兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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序章

それはあり得たかも知れない未来

静寂を好む暴君でありながら優しい義母と筋骨隆々な見た目ながら優しく食にこだわる叔父と女好きの祖父

そんな3人に囲まれて育った真っ白なウサギのような少年の物語

 

 

8歳になったばかりの少年—ベル—に数年前にとても怖く優しい家族が増えた

「おば」

ズガン!!!その言葉を最後まで聞く事なく音すら超える速度でその白髪に拳が落ちる。

「ツ!?ツ!?」

その余りの衝撃に目の前に星が浮かび頭を押さえてしゃがみ込むベル

「その呼び方は正しくはあるが、不快だからお義母さんと呼べといつも言ってるだろう?」

そんなベルを見下ろし頭を撫でる女性

「ご、ごめんなさいアルフィアお義母さん」

灰色の長髪を靡かせ抜群のプロポーションを持つベルとよく似た女性—アルフィア—は「次はこの程度では済まさないぞ」と恐怖の一言を残しつつ

「何か要件があるのか?」

先程声をかけてきた理由を尋ねる

「あ、うん。あのねザルドおじさんがご飯だって」

おどおどとアルフィアの機嫌を損ねないように手短に要件を伝える

「そうか、今行く」

読んでいた本を閉じ立ち上がるとベルの方へ歩いてくるそして2人で縦に並んで居間に向かう

狭い家だが母と近くにいられるこの狭い家がベルは好きだった

「きたか出来てるぞ、熱いうちに食え」

居間に着くと大男が木の器に出来立ての芳しいスープを並べているところだった

「うん!」

そのスープの香りに育ち盛りのベルはお腹を鳴らし席に着き

「いただきます!」

とスプーンを口に運ぶと溢れんばかりの笑顔を浮かべて「美味しい!!」とザルドをみる

「そうか」

素気ない言葉ながら口の端に笑みを浮かべ、ベルの頭をひと撫でして自分も席に着き食事を始める

「相変わらず見た目に似合わず料理上手な事だ」

そんな2人を面白くなさそうに見るアルフィア

それもそのはず、いかな【才禍の怪物】といえど料理などしたこともなければやっているところを見たこともない。それゆえに再現できない

「そうにらむなアルフィア」

微妙に殺気を垂れ流しながら睨むアルフィアに冷や汗を垂らしながらスープを飲むザルド

「お義母さん?おじさんのスープおいしいよ!食べないの?食べさせてあげようか、はいあーん」

そんな様子につゆほども気づかず単におなかが空いてないだけだと思い、おいしい料理を食べれば笑顔が見れるだろうとスプーンを差し出すベル

「「……」」

呆気に取られ2人の間に沈黙が落ちる。そしてどちらともなく苦笑を浮かべて

「やれやれ」

とアルフィアは口を開きベルの差し出すスプーンを迎えそのまま自分の分を食べ始めザルドも食事を続ける

「帰ったぞ〜」

玄関から声が聞こえる

「おじいちゃん!」

ベルはその声を聞いた瞬間立ち上がり出迎えに玄関まで走っていこうとする

「食事中に大きな声を出すな立つな走るな」

アルフィアの言葉にビクッとし大人しく席に戻る

この家において暴君(アルフィア)の言うことは絶対であるのだ

「ただいま、遅くなってすまんの」

たくましい背中はその抱擁力を示すかのように力強くその笑顔は好々爺を体現したような顔であった

「おかえりなさいおじいちゃん!」

そんな尊敬する祖父の帰りをただ1人喜ぶベル頭を撫でより一層その笑みを深くする

「「ちっ」」

そんな姿を見て息のあった舌打ちをする叔父さん《ザルド》とお義母さん《アルフィアお義母さん(おかあさん)

「はぁベルは可愛いのに他2人は相変わらず可愛くないのう」

ため息を吐きつつアルフィアの身体に触ろうとする祖父に容赦の無い手刀を喰らわし悶絶させるのと

「帰って来なければ良かったのだがな」

おまけで毒まで吐いていく

「あはは…」

いつもの光景にベルは苦笑をザルドは同意を示す

「さてこの糞爺は放って置いて食事が終わったらまた訓練をするぞ」

「うん!」

元気に返事をするベルだが

「「……」」

ザルドと祖父は沈黙してしまう

そうそれは訓練とは名ばかりのベルをレベル7《アルフィア》がボコボコにする事であった

齢8歳の少年を世界最強クラスの化け物が一方的に殴る蹴るを繰り返し無茶な要求を突きつけるそれの繰り返しをする

そもそもヘラファミリアは元大手で最強の一角であったファミリアである。そんなファミリアの中ですら抜きん出た才を持っており幹部であった彼女は新人の教育などしてきたことがないし、更に才禍の化け物にはできない気持ちがわからないので教えると言うことが不得手である

それ故に実戦にて鍛える事になった

最初は悲鳴をあげていたベルも幾度も繰り返すうち何も言わなくなり言われた事を繰り返す事にした

生来素直な性格で人を疑う事を知らないベルは訓練とはそう言うものだと信じて日々ボコボコにされ生傷が絶えない生活だった

そんな訓練()を毎日見ている2人は沈痛な表情を浮かべ、哀れなものを見る目を向け

「ベル、明日の朝は俺が訓練に付き合おう」

「明日は大剣の使い方を教えてやる」

ザルドはそんな声をかける

「本当!?」

わーいと喜ぶベルの健気さに祖父は目の端に涙を光らせる

(ぼくはお義母さんたちがもっと笑ってくれるようににもっともっとつよくなる!)

以前ベルは「ぼくがさいごの『英雄』になる」とアルフィアに誓った。それはアルフィアの笑顔のため口から出た言葉だったかも知れない

だが大切な人を笑顔にできたその経験はベルの心に刻みつけられている

大事な家族の笑顔をまた見る為、そしてその笑顔を守る為少年は英雄を目指し努力を続ける

「…」

そしてその誓いを聞いた瞬間からアルフィアとザルドは救われておりその優しさと強さに報いる為その全てを捧げる覚悟を決め、祖父はそれ見守り続ける事を誓った

 

 




作者はダンまちのにわかです
キャラは崩壊する可能性もあるのでご指摘下さい

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