月面鉢合わせ   作:埼玉臨時政府

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偶然に偶然が重なることは稀に良くある



UFO疑惑

1969年7月16日13時32分、フロリダ州メリット島、ケネディー宇宙センターにて

 

白い巨大な塔がコンクリートの土台の上に聳え立っていた。塔には黒い線が引かれ、アメリカ国旗とUSAの文字が申し訳程度に描かれていた。

 

しかし塔は自分自身を支える力を持たされていないため、すぐ隣にある無数の鉄骨と配管で構成された支えに寄りかかっているのだった。

 

いかにも無機質な構造物群は、しかしその規模とは負の意味で比べ物にならないごく少量の有機物をたったの一度きり運ぶ為だけに存在しているのだった。

 

詰まるところこれが、これこそが月ロケット、アポロ11号である。

 

それが今打ち上げられようとしているのだった…

 

 

『10、9、点火シーケンス開始、6、5、4、3、2、1 全エンジン作動、リフトオフ、リフトオフ成功!』

 

発射管制室内の制御盤の前に陣取っていた500名の人員、アームストロング、コリンズ、オルドリンの3人の宇宙飛行士たちは一番の緊張の山を越えた。

 

しかし、まだ到底緊張の波が切れる訳では無かった。

 

ロケットは野次馬達に見送られながら高く高く、水蒸気をたなびかせながら熱を持ち、雲を切って進んで行った。

 

不要になった容器を下から下からドンドンと切り離し、遂にロケットは空気の層を超えて衛星になった。しかしここで止まるわけではないのだ。

 

しかしその時、暗闇の中から小さな本当に小さな、矮小な銀色の粒が窓の外から中に入ってきた。

 

アームストロングがそれに最初に気づいた。

 

「……地球がこんなに小さく…いやちょっと待て、あれは…こちらアポロ宇宙船、管制室聞こえるか?」

 

『こちら管制室、どうした』

 

「何か正体不明の物体が接近してきている、衛星かもしれない」

 

『物体の様子を正確に説明してくれ』

 

「銀色で、光を反射している。10分前にはあんな物体は無かった、だんだん近づいているようだ。大きさは距離がわからない為正確には不明。しかしこちらと同じ大きさの様に見える。隕石では無さそうだ」

 

『了解、衛星軌道を確認したがこちらの衛星は近くには存在しない』

 

「おいおい、月からUFOでも飛んできたのか?」

 

コリンズが軽口を叩いた。

 

『もしかしたらソ連の衛星かもしれない。目視出来るだけ近づいているのは向こうから接近してきているからかもしれない』

 

「攻撃の可能性は?」

 

『無いことを神に祈ろう』

 

宇宙船の中は緊張に包まれた。もし相手がソビエトの攻撃衛星なら御陀仏だ。

 

しかしこの勇敢な宇宙飛行士たちを真に恐怖させたのは自分の命が失われてしまうかもしれない状況で、何もすることが出来ない事であった。

 

しばらくの間、ただ冷静さを保ちながら椅子に座っていた。

 

そして向こうでも言語や言葉回しは違えど同じやり取りが行われていた。しかし誰もそのことを考慮するものはいなかった。

 

「「だんだん近づいてきて良く見える様になってきた、あれは『ソビエト・アメリカ』の宇宙船の様だ」」

 

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