたら、あさひは少しだけ痛そうに顔をしかめて、「大丈夫っす」と呻くように言った。
シャンプーを泡立ててあさひが髪を洗う。白い裸体がとても綺麗で、肌が触れ合うたびに鼓動が速くなった。
あさひは可愛い。ダンスに惹かれて声をかけたが、顔も可愛いし、スタイルもいい。背や胸はこれから大きくなるだろう。まだ中学生だ。
「そもそも今日は、プロデューサーさんに壁の話をしようと思ってたんすよね」
あさひがそう言いながら、ボディーソープを泡立てた手で、俺の胸に触れた。
「壁?」
何か難しい話だろうか。乗り越えるべき試練の話でもするのかと思ったら、あさひは両手を俺の背中に回して、思ったのと違う話を始めた。
「変な壁があったんす。写真を撮って来たから、後で見るっす」
「色は?」
「赤っす」
「赤壁か。戦いだな」
「もしプロデューサーさんが暇だったら、一緒に行こうと思ってたっすけど、全然違う一日になったっす」
あさひが残念そうにため息をつく。あさひが俺の背中を洗ってくれるので、俺もボディーソープをつけて全身を撫で回すと、あさひが身をよじった。
「くすぐったいっす」
「俺もくすぐったいのを我慢してる」
体中がぬるぬるして気持ちいい。フルオッキした股間があさひのお腹と擦れ合って、出てしまいそうだ。
我慢していても仕方ないので、あさひに後ろを向かせると、両手を胸や股間に這わせながら、弾力のあるお尻に下半身を押し付けた。ぬるぬると擦り付けていたらすぐに気持ち良さが限界を突破して、あさひの背中に迸った。
ぐいぐいと押し付けるように全部出してから、シャワーで洗い流す。もう一度正面を向くと、あさひが抱き付いてきて、俺もあさひの細い腰を抱き寄せた。
「全然違う一日になったけど、プロデューサーさんの家に来れて良かったっす。楽しいっす」
俺の肩であさひが安らいだようにそう言った。しばらくそうして抱き合ってから、浴室を出る。バスタオルで体を拭いていると、あさひがいたずらっぽく俺の顔を覗き込んだ。
「プロデューサーさん、さっきちょっとエッチだったっす」
「えっ……?」
突然のことに、思わず声を引っくり返る。何をしていたのかも何をしたのかも、全部わかっているのだろうか。知らないから大丈夫みたいな騙す気持ちはなかったが、全部理解されていたとしたらそれはそれで問題だ。
あさひは楽しそうに笑って、下着をつけずにジャージを着た。それから無造作に下着を洗って、ぎゅっと絞る。
「これ、干しておいたら明日の朝までに乾くっすかねぇ」
「無理だと思うぞ?」
暖房を入れる時期ならともかく、今は難しいだろう。そう言うと、あさひは小さく息を吐いた。
「仕方ないっす。一応干しておくっす」
部屋に戻って下着を吊り下げる。俺の部屋に女子中学生の下着がぶら下がっている光景は、異様としか言いようがない。そもそも部屋に女子中学生がいる時点でおかしいが、担当アイドルと考えればそこまで違和感はない。少なくとも、あさひはなんとも思っていないようだ。
髪を乾かしている間に湿布と絆創膏を替え、歯を磨いてからベッドに入る。電気を消すと、あさひがぎゅっと俺にしがみついてきた。
「壁の写真、見せ忘れたっす」
「また明日見るよ。赤壁な」
「うん。プロデューサーさん、ありがと……っす」
あさひの小さな鼻息が顔にかかる。下着をつけていない体はすべてが柔らかくて、その温もりと重たさに胸が高鳴った。
先程一回出して、今夜は平常心で寝られるかと思ったが、どう考えてもそれは無理だ。
息のする方に顔を向けると、思ったより顔が近くて唇が触れ合った。そのままキスをして唇の感触を楽しんでいると、寝ていると思ったあさひが静かに言った。
「プロデューサーさん、楽しいっすか?」
一瞬心臓が止まった。しかし、すぐに動き出して、動揺を見せずに気持ちを落ち着ける。
「楽しいよ」
努めて冷静にそう言うと、あさひが眠そうに言った。
「わたしも、楽しいっす……」
それはキスのことだろうか。それとも、ここに来てからの時間のことだろうか。
ぺろりと唇を舐めると、あさひも俺の舌を舐めた。しばらく舌を絡め合って、あさひがほぅっと息を吐く。
「眠くなってきたから寝るっす」
「うん。お休み」
腕の中で、あさひが安らいだ寝息を立てる。
あさひではないが、もし事件がなかったら、どんな一日になっていただろう。もちろん、俺の部屋にあさひの下着が干されることもなかっただろうし、こんなふうに温もりを感じ合うこともなかっただろう。
もちろん、あさひを殴った男に感謝することは絶対にないが、今あさひとこうしている時間はとても幸せだ。
もっとあさひとの距離が縮まると嬉しい。明日の朝、あさひはどんな顔で「おはよっす」と言うのか、想像もつかない。
少なくとも、明日はもう何にも怯えていないといいが、それもわからない。あさひがこの世界に対して再び安心できるようになるには、少し時間がかかるかもしれない。
それまでは、ずっと一緒にいよう。もちろんその先もずっと、あさひがそれを望んでくれたら嬉しいが、それもさっぱりわからない。
芹沢あさひは難しい。だから面白い。
ふにふにと指先であさひの胸をつまみながら、俺も心地良い眠りに落ちた。